プレイレポート
[プレイレポ]「Frostpunk 2」ベータ版インプレッション。対立する派閥を取りまとめ,凍土の都市を存続させるサバイバルシム
本作は,4月16日から22日までデラックスエディション予約者向けのベータ版アクセスが実施され,「ユートピアビルダー・プレビュー」と呼ばれるサンドボックス・モードの一部を体験できた。本稿では,ベータ版のプレイレポートをお届けする。
なお,正式リリース時には日本語のインタフェースと字幕が利用可能だが,ベータ版では英語と簡体字中国語のみに対応しており,記事中のスクリーンショットは英語版のものを使用している。また,読みやすさを重視し,一部の単語を日本語で表現しているが,公式の翻訳ではないことをご留意いただきたい。
2018年にリリースされた前作「Frostpunk」は,極寒の氷河期が襲い文明が崩壊した19世紀末の地球を舞台に,都市を築き,生存を模索するシミュレーションゲームだ。プレイヤーは蒸気機関を利用して生きながらえた一団を率いるリーダーとなり,極限の状況下での決断を迫られながら,都市を発展させていく。
その続編となる本作では,極寒期を切り抜けた人類が石炭や石油資源を再発見し,少し豊かな世界になっている。しかし,人あるところに争いあり。本作では,意見の異なる2つの派閥が対立しながら,都市内にコミュニティを形成している。プレイヤーは執政官や執事といった意味を持つSteward(スチュワード)になってコミュニティを取りまとめ,厳しい自然環境のもと都市の存続を目指していく,というのが本作の主なシナリオだ。
ベータ版でプレイできた「ユートピアビルダー・プレビュー」は,決められた目標に向かって都市の発展を目指していくサンドボックス・モードだ。プレイにも300週までという制限があり,あくまでテスト版といった感じの内容だった。
ユートピアビルダー・プレビューの開始前には,野心(Ambition),マップ,コミュニティ,難易度が選べる。今回は野心はColonisation,マップはWindswept Peaks,コミュニティはMachinists and Foragers,難易度はMediumで固定となっていた。ただ,開始はできずとも選ぶことはできたので,その内容を一通り見ていこう。
野心は,“発展目標”のようなもので,Colonisation(植民地化),Utopia(楽園),Population(住民),Prosperity(繁栄)の4種類があり,それぞれ達成条件が違う。Colonisationでは,食料・燃料・材料のコロニーを確立し,本作の舞台である“フロストランド”地域を探索することが条件だ。
マップはWindswept Peaks,Broken Shore,Fractured Gorge,Horizonの4種類で,地形や資源量といった部分に変化が出るようだ。Windswept Peaksは,山脈に挟まれ,小さな谷に囲まれた場所で,悪天候の影響を受けづらく,主要な資源へのアクセスも比較的容易と,要するにいろいろやりやすいマップということだろう。
コミュニティはMachinists and Foragers(機械家と探索者),Workers and Merchants(労働者と商人),Lords and Thinkers(支配者と思想家)の3種類だ。
難易度設定はEasy,Medium,Hard,Extraの4種類がある。
今回プレイできたのは,人口過密により資源が減少する都市のスチュワードに指名されたというシナリオだ。コミュニティの派閥はテクノロジーの進歩こそ生存と繁栄を確実にすると考える“機械家”と,テクノロジーへの依存が高まると災害を招くと考える“探索者”で,もちろん両者は対立している。ゲームの設定としてはよく見られる,自然vs機械という構図である。
ゲームが始まるとともに,「石炭がない!」というメッセージが来る。これは本作におけるチュートリアル的な要素だ。
ゲーム画面では,現在の目標が左上に表示される。まずは,都市の近くにある石炭の鉱床を見つけ,Frostbreaker(フロストブレイカー)を使って霜を片付けたのち,鉱床の近くに採掘区を建設する。
フロストブレイカーは,本作の特徴的なシステムの1つだ。フロストランドの地形は大部分が霜に覆われており,破壊することで建築可能なエリアを広げられるのだが,そこで使用するのがフロストブレイカーという重機になる。
[X]キーでフロストブレイクのモードに切り替わり,位置を指定するとチームを派遣できる。ただし,稼働させる際には,Heartstamps(ヒートスタンプ,通貨)とWorkforce(労働力)を消費するので,むやみにアクセスできる土地を広げるのではなく,計画的に開拓していく必要がある。
石炭の鉱床にアクセスできるようになったところで,近くに採掘区を建設していく。労働者たちが通るための道は,区を建設すると自動的に作られる仕様だ。
次なる目標は,もっと効率よく石炭を採掘するためのアイデアを得るため,住宅区に研究所を建設することだ。研究所を建設すると,本作における特徴的なシステム,“意見の対立”が起きる。石炭の鉱脈を採掘するとき,機械家は機械による採掘を望み,探索者は機械を使わずに,もっと倹約的な方法を探すという。ここでプレイヤーは,アイデアの開発を誰に任せるかという選択を迫られるのだ。
都市の人々はみな意見が違うので,当然,すべての人を満足させることはできない。政治的な難しさが絡み合ってくるが,同時にプレイヤーの性格も反映されてくる部分でもある。
この意見の食い違いに対して,プレイヤーは“アイデアツリー”から決断を行う。どちらの意見にもメリットとデメリットがあり,機械家の“Grinding Coal Mine”の案では人手が少なく採掘量が多いものの,都市が汚れて資材を多く消費する。探索者の“Dust Coal Mine”の案では,人手がかかり採掘量も少なくわずかに病人も増えるが,資材の消費はとても少ない。
