インタビュー
「ディアブロ II リザレクテッド」の開発者に独占インタビュー。テクニカルαテストの所感や成果,そして今後についても聞いてみた
インタビューのお相手は,ゲームデザイナーのアンドレ・アブラハミアン(Andre Abrahamian)氏と,ゲームプロデューサーのマシュー・セダーキスト (Matthew Cederquist)氏。どちらもBlizzard Entertainmentに入社して10年以上という,人の入れ替わりが激しい欧米ゲーム業界においてはベテランと呼べるコンビだ。また,それぞれが「ディアブロ II リザレクテッド」に開発当初から関わっている人物であることは,その発言からうかがえた。
アンドレ・アブラハミアン氏 |
マシュー・セダーキスト氏 |
「ディアブロ II リザレクテッド」のαテストをプレイ。オリジナル版の経験者がじっくりと見比べてみた
Blizzardの「ディアブロ II リザレクテッド」で,初のテクニカルαテストが4月上旬に実施された。20年前にアクションRPGというジャンルに新風をもたらした本作が,どのような形でリマスターされているのか。オリジナル版の経験者によるプレイレポートを本稿で紹介しよう。
高い評価を受けたテクニカルαテスト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。お二人とも,Blizzardで10年ほどの経験を積んでいらっしゃるそうですが,「ディアブロ II」という大作のリマスターを任されて,プレッシャーのようなものは感じましたか。
マシュー・セダーキスト (以下,セダーキスト)氏:
多くのゲーマーがそうであるように,私にとっての「ディアブロ」シリーズは,毎晩のように外が明るくなるまで遊び込んだ思い出深い作品です。それだけに,リマスターへの期待がどれほど高いかが分かりますし,プレッシャーも感じています。
アンドレ・アブラハミアン(以下,アブラハミアン)氏:
私もディアブロが大好きです。リマスター版の開発が決まったときは,オリジナルの資料を1つも見逃すまいと,倉庫の中で発掘に明け暮れていました。マシューと2人で床に座り,設定資料やアートワークのページをめくりながら,オリジナル開発チームがどのような思いでこのゲームを作っていたのかを思いめぐらせては,胸が一杯になりました。
4Gamer:
テクニカルαは私もプレイしました。ダンジョンの中でスタックしたのが1回だけ,あとテレポート時のロードに時間がかかっていたような印象でしたが,それ以外はスムーズに感じました。
アブラハミアン氏:
ありがとうございます。参加していただいたテスターからの評価も良かったので,満足しています。我々の最大の目的は「ディアブロ IIとしてファンに認められるかどうか」です。ゲームプレイだけでなく,グラフィックスもオリジナルの雰囲気を残すことにこだわりました。なので今回,多くの皆さんに賛同の声をいただき,我々も興奮しています。
ゲーム中に[G]キーを押すことで,当時の800x600のオリジナル版に瞬時に切り替わるフィーチャーも,喜んでもらえたのはうれしかったですね。
4Gamer:
フィードバックを受けて,変更するべきだと思うような点はありますか。
アブラハミアン氏:
グラフィックスが向上したぶん,ドロップしたアイテムのアイコンが判別し難くなっているという声を多くいただきました。このあたりは改良して,次回のテストにしっかりと反映させたいです。
セダーキスト氏:
今回参加していただいたテスターの中には,過去シリーズをプレイしたことがない若い世代の人もいました。彼らにも十分に納得してもらえるゲームにするという課題もありますね。
希代の名作のリマスタリングを支える「70:30」という内部ルール
4Gamer:
若い世代のゲーマーに受け入れてもらうには,やはりグラフィックスだけでなくシステム面のリマスターも必要なことかと思いますが,そのあたりは意識されましたか。
セダーキスト氏:
ええ,常に考えています。ただし,あまりにいろいろと変えてしまうとリマスターの域を外れてしまいます。
そこで我々は,「70:30」という1つのルールを設け,それを徹底しました。70%はノスタルジーに訴えかけるもの――つまりオリジナルの雰囲気を残す部分です。例えばゲームを起動すると「Blizzard North」という懐かしいロゴが出てきたり,キャラクター作成を押すと焚火を囲んで立つキャラクター達が出てきたりと,当時のプレイヤーであれば懐かしいと思えるはずです。
アブラハミアン氏:
そして,ノスタルジーの反対側にある30%が,我々が手を加えた部分です。7.1chに対応したオーディオであったり,ユーザーインタフェースの調整であったり,そのほか細かいQoL(※)であったりします。
また,アートワークにおいても「70%のノスタルジーと30%の新しいもの」というように当てはめられます。キャラクターのシルエットや色調はオリジナルのままにして,どうしても再現できない細かい部分は新しく追加する。このような具合で,さまざま試行錯誤を繰り返しているのです。
※Quality of Lifeの略。ゲーム開発においては,より快適にプレイを進めるための調整などを指して使われることがある
4Gamer:
アートアセットの中に再利用できるものはありましたか。
アブラハミアン氏:
正確に言うならば,アートアセットはほぼすべて新しいものです。オリジナル同様にタイルベースのテクスチャではありますが,やはり解像度が大きく異なるので,再現できない部分をAIを使うなりして復元しているのです。もちろん,オリジナルアセットにもファイルの大きいものがあり,第2章や第3章に多く登場する壁かけの絵画などは,1:1で利用できています。
また,キャラクターに関しては3Dモデルが存在しており,4K解像度に対応するためのリファレンスとして役立てることができました。ここで初めてファンの皆さんにお話しできることは,ゲームで重要な役割を担うティラエルの翼も3Dデータをリカバーでき,1:1で表現できているということです。彼と再会するのを楽しみにしていてほしいですね。
4Gamer:
オリジナルのキャラクターアニメーションは25fpsで固定されていたと思いますが,リザレクテッドではそれ以上のフレームレートで動作していました。
