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インタビュー

[インタビュー]人間が1番怖い? 「悪魔王子と操り人形」のキャラクター12人を深掘り! 池田P×尾崎ドミノ氏×実弥島 巧氏に聞いた

 ドリコムが2024年6月3日にリリースした「悪魔王子と操り人形」iOS / Android。以下,あくあや)は,「悪魔」「人間」「天使」の3種族が暮らす,呪われた世界“シャグラン” を舞台に描かれるダークファンタジーADVだ。プレイヤーは,呪いを浄化する力を持つ,神が遣わした「調律者」(ちょうりつしゃ)となり,浄化の力を分け与えた「弔花者」(ちょうかしゃ)たちの運命を見守っていく。

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 4Gamerは,「あくあや」の世界観やストーリー,キャラクターの魅力を紹介してきたが,今回はさらに深掘りするべく,プロデューサーの池田氏,キャラクターデザインの尾崎ドミノ氏,メインシナリオの実弥島 巧氏へのインタビューを実施した。

 重大なネタバレはないが,キャラクターの内面に踏み込んだ内容になっているので,まったく情報を入れたくない人は注意してほしい


「悪魔王子と操り人形」公式サイト

「悪魔王子と操り人形」ダウンロードページ

「悪魔王子と操り人形」ダウンロードページ



池田氏と尾崎氏がふくらませ,
実弥島氏が整えた「あくあや」の世界


4Gamer:
 「あくあや」がリリースされて少し経ちますが,今のお気持ちを聞かせください。

プロデューサー 池田氏(以下,池田氏):
 ようやくリリースすることができて,ほっと胸をなでおろしています。現在公開中のメインストーリーをすべて読み終わっている方も多いようで,楽しんでいただけているのかなと。運営上,改善したい点はたくさんありますし,もっと遊びが楽しくなるような工夫も今後詰め込んでいきたいと思っています。

4Gamer:
 リリース後の週末(6月8日と9日)には,リアルイベント「あくあや Balloon Party」も開催していましたね。

池田氏:
 はい。ありがたいことに,たくさんの方に来場いただきました。



尾崎ドミノ氏(以下,ドミノ氏):
 無事にリリースできたことを,チーム全体でうれしく思っています。「あくあや」の世界観やキャラクターを好きになって,楽しんでくださっている方の声も届いていて……。皆さんに喜んでもらえる絵をたくさん用意しているので,これからも期待してほしいです。

実弥島 巧氏(以下,実弥島氏):
 どんな企画もそうですが,開発中はさまざまなことがあるので,無事にリリースできてホッとしています。以前のインタビューでも少しお話ししましたが,私は女性向け作品のシナリオを担当した経験が,ほかのジャンルより少ないです。そのため,大丈夫かなと心配していたのですが,楽しんでいただいているようで,良かったとそちらの意味でも胸をなでおろしています。


4Gamer:
 4Gamerでは何度かインタビューしているので,あらためてにはなりますが,本プロジェクトの成り立ちを教えていただけますか。

池田氏:
 最初は,私と尾崎さんの2人で企画を考え始めました。「ワガママな王子様の物語」を尾崎さんに提案したところ,キャラクターや世界観のアイデアをたくさん出してくださったんです。これは何か広げられるかも……と考えつつSNSで情報を公開したところ,非常に好意的な反応をたくさんいただきました。

 自分たち自身も楽しんで作れるものが,ユーザーの皆さんにとっても新しい価値や楽しみを提供できる企画になるのではと思ったんです。それで試行錯誤を続けながら,プロジェクトを大きくしていきました。

4Gamer:
 最初は2019年に公開されたPV第1弾でしたね。とても印象的でした。ちなみに尾崎先生は,「ワガママな王子」と聞いて悪魔王子のイメージがすぐに浮かんだのでしょうか。


池田氏:
 最初,「悪魔」ってオーダーしてましたっけ?

尾崎氏:
 オーダーはされていなくて,パッとアイデアが浮かんだ感じです。私はデザインする際にサブテーマを用意することが多く,人外キャラクターをデザインするのも好きなので,普通の王子様ではなくひと癖ある姿を……と考えて生まれたのが悪魔王子でした。

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4Gamer:
 なるほど。そこから世界観は,どのように作りこまれたのでしょう。

池田氏:
 そこは,実弥島先生が一番苦労され点だと思います。我々がこんな陣営を作ろうとか,天使ってこんな感じだよねと,自由に広げてしまって……(笑)。

実弥島氏:
 一般論ではなく私の場合ですが,初期に考える設定はあまり多くないんです。まず,核になる設定をいくつか作って,そこから物語を作りながら補強したり,ゲームに必要な設定を追加したりしていきます。そのため,「あくあや」のメインシナリオを担当することが決まった際に,送られてきた資料を見て「多い!」と驚きました(笑)。

池田氏:
 あそこまで細かく決まっていることってそんなにないですよね。

実弥島氏:
 はい(笑)。これだけ設定が決まっていれば物語もある程度決まっているのかな? と思ったら,まだ固まっていないというお話で……責めているわけじゃないですよ!

