プレイレポート
[プレイレポ]「Atomic Heart」の魅力はレトロフューチャーな世界設定だけじゃない。荒削りだがやり応えのある探索やバトル,キャラ強化も楽しい良作だ
4Gamerでは1月に開催されたメディア向け体験会の試遊レポートを掲載しているが(関連記事),さらに今回,発売直前のタイミングでPC版をプレイできたので,そのレポートをお届けしたい。独特の世界観もさることながら,強力な敵を相手に,こちらも強力な超能力を駆使して挑むバトルも大きな魅力となっていた。
「Atomic Heart」公式サイト
[プレイレポ]レトロフューチャーな1950年代のソ連が舞台の「Atomic Heart」を先行体験。“ここではないどこか”に誘ってくれる世界観が魅力だ
奇妙でぶっ飛んだ科学力を持つ,架空の1950年代のソ連を舞台とした「Atomic Heart」の先行プレイレポートをお届けしよう。“ここではないどこか”に誘ってくれるような,妙に説得力のある“レトロフューチャー”な世界観が魅力のアクションRPGだ。
科学の楽園,その裏にあるものとは――相棒の“グローブ”とともに事件の真相に迫る物語
本作の世界におけるソ連は,まさに科学技術の黄金時代まっただ中。その象徴と言える空中都市チェロメでは,二足歩行のアンドロイドが人々の生活を助け,空には大小さまざまなドローンが飛び回っている。それらの見た目は時代相応のレトロな雰囲気を醸し出しているものの,テクノロジー自体は21世紀の現代すらを凌駕する驚くべき状況だ。
労働力としてロボットを海外に輸出するなど,世界をリードする科学大国としても存在感を示すソ連は,機械工学だけでなく,バイオテクノロジーの分野も突出している。ゲル状の特殊なポリマーを使用した肉体の強化,神経接続によるネットワーク構築などで西側諸国を圧倒。ゲーム冒頭では,神経ネットワークを用いた新たな情報技術「Kollektiv」(コレクティヴ)の正式稼働を控えて賑わうチェロメの街を通して,科学力によって繁栄するソ連の様子が伝えられる。
技術力の結晶であるチェロメは,新技術の稼働を祝う式典で大賑わい。 |
見た目こそ現代的とは言えないが,軽快な動作とほぼ完璧な対話をこなす驚異のロボット達。導入部からは,ライバルであるアメリカにかなりの差を付けている様子がうかがえる |
さて,そういった技術が平和的に活用されているといいのだが,当然ながら(?)そうは問屋が卸さない。盛大な式典で賑わうチェロメのおひざ元である地上の研究施設で,ロボットやアンドロイド達が暴走。施設の周囲では,人類の生活を支えるはずの存在によって,問答無用で住民達が殺害されるという大事態が発生していた。
そこに送られることになるのがプレイヤーキャラクターである主人公のP-3だ。国家の特別捜査官であるP-3は,優れた人工知能とさまざまな機能を備えた特殊グローブのチャールズを“相棒”に,3826番施設と呼ばれる謎多き研究所を探索し,事件の真相解明と事態の収拾を目指すことになるのだ。
魔境と化した研究施設。生き延びるのに欠かせないのが武器のクラフトとグローブの強化
殺人マシンと化したロボットやアンドロイド,“生ける研究成果達”によって魔境と化した3826番施設は,広大かつ何層にも分かれた複雑な構造をしている。また,緊急事態の影響で多くの場所が普通に移動できなくなっており,奥へと進むには,扉のロック解除,動力を復旧しエレベーターを起動する,ダクトの中を抜けるといったさまざまなタスクをこなさなければならない。
基本のゲーム進行はリニア形式となっており,マーカーで表示される指示に従ってルートを進んでいくことでストーリーは展開する。前述のとおり,場面によっては道をふさぐ仕掛けがあり,それを解くには敵の集団を突破し,キーアイテムを入手する必要があれば,遠回りを強いられることもある。
一つひとつのタスクはそこまで長い時間がかかるものではないが,暴走する作業用ドローンをタイミングよく回避しなければならない場所が続いたり,監視カメラに見つかると一気に敵が押し寄せてきたりといった,操作技術が求められる場面や緊張感ある場面は少なくない。タイミングが少々シビアだったり,一見するだけではルールが理解しづらかったりといった荒削りなところもあるが,それらは探索のいいアクセントになっている印象だ。
敵として登場するロボットやアンドロイドは,その見た目だけではなくかなりのクセ者揃い。本来は労働用,あるいは作業用であったはずのロボット達だが,なぜか強力な腕力や装備を施されており,複数で容赦なく襲い掛かってくる。
序盤から登場する二足歩行のアンドロイドですら,高い機動力とパワーを有しており,油断をするとカンフーのような素早い動きで転倒させられたり,吹き飛ばされたりしてしまう。敵の体に赤いエフェクトが出たら,強力な一撃を繰り出す合図。一気に体力を削られるので,距離を取るか,回避の準備をするべきだ。
ほかにも高出力レーザーによるなぎ払いや火炎放射といった攻撃方法を持つ者もおり,それらは全体的に容赦がない。またロボットやアンドロイドだけなく,施設の“研究成果”に体を乗っ取られた死体が襲いかかってくるなど,毛色の異なるの敵も控えている。
種類によるが敵の耐久度は全体的に高い印象だ。そのためゴリ押しで進むのは難しく,無理して突破したとしてもそれ相応の損害は避けられない。体力の自然回復はなく,大きなダメージを受けた場合は回復アイテムに頼ることになるので,強引に進んでいてはアイテムが尽きてしまうだろう。確実に先に進むためには,慎重さも重要だ。
そんな手強い敵を相手にするうえで重要なのが,武器のクラフトやグローブ(チャールズ)の強化だ。これがまさにP-3が任務を遂行するための切り札であり,襲いかかる敵に対してどう立ち向かうかの戦術の基本となる。
