プレイレポート
“ローグヴァニア”として生まれ変わった月風魔伝の手触りは? アーリーアクセスが始まった「GetsuFumaDen: Undying Moon」を先行プレイ
「月風魔伝」のファンという独立系開発スタジオ・ぐるぐると,その熱意を受けたKONAMIが制作を進めているという本作のPC向けアーリーアクセスが,本日(2021年5月14日)Steamにて始まった。アーリーアクセス開始前に先行してプレイできたので,実に34年ぶりとなる「月風魔伝」の新作が,果たしてどのように“ローグヴァニア”として生まれ変わったのかを紹介したい。
なお,今回プレイしたデモ版はアーリーアクセス開始前のデータのため,現在配信されているものとはバージョンが異なる場合がある。変更された箇所もあるかもしれないので,その点はあらかじめご了承いただきたい。
「GetsuFumaDen: Undying Moon」公式サイト
ローグヴァニアとして新生した月風魔伝の世界
まずは本作の世界観や物語を紹介しよう。物語の舞台は,一千年ぶりに復活を遂げた「龍骨鬼」と,その影響で活性化した地獄からあふれ出す魑魅魍魎によって浸食されつつある世界。地獄には封がされており,それを監視し続けてきたのが月氏一族だったが,封が解かれた以上はその異変の理由を調べ,元凶を断つのが月氏の務め。第27代月氏当主「月風魔」は,地獄での過酷な戦いに身を投じる。
「月風魔伝」のおどろおどろしい世界観は日本画風のタッチで表現されており,数々の妖怪たちが月風魔の敵として立ちはだかる。「輪入道」や「大百足」といった著名な日本妖怪が多数登場し,「餓鬼」や「三つ目首」などは原作ファンなら懐かしさを感じるデザインとなっており,思わずニヤリとすることだろう。
本作の注目すべきポイントは,やはり“ローグヴァニア2Dアクション”というジャンルだろう。
探索型2Dアクションの1ジャンルとして“メトロイドヴァニア”という呼称が存在するが,ローグヴァニアは,そこにランダム性を加えたものだ。基本的には「プレイヤースキルの成長」と「知識の蓄積」を元に進めていくゲームジャンルで,昨今の作品では「Dead Cells」(PC / PS4 / Nintendo Switch / Xbox One)がその代表作だろう。
何度も倒され,その度にやり直すことが前提のゲームシステムで,ステージや敵の配置は挑むたびに変化していく。倒れるとそれまでに得た強さはリセットされてしまうが,繰り返し挑戦していくことで,わずかではあるが次回に引き継げるものも出てくる……といったローグヴァニアの要素が,「月風魔伝」の新作として上手く落とし込まれているのだ。
凶悪な妖怪たちを次々と斬り倒していく月風魔のアクションは,シンプル操作ながら動きは多彩だ。基本動作は攻撃,ジャンプ,ローリングによる回避の3つ。攻撃は,刀や戦傘,槍などの固有アクションをもったメイン武器で戦う「主武器攻撃」と,弓矢や撒菱(まきびし)などの“サブウェポン”を使う「副装備攻撃」という2種類があり,ジャンプは最初から2段ジャンプが可能。ローリング回避は狭い通路をくぐり抜ける際にも使用する。
アクションの特徴となるのが「刹那システム」だ。カウンター技の「閃」,敵の体勢をくずした状態「崩」からの一撃必殺攻撃である「殺」といったいくつかの技があり,それらの技は攻撃ボタンを押すタイミングや武器種によって異なる。プレイヤー自身の得意な武器種によって戦い方も変化するだろう。
こちらに気付いていない敵の背後から連続攻撃を決めると発生する「誅」。「崩」と同様に,さらに攻撃を当てると「殺」になる |
岩小僧という硬い敵に手甲による格闘攻撃を当てていると,敵が「壊」という状態に。詳細は不明だが,敵ごとに効果的な武器が設定されているかもしれない |
ダメージを受けずに連続して敵を倒し続けることで月風魔は「鬼人化」し,攻撃力や移動速度,アイテムドロップ率などさまざまな能力がアップする。鬼人化状態を継続できれば,さらに強化段階が上昇していく。
敵からの攻撃を受けるか,一定時間敵にダメージを与えないでいると解除されるので,鬼人化した際は多くのリターンが得られるよう,よりアグレッシブに,より上手く立ち回ろう。
敵との戦いは,主武器と副装備を状況に応じて使い分けることで有利に進められる。スタート時には,決して性能が良いとは言えない武器を持っての出撃となるが,ステージ途中に配置されている宝箱や敵からのドロップで新たな武器が入手できるので,強い武器を手に入れたら持ち替えよう。主武器と副装備はそれぞれ2つまで所持でき,主武器はどちらかに切り替える形で使い,副装備は別のボタンに割り振られているものを適宜使用できる。
また,敵を倒したり,宝箱を開けたりした際,アイテムやお金のほかに「魂」が出現することがある。この「魂」を吸収することで,画面下部のインジケーターが左から順に溜まっていき,プレイヤーの任意で武器や生命力(HP)などをパワーアップできる。後述する拠点での強化要素と合わせて月風魔を強化し,強敵たちが待つ地獄の奥へと進んでいこう。
難度は……歯応えアリ!
