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「『オケカツ!』2nd Stage 10th Ver.」レポート。満を持しての有観客公演が,未来に希望を抱かせてくれた&編曲家による「パラフレーズ」とアンコール曲解説も掲載
本公演は,2年半前の2020年3月23日に予定されていたものの,新型コロナウイルスの影響で無観客での映像収録となった「『オケカツ!』2nd Stage」(以下,2nd Stage)を,「アイカツ!シリーズ」の10周年YEARに合わせて再構成したものとなっている。今回は,その昼夜2公演を合わせてレポートしていこう。なお,次ページでは,編曲を担当した穴沢弘慶氏が「アイカツ!シリーズ10thオーケストラパラフレーズ〜SHINING LINE*」の“ネタばらし”とアンコール曲の楽曲解説をしているので,そちらもぜひご確認いただきたい。
まず,本公演のMCである「アイカツオンパレード!」姫石らき役の逢来りんさんによる「まだ“なんでもない世の中”とは言えませんが,素敵な時間を過ごせるように」という開演前アナウンスを受け,声は出せないながらも,初演(2019年2月10日開催)からおよそ3年半ぶりとなる有観客での「オケカツ!」に,ファンの熱気が高まっていくのが感じられた。
それを受けた「君のEntrance」では,明るく楽し気な曲調から,これからまた新しい体験ができるというワクワク感が広がっていった。
最初のMCパートでは,逢来りんさんから,やっと会えたという喜びの言葉と,本公演が2nd Stageを元にしながらも,10th Ver.としてパワーアップしていることが語られた。その言葉が大げさでも何でもないことは,この後,次々と証明されていくこととなる。
まず,「アイカツフレンズ!」「アイカツオンパレード!」コーナーでは,「ひとりじゃない!」と「アコガレカスタマイズ☆」(昼公演のみ)が披露される。「ひとりじゃない!」は,サビの歌詞に「どれもアイカツ! これもアイカツ!」という印象的な応酬がある。無観客収録の際にも感じたことだが,このメロディがオーケストラでも演奏されることで,「オケカツ!」も「アイカツ!」なのだということが,より強く実感できる。だからこそ,序盤に演奏されることにとても意味があるように感じられた。
続いては,昼公演では「アイカツフレンズ!」BGMメドレー,夜公演では「アイカツスターズ!」BGMメドレーのコーナー。「オケカツ!」初演時では,BGMは一曲ずつの披露となっていたが,今回はアレンジャーの穴沢氏によってメドレー形式にパワーアップ。それによって,曲間のつなぎも新たな聞きどころとなっていた。こうしてメドレーとしてさまざまな楽曲を聞くことで,アニメのさまざまなシーンが思い出されるのも,「オケカツ!」ならではの楽しみだろう。
そして,夜公演ではここで「裸足のルネサンス」を挟んだ後,いよいよ有観客では初披露の歌唱パートとなる。最初に披露されたのは,香澄真昼の歌唱担当・星咲花那さんによる「ドリームステージ☆」。まるでミュージカルのように,キラキラの笑顔でのびのびと歌い上げる姿に,ステージが一気に華やいでいく。まさに夢のようなステージを,オーケストラ,観客と共に作り上げていた。歌い終わったあと,観客からの大きな拍手を受けた星咲花那さんが,より一層嬉しそうな笑顔を浮かべていたのも,とても印象的だった。
余談になるが,2年半前の無観客映像収録時にも,歌唱パートの収録は行われていた。筆者はその場に立ち会わせていただき,歌唱担当の方々の,困難な状況でも最善のパフォーマンスをまっとうしようとする姿に強く胸を打たれたのを覚えている。しかし,この後も続々と披露される素晴らしい歌唱は,無観客のときとはまた違う輝きを放っていたように思う。ファンの応援を受けてアイドルが輝くのと同様に,「オケカツ!」もまた,観客の応援がいかに演者に影響を与えるかを実感する機会となっていた。
直後のMCでも,逢来りんさんがあらためて有観客での歌唱披露が初だったことに触れ,観客に拍手で感想を求めていたが,割れんばかりのリアクションだったことが,いかに素晴らしい演奏,歌唱であったか,そして,観客がどれだけそれを待ち望んでいたかを表していたように思う。
