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「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
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印刷2021/06/09 22:00

レビュー

シェーダ増強とGDDR6X採用で高性能だが消費電力も大きい

NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition

Text by 宮崎真一


 先週発売となった「GeForce RTX 3080 Ti」に続いて,NVIDIAの新型GPU「GeForce RTX 3070 Ti」(以下,RTX 3070 Ti)のレビューが解禁となった。型番からも分かるとおり,RTX 3070 Tiは,「GeForce RTX 3080」(以下,RTX 3080)と「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070)の間に置かれるモデルで,2割ほどあった両GPUの差を埋める存在となる。

GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition
メーカー:NVIDIA
価格:599ドル(約6万5500円,税別,国内発売予定なし)
画像集#002のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 NVIDIAはRTX 3070 Tiについて,「この価格帯では最高性能を誇るGPU」と自信を見せるが,はたしてゲーマーにとってどのような立ち位置の製品になるのだろうか。テストによりそのポテンシャルを確かめてみたい。


RTX 3070 Tiはフルスペック版GA104

グラフィックスメモリはGDDR6Xに変更


 まずは,RTX 3070 TiがどのようなGPUかを説明しておこう。
 RTX 3070 Tiは,GPUコアにRTX 3070と同じ「GA104」を採用したモデルだ。そのためRTX 3070 Tiは,Ampereアーキテクチャにもとづいていることはもちろんのこと,8nmプロセスで製造されて,ダイサイズ392mm2の半導体ダイ上に約174億個のトランジスタを搭載している点は,RTX 3070と変わらない。

 GA104では,シェーダプロセッサである「CUDA Core」を128基集めて演算ユニットのクラスタである「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を構成する。そのSMを8基集めたミニGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)は,6基ある構成だ。ただ,RTX 3070では,歩留まりの都合で2基分のSMを無効化していた。
 それがRTX 3070 Tiでは,SMを1つも無効化しないフルスペック版のGA104となったので,CUDA Coreの総数は,128×8×6で6144基となる計算だ。これは,RTX 3080比で約71%の規模であり,RTX 3070比では約4%増えている。

NVIDIAコントロールパネルからシステム情報を確認したところ
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RTX 3070 TiにおけるGPU-Zの実行結果
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 RTX 3070 Tiは,SM数が48基となったことで,SM 1基ごとに1基を組み合わせているリアルタイムレイトレーシング向け演算ユニット「RT Core」は,その数が48基となる。RTX 3070は46基だったので,2基増えたわけだ。一方,AI推論アクセラレータである「Tensor Core」数は192基となり,こちらは184基だったRTX 3070から,8基増えた計算となる。
 なお,RTX 3070 Tiのベースクロックは1575MHzで,ブーストクロックは1770MHzと,RTX 3070から若干だが引き上げられた。後述するテスト環境において,「GPU-Z」(Version 2.40.0)でGPUのコアクロックを追ってみたところ,1905MHzまで上昇しているのを確認した。

CUDAの開発キットに付属している「devicequerydrv.exe」の実行結果
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 さて,RTX 3070 TiとRTX 3070とで,最も大きな差異となるのは,グラフィックスメモリだ。RTX 3070はGDDR6メモリを採用しているのに対して,RTX 3070 Tiでは,GDDR6Xメモリに変更されたのだ。メモリチップの高速化にともない,RTX 3070 Tiのメモリクロックは19GHz相当と,RTX 3070の14GHz相当から大きく向上しており,その結果,メモリバス帯域幅は608GB/sと,RTX 3070の448GB/sと比べて約35%増となった。
 ただ,グラフィックスメモリ容量は据え置きの8GBなので,RTX 3070 TiはRTX 3070からメモリバス帯域幅を引き上げたという理解でいいだろう。

 そんなRTX 3070 Tiの主なスペックを,上位モデルのRTX 3080,下位モデルのRTX 3070,そしてTuring世代のRTX 2080 Tiとともにまとめたものが表1となる。

