インタビュー
「サクラ革命」田中公平氏&岸本萌佳さんにインタビュー。あなたの脳裏には,どんな桜が舞い散るでしょう?
今回のインタビューも,脚本担当の松崎史也氏と,ディライトワークス 開発ディレクターの池 大輔氏に話を聞いた前回記事と同じく,ミニ番組「青ヶ島司令部通信」の収録現場で行ったものだ。
初代「サクラ大戦」からシリーズ作品の音楽を手がけてきた田中氏と,本作の主題歌「SAKURA HIKARU Revolution」を歌う岸本さんらには,作曲や収録に関するサウンド面の裏話を語ってもらった。
「サクラ革命 〜華咲く乙女たち〜」公式サイト
みんなを引っ張る「咲良しの」は
戦隊ヒーローものの“レッド”的な乙女
4Gamer:
これまでコンシューマを中心に展開されてきた「サクラ」シリーズが,新たにモバイルの舞台へと進出します。まずは最初期からIPを支え続けてきた田中さんはどう感じているのか,お聞かせ願えますか。
田中公平氏(以下,田中氏):
まず,2019年に「新サクラ大戦」でIPが再始動しましたよね? 実はその時点で,家庭用ゲーム,舞台,アニメ,そしてモバイルゲームの4点セットはすでに計画されていたんです。
「サクラ革命」は計画で言えば最終段階にあたるので,私としては「ついにここまできたか」という気持ちです。「サクラ」シリーズ特有の魅力と広がりをスマホに進出させられる。これはうれしいことですよ。
4Gamer:
今では当たり前になりましたが,「サクラ大戦」は当時からしてみれば斬新な方向にマルチメディア展開を推し進めていて,結果として多方面に注目されてきました。その気風はいまだ健在でしょうか。
田中氏:
そうですね。ゲーム原作の舞台に,キャラクターボイス担当の声優が出演するっていうのは,当時はなかなか画期的だったんですよ。もっと言うと,今でも画期的であり続けていると私は思っていますが。
そして家でゲームを遊んでいる人が,劇場に足を運ぶようになった。そうしてコンテンツの横の関係性が広がり,つながりも強くなっていった。こういう構造は「サクラ大戦」の功績のひとつと言っていいかな。岸本さんは当時,まだ生まれてもいなかったかと思うけど(笑)。
岸本萌佳さん(以下,岸本さん):
私は「サクラ大戦」の歌謡ショウで,声優さんが歌って踊ってる姿をはじめて見たときのことをよく覚えてます。直接現場で観たわけじゃないんですが,武道館公演の映像に「すごいなぁ!」って驚いてました。
田中氏:
あの人たちはね,ちょっとスゴすぎる。特別なんですよ(笑)。
4Gamer:
ファンも同じ気持ちかと思います(笑)。では,ここから「サクラ革命」の話に移っていきましょう。まずは物語の中心人物であろう「咲良しの」がどんな女の子なのか,岸本さんから聞かせてもらえればと。
岸本さん:
しのは幼さを残した可愛らしい性格ですが,すごく真っすぐで,芯の強い女の子です。正統派ヒロイン的な,いじらしい大和撫子的なところも受け継いでいるんですが,ほかの帝国華撃団メンバーから世話を焼かれるシーンも多くて,それだけとっつきやすい印象があると思います。
4Gamer:
田中さんから見た咲良しの,また岸本さんの印象はどうですか。
田中氏:
まぁ「すごい! 若い!」って思っちゃいますよね。
岸本さん:
(笑)。
田中氏:
咲良しのからはとにかくエネルギーを感じます。独特の柔らかさがあるのと同時に超エネルギッシュなので,つまるところ彼女は戦隊ヒーローもののレッドなんですよ。でもちょっとボケな一面もあってと。
そして最初のころは,自分から「みんな行こう!」と先陣きって走るけど,誰もついてこない。それでもブルドーザーのように力強く前を走る姿が,いつの間にか周囲の人たちに届いて,支えたいと思われていく。帝国華撃団では「青島ふうか」がその支え役になるのかな。
岸本さん:
ほんとそうです! しのだけだと収拾がつかなくなっちゃって!
