プレイレポート
ランダム生成によるハクスラ要素が楽しい「Orangeblood」プレイレポート。操るのはワルな美少女,食らわせるのはホットな銃弾!
猥雑な南国を描いた精緻なドット絵
本作の舞台は,列強の手で南北に分断された199X年の日本。主人公のヴァニラは滅法強いトラブル・バスターだが,仕事でヘマをしてしまい,囚われの身に。そんな彼女に,CIAから取引が持ちかけられる。沖縄近海に浮かぶ人工島「ニュー・コザ」の秘密を探れば,即時釈放かつ犯罪記録を抹消してくれるというのだ。
取引を承諾したヴァニラは,かつて自身の腕を鳴らしたニュー・コザに帰還。DJのマチコや日本刀使いのヤザワ,カンフーで戦うジャッキーといった曲者たちを仲間に引き入れ,血の雨を降らせていく。
画面下のパーティ一覧にカワイイ少女たちが並ぶ様は,いわゆる“美少女もの”なコンテンツを連想させるが,彼女らの中身は立派なギャングである。人を殺すなんて朝飯前で,ある者は違法薬物工場の乗っ取りを企み,またある者は上役の抹殺を企むなど,外道の限りを尽くす。ヤザワに至っては日本刀による殺しの快感を恍惚と語るなど,完全にアチラの世界の人間だ。どいつもこいつもぶっ壊れているのである。そんな連中が集まるのだから,ピーカンに晴れたニュー・コザでは,尊いはずの人命がチラシよりも軽く舞い散ることになる。その様はどこか気だるくてドライであり,狂気の臭いがするのだ。
台詞の中には色々な固有名詞が出てきて慌てるかもしれないが,すべてを理解する必要はない。要するにバニラたちはすさまじい外道と理解して,行く手に血しぶきが舞うのを楽しみにしていればいいでのある。
舞台となるニュー・コザは細かいところまで描き込まれたドット絵で描写されており,雰囲気は抜群だ。日本語・中国語・ハングルが交じった看板,九龍城を思わせる増築に増築を重ねた建物,いかにも東南アジアな怪しい夜市といった風景が活写されている。
ゲーム的な視認性よりムードを重視したと思しきアートスタイルなうえ,ニュー・コザは階層構造となっている。おまけに車やバイクが空を飛んでいるため,最初はどこが道路でどこを歩けるのかも分からないと思うが,そのうちに慣れるので心配はご無用だ。
マップのあちこちにはギャングものっぽいギミックが用意されているのも面白いところ。根城となるクラブでは,屋上から人の迷惑を考えない打ちっぱなしゴルフを楽しめる(ボールを打つとたまに遠くで爆発音が響く)のに加え,レコーディングルームでは,マチコがラップの歌詞を考えるのに付き合える。
また,ヴァニラたちは食事でHPを回復するのだが,そこら中にある自販機や屋台に触れるだけでビールやホットドッグといった軽食を気軽に買い食いできる一方,食堂では“食券を買う→定食を受け取る→食べる→食器を窓口に返す”という一連の動きを行わなければならない。ゲーム的には食券を買った後に即回復でもいいところを,あえてこういう仕様にしているあたりに,雰囲気とリアリティ重視の姿勢がうかがえる。
ブッ飛んだスキルを使い,瞬殺を目指せ
本作の戦闘は,敵に触れると戦闘モードへ移行する,いわゆるシンボルエンカウント形式だ。接触の前に,[○]ボタンで撃てるピストルを敵シンボルに当てれば,気絶して動きが止まる。この時にすかさず触れられれば,スキルに必要な「SP(スキルポイント)」が高まった状態で戦闘に突入できる。圧倒的に有利になるので,積極的に狙っていこう。
戦闘システムはコマンド選択式のターン制。銃が通常攻撃となっており,敵味方の間を銃弾が飛び交う。敵はニュー・コザに入り込んだ日本のヤクザや海外のギャング,ドローンに戦闘ロボットといった面々。ヴァニラたちをうまく動かして,皆殺しにしてやろう。SPや「AP(アモ ポイント)」といったリソースと,ランダム生成される銃や装備品がポイントとなる。
SPを使って放つスキルは,ランダムで選ばれた敵に銃撃を加える「デッドアイ」,敵全体に防御力無視の斬撃を仕掛ける「紫電一閃」,敵の攻撃を完全回避しつつカウンターする「十歩一殺」など,「調整ミスなのでは?」と疑ってしまうくらいとにかく強力だ。しかし,戦闘開始直後のSPは0で,マチコのバフや,ダメージを受ける/与えることで増えていくため,最初からスキルをバンバ使って倒すことはできない。
ただ,その点は前述したピストル攻撃で敵シンボルを撃った後に戦闘すれば,SPが50ポイントもある状態でスタートできるので,スキルもいきなり使える。後述する装備のオプションを吟味してセッティングすれば,1ターンで倒すことも珍しくない。ダメージを一切受けることなく敵を葬る爽快感を存分に味わえるのだから,なんとも豪快だ。
