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3万5000円で買える新型ミドルクラスGPU「Intel Arc A580」は,ゲーマーにとってどんな位置付けにあるのか?
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印刷2023/10/20 12:00

レビュー

3万5000円で買える新型ミドルクラスGPUは,どんな位置付けにあるのか?

ASRock Intel Arc A580 Challenger 8GB OC

Text by 宮崎真一

 NVIDIAでもAMDでもない,新たなGPUの選択肢であるIntelのゲーマー向けGPUブランド「Intel Arc」。第1弾となる「Intel Arc A700」シリーズ(開発コードネーム Alchemist)は,2022年に登場しており,2023年10月には,ミドルクラス市場向け製品となる「Intel Arc A580」(以下,Arc A580)が登場した。
 今回は,Arc A580を搭載したASRockの「Intel Arc A580 Challenger 8GB OC」(型番:Arc A580 CL 8GO)を試用する機会を得たので,その実力を確かめてみたい。はたして,ゲーマーにとっての位置付けはどのようなものなのだろうか。

Intel Arc A580 Challenger 8GB OC
メーカー:ASRock
税込想定売価:3万4980円
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Xe HPGベースのミドルクラス向けGPU

GPUコアにはACM-G10を採用


 まずは,Arc A580について説明しよう。
 Arc A580は,Intelの「Xe HPG」アーキテクチャに基づいたGPUとしては,ミドルクラスに位置する「Intel Arc A500」シリーズに属するものだ。TSMCの6nmプロセスルールで製造され,GPUコアには「ACM-G10」と呼ばれるものを採用している。ACM-G10は,406mm2のダイサイズに,約217億個のトランジスタを搭載しており,Intelが競合製品とする「GeForce RTX 3050」(約132.5億個,以下 RTX 3050)の約1.6倍,「Radeon RX 6600」(約111億個,以下 RX 6600)の約2倍という規模を誇る。

 Xe HPGの詳細については,こちらの記事を参照してもらうとして,本稿でも簡単に説明しておこう。

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 2021年8月に行われたIntelのイベントでは,同社が開発中のゲーマー向けGPU「Xe HPG」の概要が公開となった。2022年第1四半期登場予定の新GPUは,リアルタイムレイトレーシングとAIベースの超解像機能を搭載するという。その見どころを紹介しよう。

[2021/09/02 12:00]

 Xe HPGアーキテクチャでは,16基の「Xe Vector Engine」(以下,XVE)と,16基の「Xe Matrix Engine」(以下,XMX),それにロード/ストアユニットや命令キャッシュ,L1キャッシュ兼Shared Local Memory(以下, SLM)をひとまとめにして,「Xe-Core」という単位を構成する。要は,近年のGeForce RTX/GTXにおける「Streaming Multiprocessor」に相当するものだ。
 さらに,Xe-Coreを4つ束ねて,演算クラスタ「Render Slice」を構成している。GeForceで言うなら,「Graphics Processor Cluster」にあたるものだ。

Xe HPGのRender Slice
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 ACM-G10コアは,このRender Sliceを8基備えているが,Arc A580では,そのうち2基を無効化して6基が有効になっている。つまり,Arc A580では演算ユニットとなるXe-Coreが,6×4で24基となり,シェーダプロセッサとなるXVEの数は,24×16で384基となる計算だ。

付属アプリケーションの「Intel Arc Control」(Version 1.73.5335.2)からGPUの仕様を確認したところ
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 さて,Xe HPGアーキテクチャでも,リアルタイムレイトレーシングへの対応は重要視されており,1基のXe-Coreにつき,1基の「Ray Tracing Unit」が組み合わされている。そのため,Arc A580では24基のレイトレーシングユニットを搭載しているわけだ。さらにXMXは,浮動小数点数行列積和算演算器として動作し,GeForceのTensor Coreのように利用できる。乱暴な言い方になるが,Arc A580は,数だけならTensor Core並みの演算器を384基備えているということになる。