※1 FEは1635MHz ※2 FEは260W
※3 変換ケーブルは8ピン×2 ※4 変換ケーブルは8ピン×1
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カード長は実測で約267mm

RTX 3080 Founders Editionを踏襲したデザイン


 それでは,RTX 3070 Ti Founders Editionのカードそのものを見ていこう。
 カードの外観は,ガンメタリックの金属で覆われた側面や,放熱フィンがむき出しになっている部分があるなど,RTX 3080 Founders Editionを踏襲したデザインだ。パッと見では,RTX 3080 Founders Editionと見間違うほどよく似ている。

カードを別の角度から。見た目はRTX 3080 Founders Editionや,GeForce RTX 3080 Ti Founders Editionにそっくりなのだが,カードサイズは一回り小さい
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 カード長は,実測で約267mmと,RTX 3080 Founders Editionより20mmほど短く,RTX 3070 Founders Editionよりは30mmほど長い計算になる。一方,重量は実測で約1188gと,RTX 3080 Founders Editionから約170gほど軽く,RTX 3070 Founders Editionより約150gほど重い。RTX 3070 Ti Founders Editionは,長さと重量もRTX 3080とRTX 3070の中間というわけだ。

RTX 3070 Ti Founders Editionのカード長は実測で約267mm(左)。重量は約1188gだった
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外枠と一体成型されたファン。後方のファンが,裏面へとエアーが抜ける構造なのが写真からも見て取れる
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 GPUクーラーは,2スロット占有タイプで,90mm径相当のファンを2基搭載する。ただ,RTX 3070 Founders Editionは,表側に2基のファンが配置されていたのに対して,RTX 3070 Ti Founders Editionでは表側と裏側に1基ずつ搭載するという,RTX 3080 Founders EditionやRTX 3080 Ti Founders Editionと同じ構造となっていた。そのため,奥方のファンは基板裏側へとエアーが流れる仕組みだ。
 ファンはブレードと外枠が一体成型となったもので,GPUへの負荷が低いアイドル時に回転を停止するあたりも,RTX 3080 Founders EditionやRTX 3080 Ti Founders Editionの仕様を踏襲している。

カードを横から見たところ。2スロット占有タイプのため,2.5〜3スロットほどもあるカードメーカー製品を見慣れた目には薄い印象を受ける
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RTX 3070 Ti Founders Editionのメイン基板
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 NVIDIAが用意した基板の写真を確認すると,電源部は12フェーズ構成のようで,GPUを挟み込むような形で実装している。メモリチップは8枚搭載しており,容量8GBを実現している。
 補助電源コネクタは,12ピンがひとつだけで,RTX 3070 Founders Editionと同じだ。ただ,RTX 3070 Founders Editionでは,標準的な8ピン1本を12ピンに変換するアダプタが付属していたが,RTX 3070 Ti Founders Editionでは,2本の8ピンを12ピンに変換するアダプタが同梱されていた。RTX 3080 Founders Editionなどと同様に,RTX 3070 Ti Founders Editionも8ピン2つ分の電力供給が必要ということなのだろう。

補助電源コネクタは,RTX 30シリーズのFounders Editionではお馴染みの12ピンを1基搭載(左)。2本の8ピンを12ピンにまとめる変換ケーブルが付属する(右)。もちろん,8ピンに2本とも電源ケーブルを接続しないと動作しない
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 映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3と,HDMI 2.1 Type A×1という構成で,このあたりはRTX 3070 Founders Editionと変わっていない。

映像出力インタフェースは,DisplayPortが3つにHDMIが1つという,GeForce RTXではよく見る構成だ
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ドライバにはGeForce 466.61 Driverを使用