そして,無観客収録の2nd Stage当時はまだ放送開始前だったことに触れ,特別に一曲ということで「アイカツプラネット!」から「HAPPY∞アイカツ!」が披露された。これも10th Ver.で大きくパワーアップした部分だろう。とりわけ「HAPPY∞アイカツ!」はオーケストラ向けに大胆なアレンジが施されており,原曲とはまた異なる,包み込むような優しさと多幸感を感じられる楽曲となっていた。本公演のパンフレットに穴沢氏が寄稿した解説記事によると,「もしも本曲がBGMで使われる用に編曲されたら」というコンセプトでの編曲だったそうだ。
昼夜共にここで休憩を挟み,ステージは後半戦へ。後半戦の開幕は「アイカツ!」BGMメドレーということで,逢来りんさんのMCにも熱が入る。「小学生のときにTVで見ていた作品だったから,ここでMCをできることが嬉しい」というその言葉は,まさに10周年という時の流れを感じさせるものだった。そして,「歴史はここから始まった」という振りのとおり,数々の名場面を彩ったBGMが,次々と観客を魅了していった。
そんな感動覚めやらぬ中で披露された,神崎美月の歌唱担当・ささかまリス子さんによる歌唱パートは,まさに圧巻だった。昼公演では「Precious」,夜公演では「Moonlight destiny」を,それぞれミステリアスヴァルゴとロイヤルムーン,別々の衣装で披露したのは,嬉しいサプライズだ。
会場の隅々まで響き渡る壮大な歌声は,逢来りんさんのMCを借りるなら,「神崎美月がサントリーホールに降臨した」と形容するにふさわしいもの。「Precious」の2番のサビの「逢いたい人がいて ありがとうって言える歓び」は,まさに今の時勢も手伝って,嚙みしめるように歌唱する姿にこみあげてくるものがあった。また,夜公演の「Moonlight destiny」も,ハープの幻想的な調べとあいまって,これぞ月の女神といった雰囲気を醸し出していた(そのロイヤルムーンコーデを,この後のMCで逢来りんさんが「欲しくて欲しくてたまらなかった!」と熱弁されていたのは,「アイカツ!」らしいエピソードで,客席からも笑みがこぼれていたことも追記しておきたい)。
さらにこの流れでやってくるのが,初演時にも大きな人気を誇ったゴシックコーナー。息つく間もないとは,まさにこのことだろう。「チュチュ・バレリーナ」を大木麻理さん演奏のパイプオルガン独奏で味わうというのは,それだけでも唯一無二の体験だった。しかも,ゴシックメドレーの楽曲は,穴沢氏による解説に「ラスボスっぽい」という言葉が複数回も登場するのだから,そのインパクトたるや想像に難くないだろう。内容も昼夜で異なっており,一曲でも多く披露したいという熱意を感じるとともに,オーケストラと「アイカツ!」ゴシック曲の親和性の高さにあらためて唸らされた。
そんなゴシックコーナーを締めくくるのが,氷上スミレの歌唱担当・藤城リエさんによる「タルト・タタン」なのだから,たまらない。甘く囁くような,それでいて,妖しく誘うような歌声が,オーケストラの奏でる一音一音と混ざり合って,観客をここではないどこか異なる世界へ誘っていく。まさにロリゴシックの世界観を,目で,耳で,全身で体感させられたひとときだった。
公演は怒涛の勢いでラストコーナーに突入していく。昼公演では「STARDOM!」が,力強くその号砲を鳴らしてくれた。そして,夜公演ではここで「カレンダーガール」が披露されたのだが,そのアレンジはとりわけ観客を驚かせるものだった。今までのアレンジとはまったく異なる,次々と変わっていく曲調。それが表現していたのは,時に笑い,時に悩み,喜びや悲しみを経験しながら成長していくアイドル達の姿だ。何てコトない,かけがえのない毎日が,オーケストラの演奏によって新たに彩られていた。これまでの楽曲もそうだったように,こうして楽曲に新たな楽しみ方,魅力を与えてくれるのが,「オケカツ!」の素晴らしさなのだと噛みしめる思いだった。
当然,会場の熱気は高まるばかり。それを受け止められるのは,エルザ フォルテの歌唱担当・相沢梨紗さんによる歌唱パートしかないだろう。昼公演では「The only sun light」を,夜公演では「Forever Dream」を,すさまじい熱量で披露してくれた。公演を拝見しながら,できるだけその時々に感じた思いをそのままお伝えできるようメモをとっていたのだが,ここでのメモにはただ一言,「女王」とだけ残されている。まさに威風堂々,エルザ フォルテと,彼女を体現した相沢梨紗さん以外の,誰にもできないパフォーマンスだった。