魑魅魍魎を相手に戦って感じたのは,かなりの高難度であるということ。月風魔の最大HPの初期値は1000だが,ボスや強敵相手だと一撃で300のダメージをくらうなんてのもよくあることで,ザコ敵相手で250のダメージをくらったり,流れ矢に当たっただけで100も削られたりすることもあった。ボスや強敵と戦うためにはなるべくダメージを受けず,回復薬を温存しておきたいところだが,その道中もなかなか気が抜けない。
そんな過酷な戦いを生き抜くうえで感じたのが,副装備の重要性だ。クールタイムはあるが,主武器ではできない手段で攻撃できるのが強みとなっていた。とくに弓と銃は遠くから大ダメージを与えられるため,安全に,かつノーダメージで敵を倒せる。威力が高く,連射もきくため,ボス戦で一気に連射すると,侮れないダメージソースとなるのだ。
主武器で攻撃するということは敵に近付くということでもあり,それはダメージを受ける可能性を上げる行為でもある。連続してダメージを与えられるが,油断していると雑魚敵相手でさえアッサリと倒されてしまう。気持ち的には副武器だけを使って遠くから攻撃したいくらいだが,クールタイムの都合上そうもいかない。「攻撃を受けないよう,敵の行動パターンを読んで回避」という,アクションゲームの基礎ともいえる動きを確実にこなしていくことが重要となるのだ。
なお,ステージの道中やボス戦で倒されてしまうと,ステージ中で得た武器や素材,お金などはロストし,拠点となる「月氏の館」へと戻される。とはいえ,落ち込んではいられない。何度も繰り返しステージに挑戦してアイテムを集め,やられずに月氏の館に戻ることができれば,それらアイテムを素材として「武器鋳造と技能解放」や「鍛錬」「秘伝」などを行い,武器や月風魔自身を強化できるのだ。
「武器鋳造と技能解放」は,新たな武器のドロップや,既存の武器に秘められた性能などを開放できる。開放状況は拠点に戻されても維持されるため,それらの項目を多く開放していくことで,高難度のステージをクリアできる確率が上がっていくだろう。
「鍛錬」と「秘伝」は,月風魔自身の能力を底上げできる。生命力の最大値を上げたり,回復薬の持てる数を増やせたりと,ステージ攻略に直結する強化が行えるため,最優先で選びたいところだ。こちらの強化も,敵にやられて拠点に戻されたとしても維持される。
「武器鋳造」には設計図,「技能解放」には,敵がドロップする各種素材が一定数必要になる。「技能解放」でアンロックした要素は後述する「活性化」を行わないと効果を発揮しないので要注意 | |
「鍛錬」や「秘伝」で新たな能力を開放するには,緑色と黄色の勾玉アイコンで表示される「精体鉱」が一定数必要になる。新たな項目は,まれに手に入る「鍛錬書」「秘伝書」によって開放されていく |
月氏の館でのパワーアップの素材となるアイテムを集めても,そのステージでやられてしまえばそれらはロストしてしまう。苦労した結果(と時間)が無駄になってしまわないよう,素材集めは慎重に行わなければならない。そんな素材集めで役に立てたいのが,ステージ間のインターバルエリアとなる「月氏の野営」だ。次のステージに進むか,それとも探索を切り上げて帰還するかを選択できるので,十分な素材が集まったら無理せず引き上げよう。
また,月氏の野営では,「活性化」という武器の強化も実行できる。これは「技能解放」で開放した強化要素を実行するもので,イメージとしては「技能解放」が武器に宿るスキルツリーの開放,「活性化」は所持している武器の強化したい項目にポイントを振り,それを有効化するといった感じだ。
ここまでの説明を受けて「なんだか難しそう……」と感じる人もいるかもしれないが,ステージ1は問題なくクリアできるようになるだろう。地形は毎回ランダムに変化するとはいえ,だいたいの構造が分かってくるし,ステージ1はボスも含め,敵の攻撃パターンも比較的シンプルだからだ。
かくいう筆者も,最初のころはステージ1のボス戦までをクリアできるのは10回挑戦して1〜2回くらいだったが,それ以降は確実にステージ1をクリアできるようになった。
……しかし,ここからが大変だった。ステージ1をクリアしたからといって拠点から直接ステージ2へ行けるようになるわけではなく,ステージ2に行くには毎回ステージ1をクリアする必要があるのだ。つまり,その度にステージ1のノーダメージ攻略にも挑まなければならないわけである。回復薬の所持数が多ければ進みやすくなるが,初期値が2と少なく,所持数を増やすためには精体鉱を集める必要があり,それのための周回プレイが求められる。
