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  • セガ
  • 発売日:2021/06/01
  • 価格:ゲーム本編&DLCパック:3300円(税込)
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バーチャファイター復活から1年,格闘ゲーム界はどうなった? 「Virtua Fighter esports」青木盛治氏×「鉄拳」原田勝弘氏による対談再び
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印刷2022/09/02 17:00

インタビュー

バーチャファイター復活から1年,格闘ゲーム界はどうなった? 「Virtua Fighter esports」青木盛治氏×「鉄拳」原田勝弘氏による対談再び

 「Virtua Fighter esports」PS4 / ARCADE)の配信から1年以上が経過し,かつてのバーチャ勢が復帰しただけでなく,若い世代のプレイヤーも台頭してきた。
 4Gamerでは同作のリリースに先がけて,チーフプロデューサーを務める青木盛治氏(セガ)と,「鉄拳」シリーズのチーフプロデューサーである原田勝弘氏(バンダイナムコスタジオ)による対談企画を実施した。そしてこのたび,バーチャが2年目を迎えたタイミングで再び両氏にお話しいただく機会を得た

※インタビュー収録は6月下旬に行いました

(左から)セガ 青木盛治氏,バンダイナムコスタジオ 原田勝弘氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / バーチャファイター復活から1年,格闘ゲーム界はどうなった? 「Virtua Fighter esports」青木盛治氏×「鉄拳」原田勝弘氏による対談再び

 2022年6月1日にリリースされたバーチャと鉄拳のコラボによる歴史的なDLCの開発秘話(関連記事),コロナ禍におけるコミュニティへの対応,格闘ゲーム界のこれからなど,業界のキーマンならではの興味深い話題が飛び出した対談をお届けしよう。

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 鉄拳シリーズのプロデューサー・原田勝弘氏による対談企画「原田が斬る!」の第8回をお届けする。今回の対談相手は「Virtua Fighter esports」のチーフプロデューサーを務める,セガの青木盛治氏だ。11年の沈黙を破って登場したシリーズ最新作について,じっくり訊いてみた。

[2021/07/07 10:00]

「Virtua Fighter esports」公式サイト

「鉄拳7」公式サイト



バーチャ×鉄拳コラボDLC開発の背景とは


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。「Virtua Fighter esports」の配信からおよそ1年が経ちました。

原田勝弘氏(以下,原田氏):
 そういえば,昨年は7月に対談が載っているんですよね。あの時は「Virtua Fighter esports」の配信直後でしたか。

4Gamer:
 はい。さっそく「鉄拳7」とのコラボDLCについて,実現に至った経緯を教えていただけますか。

青木氏:
 構想自体は昨年の秋にスタートしました。「次のDLCをどうしようか」と思っている時に原田さんの顔が浮かんで,「鉄拳」コラボを打診してみたんです。その後は開発も急ピッチで進み,おかげさまでいいものができました。


4Gamer:
 コラボDLCの開発自体はスムーズに進んだのでしょうか。

原田氏:
 最初に長い打ち合わせを2回したくらいで,あとは結構スムーズでしたよ。こうしたコラボは,お互いの組織文化が影響するもので,片方の意向が強すぎると大変だったりしますけどね。
 今回の場合,組織文化も似ていますし,作品の方向性が共にフォトリアルの3D格闘だったのでそれが良かったんでしょう。

 セガさんからどんなものが出てくるか,スタッフ一同,楽しみにしていましたね。新しいコスチュームが出てくるたびに「違和感がない」って(笑)。開発のスピードにもビックリしていました。

青木氏:
 開発スタッフも提供していただいた鉄拳のデータを理解するのが早くて,毎週のように監修をお願いするペースで進められました。

原田氏:
 いいものを早く作るのは難しいですよ,本当。時間を使えればクオリティは上がりますけど,その分,お金もかかるわけです。今回のコラボでは,セガさんの優秀さがあらためて分かりました。ウチだと,もうちょっとかかっちゃうでしょうね。