きっと観客も,ここまで畳みかけてくるとは思っていなかっただろう。しかし,そこは10th Ver.。彼らがパワーアップしていると宣言したからには,まだまだ終わらない。
さらに,この楽曲にもかなり大胆なアレンジが加えられていた。チェンバロを使用したどこか童話のような可愛らしさもあるイントロから,その後に続く一つ一つの音を優しく拾い上げるように歌い上げていく姿は,これまでの思い出を胸に,未来へ歩み出す力強さを感じさせる。劇場版のいちごと同じく,リラフェアリーコーデをまとった霧島若歌さんのオーラと,オーケストラ演奏があいまって,まったく新しい「輝きのエチュード」体験となっていた。
MCでも話されていたように,現在「アイカツ!」は,「アイカツ! 10th Story〜未来へのStarway〜」が劇場公開され,来春には新作の制作も発表されている。そのタイミングで,初代「アイカツ!」を象徴する楽曲の一つがこうして披露されたのは,実に印象深い(逢来りんさんの言葉を借りると「エモい」)出来事と言える。
そして,公演はいよいよエンディングを迎える。ここで披露された「アイカツ!シリーズ10thオーケストラパラフレーズ」〜SHINING LINE*」が,またとてつもないものだった。メドレーとも異なりさまざまな楽曲の印象的なフレーズが,まるで物語のように次々と展開され,重なり合っていく様は圧巻の一言。この10年間の思い出が,すごい勢いで頭の中を駆け抜けていく。どの楽曲に,人生のどのタイミングで触れていたかは,観客一人一人によって違うだろう。だからこそ,すべての観客にとって,異なる価値をもった体験となっていたに違いない。それだけ力のあるフレーズの数々が,いたるところに編み込まれていた。
こんな体験をさせられた観客からは,鳴り止まない拍手がステージの奏者達に向けて送られた。
しかし,アンコールパートでは,さらなる感動が観客を待っていた。前述した「アイカツ! 10th Story〜未来へのStarway〜」の主題歌,「MY STARWAY」が,サプライズ披露されたのだ。まだフル音源すら発表されていない楽曲だけに,まさに正真正銘のサプライズ。声は上げられないにも関わらず,驚きと感動が客席中に溢れているのを確かに感じられた。
最後に,フィッティングBGMのメドレー(「芸能人はカードが命」〜「SHINING ROAD」〜「カードもともだち!」)と,「アイドル活動!オンパレード!Ver.」で,正真正銘のラストとなる。この流れからも,実に強いメッセージを感じられた。今回も「カードもともだち!」がOP曲だったように,フィッティングBGMにはこれから楽しいことが始まるという期待を抱かせる力がある。そして,それを受けて「さあ! 行こう光る未来へ」という,これからもアイドル活動が続いていくことへのメッセージを,逢来りんさんも含めた全員の歌唱が明るく届けてくれた。この先の未来に,希望を抱かずにはいられない。
これまでも何度か言及していたように,2nd Stageは,コロナ禍で中止を余儀なくされた。そして,今もなおすべてが元通りという状況には程遠い。しかし,あの日無観客収録で悔しい思いをし,何とか次は有観客で開催したいという関係者達の強い思いは,こうして確かに結ばれた。それは,思いの力強さがあれば,きっと明るい未来を切り開いていけるという証明だ。
今回の「『オケカツ!』2nd Stage 10th Ver.」からは,劇場版「アイカツ!」の「大スター宮いちごまつり」のような,素敵な明日を迎えるための力を受け取ることができた。困難な状況下でもステージで素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた,指揮者の水戸博之氏,東京交響楽団の奏者の皆様,そしてMCや歌唱担当の皆様に,あらためて感謝申し上げたい気持ちでいっぱいだ。
「アイカツ!シリーズ」オーケストラコンサート
「オケカツ!」2nd Stage 10th Ver.
