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「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
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印刷2021/04/19 12:00

インタビュー

「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

画像集#002のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
 フリューから,2021年6月24日にリリースされる学園ジュブナイルRPG「Caligula2」PS4 / Switch)。本作は,前作「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」PS4 / Switch。以下,「Caligula Overdose」)からストーリーやキャラクターを一新した,「Caligula」シリーズの最新作だ。

 新たな舞台となる仮想世界「リドゥ」は,「あのとき,ああしていれば……」という,人生をやり直したい気持ちを実現できる,後悔のない世界。この世界が偽りだと気づいてしまった主人公達は“帰宅部”を結成し,現実世界に帰るための探索を始める。

 本作の開発を担当したのは,PlayStation Vitaで発売されたシリーズ第1作「Caligula -カリギュラ-」(以下,「Caligula」)に新しいストーリーやシステムなどを加え,PlayStation 4とNintendo Switchに移植した「Caligula Overdose」を手がけたヒストリアだ。

 4Gamerでは今回,本作のディレクターを務めるヒストリアの佐々木 瞬氏,メインプログラマーの馬場俊行氏,メインプランナーの久保浩子氏に加え,プロデューサーで企画やシナリオを手がける山中拓也氏に,ゲームのシステム面に関する話を聞いた。

左から,山中拓也氏,佐々木 瞬氏,馬場俊行氏,久保浩子氏
画像集#001のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

「Caligula2」公式サイト



「Caligula」は現代の日常感の中で展開する物語


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 ヒストリアは前作「Caligula Overdose」の開発も手がけていますが,まず今回の開発ではどこが大きく変わったのか教えてください。

画像集#003のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
佐々木 瞬氏(以下,佐々木氏):
 前作は「Caligula」の移植がベースにあったので,あまり内容を変えられない,またモデルなどは流用しないと間に合わないという事情がありました。それらを踏まえて,何をどのように盛れるか工夫してクオリティを上げていきました。
 今回は本当にゼロから作ったので,現行世代ゲーム機に合わせたモデルの制作ができましたし,システムについても,どうすればプレイヤーを楽しませられるかということを最初から考えて設計できました。

4Gamer:
 「Caligula」の開発はアクリアが行っていますが,これを移植してさらに手を加えるのはやはり難しかったのでしょうか。

佐々木氏:
 「Caligula」は複雑なゲームなので,データ量も膨大です。前作は移植部分を保ったまま,大幅にシナリオやシステムの追加をしていたので,整合性を取ることに非常に苦労しました。
 それと同時に,山中さんから「Caligula2」の構想を聞いていたので,次につながる開発環境の構築とシステム的な挑戦を目指そうと思い,それが前作のアップデートで実装した「オートバトル」など,いくつかのゲームデザインにも反映されています。

4Gamer:
 「Caligula2」を開発するにあたってのコンセプトや目標は,どのようなものでしたか。

佐々木氏:
 ご存じのとおり,タイトルとしてのコンセプトは「現代病理をテーマにして,ボカロPによる楽曲があって……」というもので,山中さんが掲げたものです。そのほかに,デザインの参考にするためのアートスタイルをいただきました。

画像集#004のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
山中拓也氏(以下,山中氏):
 今回はネオンライトをデザインのキーにしているんですが,そういったアートのイメージを渡して,「これをベースにデザインを展開してほしい」というお話をしたんです。

佐々木氏:
 一方,開発面では「Caligula」はもともとヒストリアが作ったものではないので,まずシリーズとして守らなければならないものは何かについて考えました。そこでテーマとして掲げたのが「日常感」です。「Caligula」シリーズが描いているのは,日常がベースだからこそ,現実にありそうな悩みであり,その中で展開する物語を大事にしようと。

