インタビュー
[インタビュー]「FINAL FANTASY XVI」は,プレイヤー全員にエンディングを観てほしいと思える仕上がりに。開発のキーパーソン3名が語る,その魅力とは
「State of Play」で公開された,
気になる部分はどうなっている?
4Gamer:
それでは,RPGとしてどうなっているのかというところを,あらためて教えてください。先ほど40〜50時間というお話がありましたが,ゲームのボリュームはそのくらいなのでしょうか。
髙井氏:
エンディングに到達することを考えたら,それぐらいだと思います。
4Gamer:
サイドクエストやほかのコンテンツを進めると,もっと増えると。
髙井氏:
最低でも倍くらいにはなりますね。
4Gamer:
サイドクエストの発生条件はどうなっているんでしょうか。
髙井氏:
クライヴのストーリーの進行状態に合わせて発生するパターンと,同じ場所で連続して発生し,一つの話としてつながっていくパターンがあります。後者は前の話が終わらないと続きが発生しませんが,基本的にはゲーム進行に合わせて発生していくと思ってもらって間違いないです。
4Gamer:
サイドクエストやサブコンテンツを必死に追いかけているうちに,メインストーリーを忘れてしまうなんてことはありませんか?
たぶん,それはないです。そのあたりは,全般的なゲームデザインの中で,開放していくサイドクエストの数だったり,そもそも受けたサイドクエストの内容だったりに関して,「ここでこれを入れると効果的」ということをしっかり計算して入れています。それにオープンワールドでもないので,メインストーリーが飛んでしまうようなことはないと思います。
とくにサイドクエストに関しては,すべてにお話があって,例えば「薬草を採ってこい」といった内容であっても,「なぜ,その薬草が必要なのか」ということを世界観に沿ってストーリー仕立てで理解できるようにして,自然に受け入れられる形にしてあるんです。
髙井氏:
メインストーリーの進行を無視してサイドクエストに行けるかどうか怪しいくらい,メインが引っ張っていると思います。
4Gamer:
実際に遊んで早く確認したいです。
ところで,チョコボ以外に乗り物は出てきますか?
髙井氏:
プレイヤーが操作できるのは,チョコボだけです。ただ,話の中でいくつか乗り物が出てくることはあります。
僕と前廣の最初の想定では,クライヴの移動が決して遅くないので,乗り物としてはチョコボすら必要ないと考えていたんですよ。でも,「FFだから絶対に必要」というプロデューサーの吉田からのオーダーが強くあったのと,確かにチョコボは移動に便利ではあるので,頑張って実装しました。
4Gamer:
オープンワールドではないにしても,3Dでそれなりに広いフィールドのゲームは,移動時間がプレイの大半になってしまうこともありますが……。
前廣氏:
そういうことのないような作りになっています。
髙井氏:
ファストトラベルもわりと細かくできるし,移動ばかりとは感じないんじゃないですかね。「なかなか目的地に着かないな」みたいな感覚を抱くことはないと思います。
祖堅氏:
あと今回は,目的地のアイコンがマップに表示されるので,そこに向かって一直線で行けば,それほど時間はかかりません。いわゆる「どこに行っていいか分かんない」ということが,作中で1回もない。もちろん寄り道しようと思ったらできるけど,「突き進むんだったら,どんどん行ってください。ここです」と示されるから,そんなにストレスなくプレイできます。
4Gamer:
自分のように3Dフィールドで迷子になりがちなプレイヤーでも安心ですね。
またState of Playで公開された映像についての質問させてください。フェニックスのバトルシーンがまるでシューティングゲームのようで驚きました。召喚獣ごとに操作方法も大きく変わるんでしょうか。
前廣氏:
共通部分もありますが,召喚獣ごとというか,バトルがそれぞれ異なっているので,シチュエーションによって操作も異なる形です。でも特定の召喚獣だけ操作がやたら難しいということはありませんので,そこもご安心ください。
4Gamer:
そういえば,サブコンテンツの「賢者ハルポクラテス」で,世界のロアをアンロックしていくときに「勝利のファンファーレ」が流れていましたが,本編でも流れるシチュエーションはありますか?
