インタビュー
「コルダ」らしさの追求とクラシック音楽へのこだわり――愛に溢れた「金色のコルダ スターライトオーケストラ」開発者インタビュー
コーエーテクモゲームスの乙女ゲーム「ネオロマンス」シリーズなどを手掛けるルビーパーティー初のスマートフォンアプリ「金色のコルダ スターライトオーケストラ」(iOS / Android。以下,「スタオケ」)。同作が2021年2月24日にリリースされてから早くも半年が経ち,主人公らスタオケメンバーがコンクールを目指すメインストーリーは第1部完結という節目を迎えている。そんな「スタオケ」の歩みや制作秘話,そしてこれからの展望をコーエーテクモゲームス ルビーパーティーブランド長の襟川芽衣氏と,本作のプロデューサーである松濤明子氏に伺った。お2人の並々ならぬ「コルダ」らしさの追求と愛に溢れたインタビューをお届けしよう。
――もくじ――
- 「スタオケ」開発者インタビュー
♪「コルダ」らしさの解釈とは
♪クラシック音楽へのこだわり
♪シリーズをとおして変わったこと,変わらないもの
♪「スタオケ」の転機。実は47都道府県,全47人の案も!?
♪今後の「スタオケ」――衝撃の第1部完結の,その先へ
- メインストーリー第9章配信&第1部完結!!
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◆「コルダ」らしさの解釈とは
4Gamer:
「スタオケ」のハーフアニバーサリーおめでとうございます。リリースされてからあっと言う間という印象もありますが,この半年間はいかがでしたでしょうか。
ありがとうございます! どのアプリも一緒だと思いますが,開発スタートから今までずっと走り続けていることもあって,本当にあっと言う間でしたね。ルビーパーティーブランドにとっても「金色のコルダ」にとっても大きなチャレンジでしたので,プロデューサーの松濤も大変だったと思います。
松濤明子氏(以下,松濤氏):
ルビーパーティー初となる,イチから立ち上げたスマートフォンアプリなので,かなりのチャレンジでした。
襟川氏:
作ってはやり直してのくり返しでやっとスタートにこぎ着けましたが,アプリはリリースして終わりではありません。そこからプレイヤーの皆さんに快適に楽しんでいただくにはどうしたらいいのか,不具合にどう対処していくのかなど,スタート後も試行錯誤の状態が続いていました。やっと落ち着いてきたところで,十分な準備期間をとってハーフアニバーサリーを迎えられましたので,このインタビューが公開されるころにはたくさんの楽しい企画を,皆さんにお届けできているのではないかと思います。
4Gamer:
これまでの「コルダ」シリーズとは勝手が違うことも多かったと存じますが,あらためて「スタオケ」がどのように立ち上げられたのかお聞かせください。
襟川氏:
2019年に発売した「金色のコルダ オクターヴ」(PC / Nintendo Switch / PS Vita)は,もともとルビーパーティー初のスマートフォンアプリとして開発を進めていましたし発表もしていました。しかし,いろいろな事情が重なってアプリでのリリースが難しくなり,ストーリーやシステムを新しく作り直して,家庭用ゲームとして発売することになったんです。
4Gamer:
そんな経緯があったのですね。
襟川氏:
そこからもう1回チャレンジするぞ! と立ち上げたのがこの「スタオケ」でした。スクラップアンドビルドを何度か経験して形になるまでに2年かかりましたが,ブランドとしても全力投球でやってきたタイトルですので,リリースできたときは感慨深かったですね。
松濤氏:
スマートフォンアプリに特化し,きちんと運営が続けられる内容なのはもちろんですが,ゲームシステムや世界観,キャラクター性もスマートフォンアプリ向けにガッとシフトして作っています。
襟川氏:
同じゲームではあっても,家庭用ゲームとスマートフォンアプリとでは,ストーリーのテンポ感や気持ちの良いゲームサイクルが変わってきますので,そのあたりに注力しながら開発を進めてきました。
松濤氏:
実は,最初はもっと“スマートフォン向け”に寄っていたんです。「コルダ」シリーズは,家庭用ゲーム機向けに作られたゲームなので,そのままスマートフォンアプリに持ってきても面白くはならないだろうと。でも,開発を進めていくうちに,やはり「コルダ」らしさがもっと欲しいという話になりまして。それで「コルダ」らしさとは何かという要素の整理と,一方でスマートフォンアプリとしてプレイして面白いと思えるものの折り合いを模索していきました。
4Gamer:
「スタオケ」を遊んでいるシリーズファンからも「コルダ」らしいという感想をよく見聞きします。
襟川氏:
「スタオケ」の発表をしたときに,「コルダがアプリ? 大丈夫なの?」ですとか「コルダはやっぱり家庭用ゲームでないと……」といった不安を抱くファンの方も多かったですし,私たちも「スタオケ」に対して「コルダらしさ」を感じていただけるかドキドキしていました。実際にリリースしてみたら「ちゃんとコルダだ!」といった反応をたくさんいただいて,それを見て本当によかったと安心しました。“「コルダ」らしさ”,“「コルダ」とは”,を時間をかけて追及していったかいがありました。
松濤氏:
いろいろチャレンジしましたね(笑)。すごく大きな模造紙を3枚くらいつなげて,チームの皆で「コルダらしさとは何か」という概念を抽出していったりなど……。
4Gamer:
そこではどんなキーワードが挙がったのでしょうか?