4Gamer:
 それがマップのデザインなどにも反映されているんですね。

佐々木氏:
 そうですね。今回は,こちらから山中さんにステージのデザインをいくつか提案させてもらったりもしています。

山中氏:
 ヒストリアさんから,これはという見栄えのあるデザインを挙げていただき,作成中のシナリオを踏まえて採用させてもらいました。


プレイヤーの理想どおりの「ボカロ空間」を実現するバトル


4Gamer:
 それでは,本作のバトルで目指したことを教えてください。

佐々木氏:
 バトルに関しては,かなりの部分を任せてもらいました。とくに考えていたのは,せっかく多数のボカロ曲を採用しているんだから,バトルを「ボカロ空間」にしたいということです。音同期でグルーヴ感を出したり,PVを使った演出を採り入れたりして,ボカロPVの中で遊んでいるかのような体験を提供するというのが,バトルのコンセプトです。

4Gamer:
 バトル中のPVには歌詞が流れる演出もありますよね。

山中氏:
 前作の頃から「リリック(歌詞)を流したい」というアイデアがあり,今回それを実現できることになったので,映像制作チーム・OTOIROにお願いして,本物のPVのような映像を作っていただきました。それがバトルの演出とうまくハマったので,かなり見栄えが良くなったと思います。

画像集#005のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
久保浩子氏(以下,久保氏):
 ほかにもバトルでは,モーションがパワーアップして,前作よりもアクロバティックな表現になっています。例えば,日本刀を持った切子というキャラクターなら,1回転しながら斬りつけたりと,バトル班にはオートバトルにしたときに見ていて飽きないようなモーションを作ってもらいました。

佐々木氏:
 前作では,1回のコマンド入力時に,1キャラにつき3回分の行動を決定していましたが,それだと入力時間が長いので,それぞれ1回行動にしたんです。そうしてみたら,1つ1つのアクションにもっと見栄えが欲しくなり,それを久保に伝えたところ,1人1人のアクションがアクロバティックになって,それぞれの見せ場ができました。

久保氏:
 各キャラクターの個性を出せるよう,がんばりました。

山中氏:
 僕はすべての物事がキャラクター優先なので,設定の際に「このキャラにはこの武器」とガチッと決めてしまうんです。例えば,小鳩というキャラクターの武器はモーニングスターなんですが,これはその武器でないといけない理由が設定にあります。その鉄球をバトルにどう活かすかは後回しなので,久保さん達にはかなり苦労をかけてしまいました。キャラを考える際は「近接武器と遠距離武器の数を合わせる」みたいなことも考えないので,バトルのバランス調整も難しかったんじゃないかと。

久保氏:
 とくに大変だったのは,鐘太が使う刺股(さすまた)ですね。ほかの長物だと,薙刀なら斬撃,槍なら突きとなりますが,刺股は「さあ,どうしようか」と。一般的なゲームに刺股を武器にしたものはないですし,ほかに参考にできるような映像もなかったので(笑)。

画像集#006のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか
馬場俊行氏(以下,馬場氏):
 「刺股の技って,何だろうね」と(笑)。

山中氏:
 それでも鐘太は刺股でないと駄目なんです。先が尖ってちゃいけない(笑)。刺股のイメージから相手を足止めする技を持たせて,「見た目はがっしりして強そうだけど,実際は搦め手を使ってくる」みたいに,最終的にそのキャラクターらしさを出すことができたので良かったです。

4Gamer:
 では,バトルのシステム面についても教えてください。先ほどコマンド入力の話も少し出ていましたが。

馬場氏:
 前作から引き続き,未来を予測してコンボをつなげる「イマジナリィチェイン」を使うという前提で,より遊びやすく,分かりやすくするにはどうすればいいのか,議論を重ねています。例えば「普通のコマンドバトルにしてはどうか」という案もありましたが,それは「Caligula」らしくないという理由で不採用になりました。

佐々木氏:
 最初に考えていたのは,前作までの良さを踏襲したいということでした。しかし,そうは言っても,一度に選択するコマンドの数が多すぎるので,ここは何とかしたいと。