強化は,主にセーフハウスに置かれている自動販売機のような設備の前で行う。武器の作成と強化にはメタルパーツや超伝導体といったさまざまな材料が,チャールズの強化には神経ポリマーという素材が必要になる。素材は施設内の部屋や通路といった各地に置かれているコンテナから入手できるので,見逃さないよう回収しておきたい。
なお,それらは倒した敵からも入手できるので,間接的には「敵を倒して強くなれる」とも言えるが,しっかり探索を行ったほうが安全に,そして確実に強化を進められるということは覚えておこう。
武器のクラフトは,大まかに「武器自体の作成」と「武器のアップグレード」に分かれている。前者は文字通り武器そのものを作り出し,主に探索で設計図を入手するとアンロックされる。
素材は共通なので,新しい武器の製作に使うか,使い慣れた武器の強化にするかが悩ましいところ。クラフトにはかなりの量の素材が必要となり,また,インベントリ自体にそれほど余裕がなく,種類を増やしても持ちきれないということがある。クラフトしなくても入手できる武器もあるので,アップグレードを優先するのも一つの手だ。
チャールズの強化は,特殊能力をアンロックしたり,その能力を高めたり,あるいはP-3自体の能力を強化できる。
目玉となるのは,更なる特殊能力の取得と強化だ。手のひらから強力な冷気を噴出させて敵を凍らせるフロストバイト,周囲の物を敵を含めて空中に持ち上げ隙だらけにするマステレキネシス,敵の攻撃をバリアで防ぐポリマーシールドなど,まさに超能力と呼べるスキルの数々を繰り出せるようになる。
スキルを発動すると一定のクールダウンが必要で,さらに同時に装備できる数も限られるが,アイテム消費などなく攻撃できるのだからありがたい。
フロストバイトなら固まって動かなくなった敵を一方的に殴り続けられるし,マステレキネシスで浮かべてしまえば,多くの敵は攻撃さえできず,ただジタバタするだけになる。これらの能力は本当に強力で,「固くて“痛い”敵を相手に消耗したくない」という敵を相手にするうえでの切り札として欠かせないものになる。一気に多数の敵を無力化し,一方的に倒せたときは,実に気分爽快だ。
とは言え,適切なタイミングでアップグレードしていかないと力不足を感じることになり,また敵自体が,それらの能力を使うことを前提とした強さになるため,決して万能ではない。武器のクラフト同様,地道な強化が重要だ。
荒削りなところはありながらも,手強いバトルと圧倒的な世界観で楽しませてくれる良作
本作は,探索とバトル,キャラクター強化のバランスがちょうどよくまとまっている。バトルで素材を集めるだけではキャラクター強化がままならないが,施設の隅から隅まで調べて根こそぎ素材を回収しなければならないわけではない。探索やアクションは結構な頻度でバトルをメインにプレイしたい人も,探索を楽しみたい人も,どちらかを手間に感じることなくゲームを進められるのではないだろうか。
探索やアクションはなかなかの頻度でアスレチックな動きを求められ,配管を登る,ジャンプで足場を飛び移る,立体的な形で固まったポリマーの中を泳ぐなど,三次元的な動きが多めなのが印象に残った。難度そのものは決して高くないのだが,3D酔いしやすい人は注意が必要かもしれない。
また,ミニゲーム要素のある仕掛けの解除や,操作性には少々荒っぽさを感じる部分があった。トラップとして動き回るドローンの回避や鍵開けの要素が煩わしかったり,アイテムにかなり近づかないと自動回収機能の効果が現れないことにストレスを感じたりしたので,アップデートなどで調整が入ると嬉しい。
メインの要素であるバトルは,単なるシューターと思って武器のみで戦うと,想像以上に苦戦するが,特殊能力や敵のタイプに合った属性攻撃を交えると,グッと戦いやすくなる。敵はなかなかに堅牢で,なおかつ強力な攻撃を仕掛けてくる頻度も高いが,だからこそこちらもスキルを存分に発動し,容赦なく叩きのめすことができる。チャールズのどのスキルを開放し,どのスキルを伸ばすかはプレイヤー次第なところも楽しい。
そして最後に,やはり独特の世界観に触れないわけにはいかない。導入部で上空から眺めることができる,母なる祖国像を初めとした巨大像,各所に貼られたプロパガンダのポスター,強く丸みを帯びた機械や兵器,そして,残されたメッセージに出てくるスターリンといった実在の人物。冷戦時代のソ連をモチーフとした本作の世界は,まったくのフィクションでありながら「現実にありえたのではないか」と感じさせる味わい深さがある。
ストーリー展開の関係上,国民達の日常生活などを見る機会があまりないことは残念だが,それくらい“先進的だが倫理観に乏しい,科学万能主義に狂った世界”の構築に成功しているのではないかと思う。
ローカライズに関しては,一部気になる部分があるものの,全体的に現時点でもクオリティは良好だ。PS5 / PS4版の発売と同日の4月13日に日本語音声が実装される(関連記事)ということで,P-3とチャールズの会話や“イカれた”強化マシンのノラのしゃべりが,どういった形で表現されるかが楽しみだ。
グラフィックスのレベルも非常に高く,無機質に淡々と襲ってくるロボット達は実に不気味だし,荒れ果ててしまった研究施設も見応えがある。「科学技術で他を圧倒したソ連」といった世界観に引かれた人はもちろんだが,射撃と特殊スキルを組み合わせたバトル部分に興味が湧いた人にも,手にとってもらいたい一作だ。
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