企画記事
「天穂のサクナヒメ」は稲作ゲーム……そんなふうに考えているあなたに伝えたい,アクションゲームとしての面白さ
今回のアニメ放送開始にあたっても,農林水産省とのコラボが行われ,坂本哲志農林水産大臣もメッセージを寄せるなど(外部リンク),“サクナヒメと言えば稲作”というイメージは完全に定着した感がある。
その影に隠れがちではあるが,「天穂のサクナヒメ」はアクションパートの面白さもかなりのものだ。初心者にもプレイしやすい操作方法を採用しつつ,格闘ゲームのような空中コンボや,「羽衣」を使った移動や攻撃など,爽快感あふれるものになっている。個人的にはぜひこちらにも注目してもらいたいのだ。
そこで本稿では,本作のアクションゲームとしての面白さをピックアップしよう。
「天穂のサクナヒメ」はこんなゲーム
今回はアクションパートの紹介が中心になるので,本作を未プレイの人向けに,舞台設定やゲームの概要を軽く紹介しておこう。
主人公のサクナヒメ(以下,サクナ)は,神の世界に住む豊穣の神様だが,両親の功績におんぶにだっこで働きもせず,性格にも難ありという,困った存在だ。
両親の功績に頼り切りのサクナは,それを心苦しく思うどころか,親友のココロワヒメ(ココロワ)に対して血筋でマウントを取る始末
ある日,いつものように宴会でしこたま飲んだサクナは,人間の世界から迷い込んできた田右衛門,ミルテ,きんた,ゆい,かいまるの5人に遭遇。5人を追い返そうとするサクナだが,てんやわんやの大騒ぎの末,主神に献上するための米を台無しにしてしまった。
神々の世界に迷い込んだ田右衛門,ミルテ,きんた,ゆい,かいまるの5人は米を生で貪り食らう。人間の世界は戦乱で荒れており,飢えた彼らにとっては,生米もご馳走なのだ
騒動の末に大事な米を吹っ飛ばしてしまい,平伏するサクナ
この失態からサクナは鬼が棲む「ヒノエ島」に島流しとなり,異変の原因を調査する羽目に。それぞれの事情を抱え,人間の世界に帰れない5人も行きがかり上同行することとなってしまった。
ぐうたらな豊穣神とワケありの人間たちが,鬼の棲む島でぎくしゃくとした共同生活を始める……というのが本作のプロローグだ。
ココロワは,サクナが追放された後,主神に重用されるようになった。友の不幸によって地位を手に入れたことに複雑な心境を抱えている
鬼が棲む島には当然ながら何もない。初の夕餉も「焦げた塊」だ
本作の物語では,前述した神と人間のドラマや,サクナの人格的成長が描かれる。話題となったリアルな稲作は,良い稲を育てることで豊穣神としてのサクナが強くなっていくシステムに関係しており,その稲作の成果が試されるのが,サクナが鬼と戦うアクションパートというわけだ。
最初はバラバラな一柱と5人だが,少しずつ身を寄せ合っていき,疑似家族のようになる。本拠地はサクナの両親が住んでいたことから,便宜上「我が家」と呼ばれるが,プレイを進めて行くうちに,それぞれにとっても我が家のようになっていく
ボタン連打だけで空中コンボが決まる
ではアクションの紹介に入ろう。サクナは「片手武器」「両手武器」を同時に装備でき,それぞれに割り当てられたボタンを押すことで攻撃を行う。片手武器は素早く振れるが一発の威力は低く,両手武器はその逆。いわゆる弱攻撃,強攻撃と考えていい。
弱い敵なら片手武器のボタンを連打するだけでも相手をボコボコにできるので,実に爽快。アナログスティックを倒しながら攻撃すれば,踏み込んだり,飛び上がったりと,その方向に応じた技が出る。
分かりやすいのが,上+片手武器だ。サクナが敵を空中に打ち上げ,そのまま自動でジャンプして敵をバシバシ殴った後に地面に叩きつける,という空中コンボが出てカッコイイ。対戦格闘ゲームだと,ジャンプキャンセルやら何やらと難しいテクニックが必要になることもあるが,本作ではボタンを連打するだけでOKだ。
デカい敵には武技で対抗