RTX 3070 Tiでもマイニング制限を確認


 それでは,テスト環境の構築に話を移そう。今回,比較対象にはRTX 3080とRTX 3070,それにRTX 2080 Tiを用意した。上位および下位モデルとの位置付けを明確にしたうえで,前世代の最上位モデルであるRTX 2080 Tiとの力関係を確認しようというわけだ。

 グラフィックスドライバには,「GeForce 466.61 Driver」を利用した。これは,NVIDIAが全世界のRTX 3070 Tiレビュワー向けに配布したもので,バージョンから察するに,RTX 3080 Tiのレビュー時に使用したGeForce 466.54 DriverのRTX 3070 Ti対応版という位置付けだろう。それ以外のテスト環境は表2のとおり。

表2 テスト環境
CPU Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz,最大クロック4.9GHz,共有L3キャッシュ容量64MB)
マザーボード MSI MEG X570 ACE(AMD X570,BIOS 7C35v1D2)
メインメモリ G.Skill F4-3200C16D-16GIS PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2(DDR4-3200の16-16-16-36設定で利用)
グラフィックスカード GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量8GB)
GeForce RTX 3080 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量10GB)
GeForce RTX 3070 Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量10GB)
GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition
(グラフィックスメモリ容量11GB)
ストレージ Samsung Electronics SSD 850 EVO(MZ-75E500,500GB)
電源ユニット Corsair CMPSU-1200AX(定格1200W)
OS 64bit版Windows 10 Pro(Build 19042.985)
チップセットドライバ AMD Chipset Drivers 2.13.27.501
グラフィックスドライバ GeForce 466.61 Driver

 この466.61とRTX 3070 Tiの組み合わせで,RTX 3080 Tiと同様に仮想通貨の「Ethereum」(イーサリアム)におけるハッシュレート(採掘速度)の制限が確認できた。具体的には,RTX 3080が85.94MH/s,RTX 3070が51.32MH/sであるのに対して,RTX 3070 Tiは37.77MH/sと,RTX 3080の半分にも達していないばかりか,RTX 2080 Tiの50.51MH/sにも大きく置いていかれている。

 さて,テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション24.0に準拠した。なお,「Fortnite」に関しては,2021年6月9日のアップデートでグラフィックス設定が大きく変更されたが,今回のテストはそれ以前に行っていたため,従来のレギュレーションどおりである点は注意してほしい。
 それに加えて,「3DMark」(Version 2.18.7185)では,レイトレーシングのテストとなる「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」,それにDLSSのテストである「NVIDIA DLSS feature test」を追加した。NVIDIA DLSS feature testでは,DLSS 2.0を選択したうえ,DLSS modeはQualityに設定している。
 さらに,今回はGeForceシリーズしかテストを実施しないため,「Watch Dogs Legion」に関しては,オプションからDLSSを品質に設定し,精細度の向上を100%に変更した。

 テスト解像度は,いつものように3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類を選択している。


RTX 3070との差はプラス1割弱

メモリバス帯域幅の向上が最大の強み


 それでは,3DMarkから順に結果を見ていこう。
 Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。

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 RTX 3070 TiとRTX 3070との差は4〜8%程度であるのに対して,RTX 3080比では12〜20%程度の差がある。そのため,Fire Strikeで見る限り,RTX 3070 TiはRTX 3080よりも,RTX 3070に近い性能と言えそうだ。ただ,RTX 3070はRTX 2080 Tiといい勝負という程度だが,RTX 3070 Tiは,RTX 2080 Tiに有意な差を付け完勝している点は注目すべきポイントだろう。

 グラフ2は,総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。

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 ここでは,CPU性能の影響を受けないため,Fire Strike“無印”で各GPUの差が広がる傾向が見られる。それでも,RTX 3070 TiとRTX 3070との差は6〜8%程度,RTX 3080との差は18〜20%程度と,総合スコアを踏襲した形となっている。

 続いてグラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだが,CPUを統一していることもあり,スコアはほぼ横一線だ。

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 グラフ4はGPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。