4Gamer:
 確かに従来のままだと,最初はどうやってバトルを組み立てていけばいいのか分かりませんからね。

山中氏:
 1作めの「Caligula」は,僕の好みで調整しましたからね。コアゲーマー向けで,とっつきにくくなっています。そこがフリューの「もっとプレイヤー層を広げたい」という方針とマッチしなかったので,前作の「Caligula Overdose」ではもっとライト層に向けたバトルにしようと,ヒストリアさんにお力を借りたんです。

佐々木氏:
 ただ前作は,少しライト層に寄せすぎたかなと。そのぶん,今回はうまくいったんじゃないかと自負しています。

山中氏:
 僕が作ったときは難しすぎて怒られ,ヒストリアさんが調整したときはライト向けになりすぎた。実際の「Caligula」ファンは,その中間にいたわけです。両方を作ったことで落としどころが見えたので,「Caligula2」にはそれが生かされています。

佐々木氏:
 適度に歯応えがありつつ,シミュレーションゲームのようにガッツリやる必要はない。未来を逐一予測しながら戦ってもいいし,オートバトルでアクロバティックなモーションを楽しんでもいい。その両方のバランスを実現することが目標でした。

画像集#007のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

4Gamer:
 オートバトルは,どのような方針で調整したのでしょう。あまり優秀だと,プレイヤーが考えなくても勝ててしまいますが。

佐々木氏:
 通常バトルはオートで,ボスバトルはマニュアルで操作するというバランスを意識しています。

山中氏:
 最初はオートバトルが優秀すぎるくらいだったので,もっと個性が欲しいと考えました。そこで,オートバトルの行動方針のデフォルト設定を,キャラクター各自が得意とする行動を行う「個性」というものにしています。これは,その行動がバトルにおいて有利になるかどうかはいったん後回しにして,「このキャラクターなら,バトル中はこう動くよね」というものを優先したモードです。

佐々木氏:
 行動方針は3タイプあって,「個性」のほかに攻撃重視の「積極」と,防御重視の「消極」があります。ただオートバトルは優秀ですが,やはり限界があるので,コンボを狙っていくならマニュアルで操作したほうがいいですね。

4Gamer:
 そのほかに,バトルでこだわった部分はありますか。

佐々木氏:
 バトルに抑揚を付けること,とくに攻めるタイミングをハッキリさせることを意識しました。もともとのストーリーが,リグレットとキィという2人の歌姫の対決という話ですから,それをどうやってバトルに落とし込むか,かなり議論しています。

山中氏:
 僕からは「歌で陣地の取り合いをする」というイメージが欲しいとお話をさせていただきました。キィとリグレット,どっちが主導権を握るかという体験を味わえるように。

馬場氏:
 そこで,バトル中に何かのタイミングでキィが歌って,場を支配できるようにすればいいのではという話になり,実際にどういう仕様に落とし込むか,プレイヤーのメリットは何かといったことを考えていきました。それが,バトル中にボルテージがMAXになると,キィが歌ってプレイヤー側が有利に戦えるようになる「フロアージャック」という要素です。

佐々木氏:
 通常,バトル中は常にリグレットの歌が流れていますが,キィがマイクを奪うことで味方がパワーアップするようにして,「今が攻めどき」というのを分かりやすくしたわけです。またフロアージャックは,敵が大技を出そうとしたときのリスク回避に使うこともできます。

画像集#008のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

山中氏:
 キィが歌える曲は,ボスを倒すごとに1曲ずつ増えていきます。そうやって相手の曲を自分のものにしていく感覚と,ストーリーの進行,世界観の変化がリンクしているので,面白い体験になっていると思いますよ。

佐々木氏:
 どの楽曲も個性的で,キィが歌う曲によってプレイヤー側が受ける効果も変わります。人によって好みの曲がばらけてくると思うので,選択の幅が生まれるように調整しました。やっぱりバトルは,自分の“好き”だらけで遊んでほしいですから。

馬場氏:
 そのぶん,現場への要求はどんどん増えていきましたね。「バトル中にPVを流したい」に始まり,「バトル中に歌えるキィの曲を増やしたい」「キィが歌うならバトル中の背景も変えたい」といった具合にエスカレートして……。

