百合ADV「ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜」が本日リリース。制作チームインタビューの最終回“企画・シナリオ 御厨みくり氏編”が公開

　合同会社HAVENは本日（2021年6月30日），新ゲームブランドLily spinelのPC（Steam）向け恋愛アドベンチャー「ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜」を発売した。価格は1800円（税込）で，本日から7月7日までは10％オフの1620円で購入できる。
　また，発売に合わせて，制作チームインタビューの最終回「企画・シナリオ 御厨みくり氏編」が公開されている。

　本作は，鎌倉のお嬢様学校「私立桔梗女学園」を舞台に，少女・湊 汐里（CV：門脇舞以）と倉橋海琴（CV: 倉知玲鳳）の“少女同士の恋”が描かれる“百合アドベンチャー”だ。3週連続インタビュー企画の最終回は，企画・シナリオを担当した御厨みくり氏が登場。企画から4か月以上かかったという本作のタイトルには，どんな思いが込められているのか，“脅迫状から始まるラブストーリー”が生まれたきっかけなど，本作誕生秘話と御厨氏の百合観が語られている。

「ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜」公式サイト

『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』
制作インタビュー　最終回
企画・シナリオ　御厨みくり氏

２０２１年初夏、新ゲームブランドLily spinelより、あなたをすきになっていく百合恋愛ADV『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』のリリースが発表されました。

舞台は梅雨の鎌倉。私立桔梗女学園は、携帯電話・スマホ一切の持ち込みが禁止されおり、今でも手紙文化が主流として残るエスカレーター制のお嬢様学校です。
一通の脅迫状によって導かれた、手芸が趣味のどこにでもいる女の子 湊 汐里（CV：門脇 舞以）と、学内で人気の少女 倉橋 海琴（CV: 倉知 玲鳳）。二人の歪んだ恋が始まっていきます……。

百合を愛する人たちが大好きなエッセンスを詰め込んだ、このゲームの企画・シナリオを担当された御厨みくりさんに『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』制作秘話をインタビューしていきます！

御厨さん、よろしくお願いします！

●『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』が生まれるまで

――『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』というタイトルはどのように生まれたのですか？

御厨みくり さん（以下、御厨さん）：
タイトルはとても難航しました……！
最初は紫陽花をテーマにいろいろタイトル案を出したのですがどれも自分の中でしっくり来ず、企画からタイトル付けまで４か月以上かかった気がします。

結局紫陽花から離れ、いろいろ考えている中で、レターを入れて、『涙が落ちる』『梅雨空』などの表現を『露散る』『梅雨』に重ねてみました。古語表現を入れたのも、鎌倉の空気感に合うかなと思っています。

――「脅迫状から始まるラブストーリー」というコンセプトはどんなことがきっかけで思いつかれたのですか？

御厨さん：
ロープライスの百合ゲームということで、従来のゲームのように友人関係からスタートせず、少し加速感やきっかけを持たせたくてこうしてみました。私の作風的にもすごく合いますし、恋愛ゲームとしてだけでなく、脅迫状という一つのきっかけが他人同士の二人の関係を変えていくというのも、ストーリーの先行きが気になる作りにできたかと思います。

――スマホ時代に文通へスポットを当てたのはなぜでしょうか？

御厨さん：
私が百合にどっぷりハマったきっかけが『マリア様がみてる』なのですが、そのあとの好きな作品でもお嬢様たちがスマホをバリバリ使っている世界観というのが想像できなくて、『いっそのこと持ってなくていいや！　禁止にしよ！』と思い、こうなりました。

スマホをみんな持っていない分、靴箱がポストになって手紙文化が流行っているというのは、ラブレターや脅迫状にも生かせるしばっちりだなと思っています。

物語中でも汐里が海琴に手紙を書いたり、海琴はラブレターいっぱいもらってる先輩だったり、それで話が動いて行ったりと様々な効果がありますので、楽しんでいただけたらと思います。

――鎌倉を舞台にされたのはなぜですか？

御厨さん：
さきに『脅迫状』『お嬢様学校』などメインのあらすじが決まった後に、雰囲気の綺麗な作品なので舞台もこだわりたいなと思っている中で、移り行く気持ちから季節を梅雨の時期にして、「梅雨ということは紫陽花……鎌倉だ！！」と思い、こうなりました。

鎌倉を舞台にした作品だと、『青い花』や『海街diary』が大好きなので、舞台探訪もしたいし完璧だなと思い、鎌倉にしました。


――企画中や執筆中に印象的だった出来事はありますか？

御厨さん：
一番はコロナですかね……！　企画をちょうど立てた時が緊急事態宣言中で、鎌倉の写真や資料を調べただけで『緊急事態宣言中につき、旅行は自粛お願いします』のような注意書きが出てきたりして、ちょっと大変でした。

ちょうど緊急事態宣言が明けて紫陽花の季節にギリギリ、ロケハンに行けました……！　本当にすごく素敵な街で、コロナなどなかったら何度も何日でもロケハンに行きたかったです。

あと、今回は初めてしっかりディレクションを担当しており、シナリオと並行しながらディレクション作業入るのが本当に大変でした。ディレクターさんって本当に大変なんだなと思いました……。SukeraSparo/SukeraSomeroの古賀さんに何度もご相談して助けていただいて、ようやくここまで来られました。