セダーキスト氏:
そこも30%の部分です。土台となるゲームエンジンは20年前のオリジナルをそのまま利用していますが,アートなりアニメーションなりオーディオなりと言った追加部分に関しても,オリジナルの雰囲気を最大限に残し,当時のゲームそのままの体験を快適に楽しめるよう,リマスタリングしています。
4Gamer:
そういえば,傭兵のインタフェースに,過去になかったレベルやスキルの情報が加えられていました。
アブラハミアン氏:
解像度が上がったことにより,スカスカになってしまったインタフェースをどのように埋めるかという問題から発想したことです。そうでなくても,もともと気に入らない能力だと雇い直したりして,面倒くさいと感じていたプレイヤーは多かったと思いますので,結果として傭兵のインタフェースは全体的に見直すことにしたんです。
4Gamer:
ダンジョンなどの狭いところでは,コンパニオンが引っかかって付いてこないような場面もありました。
セダーキスト氏:
ちょっとサンドイッチでも摘まみながら休憩しているのかな(笑)。傭兵のAIや動きについては,オリジナルのコードに手を加えていないので,重要なときに近くにいないというスリルを存分に楽しんでください(笑)。
4Gamer:
スキルの当たり判定などもオリジナルのままですか。
セダーキスト氏:
オリジナルエンジンのパスファインディングやヒットボックスなどはタッチしていないので,当たり判定などはそのままです。
DualSenseへの対応など,目新しさにも注目
4Gamer:
ポーションやジェムのスタック(1つのスロットに複数を重ねてアイテム整理すること)については,意見が分かれるところだろうと思いますが,いかがでしょうか。
アブラハミアン氏:
テスターだけでなく内部でもいろいろ話し合われている議題の1つです。ポーションのマネージメントもそうですが,ポーションの補充やアイテム整理のためにタウンポータルを使って町とダンジョンを往来するのは,ゲームプレイにおけるエッセンスの1つだと考えています。
また,ポーションのスタックが可能になるとゲームがより簡単になってしまう恐れもあります。そうなると,アクセシビリティのQoLを高めるのではなく,ゲームの本質を変えてしまうことになるので,現時点では検討していません。
我々が言うQoLとは,例えばより多くのアイテムを保有しておくためにミュール(荷ロバ/アイテム所有専用でアドベンチャーに利用しないプレイヤーキャラクター)を作り,スイッチを繰り返すような面倒くさいことをするくらいなら,最初から共有倉庫を作っておこうよ,という考え方です。ポーションスタックはその範囲外にあるということです。
4Gamer:
なるほど。共有倉庫に新しいタブを作るなどして拡充していく予定はありますか。
セダーキスト氏:
それも,今のところは十分足りていると考えています。
4Gamer:
コントローラへの対応も見事だったと思います。非常にスムーズに操作でき,相手の攻撃を避けやすくなったようにさえ感じました。
アブラハミアン氏:
コントローラにしっかりと対応させることは,我々の開発チームがこだわった部分です。ここをしっかり作り込んでおかないと,初めてディアブロ IIに触れる人が多くなるはずのコンシューマ機市場では,受け入れてもらえないと考えました。
4Gamer:
コントローラには,インベントリーの中のアイテムを自動ではめ込む「Auto-Sort」機能というのがあって便利でしたが,これはキーボードに対応しますか。
アブラハミアン氏:
もともとコントローラのプレイフィールをチェックしていく中で搭載した機能なのですが,コントローラを使ったテスターには好評だったようです。これをキーボードに実装することは難しくないので,より多くのファンの意見を汲み上げて考慮していきたいと思います。
4Gamer:
PS5版のコントローラであるDualSenseへの対応はいかがでしょうか。
セダーキスト氏:
もちろん対応する予定です。ディアブロでハプティック機能を味わうというのは非常に斬新に感じるはずで,PlayStation 5でプレイする人の反応が楽しみです。
4Gamer:
コンシューマ機版は60fps固定になるのでしょうか。
アブラハミアン氏:
はっきりした回答ではないですが,そこを目指しています。
4Gamer:
今後のテストについてもお話ししていただけますか。
アブラハミアン氏:
もう一度より大きな形で「マルチプレイβテスト」を行ってから,2021年のある時点で正式ローンチを迎えることになります。新しいラダーシステムを試してもらうかどうかなど,そういう細かい部分についてはまだ決まっていませんが,いずれお話しできる時が来るでしょう。まだ公式サイトでは,テストへの参加受付も継続して行っておりますので,前回のテストに参加できなかった人も,続報に期待してください。
4Gamer:
最後になりますが,クロスプレイとクロスプログレッションへの対応についても教えてください。
セダーキスト氏:
クロスプレイは,おそらくノーです。クロスプログレッションはイエスですね。PCとコンシューマ機間で進捗を共有できることには,我々も非常に興奮しています。
我々はベテランゲーマーに対しても,「ディアブロ」シリーズをプレイしたことがないゲーマーに対しても,しっかりとその意見に耳を傾けて,「ディアブロ II リザレクテッド」の開発にあたっています。ぜひ,日本のゲーマーの皆さんも思うことがあれば,我々に意見や質問を投げかけてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
インタビューでも触れられたように,2021年に正式リリースが予定されている「ディアブロ II リザレクテッド」は,今後もテストが開催される予定になっている。現在,αテストが進められているモバイルデバイス向けの「ディアブロ イモータル」,そして2021年以降のリリースとなるシリーズ続編の「ディアブロ IV」まで,ディアブロファンにとっては,大忙しの日々が訪れそうだ。
「ディアブロ II リザレクテッド」公式サイト
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