片手武器による空中コンボが基本だが,それだけで進めるほど本作は甘くない。「鹿鬼」「猪鬼」「豚鬼」といった中型や大型の敵は,片手武器で簡単に打ち上げたり,吹っ飛ばしたりすることはできない。要するに“デカいヤツは体重が重いから,そうそう体勢を崩さない”わけだ。
そこで必要になるのが両手武器,そして「武技」による攻撃だ。ただ,両手武器は振りが遅いため,慣れていない内は少々扱いが難しい。まずはゲーム序盤で手に入る武技「胴貫打ち」の扱いを覚えるのがいいだろう。
通常のアクションゲームなら,ここで「胴貫打ちの出し方は〜」といった説明が入るかもしれないが,本作の武技は操作方法が決まっていない。言葉を変えると「あらかじめ用意されている4種類の操作方法の枠に,任意の武技を割り当てる」形で使うのだ。「忙しい戦闘中に,4種の武技を使い分けるのは難しい」と感じる人なら,お気に入りの武技を複数の方向に割り振ってもいいだろう。
胴貫打ちは発動が早いので扱いやすく,重い敵でも簡単に吹っ飛ばすことができる。吹っ飛ばした敵がほかの敵にぶつかれば,そちらにもダメージが入るし,位置関係によっては多くの敵を巻き込むこともできる。
このように吹っ飛ばした敵を別の敵にぶつけるのを「衝突」といい,本作で特に爽快な要素となっている。両手武器攻撃や武技には衝突を起こしやすい技があり,これを使いこなせば多数の敵とも渡り合える。
胴貫打ちを覚えたら,細かいことは考えず,積極的に使ってみるといい。ビリヤードのように敵と敵がぶつかり合うのが気持ち良く,衝突とは何かが分かるはずだ。
胴貫打ちの後で手に入る「高波返し」も使いやすい武技だ。こちらも体勢を崩す力が強く,食らった敵は空中に浮く。浮いた相手はゆっくりと落ちてきて,追撃を入れ放題だ。状況にもよるが,無理矢理高波返しを当てて追撃を入れていく戦い方も,意外に有効だったりする。衝突を意識できればなおいいだろう。
「羽衣技」で縦横無尽
さらにゲームを進めると「羽衣」が手に入る。羽衣はロープのようなもので,壁や天井に当てるとサクナの身体が引き寄せられる。これを使ってステージを軽やかに移動できるようになると,ワイヤーアクションのようでとても爽快だ。
羽衣は戦闘でも役立つ。羽衣を伸ばして敵を掴んだら,ボタンから手を離してみよう。サクナは羽衣を使い,敵を中心にしてぐるりと回り込むはずだ。この行動自体ではダメージを与えられないが,回り込んでいる最中のサクナは無敵だし,ボタン1つで背後に回り込めるのは非常に楽だ。
本作のバトルでは登場する敵の数が多いので,左右から挟み撃ちされる状況が多くなる。そんなときは羽衣で包囲の外側,外側へと動いていこう。脱出したところで,胴貫打ちをはじめとした技で衝突を狙えば,沢山の敵を巻き込める。
羽衣で敵をつかんだ状態で,左スティックを上下左右に入れれば,その方向に割り振られた羽衣技が発動する。羽衣技の性質を理解・活用するうえでは,自分が体当たりする「飛衝槌」,敵を引き寄せる「引き繋ぎ」を使ってみるといいだろう。
特に飛衝槌はオススメの技だ。ゴムひものように羽衣を伸ばした後,一気に縮めてサクナが体当たりをするもので,食らった敵は後方へと吹っ飛び,衝突を引き起こす。大型を含む多くの敵を吹っ飛ばせるので,相手を選ばずに使えるのも嬉しい。回り込みと合わせて,戦闘中に羽衣技のボタンを押すことを意識していこう。慣れたら,体勢を崩した相手へ引き繋ぎを当ててみるといい。羽衣が敵を掴んだら,自分で設定した方向へ改めてアナログスティックを倒すのだ。
「技を使ったはずなのに出ない!」ときは……
本作に慣れないうちは,「武技や羽衣技を使ったはずなのに,なぜか何も起こらない」ということに遭遇するはず。
その理由はいくつかあるのだが,まずは「術力」不足。技の燃料のようなもので,緑のゲージで表示されており,サクナが武技や羽衣技を使うと減っていく。術力は時間で回復するので,その間は技以外の攻撃で切り抜けよう。
敵の状態が原因の場合もある。中型・大型の敵が片手武器攻撃ではなかなか浮かないのと同様に,一部の敵が相手の場合は,ある程度体勢を崩さないと効果を発揮しない羽衣技もある。