田中氏:
彼女たちは実にいいコンビなんですよ。ほかにも,しのを支える数多くの登場人物がいますので,そちらも楽しみにしていてください。
大正・昭和に残されたメロディを現代に
「SAKURA HIKARU Revolution」で舞う桜
4Gamer:
神子浜あせび役の夏吉ゆうこさん,青島ふうか役の松浦愛弓さん,そして岸本さんが歌う,本作の主題歌「SAKURA HIKARU Revolution」ですが,こちらはどのようなイメージで作曲されたのでしょう。
田中氏:
「サクラ革命」の制作陣とははじめに,これまでの「サクラ」シリーズで作ってきた「檄!帝国華撃団」「御旗のもとに」「地上の戦士」などの潮流からは少し外れた路線にしよう,と話をしました。せっかくの新展開なのだから“サクラ革命ならではの曲を作ろう”と思って。
まずは,作詞の畑さん(畑 亜貴氏)に目をとおすだけで2週間くらいかかるだろうっていう大量の資料をぶん投げて,新曲の意向を伝えました。こりゃ大変だろうと思ってたんですが,そこはやっぱり畑さんでしたね。1週間くらいで「こんなのでどうです?」って返事がきて。
岸本さん:
おお,すごいっ。
田中氏:
その詞をもとにして,今どき風のアイドル系ソングに「サクラ」の伝統的なエッセンスを加えて,3人で歌える曲に仕上げました。そしたら,もうムチャクチャ難しい曲になりまして。岸本さんもね,デモテープもらったとき「バカヤロー!」って思ったんじゃないかな(笑)。
岸本さん:
はい……あっ,いえいえ(笑)! たしかに仮歌の音源をいただいたときはもう,「これどう歌おう」とか「これどう表現しよう」とか以前に,「これ私に歌えるの……!?」って不安が先にきちゃいました。
4Gamer:
田中さんの話を聞いていると,その反応もうなずけますね。
岸本さん:
単純な難しさもそうなんですが,あと私が「歌に自信を持てていない」ところもあって。もともと歌は好きだったのですが,過去にオーディションで緊張のあまり声が出なくなったり,セリフは完璧だと思っても歌でつまずいてしまったりと,苦手意識が若干あったんです。
でも「サクラ革命」のオーディションでは楽しく歌えたんです。一次審査も,二次審査も,最終審査も,なぜかは分からないけど詰まることなくやりきることができて。そして連絡をもらってホッとしたところに,送られてきたのがこの曲と……いろいろあっての不安でした(笑)。
田中氏:
岸本さんにはレッスンをがんばってもらいましたねえ。実のところ,最初に彼女の歌を聴いたとき「ああ,これはダメかな」と思ったもんですが,「こうしたらよくなるよ」と教えていくと,ものすごい勢いで吸収してくれてね。1時間もしたら,まさに別人のように上手になってて。
本番のレコーディングでも2時間程度でどんどん上達していきましたし,あまりにも変わるもんだから,これはと思ってね。最初にできたOKテイクを一旦止めてみて「もう1回やってみましょう」という話をしまして。そしたら案の定,もっといい歌が録れたんですよ。
4Gamer:
まるでバトル漫画の主人公みたいですね。
田中氏:
若い人はね,自身への過小評価で,自分のなかにあるスキルに気づけないことも多いんです。だからレッスン中に気づかせられるよう導くってのが私の仕事なんです。今回はこっちとしても達成感がありましたよ。
それと今の年代の人には怒る,ダメ出しするってのはいけないのよ。ダメ出しなんて言葉は今や死語ですが,指導というより「こちらにおいで」と“誘導”してあげる。それが私らの世代がやるべきことです。
4Gamer:
岸本さんにとっても,なかなか得難い経験になっていそうですね。
岸本さん:
初めてスタジオに入ったときは「失敗したらどうしよう……」とか,「作曲されたご本人の前でとんでもない歌を披露したら……」とか,頭にぐるぐる渦が巻いちゃってました。ありがたい気持ちと,プレッシャーとが同時にやってきて,無意識に息も浅くなってしまって。