佐々木氏:
 「音同期が欲しい」もその1つです。

山中氏:
 それ言ったの,僕じゃないですよ(笑)。

佐々木氏:
 僕が以前,リズムゲームを作ったことがあるので「音が入るなら同期するでしょ」と。フロアの演出と楽曲を同期させると,画面全体から来るグルーヴ感が……って,何か軽薄な音楽プロデューサーみたいな話になってますが(笑)。

山中氏:
 ゲーム開発は会社ごとに秘伝のタレのようなものがあって,他社が作ったゲームを移植する場合,リバースエンジニアリングにすごくコストがかかるんです。その意味で,前作はヒストリアさんがフルスペックを発揮できたタイトルではなかったので,今回はバトルの調整などの舵取りをお任せしています。


「Caligula」らしさと何か,さまざまな要素を再検証


4Gamer:
 バトル以外にも,「Caligula」シリーズには特徴的なシステムがたくさんありますよね。

馬場氏:
 そうですね。その中から「何が欠けたら『Caligula』でなくなるのか」を,最初に要素を分解して検証しました。そして,主人公達とNPCの関係を示す「因果系譜」や,ゲーム内のメッセンジャーアプリ「WIRE」は絶対に必要だろうと。バトルについても同じで,要素を分解して再構築しています。

佐々木氏:
 結果的に,これまでにあった大きな特徴はどれも外せないということになりました。山中さんの「モブの1人1人にも人生がある」というこだわりを強く感じていたので,帰宅部を中心に,あの世界に生きている人達を語ることが不可欠だったんです。

久保氏:
 例えば因果系譜から派生する「トラウマクエスト」も,今回はさらに深掘りしています。前作「Caligula Overdose」では1人の悩みを解決したら終わりでしたが,本作では連続したシナリオを通じてグループの悩みを解決していく「グループクエスト」というものを用意して,因果系譜のつながりを意識できるようになりました。

画像集#009のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

馬場氏:
 またWIREは前作同様,NPCとの関係の進行度に合わせて相手に質問ができるのですが,今回はゲーム内で見つけた話題を送ることができます。そうした話題の中には,特定のキャラクターにしか送れないものもあるなど,前作以上に深みのある内容になっています。

佐々木氏:
 ゲーム内で手に入る話題は,一種のコレクション要素ですね。「その人を知る」ことができるものがアイテムの形になっているのは,すごく「Caligula」シリーズらしいところだと思います。

4Gamer:
 今回はより遊びやすく,より濃密に人間関係を描いていると。

佐々木氏:
 ほかのゲームよりも,シナリオとシステムをどう絡めるかについて,いろいろと考えさせられましたね。

山中氏:
 「RPGとしての最適解をたどっていけば完成するゲームではない」という僕の感覚を,ヒストリアさん的にも慣れるまで大変だったと思うんですよ。こうしたほうが現代的だという部分でも,あえてそうじゃないまま残しておかないと「Caligula」らしさが損なわれてしまうときがある。最初はヒストリアさんも「何でだろう?」と思っていたんじゃないかな。

佐々木氏:
 そうですね。でも「Caligula2」を開発する中で理解できたという感覚が自分の中にあります。

山中氏:
 例えば,キャラクターの話はメインシナリオに組み込まれていたほうが没入感が出るので,絶対にそのほうがいいんです。でも「Caligula」シリーズでは,メインシナリオとキャラクターの話を切り離していて,そこの体験は導線としてつながっていません。

4Gamer:
 キャラクターの内面の話に踏み込んでもいいし,踏み込まなくてもいいという部分ですね。

山中氏:
 ええ。それは,そのキャラクターに興味を持った人だけが踏み込めばいいと考えているからです。たいていの人がキャラシナリオを遊ぶのだから,つなげてしまえばいいというのが合理的な考えなんですが,それを自分で選択するという儀式に意味がある。そこはこだわりを持ってやっているので,ゲームとしては歪(いびつ)なものになっています。