メリットとデメリットは表面的なものだけでない。アイデアを支持した派閥からは好感を持たれ,もう一方の派閥からは反感を買うことになるので,一方の派閥の意見がずっと通らなければ,市政への不満から暴動が起きる可能性もあるだろう。序盤はともかくとして,都市が発展するほどに慎重な選択が必要になってきそうだ。
プレイヤーはスチュワードとして指名されたものの,現状はコミュニティの意見を汲み取りきれていない。その問題を解決するために必要になるのが,Council(評議会)だ。
評議会においてスチュワードの役割は,採決にかける法律を“提案”することであり,あくまで決定するのは市民から選ばれた100人の代表者となる。彼らは多くのことについて異なる見解を持っており,彼らの後援を得るには,交渉をしたり,時には圧力をかけたりする必要がある。
法律はSurvival(生存),Economy(経済),Society(社会)の3つのカテゴリーがあり,最初はほとんど法律のない状態だ。例として,経済に関わるもので,影響の大きそうな“Basic Necessities(必需品について)”の内容を見ていく。
現状,基本的な必需品は人々に無償で提供されている状態だが,これを有料化したり,必需品の無償提供をより確実なものにしたりするための法律を取り決めることができる。有料化すれば人々は収益を得るために積極的な労働を行い,市は収益が増え資源の生産効率が上がる。必需品の提供を確実にすれば,市民からの信頼が得られるだろう。
賛成票と反対票の数は,採決にかける前に少し確認できるのだが,問題になるのはどちらに投じるか分からないHesitant(ためらう人々)が多いことだ。賛成多数を確実にするには,派閥と交渉をするか,圧力をかけて無理やり賛成させるかの2つの方法がある。
交渉であれば,派閥との関係を悪化させずに賛成票を得られる代わりに,彼らにとってメリットとなる何かを提供する必要がある。提供するものは場合によってさまざまで,助成金を渡したり,別の法律を制定したり,面白いところでは対立派閥の研究した建物を破壊することを条件にしてくることもある。
一方で,圧力を掛ければ,ためらう人々が賛成票を投じやすくなる。しかし,無理やりなやり方で好感を持たれるわけもなく,コミュニティとの関係はかなり悪化してしまう。どの選択をしても,デメリットは付いてくるというわけだ。
今回はどのような票の動きになるのか確認するため,“必需品の有料化”について,交渉したり圧力をかけたりはせず,そのまま採決を開始した。賛成20票,反対10票,ためらい70票だったが,案外普通に通ってしまった。
ここまでの内容がチュートリアルで,ここからは完全に自分の意思で行動することになる。石炭の採掘は行っているものの,掘り尽くしてしまう前に次の鉱床を見つけなければ,寒さで都市がダウンしてしまう。都市のさらなる発展を目指して,研究所でアイデアを採用して新たな建物を建てることや,評議会で法律を決定して市の運営を健全にしていくことも並行して行う必要がある。もちろん,コミュニティの顔色をうかがいながら,だ。
チュートリアルで触れられることがなかった基本的なシステムについても簡単に説明しておこう。まず,リソースについてだが,通貨のような価値を持つヒートスタンプと,作業を行うための労働力は何をするにしても必要になってくる。寒さの対策をするために,石炭も常にストックのある状態にしておかなければならない。
そして,都市機能を安定して稼働させるために重要なリソースが,Heat(熱),Shelter(住居),Food(食料),Materials(資材),Goods(必需品),そしてCoal(石炭)の6種類だ。それぞれ対応する区を建設することで確保できるのだが,需要を満たせない場合,さまざまなデメリットが発生してしまう。
熱は暖かさのリソースであり,需要を満たせない場合,寒さが増す。都市中心のジェネレータを研究することで確保可能だ。今回のゲームプレイでは気温が-20℃を下回ることがなく(我々からすれば信じられない寒さだが),需要を満たせないことはなかったが,悪天候の影響を受けるようなマップでは話が変わってくるだろう。
住居は住む場所を表す数字であり,需要を満たせなければホームレスが出て,市民が致命的な寒さにさらされる。熱が足りないのとは比べ物にならない影響が出るので,人が溢れているなら,真っ先に住宅区を建設して確保する必要がある。
食料が足りなければ当然,人々は飢えてしまう。食料源を見つけたのち,食料区を建設することで確保可能だ。
資材は,食料の確保や石炭の採掘作業などで恒常的に必要になる。需要を満たせない場合,過酷な状況でインフラが劣化し,都市が汚れていく。森や鉄鉱床に採掘区を建設すれば確保できる。
必需品の需要を満たせない場合,犯罪が増えたり,ヒートスタンプの収入が減少したりする。工業地区を建設することで生産され,ステータスが上昇する。
石炭は,ジェネレータが熱を生み出すために必要になるので,切らすと大変なことになる。食料,資材,必需品,石炭については貯蔵することが可能で,ある程度の蓄えができれば,一時的にその区の稼働をオフにするなどして,労働力をほかに回すこともできる。
ここまでが基本的な部分で,あとはプレイヤーが思うように環境に適応し,都市を発展させていく,という流れだろう。さらに進めていくと,多様なイベントなども確認できたので,スチュワードとしてさまざまな厳しい決断を強いられることになっていくのだろう。
ベータ版ということで1種類のゲームプレイしかできなかったものの,完成度は非常に高く,粗を見つけるほうが難しいぐらいの仕上がりだった。そのうえで,ゲーム自体は分かりやすく,システムの奥深さも相まって,続きをプレイしたいと思わせられた。正式リリースまではまだ3か月ほどあるので,さらなるクオリティアップにも期待したいところだ。
「Frostpunk 2」公式サイト
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