私がそんな状態になっているのを見かねたのか,田中先生はレッスンに入る前,なんてことのない世間話を振ってくれたんですよね。
田中氏:
地元はどうなんだとか,大阪のどこらへん出身なんだとかね。
岸本さん:
はい。おかげでリラックスした状態でレッスンできました。
4Gamer:
なによりです。ちなみに新曲には新しいエッセンスとともに,シリーズ作品としての“サクラらしさ”も必要になるのかと思います。このらしさというのは,具体的な言葉になりますでしょうか。
田中氏:
大正・昭和における日本歌謡界はメロディ主体の楽曲が中心でしたが,時代が進むにつれてリズム主体に傾いていきました。そこで私たちが初代「サクラ大戦」を作るときは,「大正や昭和の日本に取り残されたメロディを,現代の手法に置き換えて作り上げる」という大きな命題を掲げたんです。それが,いわゆるサクラらしさの根本です。
ちなみに,らしさは今回も同じですが,現代では当時よりも「リズム寄りの傾向」が強くなっているので,初代のように強いメロディを押し出すだけだと違和感を与えてしまうため,目指すのはその中間。今風のリズムを持ち,強いメロディを残す,それを方針としました。
4Gamer:
王道のメロディに,現代風のエッセンスを取り込むと。
田中氏:
付け加えるなら,曲を聴いたときの“脳裏に抱く映像感覚”もかなあ。「サクラ」の音楽は耳にした瞬間,桜がはらはら舞い散る姿が見えてくる,そういった光景が思い浮かぶ楽曲でありたいと心がけています。
これは「檄!帝国華撃団」でも「御旗のもとに」でも「地上の戦士」でも同じで,それでいて各楽曲で“違う桜のイメージ”が生まれてくるようにと制作してきました。それぞれの楽曲で,まぶたの裏にどんな桜を思い描くのか。今からでもぜひ聴き比べてみてほしいですね。
4Gamer:
岸本さんも,なにかイメージをもって収録に臨みましたか?
岸本さん:
私の場合,仮歌から“力強さ”を感じました。だから,私も力強くカッコよく歌いたいって。そう思って練習して,収録して,完成したものを自分で聴いてみたら,そこには単純な力強さだけじゃなくて……。
えーっと,なんて言えばいいのかなあ(笑)。
田中氏:
あんまり儚げって感じではないよね。そのぶんエネルギッシュで。
岸本さん:
あー,そうかもです(笑)!
田中氏:
私は岸本さんの歌を聞いて,「桜夢見し」(「新サクラ大戦 the Animation」のエンディング主題歌)って曲を思い出しましたね。あれはとても儚い歌であると同時に,力強い歌でもあったので。
つまり「サクラ革命」の楽曲はさらに,真正面からの力強さや躍動感,明日への希望を意識したような楽曲が多くなっているんですよね。
4Gamer:
興味深いお話をありがとうございました。最後に,これからはじまる「サクラ革命」について一言いただければと思います。
岸本さん:
「サクラ革命」は「サクラ」シリーズの魅力を引き継ぎつつも,タイトルも世界観も新たにスタートをきる作品です。それだけに,今まで「サクラ大戦」の名前は知っていたけど遊んだことがなかった人も,これまで「サクラ」を愛し続けてくれた人も,新鮮な気持ちで楽しめるものになっていますので,たくさんの人たちにぜひ遊んでもらいたいです!
田中氏:
「サクラ革命」は“新しいサクラ”ではありますが,ある種のパラレルワールドと考えてくれたほうがいいのかな。以前スペシャルアニメを公開しましたが,あそこにもたくさんの謎が散りばめられています。ゲーム本編では,その謎をひとつずつ確実に回収していく予定です。アニメを見て興味を持ってくれた人は,このゲームも遊んでみてください。
ちなみに私たちはすでに“その次”も考えていたりして。今後は「サクラ革命」を存分に楽しみつつ,その先にも期待してください。
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