最後は入力が間に合っていないこと。敵をつかんだのに羽衣技が出ないときは大抵これらが原因で,分かっていれば羽衣技を理解するのも早いだろう。
技の組み合わせで,バトルがさらに楽しくなる
ここまで紹介してきた上+片手武器,胴貫打ち,高波返し,飛衝槌といった技は,単体でも十分に役立つが,慣れてきたらいくつもの技を組み合わせて連続技も狙ってみると,本作のアクションがより面白くなってくる。
例えば,前+片手武器の踏み込み攻撃からは,中立状態の片手武器攻撃がつながる。攻撃がつながるということは,相手の体勢を崩していけるということだ。
前述のように,豚鬼は片手武器だとなかなか体勢を崩せないが,片手武器から両手武器2回と繋げばその場に叩きつけられる。片手武器から両手武器2回,前+両手武器とすれば吹っ飛ばせるし,その後に追撃を入れることも可能だ。前+両手武器2回の直後に素早く羽衣を伸ばし,飛衝槌や風車,半円投を入れてみるのも面白い。
体勢を崩した敵に回り込みを仕掛けると,回り込みつつ敵を引き寄せる独特の挙動になる(引き寄せる,といっても引き繋ぎではないのに注意)。間合いを詰められるので,さらに技を入れやすい。
上+片手武器の空中連続技に組み込むと,空中回り込みの気持ち良さを味わえる。上+片手武器(相手が豚鬼などの場合は両手武器→上+片手武器など)で相手を浮かせ,そのまま片手武器2回の後,羽衣を伸ばして回り込みをすると,引き寄せた敵に追撃を加えられる。片手武器3回で締めてもいいし,片手武器2回から再び回り込み,片手武器3回と連続技を伸ばしてもいい。
吹っ飛ばしたり,地面に叩きつけた敵に引き繋ぎや飛衝槌などを仕掛けると,倒れたところを引き起こすような追撃が可能。これを覚えると連続技がより楽しくなる。
また,攻撃の後に前(または後ろ)2回で「速歩」が発動。事前の動作を中断(キャンセル)して踏み込み,素早い行動が可能となるため,通常ではつながらない技もつながるようになる。
以上の説明を読みながら「上+片手武器→片手武器2回→両手武器とか,同じような組み合わせの技ばかり出てくる」と思う人もいるだろう。このように技がつながる組み合わせは「コンボパーツ」などと呼ばれ,自分で連続技を考えるうえでの助けとなる。コンボパーツから自分だけの連続技を作ってみると,さらにアクションが楽しくなるはずだ。
「弾き」で達人気分
攻撃を受けたとき,サクナがたまに光ったり,身を逸らしたりして何故かダメージを受けない,ということが起こるはずだ。これは敵の攻撃を無効化する「弾き」という技。ゲームを少し進めると手に入る「兵書」(解説)に記されているのだが,システム自体はそれ以前から開放されているため,ゲームに慣れた人ならすぐ気づくかもしれない。
操作方法は「攻撃を受ける直前,その攻撃を繰り出している敵の方向へアナログスティックを入力する」というもの。この手のゲームに慣れていないとタイミングを取るのは結構難しく,失敗=ダメージとなるので,最初はひとまず忘れてしまって構わない。これよりは,ボタン一つで無敵になって位置を変えられる,羽衣の回り込みを先に練習したほうがいいだろう。
しかし,弾きには夢とロマンがある。弾かれた敵は即座に体勢を崩すため,一気に連続技へ持ち込めるのに加え,兎鬼が放ってくる矢も避けられる。サクナが武技を使っているときや,攻撃されている最中にも弾きが可能なので,意識しておくと面白い。
序盤の戦闘を有利に運ぶためのコツ
ここからは,序盤の戦闘を有利に運ぶためのコツを記していこう。テクニックではなく考え方が中心となっており,使うのも序盤で覚えられる技と少ないボタンで済むものばかりなので,既にプレイしている人にも役立つはずだ。
●小型の敵は上+片手武器で圧倒する
小型の敵は上+片手武器ですぐに空中へ打ち上げられる。サクナ自身も自動的に飛ぶため,地上の敵から狙われにくくなるという,攻防一体の技となっており,上+片手武器のボタンを連打するだけなので,操作もシンプルだ。