一つには“青春”,学園ものらしい青春の要素です。あとはクラシック音楽に対する姿勢,あるいはクラシック音楽の扱い方であったり。ほかにはちょっとした部分のデザインや色合い,UI(ユーザーインタフェース)も気を使って作っています。とくにSE(サウンドエフェクト)は非常に「コルダ」だなと思っていただけるようにサウンドチームが作っています。
襟川氏:
あとはプレイヤー自身が音楽に向き合っている体感や,一生懸命練習して上達していく達成感ですね。これまでのシリーズにしっかり入っていた要素ですから,それをアプリの中にも取り入れようと,ゲームシステムや演出にもこだわりました。
松濤氏:
それは全体から見ると細かいものですが,路上ライブのときに主人公を表示するかしないか,という部分などに表れています。多くのスマートフォンアプリでは表示しないかと思います。主人公の立場のキャラクターではなくて,あくまで男性キャラクターだけを表示するのが一般的かなと。「スタオケ」も,主人公を表示しない形も検討したのですが,そうすると「コルダ」らしくはない。一緒に弾いている感じもしないし,努力のなかに加わっている気もしないと。そこで表示する選択を取りましたが,本当にそういう小さな模索の積み重ねでした。
4Gamer:
「コルダ」らしさが感じられるのは,シリーズで長年培われてきた要素が随所に入っているからなのですね。「コルダ」シリーズは18周年を迎えましたが,先日のインタビューでは「コルダ」は襟川恵子会長の「クラシック音楽よ!」という一言から始まったと伺いました。
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襟川氏:
そうなんです。「アンジェリーク ルミナライズ」のインタビューの際にルビーパーティーブランドの話題になり,「コルダ」の立ち上げのエピソードとしてお話ししたのですが,すみません,あれ,ちょっと違ったんです(笑)。
松濤氏:
ええっ!
襟川氏:
内容としては間違ってはいないんですけど,順番が逆でした(笑)。「アンジェリーク」で西洋ファンタジー,「遙かなる時空の中で」で和風のファンタジーと来て,その次は何をやるかとなったときに,“学園もの”という案がまず出たんです。「青春の学園ものよ!」と。ただ,普通の学園ものだとありきたりで,世の中にたくさん出ているので,何かもう一つ加えたらとなり,クラシック音楽が挙がったわけです。
松濤氏:
それでもゲーム開発の初期からクラシック音楽というテーマはありましたね。
襟川氏:
当時のプロジェクトの企画担当者がクラシック音楽好きで,造詣が深かったんです。それもあって,クラシック音楽をうまく取り入れてくれました。そういえば松濤さんはあのころ,まだ新入社員だったよね?