祖堅氏:
あの場面ではドット絵とファミコン時代の音源を使っていますが,FFXVIオリジナルアレンジのファンファーレも,ゲーム内の何か所かで流れます。実は何かを歌っているんですが,それが何かは最後までやれば分かると思いますよ。
4Gamer:
State of Playでは,ほかにもアジトの機能やコンテンツが公開されました。とくに注目してほしいものはありますか。
髙井氏:
ロアを見られるハルポクラテスや,ヴァリスゼアの戦乱の歴史などを確認できる「軍事学者ヴィヴィアン」あたりは,時間が許すのであれば隅々まで読んでいただきたいと思います。メインストーリー以外で見てほしいのは,サイドクエスト全般ですね。前廣が言ったように,しっかりとしたお話になっているので,一とおり読んでいただきたいです。
こんなによくできたゲームはなかなかないから
絶対に遊んだほうがいい
4Gamer:
ところでFFXVIは,「ストーリーフォーカス」と「アクションフォーカス」という二つのモードが選択可能で,さらにアクセサリーの付け替えにより,アクションの得意な人から苦手な人まで,多くのプレイヤーにマッチする仕様ですよね。本当にアクションが苦手で苦手で……という人でも,ちゃんとクリアまでたどり着けるのでしょうか。
祖堅氏:
もちろん大丈夫です。開発中の話ですが,「これを何回もチェックしなければならない」というときに,サポートアクセサリーの「《オートスロー》の指輪」が本当に便利だったんですよ。疲れたときは,アイツがないとやってられなかった(笑)。
髙井氏:
「《オートスロー》の指輪」と「《オートアタック》の指輪」は召喚獣バトルでも普通に使えますから,召喚獣バトルをクリアできなくて進めなくなるということもないと思います。僕自身「召喚獣との戦いでは,難度で詰まらせることはしたくない」と,スタッフに口を酸っぱく言っていたので,必要以上には難しくなってはいないと思います。
4Gamer:
実は最近,アクションゲームをプレイするときに,何の躊躇もなくEASYモードを選べるようになってしまったんです。
前廣氏:
分かります。若い頃は,プライドが許さなかったんですけど。
4Gamer:
それよりも,快適に遊びたいという気持ちが勝ってしまうんですよね。
祖堅氏:
FFXVIには,どこにもEASYとは書いてありません。プライドが邪魔することはないです(笑)。
髙井氏:
普通にストーリーフォーカスを選んでいただければ(笑)。
前廣氏:
そういう意味だと,中二病を患ったゲーマー達なので,EASYを選ぶ自分が許せないというか……。
祖堅氏:
そう。自分に腹が立っちゃう。
前廣氏:
でもHARD以上でやりたいんだけど,ちょっと身体が付いてこない(笑)。
髙井氏:
「HARDでいいんだよ。いいんだけど,時間がさ。そこはゲーム側も気を使ってもらわないと」みたいなね。ええ,こんな人達が作ってるんで(笑)。
4Gamer:
すごく安心しました。
祖堅氏:
でもFFXVIは,オートスローを使っても生ぬるくなった感は全然なくて,むしろやってる感が増える。ストレスが軽減されるだけで,やってる感がメチャクチャあるので「イェー,簡単!」みたいにはならず,しっかりやり応えがあるんです。
髙井氏:
見ているだけでもないんだよね。
祖堅氏:
うまい作り方だなと思いましたね。僕はそこに開発で関わっているわけではないので,ゲーマーの一人としての素直な感想です。