4Gamer:
 開発は「鉄拳7」のデータを参考にしたんですね。

青木氏:
 はい。お借りしたデータが,バーチャファイターのデータとそう違わない作りになっていたので,たいへんスムーズに進められました。

原田氏:
 もともと3D格闘同士だし,セガさんが作るものもクオリティが高いから相性がいいんですよ。根幹は同じなんだなと,あらためて実感しました。ただ,初めて見たときは違和感がなさすぎて,「これはコラボになってるのか?」って(笑)。
 ウルフのアーマーキングコスチュームなんて,マスクを被っているのでアーマーキング本人がバーチャに出ているようにしか見えない。サラのニーナコスチュームも技に違和感がない。

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 ある程度の違和感があるからこそ,コラボっぽくなるというところがありますから,舜帝のレイコスチュームは面白かったですね。レイなのにヒゲが生えていて「コラボって,これだよ!」って(笑)。

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青木氏:
 先日の大会(「Virtua Fighter esports CHALLENGE CUP SEASON_1 【1st】FINAL」)でも,コラボコスチューム同士の試合がありましたが,違和感がなさすぎて,鉄拳の大会をやっているような雰囲気でしたし,優勝した選手もコラボコスチュームでした(笑)。使っていただけてありがたいですね。

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 2022年6月18日,セガの対戦格闘ゲーム「Virtua Fighter esports」の公式大会「Virtua Fighter esports CHALLENGE CUP SEASON_1 【1st】FINAL」がセガサミーグループ本社9F「TUNNEL TOKYO」にて開催された。本稿では大会の結果と上位選手へのインタビューをお伝えする。

[2022/06/20 20:25]

4Gamer:
 どのバーチャキャラクターに,鉄拳から誰のコスチュームを割り当てるかはどのように決まったのでしょう。

青木氏:
 そこはセガ側から提案させていただきました。

原田氏:
 多少の変更はありましたが,ほとんどセガさんの提案通りですね。最初,「鉄拳3」のローポリゴンを再現する案もありましたが,今の時代にそれをやっても,クオリティが低いとしか見てもらえないんです(笑)。

青木氏:
 バーチャチームにも鉄拳に詳しいスタッフがいますので,絶妙にハマっているものから,少し遊びのあるものまで,いろいろな組み合わせを提案することができました。
 ただ,UIだけは構造上,鉄拳とデータを共有することが難しく,素材をいただいたうえでデザイナーが目コピで作っています。見た目やアニメーションを同じにしたつもりですが,どうしても違ってしまうところはありますね。

4Gamer:
 どのあたりがそうなんですか。

青木氏:
 体力ゲージが斜めになっている部分の幅とかですね。バーチャの体力ゲージは直角で四角い形ですが,鉄拳は始点と終点が斜めになった平行四辺形になっています。おそらく,鉄拳も内部的なデータは直角になっていて,これをマスクで斜めにしてると思うんですね。
 ただ,バーチャ側でマスクする幅が鉄拳と同じにはできなくて,斜めになっている部分の幅が少し長くなっています。

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原田氏:
 でも,色の再現度がすごく高いんですよ。UIに関してはどこも苦労していますし,ルールも違います。
 例えば「ライフバーとキャラクターが重なったときに,どちらを上にするのか」とか,各社のルールとノウハウがあるところですから,データを渡したらすぐになんとかなるものではない。こういう地味なところほど苦労するんですよね(笑)。

4Gamer:
 コラボの話を進めるにあたっては,両社の温度感に差はありましたか。

原田氏:
 両社というか,僕と青木さんの間では「やろうよ,やろうよ」といったノリでしたが,バンダイナムコエンターテインメント側はかなりの大ごとだと捉えていましたね。「鉄拳では何もしないのに,天下のバーチャにだけコラボさせてしまうのか!?」とか「お互いにキャラクターを出し合ったり,もっと大きなことをやりましょう!」とか,いろいろな思いがあったようです。

 ただ,「Virtua Fighter esports」が盛り上がっている今を外して,2〜3年かけて大がかりなコラボというのはちょっと違う。それより,早くコラボをやってもっと盛り上がってもらう。大きなコラボはそのあとで将来的にできるなら,それがいいんじゃないかと。