この,ステージ1から続けての攻略があるため,ステージ2以降の難度は一気に上がる印象だ。ステージ2のボス戦まではわりと安定して行けるようになったものの,結局ステージ2のボス「大百足」には勝てなかったのだ。
ステージ1の龍骨鬼と比べると体力が多いのか,削りにくく,攻撃パターンの把握も難しくなっているので,どうしてもダメージをくらう機会が多い。もっとステージ1を周回して地道に強化していかないと,先のステージ攻略は難しいということなのだろう。「武器鋳造と技能解放」と「活性化」で武器を強化すると,目に見えて敵を倒しやすくなったので,ステージ2のボス以降に挑むには,かなりの周回が必要となりそうだ。
アーリーアクセスながら高い完成度。難度は高めだが,正式リリースまでの進化に期待できる作品
何度も何度も倒れることにはなるが,「なんか次はいけそうな気がする……」という,くすぐり加減が良くできていて,中毒性は高い。とくに攻撃力が高いレアな武器を手に入れたときは,「この武器を活性化したら,今度こそ未踏のステージまでいけちゃうのでは……」という期待が湧いてきて,テンションが高まる。
ただ,気になる点や「これは厳しいな……」と感じた部分がなかったわけではない。まず,敵からの被ダメージ量の高さを考えると,ゲーム開始時の回復薬の初期所持数は2個と少なく,1つの回復量も大きくない点だ。
そのため,前述のとおりステージの道中は“1つのステージをノーダメージで進められるようになるまで根気強く挑む”必要性が高くなるわけだが,ステージのボスに安定して勝てるようになるまでそれを幾度となく繰り返さなければならない部分は,少々ハードルが高いように感じる。
そのハードルを少しでも下げるための,月風魔や武器の強化要素なわけだが,各項目の強化に必要なアイテム数が多いため,1つの項目をとってもかなり根気強く周回に挑まなければならない。
「ボスの動きを把握して,被ダメージを少なく進行できるようになるには時間がかかりそうなので,強化要素のほうをコツコツと開放していこう」と思っても,強化によってゲームがラクになるまでにもかなりの時間がかかるため,こういった周回プレイに慣れているプレイヤーでも根負けしてしまうかもしれない。
序盤から全体の半ばほどのステージまでは,もう少しサクサク進めさせてくれてもいいのでは……と感じなくもない。
また,敵からのドロップや,宝箱を開けたときに手に入る各種素材は,入手時にアイテム名が表示されない。そのため,どの敵がどのアイテムを落とすかが分かりにくく,自分がよく使う武器を効率よく強化したいと思っても,現状は難しく感じた。“妖怪図鑑”みたいな一覧があると助かるのだが……。
と,いろいろ物申してはいるが,アーリーアクセスの配信後にネット上で効率の良い強化方法やボスの行動パターンといった情報も共有されれば,このあたりは多少は解消されるかもしれない。なにより正式リリースは2022年とまだまだ先。これから作り上げられていくゲームと考えると,「ベースとなる部分はほぼ出来上がっているのでは?」と感じたほどの完成度であることは伝えておきたい。
筆者は今回プレイしてみて,あらためてアーリーアクセス開始後に即購入することを決めた。アーリーアクセス版の特典である「デジタルアートブック」や「オリジナルminiサウンドトラック」,そして「FC版月風魔伝」が見逃せないというのもあるが,なにより“実際にプレイして面白かった”という点で本作への期待が高まったことが大きい。
敵ごとに効果的な武器が設定されているようにも感じられるし,もしかすると,ボスによって効果的な主武器や副装備があるのかもしれない……といった,アーリーアクセス版でしっかりと確認したい部分も多い。
「月風魔伝」を現代にリブートすることを考えたときに,ローグヴァニアというジャンルを選んだのは正解だと思う。決して易しくはない難度や,プレイヤースキルが問われるボス戦,お金を集めてショップで買い物といった,「月風魔伝」に元からあるゲーム性が,ローグヴァニアというジャンルに見事にフィットしているのだ。
できれば,もう少しお手柔らかに……と願いつつ,正式リリースに向けて進化していくであろう本作の今後を見届けたい。
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