松濤氏:
そうでしたね。部署で一番の若手でした。イラストレーターの呉 由姫先生が打ち合わせにいらしたときも若手として意見をお話ししたり……。プロデューサーから「これ,どう思う?」みたいに聞いていただけて。とても楽しい打ち合わせでしたし,コルダが生まれるところに立ち会わせていただいたのは「ああ,新しいタイトルってこうやって立ち上がるんだ」と実感するいい勉強になりました。
襟川氏:
クラシック音楽は誰もが聴いたことがあって,耳なじみはありますよね。でも詳しいかといったら,そうでもない方も多い。そこでゲームの中に取り入れて“音楽の素晴らしさ”を伝えつつ,高校生の少年少女が一生懸命頑張っている青春を体験していくゲームに仕上げていこうと。そうして「アンジェリーク」や「遙か」とはまた違った面白さを出すゲームとして「金色のコルダ」がスタートしました。
◆クラシック音楽へのこだわり
4Gamer:
音楽の素晴らしさを伝える作品とあって,「コルダ」シリーズはゲーム中の音楽もクオリティが高いですよね。
松濤氏:
ええ,そこは非常にこだわっている部分です。1作目の「金色のコルダ」では一つの楽曲に対して「清麗」「彩華」「愁情」の3タイプの“解釈”があり,解釈ごとの音源を収録しています。そのためプレイヤーは,ゲーム内で3タイプの解釈の演奏を聴くことができるんです。実は,私はあれで初めて解釈というのを感じたというか……。「同じ曲なのにここまで変えられるんだな」と思いました。
4Gamer:
解釈をはじめ,音楽用語を「コルダ」で知った人も多いようですね。
松濤氏:
同じ曲を違う奏者が弾く同曲対決の面白さも魅力だなと思っています。例えば「ラ・カンパネラ」をピアノで弾く土浦梁太郎(初代「コルダ」のキャラクター)と,ヴァイオリンで奏でる主人公であったりにはドラマ性があると思います。家庭用ゲームのコルダの音のこだわりでいうと,初めての楽曲で練習するときなどの下手な演奏もそうですね。ただ,この下手演奏の要素は,アプリではうまくはまらなかったため割愛しています。そうした,取捨選択もアプリ制作の上での模索でしたね。
4Gamer:
「スタオケ」のオリジナルのBGMも上質で聴き心地がいいですね。
松濤氏:
今回のBGMもサウンドディレクターがこだわって作ってくれました。おっしゃるとおり,生音を使っているところも多くて。担当いただいている方には,「僕,以前も『コルダ』関わっていたんですよ。懐かしいなあ」と,非常に熱心に楽曲制作していただきました。
襟川氏:
「コルダ」の音楽はクラシックの楽曲もそうなのですけれど,オリジナルのBGMも「“音楽の”ゲームのBGM」になるので,しっかりとしたクオリティかつ耳なじみのいいもの,何回か聴いたら「あれ? この曲あのシーンじゃない?」と場面が思い出せるようなメロディを目指して作っていきました。
松濤氏:
とくにホーム画面のBGMは,「このゲーム自体が非常に心地よいから何度も起動したくなる,通学・通勤途中,とくに帰り道などで聴きたくなるくらい居心地のよい雰囲気で」とオーダーしました。
4Gamer:
リラックスできて,ずっと流していたい曲ですよね。
◆シリーズをとおして変わったこと,変わらないもの
4Gamer:
お話を「コルダ」シリーズに戻しますが,シリーズを続けていくなかで変化していったもの,逆に変わらないものはありますか。
襟川氏:
シリーズをとおして変わらないものは,青春やクラシック音楽というテーマですね。音楽に真摯に向き合う姿勢ですとか,甘酸っぱくて爽やかな恋,といったものは変わらないです。変化でいえば「コルダ」&「コルダ2」,そして「コルダ3」&「コルダ4」でテイストや男子の見せ方が大きく変わったかなと思います。
松濤氏:
そうですね。まず1作目はふだん一般のゲームをやっている女性にも,ぜひネオロマンスのゲームをやってほしいという狙いがあり,ゲームシステムもかなりこだわって作りました。また攻略対象をライバルにすることで,恋愛面もサラッとした手触り感で,ふだんからゲームをプレイしているけれども,「恋愛ゲームはちょっと……」という女性も入れるようなところを目指して作られています。
