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[GDC 2022]「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」に見る,少ない開発メンバーでもできるAAA級のFree-to-Playゲームの作り方
「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」公式サイト
2021年9月に,PCおよびPlayStation 5でアーリーアクセス版がリリースされ,近日中にも正式版に移行する予定の「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」は,その名のとおりテーブルトークゲームの「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」を正式ライセンスしたバトルロイヤルゲームだ。
プラハの街で暴徒化した血族達の抗争を生き残り,毒ガス“レッドガス”に包み込まれる前にライバルを蹴散らして脱出を図るというバトルロイヤルゲームで,ソロもしくは3人のグループでのプレイが可能。3つの血族に2つずつ固有のクラスが用意されており,それぞれの特徴を活かしたチームプレイが重要となる。
12世紀半ば〜15世紀末のゴシック様式が色濃く残るプラハの街並みと,“ゴシックパンク”とも呼ばれる「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」のデザインコンセプトをマッチさせた美しいアートワークはUnreal Engine 4によって実現されており,チームメンバーが開発した自前の「建物ツール」も活用している。
これは建物を自動生成するためのツールで,間取りの広さや建物の高さを自在に変更でき,それに合わせて窓の配置や屋根の形状も変わっていく。アーティストは,これをつなげて石造りのアパート建築が多いプラハの街を思いどおりに広げていき,あとは教会や広場,現代建築物といった各地域のランドマークを配置していくことで,スムーズにレベルデザインが行えたという。
また,リアルなテクスチャを実現するためにフォトグラメトリーも活用している。最近では多くのAAA級ゲームで採用されるようになっているので,今さら説明不要かもしれないが,これは部屋の内装や屋外はもちろん,小石の1つから森林,さらには役者までを3Dスキャンで取り込み,そのままテクスチャ化してしまうというものだ。
Sharkmobもプラハに取材班を送り込み,街に数千体もあるという石像から,食肉処理施設に吊り下げられた豚までを撮影した。さらに社内にもキャラクター用の3Dスキャナーを作り上げ,自前でキャラクターモデルのスキャニングを行っている。
面白いのは,その過程で一部のキャラクターを3Dプリンターで出力し,その等身大フィギュアにゲーム中そのままのトレーナーや皮ジャケットを着せることによって,自然なボディラインやしわなどを綺麗に表現していることだ。コルテス氏によると役者を雇うよりも安上がりで,より正確に表現できるらしい。
また,モーションキャプチャーのスタジオも自前だが,表情までは取り込む技術が無かったため,iPhoneの「My Face」を利用するなど,使えるものは何でも使うという姿勢が感じられる。3Dスキャナーや3Dプリンターといった専用設備はそれなりの出費であり,Tencentという親会社がいたからこそできたことかもしれないが,未来への投資という意味では今後の財産にもなっていくだろう。
現在,Sharkmobはロンドンにも支部を設立し,メンバーもすでに340人まで増強されている。当面は「Vampire: The Masquerade - Bloodhunt」の開発と運営を中心にしつつ,複数のプロジェクトを手掛けられる体制になりつつあるという。ハイクオリティなFree-to-Playゲームを探している人は,本作をプレイしてみるのもいいだろう。
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