敵に中型が混じっていても,先に小型の敵を上+片手武器で掃除しておくのは有効な戦い方になる。
●矢や爆弾を放つ敵は最優先で倒す
兎鬼の中には弓矢や爆弾を持っている者がおり,これを放置しておくと被害が拡大する。特に爆弾のダメージは大きいのだが,乱戦の中ではついつい見落としがちだ。これらの敵は大抵後方にいるため,ジャンプで接近したり,羽衣の回り込みを使ったり,他の敵を衝突させるなどして,優先的に処理しよう。
●サクナと敵の位置取りを意識する
本作の戦闘では,位置取りが重要だ。まず避けるべきは敵に囲まれることなので,それを意識するといいだろう。
羽衣で敵の背後に回り込むのが基本となるが,武技や羽衣技で敵を吹っ飛ばし,間合いを作ったり,一方向にまとめたりするのも手だ。武技なら前方へ飛ばす胴貫打ち,後方へ飛ばす「暴れ独楽」。羽衣技は前方に飛ばす飛衝槌や「風車」,後方へ飛ばす「半円投」。その技によって敵が吹き飛ぶ方向を覚えておくことが重要だ。
●「一発で状況を変えられる技」を意識する
そうやって立ち回っても,敵に囲まれてしまうときはある。そんなときは,一発で状況を変えられる技を使っていこう。
術力があるなら,武技の胴貫打ちに高波返し,羽衣技の飛衝槌。術力が枯渇しているなら,羽衣での回り込み。敵が小型なら,上+片手武器。これらの技はとりあえずボタンを押せば,状況を変えられる可能性がある。
●敵をトラップ地形にぶつける
本作のステージには,トゲトゲの岩のような,触れるとダメージになるトラップ的な地形が存在する。ここに敵をぶつけてやれば,更なるダメージを与えることが可能だ。敵が勝手にこうした地形に踏み込んで自爆することもあるが,バトルでは吹っ飛ばす方向を意識してみよう。トラップ的な地形の中には,敵をぶつけることで壊れ,安全に通行できるようになるものもある。
●「我が家」の「稽古場」をフル活用する
サクナの本拠地となる「我が家」には「稽古場」があり,鬼を呼び出して戦闘の練習ができる。まずはここに籠もって上+片手武器から練習してみよう。コンボの練習なら,設定項目の「動作」を「なし」に。弾きやより実践的な立ち回りを鍛えたい人は「あり」にするといい。稽古場でのコンボ開発が楽しくて仕方ない人も出てくるはずだ。
●装備をしっかり更新する
ゲームを少し進めるときんたとゆいが装備を作ってくれるようになる。強い武器を作れば戦闘が楽になるので,その時点で作れる最高のものを揃えておきたい。装備にはめ込むことで能力を強化する「枝魂」と,装備に秘められた「真価」も強化・開放しておこう。
●稲作もアクションだ
田を耕したり,苗を植えたり,稲を刈ったりといった農作業がちょっとしたアクションとして表現されている。サクナが成長すると,一度に植えられる苗が増えたり,広範囲の稲を刈り取れたりとパワーアップしていく。黙々とやってしまう種類の面白さがあるため,プチプチを潰す系のゲームが好きな人なら気に入るはずだ。
ここまで紹介してきたとおり,「天穂のサクナヒメ」は,アクションゲームとしても一級品で,かつ初心者が入りやすいものになっている。
特に衝突とサクナの位置取り,コンボのルールを理解すれば,多数の鬼を相手取って大暴れが可能だ。ゲームを進めれば,敵を浮かせる「登鯉」や,任意方向に移動しつつ攻撃する「飛燕」,攻撃を受け止めて反撃する「破魔鏡」といった多彩な武技が使えるようになり,戦闘の面白さがよりアップする。
ゲームを進めれば戦闘メインのコンテンツ「天返宮」が開放され,培ったテクニックを存分に発揮できるが,本稿がそこに至るまでのちょっとした補助輪として,疑問の解消に役立てば幸いだ。
「天穂のサクナヒメ」公式サイト
キーワード
(C)2020 Edelweiss. / Marvelous Inc. / XSEED Games
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