髙井氏:
もちろん「俺は疲れないし,高難度は大歓迎なんですけど」という皆さん向けの娯楽は,別途たっぷりと用意していますので,そちら側も心配しないでいただければと思います。
前廣氏:
「コンバットディレクター・鈴木良太からの挑戦状」みたいなコンテンツもありますから。
髙井氏:
僕,アレできないですから(笑)。
前廣氏:
「クッソ難しい。無理だ,こんなの!」ってなるもんね(笑)。
髙井氏:
「あー,イライラする!」って(笑)。
祖堅氏:
「本当にできるの?」みたいなね(笑)。
前廣氏:
そういったハードコアゲーマー向けのコンテンツもあるので,幅広い皆さんに遊んでいただきたいです。
4Gamer:
トロフィーや実績をコンプリートするために,高難度コンテンツをクリアする必要はあるのでしょうか。
前廣氏:
それはないです。僕がイヤなんで,そういった作りにはしていません。
髙井氏:
トロコンは,アクションが得意でない方も達成できると思います。少々根気がいるのが1〜2個あるぐらいですね。
4Gamer:
トロコンを目指してやり込む要素もチラホラあると。
髙井氏:
ちょっとだけですけどね。そんなに条件は厳しくないと思います。
前廣氏:
頑張るのって辛いじゃないですか。生きていくだけで頑張ってるのに……。
髙井氏:
これは娯楽なんだから,楽しく頑張れるのが良いなと思っています(笑)。
前廣氏:
ですからトロコンは,プレイにおけるちょっとした目標くらいの位置付けで。
髙井氏:
先ほどもお話ししたように,頑張りたい人には,頑張り甲斐のあるものを別途用意しています。
これも2022年末のギリギリまで調整してまして,QAチームに「これ,よくSランクいけたね」と話したら,「食らわなければ,どうということはないので」という答えが返ってきて,なんかカチンときたこともありましたね……。ですので,やりこみ要素である点を踏まえて再調整かけてもらいました(笑)
4Gamer:
本当の意味で,幅広いプレイヤーが満足できるようなゲームに仕上がったという雰囲気が伝わってきました。
髙井氏:
FFという名前で買っていただいた人から,「アクションだったらやってみようかな」という人までフォローするつもりで作りましたから,幅広い皆さん全員に遊んでもらえると思います。
祖堅氏:
ぜひ物語の最後までやってほしいです。今回は,物語の最後までプレイしてこそ意味があるゲームになったと思います。
4Gamer:
エンディングまで到達できる人は,どれくらいいると思いますか。
祖堅氏:
時間さえ許せば,ほとんどの人がストーリーをクリアできると思います。
髙井氏:
正直,100%の方にストーリーをクリアしてほしいと思います。もちろん昨今,クリアに至る前に遊ぶのをやめてしまう方も一定数いらっしゃることは,データとして知ってはいるんですが,全員が物語を完結できるように作ったつもりです。アクセサリーを駆使すれば,詰まるところがないと思うんです。
あと,本当にエンディングできっちり物語を閉じて,気持ち良く終わらせているので,そこまで見届けてほしいです。気に入っていただけたら,その後「強くてニューゲーム」から,どっぷりとやり込み要素に浸っていただきたいです。
4Gamer:
例えば数年後に,「FFXVI-2」みたいなものを生み出す余地がないくらい綺麗に収まったということですか?