GPU-ZでArc A580の仕様を確認したところ
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 Arc A580の動作クロックは1.7GHzとされているが,Intelの説明では「最も高負荷な瞬間最大クロックと,最も低負荷な動作クロックの中間値」ということなので,実際のゲームプレイ中の動作クロックはもっと高いということになる。事実,後述するテスト環境において,テスト中の動作クロックを「GPU-Z」(Version 2.55.0)で追ってみたところ,2.4GHzまで上昇しているのを確認した。

 組み合わされるグラフィックスメモリはGDDR6で,容量は8GBと,ミドルクラス向けとしては標準的な容量だ。メモリインタフェースは256bitで,メモリクロックは16GHz相当なので,メモリバス帯域幅は512GB/sとなる。RTX 3050は,メモリバス帯域幅が360GB/s,RX 6600が224GB/sであるのと比較すると,かなりリッチだ。また,RadeonのInfinity Cacheほどではないものの,Arc A580は容量16MBと多めのL2キャッシュを有している点も押さえておきたい。

 そんなArc A580の主なスペックを,RTX 3050とその上位モデルである「GeForce RTX 3060」(以下,RTX 3060),それにRX 6600とその上位モデルの「Radeon RX 6600 XT」(以下,RX 6600 XT)とともにまとめたものが,表1となる。

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若干大き目のカードサイズ

Striped Axial Fan搭載のオリジナルクーラー


 それでは,Arc A580 CL 8GOのカードを見ていこう。

Arc A580 CL 8GOの前面(上)と背面(下)
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 カード長は,実測で270mm(※突起部除く)ほどだが,基板自体は205mmほどしかなく,GPUクーラーがカード後方に大きくせり出た格好だ。

カード長は270mmほどで,GPUクーラーが大きい印象だ。基板の長さはカード長の4分の3程度しかない
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 重量は実測で約802g。今回,比較対象に用意したRTX 3060搭載の「ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC」がカード長約227mmで,重量が約545.5gなので,それよりは大きくて重いということになる。

重量は実測で約802gで,1kgには届かないものの,ミドルクラス向けとしては少々重めだ
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 GPUクーラーは2.4スロット占有タイプで,100mm径相当のファンを2基搭載する。これらのファンは,ブレードに3本の線状の突起が設けられた「Striped Axial Fan」を採用しており,ASRockによるとこの突起によりエアフローが向上し,冷却性能も上昇しているとのこと。
 GPUクーラーには4本のヒートパイプを使用しており,電源部にはFETとドライバICを1パッケージに収めた「Dr.MOS」や,100Aまで対応するパワーチョークを採用することで,熱の抑制と電圧の安定化を図っている。

GPUクーラーは2.4スロット占有タイプで,若干ではあるがブラケットからはみ出し,厚みのあるタイプだ
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カードを横から見たところ。放熱フィンがカード前方と後方の2ブロック構成で,その間をヒートパイプが結ぶ構造なのが見て取れる
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Intel Arc Controlでファンカーブからファン速度の設定を変更するところ
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 また,設定ソフト「Intel Arc Control」を使用することで,ファン速度を30〜100%の範囲から1%刻みで任意の値に固定できるほか,ファンカーブから任意の温度における回転数を自由に変更することが可能だ。アイドル時に回転を停止する「0dB サイレントクーリング」という機能も有する。

 ASRockの説明では,動作クロック設定は2000MHzにクロックアップされているとのことだが,GPU-Zでは1700MHzまでしか表示されなかった。Intelが明らかにしているArc A580の動作クロックからすると,Arc A580 CL 8GOは,より高いクロックまで伸びるということなのだろう。なお,メモリクロックは16GHz相当でリファレンス仕様と変わらない。

8ピン×2の補助電源コネクタは,基板の端に実装されているため,カード全体では中央寄りにある
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 PCI Express補助電源コネクタは,一般的な8ピンタイプを2基備えていた。当然ながら,その両方に正しく電力を供給しないと,正常に動作しない。