4Gamer:
確かにゲーム性もしっかりあって,攻略対象を落とす以上にコンクールで優勝したくて練習に熱が入っていました。
松濤氏:
そうしてプレイヤーの幅も広がったところで,「コルダ2」では一人一人とコンクールで競うのではなく,競ったライバルが仲間になるという展開になりました。クリスマスや文化祭のワルツなど,1作目より恋愛ゲーム的な要素を強めた形になっています。
もともと1作目のストーリーは,初代「コルダ」「コルダ2」「アンコール」で一つのまとまりを迎えるように初期構想から作られていて,「アンコール」までで彼らの一つの未来が描かれる形だったんです。
4Gamer:
当初から3作品での構想があったのですね。「金色のコルダ3」ではキャラクターなどが一新されるわけですが,どのように開発がスタートしたのでしょうか。
松濤氏:
「アンコール」で丸く収まって,じゃあ次はとなったときに「松濤さん,『コルダ』ってどう?」とお声掛けいただいて,メインプランナーとして「次のコルダはこうしましょう」という案を作っていきました。そのときに社内プレゼンで“敗北する男子の美しさ”を描きたいと伝えましたね。
コンクールに対する向き合い方や,一生懸命さの方向性の違いと言ったらいいのでしょうか。1作目の「コルダ」のときは音楽自体を求道するようなストイックさと,初めて音楽を知る楽しさを描いています。一方,このコンクールで絶対に負けられないというような必死さはなく,主人公が月森くんに勝っても,彼は悔しさなど見せず「とてもいい演奏だった」とニコッと笑ってくれる……。それが初代「コルダ」らしい美しさだと思います。
松濤氏:
一方で「俺たちは負けたくなかった……!」と自分の無力を悔いるような,青春ならではの必死さや涙。あるいは敗北した無念を胸中に収めて,潔く後輩に未来を託すような鮮やかな生き様。コンクールという序列を付けるものがテーマなら,負けられない理由があるからこそ描けるドラマもあるだろうと。そうして生まれたのが「金色のコルダ3」です。
襟川氏:
火積司郎(「コルダ3」のキャラクター)のあのシーンは,プレゼン初期から構想にあったんですよね。主人公のライバルの学校の一つで,主人公たちに敗れて「すみません」とボロボロに泣く……。
松濤氏:
ええ。ふだん温厚な八木沢が火積の胸ぐらをつかんで「立て、火積」とやる一連まで,最初のイメージボードから入ってましたね。当時のチーム長には「俺が男性なせいかよく分からないけど,男は勝ったほうがカッコイイんじゃないの? 強いほうが」と言われましたが,「女性は負けた男子,“ライバル”にこそグッと来るんですよ」と伝えました。それでチーム長は「そっかあ」と(笑)。いや,好みはいろいろなのでちょっと極論なのですが,そう伝えて通していただけました。
襟川氏:
初代「コルダ」と「コルダ2」は少女漫画的な美しい世界だとしたら,「コルダ3」から泥臭さというか,美しい世界の裏側みたいなところもしっかり見せていくようになり,少年漫画的な部分が出てきましたね。大事にしている部分は一緒なのですが,同じ「コルダ」の世界でも少しだけテイストが違います。
松濤氏:
そうですね。「コルダ2」を引き継いだメインプランナーが,音楽の持つ苦しみやある種の呪いのような……音楽を頑張ることによって傷つく人を描くようになり,裏の面を出すようになってきていたので,じゃあ,「コルダ3」ではもう一つそっちに寄せられるかなと思いました。
襟川氏:
初代「コルダ」と「コルダ2」の世界だったら,火積はたぶん出てこないですもんね(笑)。
4Gamer:
至誠館(「コルダ3」に登場する仙台の高校)のキャラクターはちょっと特殊ですよね。だからこそ根強いファンも多いのかと思います。
松濤氏:
星奏学院の生徒は従来作品にのっとっていますが,他校をせっかく作るのであれば他校なりのカラーをきちんと出して,すみわけをしていこうと考えました。
4Gamer:
そういった各校のカラーが「スタオケ」にも受け継がれていったわけですね。
◆「スタオケ」の転機。実は47都道府県,全47人の案も!?