演奏曲
【昼公演】
・「カードもともだち!」(「アイカツフレンズ!」より)
・「君のEntrance」(「アイカツオンパレード!」より)
・「ひとりじゃない!」(「アイカツフレンズ!」より)
・「アコガレカスタマイズ☆」(「アイカツオンパレード!」より)
・「アイカツフレンズ!」BGMメドレー(「どーんとコイ!」〜「ビビっときた!」〜「アイドル活動中」〜「もっとがんばらなきゃ!」〜「ともだちのために」)
・「ドリームステージ☆」(「アイカツスターズ!」より。歌唱:星咲花那)
・「HAPPY∞アイカツ!」(「アイカツプラネット!」より)
・「アイカツ!」BGMメドレー(「毎日がアイドル活動」〜「話題の新設校!ドリームアカデミー」〜「新たなオファー」〜「月から星へ」〜「アイカツダッシュ!」〜「伝説のアイドル・マスカレード」)
・「Precious」(「アイカツ!」より。歌唱:ささかまリス子)
・「チュチュバレリーナ」(「アイカツ!」より)
・「荒野の奇跡」(「アイカツスターズ!)より)
・「絆〜シンクロハーモニー〜」(「アイカツフレンズ!」より)
・「硝子ドール」(「アイカツ!」より)
・「いばらの女王」(「アイカツ!」より)
・「タルト・タタン」(「アイカツ!」より。歌唱:藤城リエ)
・「STARDOM!」(「アイカツスターズ!」より)
・「The only sun light」(「アイカツスターズ!」より。歌唱:相沢梨紗)
・「輝きのエチュード」(劇場版「アイカツ!」より。歌唱:霧島若歌)
・「アイカツ!シリーズ10thオーケストラパラフレーズ」〜「SHINING LINE*」(「アイカツ!シリーズ」より)
アンコール
・「MY STARWAY」(「アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY」より)
・「芸能人はカードが命」〜「SHINING ROAD」〜「カードもともだち!」(「アイカツ!」「アイカツスターズ!」「アイカツフレンズ!」より)
・「アイドル活動!オンパレード!ver.」(「アイカツオンパレード!」より。歌唱:霧島若歌,ささかまリス子,藤城リエ,星咲花那,相沢梨紗,逢来りん)
【夜公演】
・「カードもともだち!」(「アイカツフレンズ!」より)
・「君のEntrance」(「アイカツオンパレード!」より)
・「ひとりじゃない!」(「アイカツフレンズ!」より)
・「アイカツスターズ!」BGMメドレー
・「裸足のルネサンス」(「アイカツスターズ!」より)
・「ドリームステージ☆」(「アイカツスターズ!」より。歌唱:星咲花那)
・「Happy∞アイカツ!」(「アイカツプラネット!」より)
・「アイカツ!」BGMメドレー
・「Moonlight destiny」(「アイカツ!」より。歌唱:ささかまリス子)
・「チュチュバレリーナ」(「アイカツ!」より)
・「Dreaming bird」(「アイカツスターズ!)より)
・「絆〜シンクロハーモニー〜」(「アイカツフレンズ!」より)
・「永遠の灯」(「アイカツ!」より)
・「いばらの女王」(「アイカツ!」より)
・「タルト・タタン」(「アイカツ!」より。歌唱:藤城リエ)
・「カレンダーガール」(「アイカツ!」より。※新アレンジ)
・「Forever Dream」(「アイカツスターズ!」より。歌唱:相沢梨紗)
・「輝きのエチュード」(劇場版「アイカツ!」より。歌唱:霧島若歌)
・「アイカツ!シリーズ10thオーケストラパラフレーズ」〜「SHINING LINE*」(「アイカツ!シリーズ」より)
アンコール
・「MY STARWAY」(「アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY」より)
・「芸能人はカードが命」〜「SHINING ROAD」〜「カードもともだち!」(「アイカツ!」「アイカツスターズ!」「アイカツフレンズ!」より)
・「アイドル活動!オンパレード!ver.」(「アイカツオンパレード!」より。歌唱:霧島若歌,ささかまリス子,藤城リエ,星咲花那,相沢梨紗,逢来りん)
「『アイカツ!シリーズ』オーケストラコンサート『オケカツ!』2nd Stage 10th Ver.」特設ページ
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