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 ここでは,CPU性能もスコアに加味されるため,Fire Strike“無印”では,CPUがボトルネックとなりスコアの頭打ちが発生している。そこで,Fire Strike ExtremeとFire Strike Ultraのスコアを見ていくと,RTX 3070 Tiの立ち位置は,RTX 3080に24〜26%程度離されており,RTX 3070には8〜10%程度の差を付けており,総合スコアの傾向はここでも変わらなかった。

 続いては,DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の結果を見ていこう。まずは総合スコアをまとめたグラフ5からだ。

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 Time Spyでも,やはりRTX 3070 Tiは,RTX 3070を7〜8%程度しか引き離せておらず,RTX 3080には17〜18%程度の差をつけられてしまっている。DirectX 12でも,Fire Strikeで見られた傾向は変わっていない。

 次のグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果をそれぞれまとめたものだ。

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 まずGPUのテスト結果からだが,RTX 3070 TiとRTX 3070との差は8〜9%程度といったところ。一方のRTX 3080との差は21〜22%程度と,総合スコアと比べてどちらも広がる傾向となっているが,これはCPU性能の影響がなくなったためと捉えるのが妥当だろう。一方のCPUテストは,Fire Strikeと同様にCPUが同一なので,基本的にスコアが横並びだ。

 リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。

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 ここでは,RTX 3070 TiとRTX 3070との差は約5%しかなく,その一方でRTX 3080には約33%も離される結果となった。やはり,RTX 3070 TiとRTX 3070ではRT Core数の差が2基分しかなく,RTX 3080とでは20基もあることが,そのままスコアに表れた格好だ。
 ただ,RTX 3070はRTX 2080 Tiの後塵を拝しているのに対して,RTX 3070 TiはRTX 2080 Tiを上回っている点は評価できよう。

 もうひとつのレイトレーシング性能を測るDirectX Raytracing feature testの結果がグラフ9となる。

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 ここでは,Port Royal以上にRTX 3070 TiとRTX 3070との差がなくなった。両GPUの差は約2%にも満たないもので,ほぼ横並びと言っていいレベルだ。一方で,RTX 3080との差は約45%にまで広がっており,DirectX Raytracing feature testでは,RT Core数の差がより効果的に表れると言ってよさそうだ。

 続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ10だ。

画像集#027のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 DLSS有効時のフレームレートを見ていくと,RTX 3070 TiはRTX 3070から4〜6%程度向上しており,RTX 2080 Tiをすべてにおいて上回る性能を発揮している。ただ,DLSSを有効にしたときにフレームレートがどれだけ向上してるかを計算すると,RTX 3070 Tiは61〜85%程度,RTX 3070は63〜87%程度と,大差ない結果が得られている。つまりTensor Core数の差は,あまり結果に表れてこないようだ。

 では,実際のゲームではどうなのだろうか。Watch Dogs Legionの結果から見ていこう(グラフ11〜13)。

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 RTX 3070 TiとRTX 3070を比べると,3840×2160ドットの平均フレームレートでは,その差が約28%にまで広がっている。これは,RTX 3070 Tiが,グラフィックスメモリにGDDR6Xを採用したことで,メモリバス帯域幅が向上したことが奏功したのだろう。だが,3840×2160ドットにおけるRTX 3070 Tiの平均フレームレートは25fpsで,プレイアブルとは言い難い。
 なお,2560×1440ドットまではRTX 3070 TiとRTX 3070の差はわずかで,SM数やGDDR6Xの恩恵はあまり見えてこない。

 続いて,「バイオハザード RE:3」の結果がグラフ14〜16となる。

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 ここでは,平均フレームレートでRTX 3070 Tiは,RTX 3070のプラス6〜11%程度といったところ。だが,RTX 3080には16〜25%程度離されており,3DMarkがそうであったように,どちらかというとRTX 3070 TiはRTX 3070に近い性能と言えよう。
 なお,RTX 3070 Tiは,平均フレームレートで安定してRTX 2080 Tiを超える性能を発揮している点も注目しておきたい。