松濤氏:
「スタオケ」も当初は少し違って,1県につき1人みたいな形で,何だったら47都道府県! 全部で47人という案もあったのですが,襟川から「もっとキャラクターは箱推しを重視してほしい」と。
4Gamer:
箱推しは確かに大事ですね!
襟川氏:
1県に1人じゃ寂しいじゃないですか(笑)。1人だとその男子自体が推しになりますけど,各県ごとに数人いて「私はこの県が好き!」とか,自分の住んでいる県の男子を応援しよう! といった「都道府県推し」もできたほうが楽しいのではと考えました。
松濤氏:
そこも「スタオケ」の一つの転機でしたね。確かに1校2〜3人になることによって対比的に描かれたり,キャラクターの魅力が浮き彫りになったりするのは事実ですから。
襟川氏:
いずれは47都道府県に広げていきたいですね。「私の住んでいる県にメンバーいないんですけど」と思っている方も絶対いらっしゃるかと。各地でコラボする構想もずっと持っています。
4Gamer:
やっぱり地元の学校を応援したいですよね。現在の8校,8県はどんな風に選ばれたのですか?
松濤氏:
学校それぞれの差別化ができることを大事にしました。雰囲気の違いをきちんと出せるように,立地はそれぞれ離れていて,気候風土が違うところで選んでいます。ただ,一つの地方に集中はしていませんが,中国地方とか四国とかメンバーがいない地方もあります。今回の第1部は涙を飲んで,この8校にしました。
4Gamer:
メインストーリーに登場する順番も何か意図があったのでしょうか? メインストーリー第2章でいきなりヤンキーが出てきてびっくりしました。
襟川氏:
私もプロットを見ていて「え,いきなり!?」と驚きました(笑)。最初はいつもの「コルダ」の星奏学院からスタートして,プレイヤーとしても「やっぱり『コルダ』だなあ」という気持ちになっているところで,急にヤンキーの喧嘩が始まるじゃないですか。これは大丈夫なのかなと心配になり確認したのですが,松濤から「大丈夫です!」と。
松濤氏:
これもある意味スマートフォンアプリならではだと思うんです。家庭用ゲームだと,ソフトを買っていただけたら多くの方に最後まで遊んでもらえるのですが,スマートフォンアプリはダウンロード無料なだけに,ある程度早い段階でカラーをハッキリ打ち出していかないとなりません。「最後まで遊べば分かってもらえるんですけど」は,おそらく通用しないと思いました。
従来の「コルダ」は徐々に強くなるクレッシェンドのような感じだったのですけれど,もういきなりスフォルツァンドというか。「この作品はこういう面白さがありますよ」と,第2章までのプレイ時間で見せる必要がありました。
4Gamer:
確かに第2章のインパクトは大きかったですね。
松濤氏:
制作中も「ここは星奏学院と完全にカラーを分けるけど,逆に間違いなく人気を取らなければならない」とチームで共有していました。「ユーザーが10人いたら8人取るという覚悟で臨もう」と。やはりそういう,確実に多くのお客様に支持をいただかなければならないキャラクターはプレッシャーがありますね。やらなきゃいけないことが多いだけに難しい章でしたね。
4Gamer:
相当の“根性をキメて”作られていたのですね。プレイヤーさんのなかには泣いた,ここで「スタオケ」におちた人も少なくないようです。
襟川氏:
うれしいですね。実際,水戸の2人が好きだという声も多くいただいて,受け入れられていてホッとしました。
松濤氏:
ただ,キャラクターに関しては,高山しのぶ先生からすてきなビジュアルが出てきていたのが心強かったですね。
襟川氏:
高山先生の絵は本当に素晴らしいですね。カラフルさがとても美しくまとまっていて。あれだけのキャラクターがいるのに個性もちゃんと出ていますし。
松濤氏:
高山先生も「スタオケ」を理解しようとしてくださって。以前にチラッとお話ししたこともきちんと覚えていらして,それがさらりと反映されていたり。先生の上げてくださるビジュアルやアイデアからキャラクターの内面が深まっていくこともありました。
4Gamer:
具体的にはどんなアイデアが還元されたのでしょうか?