青木氏:
 目一杯のことをやりたくなる気持ちは分かるのですが,そうすると時間がかかってタイミングを逃し,話が立ち消えになってしまうかもしれない。まずは適度な規模でコラボの実績を作ってから……と,段階的に進めるほうがいいだろうということですね。

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4Gamer:
 3D格闘ゲームの2大巨頭によるコラボですし,確かに大きなものを期待したくはなります。

原田氏:
 バーチャと鉄拳の関係性は,単にライバルというだけではないんです。鉄拳の開発スタッフにはバーチャに憧れとリスペクトを持ちつつ,ライバル心も燃やしていた者もいるので,どうしても色めき立ってしまうんです。
 ゲーム以外の業界ともコラボしてきて分かったことですが,IPには格があり,これがコラボにとって重要なんです。

4Gamer:
 格のバランスが取れていないと,コラボがうまくいかないのでしょうか。

原田氏:
 片方が有名なIP,もう片方がニッチなIPの場合,客層が違いすぎている面白さがありますし,お互いが全くフォローできていない客層へアプローチできることがメリットになります。
 バーチャと鉄拳のようにIPの性質が似ていると,格が問題になってきますね。もし,20年前にバーチャと鉄拳がコラボすると言ったら,格が違いすぎてファンが許さないわけです。「なんで鉄拳の分際で,バーチャに乗っかってきてるんだ!」くらいの反応が出てもおかしくなかった。

4Gamer:
 IPの格は誰が決めるのでしょう?

原田氏:
 エンターテインメントの場合はお客さんです。ただ,今回に関しては「今やらないとコラボができなくなってしまうんじゃないか」という気持ちのほうが大きかった。なんと言っても,ドリームキャストの時代にコラボの機会を逃しているわけですから。

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想定外の反響,成功しすぎても怒られる理由


4Gamer:
 「Virtua Fighter esports」のリリースから1年が経過しました。想定通りに進んだところと,そうでないところがあったと思います。

青木氏:
 ダウンロード数は想定以上のものがありました。フリープレイの期間がまだ半分残っている時点で,目標の倍となる数字を叩き出していましたから。

原田氏:
 同業者はダウンロード数を予想していたと思いますが,僕も含めてみんな外してましたからね。これほどの好評になるとは,セガさんも考えていなかったはずですよ。役員の皆さんが,青木さんにいろいろと言いに来たくらいですから(笑)。

青木氏:
 当初はセガ設立60周年を記念し,eスポーツタイトルとしてバーチャの名前が挙がった……くらいの空気感でしたし,収益もあまり期待されていないプロジェクトでした。それが蓋を開けてみると大きな反響を呼んだので,一斉に色めき立ったんです(笑)。
 当初はDLCを配信する予定もなかったんですけど,“運営タイトル”的な動きをするために定期的な配信をすることになりましたし。

原田氏:
 もし僕がセガの経営陣で,ここまでの反響が事前に読めていたら,PCも含めて展開していたでしょうね。皆さんのご家庭にバーチャを送り込む……みたいな使い方もあったんじゃないかと。

青木氏:
 事前に読めないのが,エンタメコンテンツの面白さですよ。満を持して大作を出したのにうまくいかなかったなんて,普通にあるわけですから。

原田氏:
 そうですね。世の中のニーズって,分かっているようでいて全然分かっていないところがあります。

青木氏:
 11年も休眠していたIPではありますが,市場からは求められていた。これだけ愛されているのに,よく放っておいたなって(笑)。

原田氏:
 影響力のあるベテランストリーマーさんが「若い頃,バーチャにハマってたんだよ」という感じで取り上げてくれて,そこから視聴者にも広がっていったんですよね。……これは下世話な話なんですが,社内における青木さんの評価は上がったんですか。

青木氏:
 「よくやったな」という評価と合わせて,「もっとやってくれ」という要望もありましたね。その要望を叶えるためにいろいろと考えました。

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原田氏:
 精一杯,頑張ったところをスタート地点にされて,さらにハードルを上げられる。会社の不思議ですよね(笑)。