髙井氏:
作り出そうと思えば,おそらく作り出せるとは思います。世界観をすごく作り込んだので,新しい物語を受け止める土壌はきっちりありますから。ただ……それは誰かに任せたい(苦笑)。
前廣氏:
お話的には,本当に全部出しましたね。髙井の言うように世界観は時間をかけて構築したものがありますけれど,お話としてはFFXVI-2は難しいでしょう。
髙井氏:
今回のFFXVIとしての物語は,綺麗に終わっていると思います。
前廣氏:
本当にきちんと終わらせましたから。
4Gamer:
では同じ世界観で,農民として暮らすシミュレーションみたいなものであれば?。
前廣氏:
需要があるかどうかは分かりませんが,作れなくはないです。
4Gamer:
それくらいきっちり世界観が作られているということですね。実は公開された動画を見て,ところどころに人の営みのようなものが背景にあるような印象を受けました。
前廣氏:
冒頭でお話ししたとおり,最初に地図──つまり世界を作ったんですよ。地理を作って,風の流れや川の流れを風速レベルから作って,そのうえでヴァリスゼアという大陸の4000年ぐらいの歴史を描いたんです。世界観をしっかり作って,その上に人を置いているので,こういう文化があって,こういうことが行われていて,こういう歴史があったから,この村があるんだよ,というところまできちんと起こしました。
だから,「何でこんなところに街があるんだ?」ということは起こらない。必ず,こういう意図があって,こういう生活ができるから,ここに人がいるんだよ,というところまで詰めてから街や集落を設計したんですね。なので,「人の営み」というところまで感じていただけるのは嬉しいですね。
4Gamer:
街一つとっても,「こうやって進んでいくと,この辺から敵が強くなるので,これまでより強い武器が必要になる。だからここに街を置いて強い武器を買えるようにしておく」というような,ゲーム的な事情で作っているわけではないということですね。
前廣氏:
そうですね。全部置いた上で,それをベースに一つ一つのフィールドを設計しているので,自然に感じられるんじゃないかと思います。
4Gamer:
さて,2023年の5月〜6月は,ほかにも大作ゲームがリリースされて,プレイヤーの可処分時間の奪い合いのような状況となります。そこでぜひ,FFXVIをプレイしたほうがいいよ! という強いメッセージをいただけますか?
髙井氏:
絶対に遊んでいただきたいです! 自画自賛は良くないぞ! と吉田からは言われそうですが,スタッフ一同必死に作ってきて,自分で何度も通しプレイをしましたが,とても良いゲームになったと感じています。
前廣氏:
自分達が作ったということを抜きにしても,よくまとまったなと思います。1個のパッケージ,一つのFFXVIというタイトルとして,ゲームそのものをすごくていねいに完成させることができました。そこには自信がありますので,ぜひ触っていただきたいです。
祖堅氏:
今回は最新のものを初め,さまざまなテクノロジーを使ったし,音楽も全部,ゲームに寄り添う形でデザインできたと思います。サラっとプレイすればそれで終わりだけど,ゲーム体験を盛り上げるために,それを実現させるために,いろんなテクノロジーが使われているというのがFFっぽいとも思うので,機会があればそういったところも見てもらえると嬉しいです。まずは1回,最後まで遊んでほしいですね。それに応えるだけのパワーと熱量,そして面白さが詰まっています。損はさせません。
髙井氏:
あと,幸いなことにオープンワールドじゃないので「ほかのゲームと同時にはやれないよ」みたいな拘束はしないです。何なら,ほかのゲームと並行してでも全然遊べます。
前廣氏:
同じ第三開発事業本部が開発と運営を手がけている,FFXIVのレイドの合間にでもプレイできる内容になっていますから。
髙井氏:
もちろんゲームとしての完成度は高いと思っていますし,アクションゲームとしての完成度も高いと思っているのですが,純粋に物語を観るといった楽しみ方もできます。モニターの前に座って,「今日はクライヴがどう動くのかな」という感覚で遊べると思うので,いろんな方に触っていただきたいです。
祖堅氏:
あ,そうそう今日は全然話題に出なかったんですけど,個人的には狼のトルガルがオススメです。いつでも付いてきてくれるから,トルガルを愛でるゲームとして遊ぶこともできます。
髙井氏:
トルガルにはいいクエストがあるんです。もうね,一生大事にするって言いたくなるような,アイツが一番の親友だと思えるような内容になっていますので,ぜひ楽しんでください。
4Gamer:
今日のお話を聞いて,6月22日のリリースがますます楽しみになりました。本日はありがとうございました。
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