●『ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜』について

――ご自身で気に入っているシーンなどありますか？

御厨さん：
汐里が泣くところです！笑
門脇舞以さんの演技も本当に素敵で、収録立ち合い中にこっそり泣きました……！
基本的には全部気に入ってます！　収録立ち会って声優さんたちの素晴らしい演技が入ってもっと好きになりました！　

ゲームは今組み込み中ですが、sheepDさんの素晴らしいイラストや背景、演出が入ると、もう、素晴らしすぎて「きゃーっ！！」って感じです。

湊 汐里

――御厨さんの思う一番の見どころはどんなところですか？

御厨さん：
『脅迫状から始まる恋物語』という、一件すごく重そうな雰囲気ですが、魅力的な女の子たちの紡ぐ物語の中で、気持ちがゆっくりと移り変わっていったり、恋に落ちて行ったり、そういう部分が作品の雰囲気やテーマとも相まって綺麗にまとまっているなぁと思ってます。そのあたりを是非楽しんでいただけたら嬉しいです！

――今作は英語と中文に言語を切り替えてプレイできるということで、世界の方へどんなところが伝わるといいと思いますか？

御厨さん：
このコロナ禍で旅行なども厳しいご時世ですが、素敵な鎌倉の背景なども併せて美しい物語を楽しんでいただければと思います。

●キャラクターたちについて

――今作のヒロイン、湊汐里と倉橋海琴はどんな女の子ですか？

御厨さん：
汐里は、恋や華やかなこととは無縁だった大人しい女の子です。レース編みや手芸が趣味で、人を悪く言ったりしないすごくいい子です。「私なんて……」と自分ではよく言いますが、周りからは「なに言ってるの？　汐里、めちゃくちゃ可愛いよ？」って言われるような子です。碧先輩からも言い寄られてます。

海琴は表向きはクールで、誰から告白されても断る孤高の先輩ですが、実際はお嬢様学校に長くいて、女の子特有の人間関係が苦手だったりと不器用な子です。病弱な妹が大事だったりと、ちょっとシスコン気質なところもあります。

倉橋海琴

――誕生秘話などございましたら、お願いします。

御厨さん：
汐里ちゃんは、ヒロインらしいというか、主人公らしい普通のお嬢様らしい女の子をイメージしています。けれど芯の部分がしっかりしていて、告白されたけど先輩にメチャクチャ嫌われてるというきっかけの中でも、まっすぐ歩んで行ってくれるヒロインになっております。sheepDさんが描いてくださった汐里がめちゃくちゃ可愛くて、「はーーー、汐里可愛いなーーー」と思いながら書きました。

海琴は「女の子って好きじゃない」とか言っちゃう百合作品のヒロインとして大丈夫かというヒヤヒヤなキャラです。序盤は特に汐里に対してとっても冷たくて、大丈夫かな、受け入れてもらえるのかなと書きながらずっとヒヤヒヤでした。

けれど嘘がなくてまっすぐで、状況に悩んだり振り回されたり、怒ったり悲しんだり、等身大の可愛い女の子になってます。海琴の声優さんの倉知さんが海琴の心情の変化や可愛さを丁寧に表現してくださって、本当に神でした。

どのキャラクターも私が生み出したというより、sheepDさんの本当に綺麗で可愛らしいイラストや、声優さんたちの丁寧な演技も含めて、生き生きとした魅力的で可愛らしい女の子たちになったなと感じています。

●百合について

――御厨さんの思う「百合」の魅力とはどのようなものでしょうか？

御厨さん：
なんでしょう……！　いろんな作品があって一概には言えないのですが、少女同士の雰囲気の美しさや、友情よりも進んだその先の空気感だったり、それぞれの作者さんの多種多様な表現に「わーーー」ってなったり、なんかもう全部好き……って感じです。（全然うまく言えない

――最近、御厨さんの中で熱い百合作品は？

御厨さん：
昔から雰囲気の綺麗な百合作品が好きで、最近だと「繭、纏う」と「ルミナス=ブルー」がすごく好きです。あと年の差百合とかも好きです。
ゲームだと推しラブですかね……！　クラウドファンディングなども参加させてもらって、ファンディスクもすごく楽しみです……！

――最後に作品を待つファンの皆様へメッセージをお願いします。

御厨さん：
今回、ディレクションなども担当させてもらって、素晴らしいクリエイターさんたちに恵まれて、本当に素敵な作品ができました……！　上がってくる素材すべてが素晴らしくて、スタッフ一同大切に作っております。また、私が一番ゲームの完成を楽しみにしています。

美しい百合の世界にどっぷり浸かれる、素晴らしい作品となっておりますので、是非百合が好きな方に楽しんでいただければ幸いです！　「ツユチル・レター〜海と栞に雨音を〜」を、よろしくお願い致します！

――ありがとうございました！

コロナ禍を乗り越えながら作品を制作された、御厨さんの百合への情熱が伝わるインタビューでした。脅迫状が繋ぐ二人の行方、必ず見届けてくださいね！

文責・真鶴コウ

御厨みくり


宮城県仙台市在住シナリオライター。うさぎ飼い。ＰＣゲームのシナリオを中心に執筆。最近は音声作品を手掛ける機会も多い。

Twitter : @syoko_mikuri