青木氏:
 目標が未達だと怒られるし,達成し過ぎても怒られる(笑)。

原田氏:
 どっちにしろ,同じように怒られるんですよ。途中でゴールを変えられるみたいなもので,おかしいですよね(笑)。
 ただ,会社の言い分も分かる。実績が目標を上回りすぎている状況は,株主の目に「この会社は適切な業績予想もできないのか」と映っているわけですから。そうならないようにゴールを変えるし,ハードルも上げる。
 だから,社員側は業績達成率を120%あたりに抑えておいて期末に数字を伸ばすようにすると,怒られないどころか「諦めずによく頑張った!」という評価になったりする(笑)。

青木氏:
 「Virtua Fighter esports」の場合,リリースしたばかりの6〜7月はすごく評価されました。そこからDLCをリリースしていくたびに,「もっと目標を超えられないか」と言われるようになりました。
 そして,1年が過ぎた頃には「最初はあんなに勢いがあったのに」って。褒められたのは本当に一瞬だけですよ(笑)。


ジャンルの盛り上がりを外の世界へ伝える,オフライン大会の重要性


原田氏:
 「Virtua Fighter esports」のダウンロード数は良かったわけですから,これからいくらでもやりようはありますよ(笑)。逆に想定外だったことは何かありましたか。

青木氏:
 eスポーツとしての大会展開ですね。コミュニティから自然発生する大会が欧米で開かれるかと思いましたが,想定していたほどではなかったようで。日本での盛り上がりはあるので,欧米でもう少し勢いが付けばいいなと思っています。

原田氏:
 ゲームの内容というより,マーケティングの話でしょうね。バーチャは長らく動きがなかったので,現地のコミュニティがいざ大会を開こうとしても,セガさんへのパイプがない。どうサポートを受けていいのか,分からなかったんじゃないでしょうか。弊社やカプコンさんの現役タイトルなら,コミュニティは現地の担当者を知っていますから,相談もしやすいわけです。

青木氏:
 日本主導の形で,世界的なeスポーツ展開ができればいいんですけどね。そうしたワールドワイド大会の構想もないわけではないですが。

原田氏:
 ただ,賞金が高額になってくるなら,日本が主導しないほうが良かったりするんですよね。

青木氏:
 欧米の格闘コミュニティでは今でもオフライン大会が主流ですから,オンラインで実施する大会には慣れていないのかもしれません。

原田氏:
 コロナ禍もあって,海外でも以前よりはオンライン大会に慣れてきているところはあるでしょう。けれど,日本のように回線状況が良いわけではないので,オンラインの方はどうしてもオプショナルなものになってしまう。また,オンライン大会には替え玉参加といった不正の問題もありますし,何よりオフラインでワイワイ騒ぐほうが楽しい。まだまだ課題は多いと思います。

4Gamer:
 オンラインで実施できる環境が整ってきたからといって,オフライン大会が重要でなくなるというわけではないと。

原田氏:
 ええ,オンラインの場合,いくら盛り上がったとしてもその界隈に留まってしまい,外の世界へ波及する効果が薄い。いわゆる“タコツボ現象”という問題があります。
 その点,オフライン大会を開催すると,ジャンルや界隈に関心がない人も,ブースの盛り上がりを見て興味を持ってくれたりします。例えばラスベガスでの大会にしても,期間中はホテルの周囲に約1万人の格闘ゲーマーが集結しますが,その盛り上がりを見て,格闘ゲームとは関係のない会社がスポンサードを決めてくれたりもする。

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4Gamer:
 オフラインの大会は,より多くの人の目に触れる機会になるということですね。

原田氏:
 タコツボ現象はゲームに限った話ではありません。先日行われたボクシングの世界バンタム級王座統一戦(井上尚弥選手対ノニト・ドネア選手)もAmazon Primeは盛況だったようですが,小学生や,普段ボクシングを見ない層にはまったく届かないわけです。
 ほかの界隈について知る機会が損なわれてしまうぶん,イベントがオンライン開催のみになるのはあまり良いことではないと思います。