松濤氏:
例えば成宮は,明るく朗らかな後輩なんだけど艶もある,という面をどう表現したものかとなったときに,高山先生が「鎖骨にホクロがあります」とおっしゃって,「なるほど!」と。正直,グラフィックスで表示されるところ以外の部分ってふだんはあんまり考えないものですが,さすがだなと。
4Gamer:
目からウロコです! 見えない部分にもこだわりが詰まっているのですね。
松濤氏:
あとは,堂本大我の入れ墨も,開発チームから何か言ったわけではなかったんです。あるとき,高山先生から「大我に入れ墨をしてもかまいませんか?」とご提案があり,「星奏学院ではありませんし,OKです」ということで実現しました(笑)。それと,弓原 凛は黒いマニキュアを塗っていますが,1本だけ白にしていたりとか。コルセットみたいな制服のベストも,こちらからはキャラの狙いしかお伝えしていないなか,先生がすてきに仕上げてきてくださいました。
襟川氏:
こんな調子で,高山先生と開発チームとの打ち合わせは半日とか平気で過ぎてしまうんですよ。それもう打ち合わせっていうか缶詰だよね,と(笑)。
松濤氏:
そうなんです,申し訳ない……(笑)。
襟川氏:
それでも根気強くお付き合いいただいてとてもありがたいです。そのうえ,ご自身でいろいろな発信をしてくださっていて。ファンの方も巻き込んでくださるキャラクターデザイナーさんはそうそういらっしゃらないので,本当に感謝しています。また,ファンの方たちが高山先生の「スタオケ」愛にも敬意を払ってくださっているのもうれしいですね。
4Gamer:
先日の鷲上源一郎バースデー記念で描き下ろしされたカードも美しくて,ファンとしてはうれしかったです。スカウトにも熱が入りました。
襟川氏:
ありがとうございます。私もスカウト頑張りました(笑)。
松濤氏:
こんなに多くのキャラクターを入れ込んだ描き下ろしにしてくださるとは当初思っておらず,本当にありがたかったです。すごく楽しそうな源一郎の誕生日になりました。
4Gamer:
キャラクターたちのバースデーはもちろんですが,期間限定イベントも毎月の楽しみになっています。これまでで,手応えのあったイベントや逆に苦労されたものはありますか。
襟川氏:
やはり6月の「Music and the Bridal Kiss」ですね。
松濤氏:
ええ,このジューンブライドイベントは気合を入れました。イベントというと通常ならば4キャラクターくらいにスポットを当てていますが,やっぱり自分の推しとジューンブライドしたいだろう。それで,「ここまで登場している全メンバーを対象にしよう」と。
襟川氏:
開発チームも「え,ウソ,全員!?」と衝撃を受けていましたね。松濤が「プレイヤー全員にとっての“自分の推し”が来ないと,このイベントはダメなんだ」と熱く語っていたのを覚えています(笑)。
松濤氏:
そのあたりはコンシューマライクな作りを持ってきているところはあるかもしれません。家庭用ゲームになじんだスタッフは「そりゃそうですね」とすんなり受け入れてくれた一方で,スマートフォンゲームになじんだスタッフはびっくりしていたので。
家庭用ゲームの場合には,豪華版特典を用意することがありますし,例えばクリスマスイベントなどではひとそろい揃えるようにしていたので。おそらく家庭用ゲームから入られたプレイヤーもそんな感覚でいらっしゃると思い,既存シリーズの手法を取り入れました。
4Gamer:
それぞれ新規カードが登場したのもうれしかったです。
松濤氏:
あとは,3月の「Bitter Sweet WhiteDay」も,初回のイベントなので力を入れて作りましたね。「期間限定は見なくても大丈夫」とならないように,きちんと読んだかいがあるものにしたいということで,ポラリスがどうやって結成されたのか,メインストーリー並みのドラマ性を持たせようと頑張りました。
襟川氏:
私もシナリオを読んだとき,「あ,この密度のストーリーを期間限定で読めるのね」と豪華に感じました。そこはプレイヤーの方にも感じていただけたみたいで,ストーリーの密度や内容が素晴らしいと好評でした。新しいカードの絵が期間限定で登場するだけではなくて,やりがいのあるイベントだと感じていただけてよかったなと思いますね。
松濤氏:
もともと当社では,ゲーム本編で描かれなかった話をキャストが出演しているイベントやドラマCDで描いておりましたので,その流れをくんでいるのかもしれませんね。ゲームでは描かれていない側面が見られるように,期間限定イベントを毎回作っています。キャラクターや人間関係の多様な側面が,ゲームの中でどんどん提供できていくのがアプリの魅力ですので,ぜひ積極的に力を入れたいと思っています。
4Gamer:
