プレイレポート
「ALTDEUS: Beyond Chronos」の追加エピソード「EPISODE YAMATO」プレイレポート。真っ直ぐなヤマトに心が和み,揺さぶられる
本編に用意されているエンディングのひとつを,別の主人公の視点で体験できるこのDLCでは,バトルにも大きな変更が加えられている。そのプレイ感を本稿でレポートしよう。
物語の舞台は2280年の地球。200年前より度重なる超巨大異生物「メテオラ」の襲来を受け続け,地上から追われた人類は,最後の砦として半径2キロの地下都市A.T(Augmented Tokyo)を建設。メテオラから地上を取り戻すべく,軍隊組織「プロメテオス」を結成し,人型都市防衛兵器「マキア」を開発する。
アルトデウスの本編では,マキアの2号機,アルト・マキア(バスター・マキア)のパイロットであるクロエ少尉(CV:鬼頭明里さん)が,かつての親友であるコーコの姿をしたメテオラと戦うことの葛藤が描かれ,ストーリーの分岐点での選択や決断,戦い方によって変わるエンディングを体験できる。
エピソード ヤマトでは,1号機アレス・マキア(ソード・マキア)を駆る,ヤマト・アマナギ少尉(CV.小林裕介さん)が主人公となり,クロエが迎えたエンディングのひとつ「The Celestial Cradle」(通称・赤ルート)を,ヤマト視点で新たに体験できる。そのため,本編の赤ルートをプレイしてからの方がより深く楽しめるだろう。
ゲームの基本システムは本編を引き継いでおり,操作方法にも変更はない |
このパネルにタッチするとゲームがスタート |
「ソードで斬る」アクションが戦場の臨場感をさらに高める
「ロボットアニメの主人公パイロットになれる」
アルトデウスを一言で説明するなら,やはりこの表現が一番しっくりくる。そんな子どもの頃に抱いた夢を実現してくれるのが,アルトデウスのバトルにあたる「マシンアクションパート」だ。
本編では,後衛タイプのアルト・マキアに搭乗し,ミラージェネレーターやカウンターアロー,レールキャノンといった兵器で戦ったが,エピソード ヤマトでプレイヤーが乗り込む機体は,前衛タイプのアレス・マキアで,ストライクソードやシールドジェネレーターといった近接戦闘用の装備を駆使してバトルに臨むことになる。
システムチェック中の画面に,アレス・マキアのナンバーを示す「SHIP09」の文字が。本編のアルト・マキアのナンバーは「SHIP11」だったので,まだ出てきていない「SHIP10」の機体も気になるところ |
ミカニ・リンク(マキアとパイロットをつなげる,いわゆる操縦桿)と頭部の接続中。コックピットの外に見える機体の腕が自分の腕に合わせてリアルタイムで動く様子にはテンションが上がる |
シールドジェネレーターを起動。アレス・マキアにもシールド機能が備わっているが,それに比べると出力は弱いようだ |
ストライクソードのキャリブレーション中。トリガーと指の動きが連動しており,両手でしっかり握ることもできる |
アルトデウスのマシンアクションパートは,反射速度や複雑な操作などを求められるものではなく,非常にシンプルな作りだ。アドベンチャーゲームの一部であるバトルを盛り上げるために,コックピット内でロボットをコントロールする雰囲気や,カッコいいビジュアルを演出するものという位置づけに近い。
今作ではここに,ソードによる新しいアクションが加わった。両手で握り込んだソードで画面の指示通り袈裟斬りにする動作は,実にアレス・マキアらしい。
本編でも,空中に表示されるARウィンドウにタッチしたり,指でトリガーを引いたりといったアクションはあったが,プレイヤー自身が大きく腕を振り下ろすというアクションは,戦いに参加している意識を一層高めてくれる。
VR初心者やアクションが苦手なユーザー,VR酔いなどに配慮された設計は本作でも健在。とはいえ,いつかこのスタイルで激しいアクションを体験してみたいかも? |
「ソードで斬る」という動作はコマンドとして受け付けられるので,リアルタイムで反映されるわけではない。なお,Oculus Storeでは「立ってプレイ」推奨となっているが,座りながらでも問題なくプレイできた |