青木氏:
 かつては,ゲームセンターがタコツボの外の世界に盛り上がりを伝える場になっていましたね。お目当てのゲームを求めてお店に行くと,そこで盛り上がっている別のゲームに興味を持って,試しにコインを入れてみるという流れがありました。

原田氏:
 コロナ禍がなければ,「Virtua Fighter esports」の大会ももっと自由に開かれていたのかもしれない。そう考えると惜しいですよ。

4Gamer:
 最近の「Virtua Fighter esports」大会では,選手をオフライン会場に集めましたが,無観客開催となりました。

原田氏:
 選手の中には「無観客のほうが集中できる」という人もいるでしょう。観客を意識するあまり,見せ場を作ろうとして番狂わせが起きることもありますし,逆に観客のプレッシャーがあるからこそ力を発揮する選手もいる。スポーツと同じで,こうした危うさがあるから面白いんです。その点,セガさんはかなりしっかりとした大会を開かれてますね。

青木氏:
 先日の大会は無観客開催でしたが,会場ではスタッフを含めて100人前後が観戦していますね。

原田氏:
 ほかのメーカーの人は,中継を見て驚いたんじゃないですか。昔からそうした部分をしっかりを考えている,メディアの発信力がある会社だと思います。前回の「格ゲー連合会」(日本格ゲーメーカー連合会)もセガさんのスタジオを使っていますが,見事な番組を作っていただいて。今後のハードルが上がっちゃったなと(笑)。

【初公開】「日本格ゲーメーカー連合会」のイラストにアキラとサラが登場

 国内の格闘ゲームメーカーからキーマンが集うトーク番組「日本格ゲーメーカー連合会」。各タイトルのキャラクターが集合したイラストは,カプコンのデザイナーたみお氏が手がけている。

青木氏:
 元々,このイラストにはバーチャファイターのキャラクターは含まれていませんでしたが,「日本格ゲーメーカー連合会」の第3回から参加させていただいたこともあり,ストリートファイターの中山ディレクターと松本プロデューサーに相談して,アキラとサラを追加してもらいました。違和感の無さとクオリティに脱帽です!

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4Gamer:
 「Virtua Fighter esports」の大会にはU-22部門がありますが,反響はどうでしたか。

青木氏:
 フリー部門と比べてエントリー数は少ないですが,若いプレイヤーが入ってくることでコミュニティ全体が盛り上がっています。上の世代が新しい人にいろいろ教えたりして,フォローしてくれているのはありがたいですね。ゲームセンター文化を引き継いでいるところもあるんじゃないでしょうか。

原田氏:
 U-22部門のレギュレーションに対する反応はどんな感じでしたか。「上の世代には勝てないから,別枠があると安心する」のか,「一緒にしてくれても構わない」なのか。

青木氏:
 「U-22にも出るけど,フリー部門でベテランにも勝ちたい」という反応が多いようです。実際,フリー部門の優勝と準優勝はどちらも20代後半の選手で,ゆっくりと世代交代が行われている印象ですね(関連記事)。

原田氏:
 とはいえ,本当の格闘技と違ってベテラン世代もそこまで衰えていませんよね。格闘ゲームは反射神経だけでなく,駆け引きが大事ですし。筋肉が衰えても,脳が元気なら戦える。

青木氏:
 完全新作であれば全員イーブンの状態からスタートすることになりますが,「Virtua Fighter esports」の場合は過去作の経験がアドバンテージになっていますね。

原田氏:
 そういえば,配信直後のバーチャコミュニティは面白かったですよ。久々に復帰した人が当時と違っているコンボを見て,驚いたりしていました。

青木氏:
 「バーチャファイター5 ファイナルショーダウン」とは一切パラメータを変えていないのですが,「ここが変わってるんじゃないのか」という声はありました。その人が引退した後にも,いろいろと研究やアップデートが行われていたということですね。
 復帰勢は予想以上に多かったようで,「Virtua Fighter esports」をきっかけに,昔の知り合いとまた連絡を取るようになったという話も聞きます。