佐々木氏:
 前作の開発中に「なるほど」と思ったのが,「踏み込む/踏み込まない」を選択させるときのUIでした。システム的には「はい/いいえ」だけで済むところを,専用画面を作って選択の重みを演出してプレイヤーに体験させる。それはまさにシナリオとシステムを融合させた,「Caligula」らしい部分です。それで今回も,その選択シーンのUIは「踏み込む感じが弱い」と土壇場で作り直すことになりました。

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馬場氏:
 もともとそのUIはコスト度外視でやるつもりだったので,最初からデザイナーにも制限をかけずに作ってもらっていたんです。ただ,そこからさらにリテイクが来るとは思っていませんでした(笑)。

山中氏:
 先日,Nintendo Directで公開した映像を仮組みしているときに,僕が「やっぱり変えてほしい」と言ったんですよね。

佐々木氏:
 山中さんと私の間で「これ,変えたほうがいいと思うんだけど」「でもこのタイミングでやる?」というやり取りがあって,山中さん自身も迷っていましたよね。ただそれでも,私も「変えたほうがいい」と思えたのは,その重要性を共有できていたからです。最終的に,PVの撮影に間に合わせるために3日で作り直してもらいました。

山中氏:
 これは,前作から一緒にシリーズに関わってきたヒストリアさんだからこそ通った話だと思います。ほかの開発会社だったら,「時間がないから無理」と断られていました。


新要素「フィールドトーク」でシナリオと探索を地続きに


4Gamer:
 ほかにも,「Caligula2」のシステム面におけるこだわりはありますか。

山中氏:
 僕からぜひにとリクエストしたのが,「スティグマ」の新しい仕様です。前作同様,スティグマにはスキルが付いているんですが,今回はスティグマを装備してバトルを続けているとキャラクターがそのスキルを習得し,スキル単体で装着できる仕組みになりました。僕のお気に入りの要素です。

4Gamer:
 つまりスキル習熟度のような概念があって,それがMAXになると,そのスティグマを装備しなくてもスキルを発動できるようになると。

山中氏:
 そのとおりです。これのおかげで,「このスキルを習得したら,次はこのスティグマを使ってみよう」といった具合に,さまざまなスティグマを装備するメリットが生まれました。設定上,スティグマは「ほかの誰かの心残り」ですから,長く付けているとその人の気持ちが自分の中に定着していくという,すごく「Caligula」らしい仕様に仕上がったと思います。

佐々木氏:
 習得したスキルは,1キャラクターにつき最大6つ装着できますよ。

画像集#016のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

山中氏:
 スキルの一覧に「心意気」「努力家」みたいな文字があると,「自分の切子は,こういう性格なのか」といった妄想がふくらみますよね。強くするのもいいですが,そんなごっこ遊びに使ってほしいです。

4Gamer:
 では,デザイン面やそのほかのこだわりはどうでしょう。

佐々木氏:
 冒頭で少し触れましたが,今回は山中さんからリクエストのあったネオンをモチーフに,「Caligula」らしさと現代的なUIを組み合わせたものにしようと考えました。まず,メインメニューのデザインから始めたんですが,ネオンからこぼれた光でぼんやりと影が落ちるような,少し立体感を持たせた,半透明の表現をふんだんに使っています。

4Gamer:
 なるほど。

佐々木氏:
 また,今回の帰宅部は地下鉄を拠点にしており,電車でダンジョン間を移動するのですが,その行き先を決めるUIをみんなで見て,次に行く場所を決めているような画にしたかったんです。そこで,3Dモデルのパーティメンバーが路線図を見て相談しているような構図を作り,2Dと3Dの表現が融合したUIになりました。

画像集#015のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

久保氏:
 帰宅部の部員同士の仲間感を表現する要素としては,新しく「フィールドトーク」も追加しています。前作「Caligula Overdose」でもキャラクター達がWIREの機能を使ってダンジョン探索中に会話をしていたんですが,今回はさらにパワーアップしています。ダンジョン探索中,常に誰かがしゃべっていて,個人的にはお化け屋敷での会話がお気に入りです。