選択に迷いすぎて時間切れになったり,棒立ちし続けたりしない限り,マシンアクションパートで手こずることはなく,気持ちよくプレイできるはずだ。ソードとシールドのどちらで応戦するかも重要な選択。エンディングも変化するので,いろいろなパターンを試してみるといいだろう。
ヤマトの熱量と真っ直ぐさに心が和み,揺さぶられる
デザインドヒューマン(作られた人間)と呼ばれるクロエが言葉少なく感情も希薄なのに対し,考えるより先に身体が動くヤマトは,真っ直ぐで裏表のないキャラクター。さまざまな企みや思惑のもとで行動したり,なかなか本音を明かしてくれない人物のほうが多い,軍事組織プロメテオスの中においては,稀な存在だ。
本作の「アドベンチャー&探索パート」では,そんな彼の視点で仲間たちと会話し,幾つかの選択・決断を迫られながら,ストーリーを進めていくことになる。
実際にヤマトになってみると,彼には彼なりの迷いや願いがあり,思いつきではない信念・生き方のもとで行動していることが分かる。そして,本編ではクロエに共感していたイベントでも,このDLCではアツいヤマトの言動に気持ちが揺り動かされてしまうに違いない。
頑なになりがちなクロエとは違って朗らかなヤマトだからか,周りの登場人物たちもどこか肩の力が抜けていたり,飾り気が取り払われていたりと,柔らかなレスポンスになっていることが多いように感じた。
何となく遠慮度低めで絡んでくるアーク・ノア,つい恥ずかしいセリフを幼馴染に言ってしまうアオバ,そして普段は冷たい発言が多いジュリィ博士までもが,聞こえそうな距離で意外な言葉を漏らす。
ヤマトの素直さ,純粋さは,知らず知らずのうちにたくさんの人物たちに影響を与えているのかもしれない。
本編のときから,事あるごとに「バカ」と言ったり言われたりすることが多かったヤマト。本DLCでも安定の言われっぷりだが,本人以外が言うそれは,言葉通りの意味ではない。エピソード ヤマトをプレイすると,それが一段と伝わってくる。
このセリフを待ち望んでいたプレイヤーは案外多いのでは? |
先んじて自分から言ってしまうのが何ともヤマトらしい |
アオバは,ヤマトの性格を悪くは思っていないようだ。この後,選択によっては,続編にもつながっていきそうな,とあるメッセージが見られる |
たっぷりの皮肉の中に,励ましが宿っているように感じてしまうのは気のせいだろうか……。うーん,やっぱり勘違いかもしれません |
「エピソード ヤマト」のエンディングは,筆者がプレイした限りでは2つほどで,複雑な分岐はなく,クリアするまで何度も周回することが前提にはなっていない。本編の中のひとつのエンディングに至るルートの一部を切り取ってフォーカスした,数時間ほどのプレイでクリアできてしまうコンテンツだ。
クリア後にはロボットバトル部分をすぐプレイできる「AUGMENTED MACHINE ACTION」モードが開放される。個人的には,今作でバックログ機能の追加やスキップ機能の改善があると嬉しかった。そうした便利機能によって没入感が損なわれることのないパワーが,アルトデウスにはあると感じる。
明るくムードメーカー役のヤマトがいかに悩み,考え,どういった想いと願いから本編での言動に至ったのか,別の道に進む可能性がそこにはあったのか。アレス・マキアに乗り込み,ストライクソードを振るうバトルを新たに体験しながら,表面からはうかがえない部分に,ヤマト自身として浸る──本作はその体験のための潔いショートストーリーとも言えるかもしれない。
ヤマトを中心にしたときに見えてくる小さくても新しい発見は,この世界を広げてくれた。そうなるとさらなる追加エピソードに期待したくなる。こちらの記事でお伝えしたように,7月19日にはMyDearestの新規プロジェクトが発表予定だが,もしこれがアルトデウスの新規エピソードだったとしたら,誰の視点でのどんなストーリーになるのか,気になるところだ。
「ALTDEUS: Beyond Chronos」公式サイト
- 関連タイトル:
ALTDEUS: Beyond Chronos
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