4Gamer:
 逆にバーチャをまったく知らない若い世代には,かなり新鮮に映っているようです。今の格闘ゲームと比べて,これだけハイペースに接近戦でやり合うのは珍しいんでしょうね。

青木氏:
 開幕直後のやりとりで,体力ゲージが半分になったりしますしね。

原田氏:
 ノルウェーの視聴者がリングアウトを見たときに,すごく驚いてたのが印象的でした。「リングアウト!? ドラゴンボールみたいだ!」って(笑)。

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青木氏:
 もし今から格闘ゲームを作るなら,リングアウトの要素は導入しないかもしれません(笑)。

原田氏:
 実は「鉄拳4」と「鉄拳5」を作る前に,欧米のプレイヤーを対象に大規模なリサーチをしたことがあるんですよ。そこでバーチャに対して出た不満の1つが「体力で勝っているのに,リングアウトで負ける」でした。こうした意見がけっこう多かったんです。

4Gamer:
 そのリサーチはどういった目的で行ったのですか。

原田氏:
 このジャンルで勝ち残るために, 競合他社の客観的評価は常に行っていたんです。この時の調査は,リングアウトを導入するか否かを判断するためでもありました。日本には相撲があるので,日本人の感覚だとリングアウトのルールも納得しやすいんですが,海外ではそうではないようです。柔道の場合も,先に肩から落ちた側が「死に体」となって負けていたものが,海外の感覚では「落ちた後に転がって,上になれば勝ちなんじゃないの?」ということでルール変更がありましたし。

青木氏:
 観戦する側としてはリングアウトになるかならないか,ギリギリの攻防や大逆転が楽しいんですけどね。


コロナ禍で加速した時代の流れと格闘ゲーム業界


4Gamer:
 コロナ禍の先行きは未だ不透明ですが,格闘ゲームのeスポーツ展開や大会はどのようになっていくと考えていますか。

原田氏:
 オンライン予選で大会開催のハードル自体は下がりましたが,まだ困難は多いですよ。国をまたいで試合するのは回線事情から現実的ではないし,海外から選手を招くのもコロナはもちろん,戦争の影響で航空機の運賃が高騰して難しくなった。

 また,格闘ゲームに限らず,ここ数年でスポンサーがeスポーツへの出資を休止しているという事情もあります。チームならまだしも,個人プレイヤーへの影響が大きくて。我々としては,オンラインとオフラインのハイブリッド開催で盛り上げたいところなんですが。

4Gamer:
 かつてのような世界規模のイベントやツアーの復活には,まだ時間がかかるということですね。

原田氏:
 日本国内に目を向けてみても,格闘ゲームに興味を持ってもらう,人と競い合う入り口として,ゲームセンターが機能していないところは厳しいですね。ゲームセンターの盛り上がりを見て,自分もプレイしたくなって,先輩たちがいろいろと教えてくれる。コミュニティが自然に成長していくという流れがありましたが,今はそうじゃない。確かに動画を見て練習するという手はありますが,リアルタイムのマンツーマンレッスンが無料であったゲームセンター文化にはかないません。

青木氏:
 「Virtua Fighter esports」もアーケード版をサービスしていますが,数年前と比べると,やはりゲームセンターに来店するのをためらわれているお客様もいらっしゃると思います。人が集まれる場があり,そこでは何が起こるか分からないワクワクがある。格闘ゲーム業界にとって,いろいろな意味でメリットが大きかったんです。

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原田氏:
 コロナ禍と戦争,とくに戦争が僕らエンターテイメント業界にここまで大きな影響を及ぼすとは思っていませんでした。ビデオカードは足りなくなり,外注さんと連絡が取れなくなったりしています。格闘ゲーム界にとって,ここ数年は誤算続きで,失ったものは非常に大きいです。