山中氏:
 フィールドトークはギリギリまで書いていましたね。通常,イベントとダンジョン探索では「ここは探索,こっちはイベント」といった具合に,体験として差が生まれてしまうんですが,そこにフィールドトークを入れたことで「ゲームっぽいウソ」感が減ったというか,滑らかな流れになっています。

佐々木氏:
 最初にシナリオをもらったとき,それがあまりにも長かったのでゲームとのバランスを心配していたんです。でもフィールドトークがあることで,「みんなで世界を探索しながら目的を果たす」という感覚が生まれ,ダンジョン探索やイベントがそれぞれバラバラの体験ではなく,1本のシナリオ体験として地続きになったわけです。

4Gamer:
 馬場さんからは,いかかですか。

馬場氏:
 本作ではメインプログラムのほかにレベルデザインも担当しているのですが,前作ではダンジョンのギミックがなく単調だったので,今回は飽きさせない仕掛けをたくさん用意しました。例えば,段差をジャンプで飛び越えたり,警備員に見つからないように移動したりといったギミックを,難しくなりすぎない範囲で入れています。

4Gamer:
 前作と比較して,フィールドの立体感や空気感が増したように思うのですが。

馬場氏:
 そうですね。前作が平坦な印象だったので,今回は立体感を意識しました。階段を使って行き来したり,1階から2階が見えたりといった部分がそれですね。テストプレイで,やり過ぎるとプレイヤーが迷ってしまうということが分かったので,いろいろと検証を重ねて,丁度いい仕上がりになったと思います。

佐々木氏:
 空気感に関してはアーティストと詰めていったんですが,本作では一からすべて作れたことが,やはり大きいです。空気感を上げるには,モデル1つ1つの作り方をそれに合わせていかなければなりませんので。その意味で,今回はやりたいことを自由にやれましたし,イベントの演出や必殺技のような見せ場にも,かなりこだわれました。

画像集#012のサムネイル/「Caligula2」開発者インタビューを掲載。“RPGの最適解”をたどるだけでは作れない独特の魅力は,いかにして生み出されたのか

久保氏:
 重要なシーンと必殺技に関しては,外部のベテランCGアニメーターの大橋聡雄さん率いるアクト・スリーさんと,綿密な打ち合わせをしながら制作するという新しいチャレンジもしています。

4Gamer:
 一部のイベント演出では,実写も使っていますね。

山中氏:
 そちらは,映像作家のイノウエマナさんとのお仕事です。イノウエさんは実写とイラストを組み合わせる手法を得意としていて,それが「Caligula」シリーズが持っている「夢の世界から見た現実の怖さ」を表現するのにぴったりということで制作をお願いしました。

4Gamer:
 「Caligula2」は細部までこだわりの詰まったタイトルになったということですね。
 最後に,本作に注目している人達に向けてメッセージをお願いします。

山中氏:
 前作から変わったもの,変わらないもの,いろいろありますが,チーム全体が「『Caligula』とは何か」というところから考えて作った続編です。僕らも楽しんで作りましたので,皆さんにも楽しんでいただければ幸いです。

馬場氏:
 前作で実現できなかったことを,後悔のないように作り切っています。ぜひ楽しみにしていてください。

久保氏:
 全体的に,システムが前作よりもバージョンアップしています。開発チーム全員,“オーバードーズ”状態で作り上げました。音楽,キャラクター,物語といずれも魅力的に仕上がっていますので,1つでも興味のある要素があれば,ぜひお手に取っていただきたいです。

佐々木氏:
 「Caligula」らしさを大事にしつつ,2人の歌姫の対決を,シナリオはもちろんのこと,バトルなどでも表現しています。また,音楽をテーマにしているからこその空間作りにも,すごくこだわりました。キャラクター性や音楽をシステムと絡めてどのように表現しているか,ぜひご確認ください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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