ただ,ボス戦だけは地道にSPが溜まるのを待ちつつ,真っ向勝負しなければならない。ボスはHPが非常に高いうえに再生能力を持つ者もいる。加えて複数回攻撃が当たり前だし,範囲攻撃を仕掛けてくる場合もあるから恐ろしい。
ボス戦で特に気を配りたいのが銃の弾数を表すAPだ。銃はAPがなくなるまでは撃ちまくれるものの,0になるとリロードする必要がある。手動リロードにペナルティはないが,射撃中にAPが0になると強制リロードが発動して回避が0になってしまう。AP(残弾)を管理しないとあっさりとやられてしまうわけだ。強制リロードの際に撃たれると,回避できないのでほぼ確実にダメージを食らってしまう。戦闘中のHP回復手段が限られている本作ではなかなかの大ごとで,強制リロードからパーティが総崩れすることも珍しくないのだ。
戦闘を少しでも有利にするためには,装備品の特性を知ることが重要だ。装備は,攻撃に使う「銃」,防具に相当する「靴」と「ギア(ヘルメットやベストなど)」の3カテゴリーで,いずれもランダムで生成される。基本となる性能に,オプションによる特殊効果が加わってさまざまな装備品が誕生するという,由緒正しきハック&スラッシュな方式だ。特に銃のオプションは「Long barrel」「Suppresser」「Night vision」など,銃の部品や追加装備の名前になっている。
ピストルからの気絶→スキルによる瞬殺を駆使しながら進み,ボス戦で生き残るためには,これらのオプションを理解して適切に装備を分配しなければならない。スキルが強力なキャラクターには攻撃力が高い銃を渡して,攻撃力に補正がかかる靴とギアで固める。誰かに攻撃を引きつけてほかのキャラクターを守りたいなら,敵に狙われやすくなる「Flash」オプションを持つ銃と,HP増加や自動回復のオプションが付いた装備を与える。敵をスタンさせたいなら,ショットガンと敏捷性アップの装備をさせる……といった具合だ。
オプションのステータス補正はなかなかに豪快で,攻撃力やHPなら数百ポイント,敏捷性は数十パーセント単位で上下することも珍しくない。また,レア度が高ければ高いほど良いかというとそうでもない。
単なるコモン装備に「ショットガンの威力+200%」だの「弾倉内にある最後の1発の威力が+700%」なんてトンデモオプションが付いていることもあり,装備選びはなかなか悩ましい。うまくはまると,ピストルからの気絶→高まったSPで開幕と同時にスキルを発動し,敵全体に大ダメージを与えて一撃必殺を狙える。敵から攻撃されてもびくともせず,毎ターンHPが回復する不沈艦も作れたりする。
スキルの攻撃力が足りず,倒し損ねてしまうとHPが残ってしまった敵をチクチク削らなければならない。また,スキルを持つキャラクターの敏捷性が足りず,敵に先制攻撃を許してしまうこともある。装備のオプション次第で戦闘の効率が大きく変わってしまうため,なんとか良い装備を手に入れたいところだ。
幸いダンジョンには,宝箱に相当する「クレート」がゴロゴロしている。マップを出入りするだけですぐ復活するし,敵からとんでもないオプションの付いた武器が手に入る場合もある。理想の装備を求めて狩りをする,ハクスラ要素が好きな人ならつい没頭してしまうだろう。
戦闘は,開幕と同時の瞬殺が理想なため,よく言えば豪快,悪くいえば大味ともいえるバランス。良い装備を入手して,思い描いた作戦が決まった時はなかなかに爽快だ。
逆にボス戦では,こうしたセオリーが通用しないし,初見では絶対に引っかかるような罠が仕掛けられていることもあるため,まず1回はやられることが前提のバランスなのはちょっと気になった。ダンジョンでは自由にセーブできないし,全滅すると所持金の数十パーセントを没収されるため,ストレスを感じてしまう。
「Orangeblood」は,可愛い系のキャラクターにギャングもののシナリオ,そして「Borderlands」を思わせる面白オプションが付くランダム生成が合わさった異色作だ。メインシナリオはそう長いわけではないが,これらのキーワードに反応する人や,装備集めにモチベーションを感じる人は楽しめる作品と言えるだろう。
「Orangeblood」公式サイト
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