青木氏:
 ただ,もしコロナ禍がなかったとしても,10年後くらいには今と同じ状況になっていたように思いますね。

原田氏:
 そうですね。コロナ禍で世界が変化したというより,時代の流れが一気に加速しただけなんじゃないかな。

青木氏:
 ただ,その加速はすごく大きいものでした。

原田氏:
 あまりに速すぎて,我々メーカーの準備が追いつかなかった面もあります。リアルの場で興味を持っていただく機会がどんどん失われている。これに加えて,先ほど話したコミュニティの“タコツボ化”をどうするか,という課題も解決しなければなりませんし。

青木氏:
 オフライン環境がなくなることはないにしても,以前のようなオフライン主導の形に戻すのは難しいでしょう。オンライン上でユーザーをいかに獲得して,コミュニティを形成するかが命題になると思います。どちらにしろ,頭が痛いですよ。

原田氏:
 「昔の形に戻したい」というのが間違いですよね。これまでとまったく違うアイデアが必要になると思います。
 13歳〜14歳くらいの年齢層の子供たちが熱狂的に支持し,その後すぐに卒業するようなYouTuberやTikTokerが存在していますが,どのメーカーも彼らを追えていません。趣味のジャンルだけでなく,年齢層でも“タコツボ化”が進むなか,すべての人に熱を伝えるためにはどうすればいいのか。昔はTVだったわけですが,今は違いますしね。

 ゲーム業界の場合,「Nintendo Direct」はかなりうまくやっているほうだとは思いますね。ただ,それでも「自分の気になるところだけ見て終わり」という人もいますからね。

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4Gamer:
 既存のコミュニティを育てていく手法はいかがでしょう。

原田氏:
 各メーカーが掲げるメタバース構想には,コミュニティを育てるという側面があると思いますが,もし今すぐ必要なものがあるとすれば, 流行(はや)り言葉としてのメタバースではなく, 「リアルで人を集められないからこその仮想空間」なのではないでしょうか。
 コロナ禍になって,意外と自分の居場所がないことに気づいた人も多いです。我々としては,コミュニティの個人個人のニーズをしっかり認識して,本来ゲームセンターがあれば出会えたであろう人たちを,ちゃんとつなげてあげることが大事になるでしょうね。

4Gamer:
 そうなると,各メーカーはメタバース上のユーザーを取り合うライバルになるのでしょうか。

原田氏:
 僕らの界隈で,他社さんのゲームに「コケてくれ」なんて思っている人間はいません。成長中のIPが失敗すると,ジャンル自体がしぼんでしまうので,ライバルも売れてくれたほうが絶対にいい。ゲームセンターにしても,あるジャンルが流行するとフロアがその系統で一杯になり,特定のジャンルがコケるとその面積をUFOキャッチャーに全部持っていかれるという現象がありました。

青木氏:
 ゲームセンターを盛り上げるためには,各社がいつもと違うこともやって,市場を広げてほしい。なければ先細りしていくだけですからね。
 セガだと「艦これアーケード」や「Fate/Grand Order Arcade」は,ゲーセンにあまり行かなかった層の集客ができているタイトルです。普段,PCやスマホで遊んでいる人がゲームセンターに来られて,そこでほかのゲームも遊んでくださるわけですから。

原田氏:
 そういう意味でも,例えば今なら日本の格ゲーメーカーはみんな,カプコンさんを応援していますよ。「ストリートファイター6,絶対売れてくれ!」って(笑)。
 そういえば「ストリートファイター6」の自動実況システムが発表されたとき,バーチャがTwitterのトレンドに入ってましたよね(笑)。セガさんが新しいことをやると,5〜6年後にマジョリティになる感じがありますよ

※「バーチャファイター5」(2006年稼働開始)には,解説:斎藤 淳氏,実況:深見成秀氏による自動実況機能が搭載されていた

青木氏:
 アキラのセリフ通り,セガは「10年早いんだよ!」なんて言われますけど,今は世間のスピードも速くなっているので,その10年が短くなっている感覚があります。そろそろ,ちょうどいい感じになっていくんじゃないでしょうか(笑)。

原田氏:
 テクノロジードリブンな会社なんだと,あらためて思いました。だからこそカッコイイ,でも逆にそうだからこそ早すぎた取り組みも多かった。

4Gamer:
 早すぎるからこそ,セガらしいというのはありますね。

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バーチャと鉄拳,新作はどうなる?