 その一方で,RTX 3070 TiとRTX 3070との差が縮まったのが,グラフ17〜19の「Call of Duty: Warzone」(※グラフ内ではCoD Warzone)だ。

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 ここでは,RTX 3070 TiとRTX 3070との差は,平均フレームレートで1〜6%程度しかない。その一方で,RTX 3080には14〜23%程度も離されており,ここでもRTX 3070 TiはRTX 3070に近い性能と言える。

 次に「Fortnite」の結果をグラフ20〜22に示す。

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 Fortniteでは,RTX 3070 Tiが性能を伸ばし,RTX 3070に平均フレームレートで12〜16%程度の差を付けた。とくに,RTX 3070は,2560×1440ドット以上の解像度で平均フレームレートでRTX 2080 Tiに逆転を許してしまっているが,RTX 3070 Tiは安定してRTX 2080 Tiを引き離している点は評価できよう。
 なお,RTX 3080との差は17〜21%程度あるので,ここでもRTX 3070 Tiの立ち位置は,若干RTX 3070寄りと言って差し支えない。

 グラフ23〜25は,「Borderlands 3」の結果をまとめたものだ。

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画像集#041のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
画像集#042のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 RTX 3070 TiとRTX 3070との差は,平均フレームレートで4〜9%程度まで縮まる一方で,RTX 3080とは14〜27%程度の差が依然としてあり,まったく届いていない。やはり,RTX 3080とRTX 3070の差を埋めるには,いささか力不足のように思える。ただ,RTX 3070はRTX 2080 Tiとほぼ横並びの結果になっているのに対して,RTX 3070 Tiは一段抜き出た形となっている。

 グラフ26は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。

画像集#043のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 RTX 3070 TiとRTX 3070との差は,解像度が高くなるにつれて広がっており,3840×2160ドットでは約12%まで達している。ここでも,RTX 3070 Tiのメモリバス帯域幅の広さがスコアに影響を与えたと捉えるのが妥当だろう。また,RTX 3070はRTX 2080 Tiに若干ではあるが届いていないものの,RTX 3070 Tiでは安定して上回る性能を見せている。

 そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ27〜29だ。

画像集#044のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
画像集#045のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
画像集#046のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 平均フレームレートは総合スコアを踏襲した形となったが,RTX 3070 Tiは3840×2160ドットでも最小フレームレートが30fpsを上回っている点は立派だ。RTX 370 Tiであれば,3840×2160ドットでも快適にプレイできることは間違いない。

 グラフ30〜32には,「Project CARS 3」の結果をまとめている。

画像集#047のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
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 RTX 3070 TiとRTX 3070との差は,平均フレームレートで8〜9%程度,RTX 3080との差は15〜16%程度と,比較的バイオハザード RE:3に近い傾向となった。ただ,テスト結果を見る限り,描画負荷を最大に設定したProject CARS 3になると,RTX 3070 Tiは2560×1440ドットでも厳しく,プレイアブルなのは1920×1080ドットということになる。


GDDR6X採用で消費電力が爆増

RTX 3070から70Wの増加は正直いただけない


 RTX 3070 Tiは,GA104のフルスペック版ではあるが,TGP(Total Graphics Power,グラフィックスカードの消費電力)は,RTX 3070の220Wから70Wも上昇した290Wになってしまった。では,実際の消費電力はどの程度なのだろうか。

 そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回も3DMarkのTime Spyにおいて,Graphics test 2実行中の結果を示している。その結果をグラフ33に示そう。

※グラフ画像をクリックすると,横に引き伸ばした拡大版を表示します
画像集#050のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 このグラフを見ても,RTX 3080ほどではないにしても,RTX 3070 TiはRTX 3070から消費電力が増加していることがうかがえる。RTX 3070は,220Wあたりを推移しているのに対して,RTX 3070 Tiは280Wあたりと,両GPUの差はかなり開いている。