 映像出力インタフェースは,DisplayPort 2.0×3にHDMI 2.0b×1という構成だ。

ブラケットにはDisplayPortを3つ,HDMIをひとつ装備。通気孔もかなり広めに設けられている
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Starfieldのテストを追加してArc A580の実力を検証する


 それではテスト環境の構築に話を移そう。
 今回,Arc A580の比較対象には,RTX 3060とRTX 3050,Radeon勢からRX 6600 XTとRX 6600の4製品を用意した。ただし,ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OCを始めとするいくつかの製品は,メーカーレベルで動作クロックを高めたクロックアップモデルのため,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.5)でリファレンス仕様まで動作クロックを下げている。ただ,Arc A580 CL 8GOは,Afterburnerでは動作クロックを変更できないため,カードの素の状態でテストを行っている。

 グラフィックスドライバは,Arc A580が「Version 31.0.101.4830」で,これはArc A580のレビュワー向けに配布されたものだ。RTX 3060と3050は「GeForce 537.58 Driver」を,RX 6600 XTと6600は「AMD Software Adrenalin Edition 23.9.3」といった具合に,比較対象はいずれも,テスト時点での最新バージョンを使用している。また,今回のテストでは「Resizable BAR」を有効にしてテストを実施した。そのほかのテスト環境は表2のとおり。

表2 テスト環境
CPU Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz,最大クロック4.9GHz,共有L3キャッシュ容量64MB)
マザーボード MSI MEG X570 ACE(AMD X570,BIOS 7C35v1M)
メインメモリ G.Skill F4-3200C16D-16GIS PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2(DDR4-3200の16-16-16-36設定で利用)
グラフィックスカード ASRock Intel Arc A580 Challenger 8GB OC
(Intel Arc A580,グラフィックスメモリ容量8GB)
ZOTAC Technology ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC
(GeForce RTX 3060,グラフィックスメモリ容量12GB)
Palit Microsystems GeForce RTX 3050 StormX OC
(GeForce RTX 3050,グラフィックスメモリ容量8GB)
MSI Radeon RX 6600 XT GAMING X 8G
(Radeon RX 6600 XT,グラフィックスメモリ容量8GB)
Sapphire Technology SAPPHIRE PULSE AMD Radeon RX 6600 Gaming
(Radeon RX 6600,グラフィックスメモリ容量8GB)
ストレージ Samsung Electronics SSD 850 EVO(MZ-75E500,500GB)
電源ユニット CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W)
OS Windows 11 Pro 22H2(Build 22621.2428)
チップセットドライバ AMD Chipset Drivers 5.08.02.027
グラフィックスドライバ Arc A580:31.0.101.4830
GeForce:GeForce 537.58 Driver
Radeon:AMD Software 23.8.1

 テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション27に準拠したものだ。だが,次期レギュレーションを先取りする形で,「God of War」に替えて「Starfield」のテストを追加した。
 テスト方法は,ニューアトランティスという都市のMAST地区で,一定のルートを移動するというもの。なお,フレームレートの測定には「CapFrameX」(Version 1.7.1)を使用し,グラフィックのプリセットは,Arc A580の性能を考慮して「低」を採用した。

 さらに,Arc A580のレイトレーシング性能を知るべく「3DMark」(Version 2.27.8177)において,「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」のテストを追加。そのほか,各種ゲームにおいてArc A580は極力「Intel XeSS」を,ゲームが対応していない場合は「AMD FSR 2.0/2.1」を使用した。同様に,RTX 3060と3050も「DLSS」を使用するが,ゲームが対応していない場合はAMD FSR 2.0を使う。RX 6600 XTとRX 6600は,いずれの場合もAMD FSR 2.0または2.1を使用する。
 各ゲームにおける設定内容は以下のとおり。