GaaS時代で変化した新作への意識


4Gamer:
 「Virtua Fighter esports」が予想以上の結果だったのであれば,新作の話が気になるところです。昨年のインタビューでは,「Virtua Fighter esports」を軌道に乗せたうえで新作の可能性があるかもしれない,ということでした。

原田氏:
 そうですよ。この機会を逃したら,真のバーチャ復活はないんじゃないかと思います。経営者の方には「バーチャというゲームを後世に残すためには,今が決断すべき時期ですよ!」と言いたいです。僕がセガ社員じゃないから,言えることですけど(笑)。
 バーチャはゲームのことをあまり知らない人を巻き込み,第2の「スペースインベーダー」に近いムーブメントを起こしたんですから。

青木氏:
 先ほどもお話したとおり,「Virtua Fighter esports」は反響が大きく,次の段階を検討しやすくなってはいます。

原田氏:
 もしかすると「バーチャファイター」という名前でなくてもいいのかもしれませんね。

青木氏:
 そうかもしれません。いろいろな可能性がありますが,「Virtua Fighter esports」をリリースする前と比べて,IPの捉え方も変わってきていますね。

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4Gamer:
 それは楽しみです。
 一方,「鉄拳」シリーズはいかがでしょう。「鉄拳7」の登場からは8年経っています。

原田氏:
 ……そろそろやらなきゃいけないなとは思っています(笑)。

4Gamer:
 ただ,8年経っているとはいえ,「鉄拳7」のワールドツアーも展開されていますし,早急に新作が必要な状況ではないのかな……とも思っています。


原田氏:
 かつてはゲームが出てから2年も経つと,新作を考えていましたが,今は「GaaS」(Games as a Service。継続的にアップデートを続ける,運営型タイトル)の時代です。3年経っても,1年目と変わらないペースで売れてくれます。
 1年目で開発費をリクープし,2年目以降はちょっとした維持費がかかるだけできちんと利益を生んでくれるわけです。

青木氏:
 開発費がかからなくなっていくので,年を追うごとに利益が大きくなっていきますからね。

原田氏:
 新作を作るとコケるかもしれないけれど,旧作を継続すればノーリスクで利益が上がっていく。経営者の視点からすると「新作は待て!」という判断もあるでしょうね。
 ただ,作り手としては,そろそろ新しいものを作りたくてウズウズしています。このままだと,新作より先に定年を迎えてしまいそうなので。「鉄拳5」の頃には「定年するまでに『鉄拳17』くらいまで作れるのかな」なんて思っていましたが(笑)。

4Gamer:
 以前とは新作に対する意識が変わっているんですね。
 それでは,原田さんがこれからの「Virtua Fighter esports」に期待していることを教えてください。

原田氏:
 海外での大会サポート体制を強化してほしいですね。そこに力を入れていただければ,僕らも一緒にできるところがあるかもしれない。EVOのような多数のメーカーが一緒にやっている形が望ましいですね。

青木氏:
 ……実は,EVOのオファーはありましたが,今回はお断りしているんです。

原田氏:
 え,何で!?

青木氏:
 新作の予定もない,新しい発表もない。手ぶらの状態で出ても……ということで。

原田氏:
 いやいや,手ぶらでも出るべきですよ! 一緒に手ぶらで出て,「何も発表がないのかよ!」とバッシングされる経験をしましょう(笑)。僕も「原田が来てるから,何か発表があるはず」だと勘ぐられるから,気軽に大会を見に行けないんです。

青木氏:
 出展すると,どうしても新作の話になるでしょうし,そこで曖昧な話しかできないなら出ないほうがいいだろうと思いました。ですから,もしEVOに出ることがあれば,手ぶらでないと思っていただいていいですよ。

4Gamer:
 大きな会場のステージに青木さんの姿があることを期待しています。お二人とも,本日はどうもありがとうございました。

「Virtua Fighter esports」公式サイト

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