だからこそ読み応えのある,心に残るイベントストーリーになっているのですね。本当にバラエティ豊かで毎月楽しみです。
松濤氏:
期間限定イベントのシナリオは多様性やバリエーションを出すため,しっとりした話,コミカルな話と,それぞれ得意分野を持つスタッフに任せています。例えば「温泉! 乱戦! 捜査線!」は,ちょうど捜査とかコミカルが得意なスタッフが合流したので,そのスタッフらしさを発揮してもらったり……。音声(該当キャラクターのみフルボイス)がついてキャラクター実装を伴う「組曲」などの新しいイベントも行いましたし,システム的にも今までとは違った形のイベント形式も予定しています。
4Gamer:
温泉イベントもとても面白かったです。それにしても,かなりのボリュームの期間限定イベントを毎月行うのは大変かと思うのですが……。
襟川氏:
やはり最初は暗中模索と言いますか……アプリ運営は初めてのことなので,チームも苦労していましたね。どこまでやっていいのか,何をプレイヤーが求めているのかと,毎回期間限定イベントをやりながら「あ,ここをこうしたほうがいいな」というところは次でまた変えてと,水面下ではいろいろな部分を少しずつ改良しています。
松濤氏:
時間を経てさらに遊びやすくなっていますので,もし,期間限定イベントにしばらく参加していない方がいらしたら,以前より本当にシステム面,手触り感がよくなっているのでぜひ確かめてみてください。「あ,かまぼことか,こんなにいろいろもらえるんだ」と実感していただけるのではと思います。
4Gamer:
かまぼこ(星奏学院メンバー用の育成素材)はあればあるほどうれしいですね。とくに,メインクエストのHARDモードでは育成が重要になってくるので……。ところで,HARDモードにはある秘密の要素がありますが,体験されたプレイヤーからの反応はいかがでしたか?
松濤氏:
驚かれましたね(笑)。ただ,まぁ,ふだんルビーパーティーが作っているゲームから考えると,ああいう特殊なコースがあれば当然入るべきかなと思って入れています。キャストの方々からも面白がっていただけましたね。
襟川氏:
あそこだけちょっと異質な感じがしますよね。ただ,あのファンタジーさが「コルダ」の世界に合っていますし,「スタオケ」にはそういった面白い仕掛けがあちこちにあります。
4Gamer:
妖精のファータのように少しファンタジー要素があるのも「コルダ」ですよね。
松濤氏:
「金色のコルダ3 AnotherSky」の函館天音学園も,あの独特の世界観がファンの方から支持をいただいていました。今までの「コルダ」のさまざまな魅力が「スタオケ」でも楽しめるようにしていますので,まだの方はぜひHARDモードもプレイしてみてください。
◆今後の「スタオケ」――衝撃の第1部完結の,その先へ
4Gamer:
現時点でもいろいろと盛りだくさんですが「スタオケ」の今後の展開はどうなっていくのでしょうか。
松濤氏:
ハーフアニバーサリーまで来て,そろそろ1周年のことを考えている時期なのですが,1stアニバーサリーを越えた先のことも実は着々と進めています。きっとプレイヤーの皆さまに喜んでいただけるような,新たなチャレンジを多数取り揃えた形になる予定です。まずは第9章の配信で第1部の盛り上がりを感じていただきたいですね。とくにクリスマス,「ああ〜!」と思っていただける仕掛けもあります。そこから先も,驚きの仕掛けがありますので続けて12月,1月,2月と楽しみしていただけるとうれしいです。
襟川氏:
第9章はぜひ最後までプレイしていただきたいですね。驚きの喜びがあると思いますので。
4Gamer:
第7章の京都ではかなり心揺さぶられたので,さらに驚きの展開があるとは少し怖いくらいです。
松濤氏:
第7章では驚いたり,心揺さぶられたりしていただきたかったので,そのための伏線や情報公開の仕方も気を使って,広報チームにも頑張ってもらいましたね。うまく届いてよかったです。
襟川氏:
第9章の配信後もまだまだハーフアニバーサリーキャンペーン中で,9月24日までメインクエストの必要LPが半分になっていますので,これから始める方もどんどんストーリーを読み進められると思います。
4Gamer:
第9章の先も気になります。
冒頭でもお話ししましたが,「スタオケ」はルビーパーティーで初めてリリースできたスマートフォンアプリになるんです。サービススタート当初はうまくいかないことも多くて,ファンの皆さんからもさまざまな声をいただきました。不具合の修正や,ゲーム内容の調整に時間がかかってしまったのですが,最近はやっとノウハウもたまり落ち着いてきました。これからまた1周年に向けていろいろと動いていきますので,楽しみにしていただければと思います。
4Gamer:
ちなみに,「スタオケ」の海外配信は考えられていますか?