 そこで,グラフ33の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ34となる。

画像集#051のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 RTX 3070 Tiは,公称の290Wには達していないものの,それでも約280Wと,RTX 3070から60W弱も増加しており,RTX 2080 Tiと比べても20W弱増えている点は看過できない。なぜ,これほどに消費電力が増えてしまったのかを考察すると,GA104をフルスペックで動作させたためというよりも,やはりグラフィックスメモリに採用したGDDR6Xの影響を指摘しておきたい。メモリバス帯域幅を向上させた代償は,少なくなさそうだ。

 一応,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いたシステム全体の最大消費電力も計測してみた。
 テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ35だ。

画像集#052のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 このテストは,ピーク値を結果として採用するため,差が広がる傾向となるのだが,それでもRTX 3070 TiとRTX 3070の差は34〜85W程度まで達している。RTX 3070はRTX 2080 Tiといい勝負を演じながら,消費電力の低減が図られていた。しかしRTX 3070 Tiは,そのRTX 2080 Tiを消費電力で超えてしまったことを,多くのユーザーはあまり好ましく思わないのではないだろうか。

 最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
 GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なるもので,またそれぞれファンの制御方法も違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果は,グラフ37となる。

画像集#053のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい

 RTX 3070 Tiは,高負荷時でも70℃台前半に収まっており,消費電力が高いわりに,GPUクーラーは十分問題ないレベルにまで冷却を行えているようだ。

 なお,筆者の主観であることを断ったうで,RTX 3070 Ti Founders Editionの動作音について述べると,RTX 3080 Founders Editionなどと大差ないと感じた。RTX 3070ともあまり差はなく,GPUに高負荷がかかり,ファンの回転数が高くなると,その動作音が多少気になる程度だ。もちろん,PCケースの中に入れてしまえば聞こえなくなるだろう。


GDDR6Xの恩恵を享受できるのは限定的

トータルバランスではRTX 3070に軍配か


 以上のテスト結果を踏まえると,RTX 3070 Tiの性能は,RTX 3070から1割ほど向上したものと言ってよさそうだ。とはいえ,RTX 3080との差は20%弱もあり,上位モデルとの開きは依然として大きい。

 RTX 3070 Tiにおける問題は,グラフィックスメモリにGDDR6Xを採用した点だ。RTX 3070からメモリバス帯域幅が向上したことで,RTX 3070 Tiは,高解像度や高負荷な状態で強みを発揮しており,実際,Watch Dogs Legionではそれが顕著に表れている。しかし,高負荷な状況ではプレイアブルな性能を得られておらず,GDDR6Xの恩恵を享受できているとは言えない。FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチで,RTX 3070 Tiはメモリバス帯域幅の広さを活かしつつ,高い性能を発揮しているが,こちらのほうが稀な例ではないだろうか。さらに,GDDR6Xの採用で,消費電力が70Wも増加してしまったことに諸手を挙げて賞賛する人はいないだろう。

画像集#054のサムネイル/「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」レビュー。シェーダ増強とGDDR6X採用でRTX 3070を1割程度上回るが消費電力も大きい
 NVIDIAによるRTX 3070 Ti搭載カードの想定売価は8万9980円からとなっているが,RTX 3080 Ti搭載モデルの売価がほとんど20万円を超えていたことから推測すると,RTX 3070 Tiも10万円を超えてくるのは必至だ。マイニング制限がかけられたことで,従来モデルよりは購入しやすくなりそうだが,RTX 3070より性能は優れてはいるものの,消費電力を考慮したトータルバランスでは,RTX 3070を全面的に上回るとは言い難い。
 RTX 3070シリーズの上位モデルではあるものの,RTX 3070ほどの人気は得られないのではないだろうか。

NVIDIAのGeForce RTX 3070シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 30

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