  • Marvel's Spider-Man Miles Morales(以下,Spider-man MM)
  • アップスケールメソッド:Arc A580→XeSS,RTX 3060/3050→DLSS,RX 6600 XT/6600→AMD FSR 2.1
    アップスケール品質:すべてのGPU→品質
  • バイオハザード RE:4
  • FedelityFX Super Resolution 2:すべてのGPU→Quality(画質重視)
  • Call of Duty: Modern Warfare II
  • アップスケーリング/シャープニング:Arc A580→INTEL XESS,RTX 3060/3050→NVIDIA DLSS,RX 6600 XT/6600→AMD FSR 2.1
    Intel XESS,NVIDIA DLSSプリセット,AMD FSRプリセット→クオリティ
  • Starfield
  • アップスケーリング:すべてのGPU→FSR2
  • F1 23
  • アンチエイリアス:Arc A580/RX 6600 XT/6600→AMD FSR2,RTX 3060/3050→NVIDIA DLSS
    アンチエイリアシングモード:すべてのGPU→クオリティ

 テスト解像度は,IntelがArc A580について,1080pでのゲームプレイを想定しているため,1920×1080ドットと2560×1440ドット,それに負荷が重過ぎることを承知のうえで3840×2160ドットでのテストも追加した。


3DMarkのスコアは優秀だが,ゲームでは疑問が残る結果も


 それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。

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 Arc A580は,RTX 3060に16〜22%程度の差を付けて,Fire Strike Extremeまでなら,RX 6600 XTにほぼ肩を並べている点は立派だ。4K相当のFire Strike Ultraになると,Arc A580はRX 6600 XTに約9%ほど離される形となるが,このあたりはRX 6600 XTのInfinity Cacheが奏功したと捉えるのが妥当だろう。

 続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。

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 RTX 3060比で見ると,Arc A580は,Fire Strike Extremeまでは22〜27%程度の差を付けるものの,Fire Strike Ultraでは,約14%ほどまで差を詰められている。このあたりは,RTX 3060のグラフィックスメモリ容量が12GBと大きいことによるものだろう。また,RX 6600 XT比では,Fire Strike Extremeまでは1〜3%程度しか開きがなく,しがみついているといったスコアであるものの,Fire Strike Ultraでは,約13%まで差が広がっている。本来,Arc A580では対象外の高解像度ではあるのだが,高解像度での性能の落ち込みは決して小さくないようだ。

 GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ3だ。

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 Arc A580とRTX 3060の差は20〜27%程度と,Fire Strike Ultraでもしっかり引き離している点に注目できよう。RX 6600 XT比でも,Fire Stirke“無印”こそ肩を並べられたものの,Fire Strike Extremeで約3%,Fire Strike Ultraで約6%と,テスト解像度が高まるにつれて差を付けてきたのは好印象だ。

 DirectX 12テストとなる「Time Spy」の結果に移ろう。グラフ4は総合スコアをまとめたものだ。

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 Arc A580は,RTX 3060に18〜26%程度の差を付けたほか,RX 6600 XTにも9〜17%程度上回っており,なかなか優秀な結果を残している。とくに,Time Spy“無印”では,Arc A580だけがスコア1万を超えているあたりは見どころだ。

 続くグラフ5は,Time SpyのGPUテスト結果となる。

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 ここでは,スコアにCPU性能の影響がなくなるため,Arc A580とRTX 3060の差は23〜29%程度まで広がっている。RX 6600 XTに対しても,その差は13〜20%程度に達しており,DirectX 11のFire Strikeよりも,DirectX 12のTime Spyのほうが,Arc A580の真価を発揮できていると言ってよさそうだ。

 もうひとつのDirectX 12のテストとなるSpeed Wayの結果をグラフ6に示そう。

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 Time Spyとは打って変わって,Arc A580はRX 6600 XTを約25%も引き離す一方で,RTX 3060には約3%ほど差を付けられた。ここは,Arc A580が伸び悩んだというよりも,RTX 3060が良好な性能を発揮したと捉えるべきだろう。

 リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ7だ。

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 Arc A580は,RTX 3060を約12%上回り,RX 6600 XTには約17%もの差を付けている。Arc A580に組み込まれたRay Tracing Unitの性能は,なかなか優秀だ。この結果であれば,ちょっとレイトレーシングを軽めに設定してゲームをプレイしてみるといった用途でも,十分対応できそうだ。

 もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing Feature testの結果が,グラフ8となる。

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 Arc A580のスコアはさらに伸び,RTX 3060に約28%,RX 6600 XTに約55%の差を付けるなど,結果はかなり優秀だ。

 さて,3DMarkでは秀でた結果を残したArc A580だが,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ9〜11は,Spider-Man MMの結果となる。

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 Arc A580の平均フレームレートは,RTX 3050に8〜39%程度の差を付けたものの,RTX 3060には10〜21%程度の差を付けられた。総じてArc A580の立ち位置は,RX 6600 XT以上,RTX 3060以下といったところか。

 続いて,バイオハザード RE:4の結果がグラフ12〜14となる。

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 バイオハザード RE:4におけるArc A580の平均フレームレートは,1920×1080ドットでRTX 3050に約26%の差を付けたものの,解像度が高まるにつれて差は縮まり,3560×2160ドットでは追いつかれてしまった。RTX 3060との差も,11〜42%程度と高解像度となるにつれて広がっており,高負荷時の性能には疑問が残る結果となった。
 RX 6600に対しても,Arc A580の平均フレームレートは1920×1080ドットこそ約3%上回っているが,それ以外の解像度では14〜22%程度と届いていない。1パーセンタイルフレームレートも平均フレームレートと同じ傾向で,Arc A580は,RX 6600に対してあまり優位に立ち回れていない。

 Arc A580の弱さが露呈してしまったのが,Call of Duty: Modern Warfare II(グラフ15〜17,グラフ内ではCoD MW2と表記)だ。

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 今回は,Intel XeSSを使用したものの,それでもArc A580の平均フレームレートは,RTX 3050やRX 6600に届いていない。とくに,RX 6600との差は約61%にも達してしまっており,Arc A580の結果は芳しくない。最小フレームレートを見ても,Arc A580は1920×1080ドットで50fpsにも届いておらず,60fpsを優に超えているRX 6600とは,大きな差が付いてしまっている。

 さらにArc A580が奮わない結果となったのが「Fortnite」(グラフ18〜20)だ。

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 Arc A580の平均フレームレートは,1920×1080ドットでRTX 3050やRX 6600を下回り,2560×1440ドットでようやく肩を並べるレベル。とくに,Arc A580の最小フレームレートは,1920×1080ドットでも40fps程度と非常に低く,ドライバアップデートで幾分か解消されたとはいえ,Intel ArcがDirectX 11を不得意とする弱点は,Arc A580でも垣間見える(関連記事)。

 Starfieldの結果がグラフ21〜23となる。

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 ここでも,Arc A580の結果はパッとしない。Arc A580の平均フレームレートは,RTX 3050に13〜56%程度もの差を付けられ,RX 6600に対しても,2560×1440ドット以下の解像度で半分程度の性能しか発揮できていない。1パーセンタイルフレームレートもArc A580は低めで,1920×1080ドットでも30fps程度と,快適なプレイが難しいレベルだ。このあたりは,ドライバソフトの最適化がまったく足りていない印象だ。

 グラフ24は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

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 Arc A580は,RTX 3050やRX 6600を上回るものの,RTX 3060やRX 6600 XTには届いていない。1920×1080ドットのスコアは1万7000台と,スクウェア・エニックスが指標で示す最高評価の1万5000を超えており,この解像度であれば快適にプレイできそうだ。ただ,2560×1440ドットでは1万5000を割っているので,快適なプレイを目指すのであれば設定を下げる必要がありそうだ。

 そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ25〜27だ。

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 平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものになっているが,ここで注目したいのはArc A580の最小フレームレートだ。Arc A580は,1920×1080ドットでも約31fpsと低く,Fortniteで見えたDirectX 11を不得意とする弱点は,ここでも顕在化してしまっている。

 グラフ28〜30には,「F1 23」の結果をまとめている。

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 Arc A580の平均フレームレートは,RTX 3050以上,RTX 3060未満となり,Spider-Man MMなどと似た傾向だ。RX 6600に対しても6〜32%程度と明確な差を付けており,RX 6600 XTとRX 6600の間に収まる性能を見せている。


消費電力は競合製品に比べて高め


 さて,Arc A580のTotal Board Powerは185Wと,単純比較はできないものの,RTX 3060のTGP 170Wや,RX 6600 XTの160Wと比べて高い。補助電源コネクタを2基備えている点を見ても,消費電力の高さを容易に想像できる。はたして実際の値はどの程度なのだろか。
 そこで,NVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回の計測は,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中に行った。その結果をグラフ31に示そう。

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 これを見ると,RTX 3060やRX 6600 XTが160〜170W程度で推移しているのに対して,Arc A580は200W以上で,明らかに高いのが見て取れる。
 そこで,グラフ31の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたうえで,最大値と合わせてまとめたものがグラフ32となる。

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 Arc A580の中央値は約209Wで,RTX 3060よりも40W弱高く,RX 6600 XTとの差も50W近くまで開いている。Arc A580は最大値も約244Wと,ほかのGPUと大差がついており,ほかのエントリー〜ミドルクラスGPUと比べても消費電力は高めだ。

 さらに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いたシステム全体の最大消費電力のみを計測してみた。テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ33だ。

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 各アプリケーション実行時におけるArc A580の消費電力は,RTX 3060から最大で約50W高く,RX 6600XTとの差も最大で約85Wとかなり差が開いてしまっている。Arc A580の消費電力の高さは,こちらでも明確だった。

 GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ34となる。

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 Arc A580は,高負荷時でも70℃を切っている点は評価できる。さすがにこれだけ大きなGPUクーラーを搭載しているだけあって,その冷却性能は申し分ない。アイドル時が53℃と高めなのは,ファンの回転が停止するためだ。

 なお,筆者の主観であることを断ったうで,Arc A580 CL 8GOの動作音について述べると,十分静かな印象受けた。少なくとも,ケースに入れてしまえば,まったく聞こえない程度の動作音で,静音性は十分なGPPUクーラーと言ってよさそうだ。


今後のドライバの最適化がカギ。税込実勢価格は約3万5000円


Arc A580 CL 8GOの製品ボックス
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 3DMarkのスコアの優秀さを見ると,Arc A580のハードウェアはかなり出来がよさそうだ。しかし,ゲームのテスト結果を踏まえると,実力はあまり引き出せておらず,RTX 3060やRX 6600 XT未満の性能しか発揮できていない。とくに,DirectX 11世代のゲームは,まだまだかなり不得意のようで,そうしたゲームで最小フレームレートが上昇しない点は,かなり深刻な問題だ。
 まとめると,Arc A580はDirectX 12対応ゲームを含めてドライバソフトの最適化が全然足りていない印象で,今後,Intelの取り組み次第では化ける可能性を秘めているとも言える(もちろん,化けない可能性もあるわけだが)。

 Arc A580 CL 8GOの税込実勢価格は,3万4980円前後で,これはRTX 3060よりも5000〜8000円ほど安い。RX 6600 XTは,ショップによって価格の差が大きめであるものの,それでも5000〜1万円ほど安価な設定だ。ただ,その程度の価格差であれば,GeForceやRadeonを選んだほうが,ゲーマーにとってはメリットが大きい。Arc A580を慌てて購入する必要はないだろう。
 Arc A580の「Xe Media Engine」による「AV1エンコード」対応に惹かれるのであれば,魅力的な存在だが,ゲームプレイを重視するなら,ドライバソフトが成熟してから購入しても遅くはないはずだ。

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