襟川氏:
それはもちろん考えています。スマートフォンという新しい市場に進出すると同時に,海外でも展開を広げてプレイヤーの幅を広げていこうと,まずはアジア展開の準備を進めているところです。近いうちにいいお知らせができるのではと思っています。また,ブランドとしてもせっかくのノウハウを1作だけで終わらせるわけにはいけないので,今後もアプリのゲームは新しく立ち上げていきたいなと思っています。
ファンの方からは「アンジェリーク」や「遙か」「下天の華」のアプリ化を希望される声もたくさんいただいています。もちろん今までのネオロマンスシリーズのアプリ化も考えておりますし,ルビーパーティーは女性向け恋愛ゲーム以外の作品も作っていますので,両軸で検討しています。それはまた発表できるときになったらぜひお話しさせていただければなと思います。
4Gamer:
それでは,最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。
ここを読んでくださっている方のなかには,興味を持ってはいるけれどまだという方もいらっしゃると思います。「金色のコルダ スターライトオーケストラ」はハーフアニバーサリーにとどまらず,ここから先もとても楽しいアプリになっていきますので,ぜひプレイしていただけるとありがたいです。ずっとこの楽しさが続く,あるいはさらにその上を行けると確信しております。ハーフアニバーサリーキャンペーン中の今,メインクエストLP消費が半減でお得に楽しめますので,この機会にぜひどうぞ!
襟川氏:
いつも「金色のコルダ スターライトオーケストラ」やルビーパーティーブランドを応援いただいているファンの皆さま,ありがとうございます。先ほど松濤もお話ししたとおり,「スタオケ」は今,いろいろとお得で楽しい時期になっていますので,しばらくお休みしている方,まだこれからという方にもぜひプレイしていただきたいと思います。
ルビーパーティーはこれからも,皆さんの心にきらめきを添えるゲームを作り続けていきたいと思っていますので,「スタオケ」に限らず今後のチャレンジにご期待いただければと思います。ぜひ応援よろしくお願いします!
メインストーリー第9章配信&第1部完結!!
LP半減キャンペーンで一気に読破しよう
現在「金色のコルダ スターライトオーケストラ」では,ハーフアニバーサリーを記念したキャンペーンが実施中。2021年9月24日まで,メインクエストをプレイするのに必要なLPが半分に! これから「スタオケ」を始める人にもうれしい,配信されたばかりの第9章まで一気に読めるチャンスとなっている。
「スタオケ」のメインストーリーは,クエストの特定のステージをクリアするごとに進むもので,先が気になる展開に心急かされるようにプレイしてしまうこと請け合いだ。ぜひ,この機会に珠玉のストーリーを体験してみては。
「金色のコルダの日」を記念した施策も実施中!
今日は“金色のコルダの日”。「スタオケ」のLINEスタンプの販売や育成アイテムプレゼントなどさまざまな施策が発表に
コーエーテクモゲームスは本日(2021年9月19日),スマホアプリ「金色のコルダ スターライトオーケストラ」において,“金色のコルダの日”を記念した施策を発表した。特設ページが公開されたほか,LINE クリエイターズスタンプの販売や育成アイテムプレゼントなどが実施されている。
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