池田氏:
 本当に心苦しい限りです。

実弥島氏:
 設定が多いのは悪いことではなくて,開発を進めていけば増えていくものです。ただ,全部の設定を物語に入れ込むと,設定を説明するだけの物語になってしまうので,初期段階では少し設定を減らさせていただきました。のちに戻したり,追加したりするのは問題ないですから。それだけ,思い入れを込めて作っているんだなと感じましたね。

池田氏:
 単に減らすわけではなく,実弥島先生からは「このキャラとこのキャラの設定が重なることで,両方の設定が活きなくなります」と具体的な指摘をいただきました。我々は物語を作るうえでのそういう面が分からないので,勉強になりましたね。

実弥島氏:
 キャラクターの設定は,1人だけ作るときはどんな要素も入れられるんです。でも2人になったときに,干渉しあう設定ができてしまうこともあります。Aの芯はこう動くはずなのに,Bとの間にある設定のせいで,主軸の性格とずれてしまうというような。どちらの設定が大事かをうかがいつつ,設定を調整したり,追加したりしました。

池田氏:
 だんだん設定が整っていき,キャラクター同士の関係性が物語のなかで深まっていくのを見て,本当にスゴイなと思いました。最終稿を読んだときに,「これが読みたくて作り始めたんだ」と感じましたね。それくらい,感動した創作体験でした。

4Gamer:
 メインシナリオ制作の際,池田さんや尾崎先生から何か方向性などのオーダーはあったのでしょうか。

実弥島氏:
 公開されている情報はなるべく入れてほしいというのと,プレイヤーである調律者の描き方についてはオーダーがありました。既存設定がすでに公開され,SNSでファンの皆さんが見てくださっている状態だったので,それをどのようにうまく入れ込むかというのが難しかったですね。

 そのくらいだったので,オーダーが少ないぶん自由に,楽しく書かせていただきました。ただ,私は意図的に専門用語をたくさん入れるので,分かりにくくならないように,一部削ぎ落した部分はあります。

4Gamer:
 調律者については,どのような調整がありましたか。

実弥島氏:
 これまで描いてきた作品では,プレイヤー=主人公なので,設定を盛るというほどではありませんが,目立つようにしていました。

 でも「あくあや」では,できるだけ主要キャラクターの存在が立つように,何度か修正したのでその調整が難しかったです。調律者があまり前に出ないぶん、誰の視点で物語を進めるのがいいのかと思い,各陣営の話を群像的に描く方向にしています。

4Gamer:
 調律者の立ち位置に関わる要素として,「叡智の精霊」(えいちのせいれい)の存在も気になるところです。

実弥島氏:
 叡智の精霊は,調律者があまり関われない部分を補う役割があります。ネタバレになるのであまり言えないのですが……,悪ではないです。これからの展開を,楽しみにしてください。

4Gamer:
 先に世界観やキャラクターがある程度決まってから,ゲーム要素を入れていったのだと思いますが,リベル・エンタテインメントとの共同開発になった経緯や,箱庭などのゲーム要素を組み込んでいった意図を教えてください。

池田氏:
 弊社は,女性向けゲームをあまり作ったことがなく,いろいろと企画を考えては「イマイチだね」と没にすることを繰り返していたんです。そんななかリベル・エンタテインメントさんとお話しをする機会があり,お力を借りて一緒に作ることになりました。

 ゲーム要素については,協議を重ねるなかで核を何にするか考えたときに,キャラクターが生き生きと動き,世界観が感じられる箱庭はどうかという話になりました。女性向けゲームで箱庭はメジャーなコンテンツですが,どこかオマケや鑑賞的な部分になることも多いです。それもいいですが中心に置いて,そこから世界が広がっていくようにしたいなと,今の形になりました。

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「悪魔王子と操り人形」における
「悪魔」「人間」「天使」とは


4Gamer:
 本作に登場する種族を,「悪魔」「人間」「天使」に決めた理由を教えてください。

尾崎氏:
 「あくあや」は,悪魔王子のディアが生まれたところから始まりました。そこからキャラクターを増やしていくなかで,悪魔と関連するものが増えていった形になります。

 悪魔は人間の魂を食べるという設定なので,人間が対立勢力になるだろうなと。この2勢力だけでは人間があまりにも不利なので,仲介する存在として天使を増やしました。そういった設定も,実弥島先生にキレイに整えていただきましたね。

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4Gamer:
 この3種族はファンタジーを好きな人でも,そうでない人でも関係性が想像しやすく,世界に入り込みやすいですよね。

尾崎氏:
 そうですね。それに,実弥島先生のシナリオにおける種族の絆や対立などの描き方が個人的に好きで……。メインシナリオをお願いできることになった際に,それを重視して描いてもらえるのではという思いもありました。

実弥島氏:
 ありがとうございます。私は信仰という意味ではなく,学術的,エンタメ的な意味での宗教に興味を持っていて,資料を読んだりしています。本作でも,この世界における天使,神,悪魔とは何かと楽しく考えさせていただきました。

 尾崎さんは悪魔から考えたというお話でしたが,私は天使から物語,世界観を作っていったんです。すべてのキャラクターが中心人物だと思っていますが,悪魔王子とタイトルにもついているとおり,ディアは特別な位置にいると感じました。悪魔王子がメインになる物語を考えるときに,なぜ悪魔が悪魔となったのかを考え,世界作りを担った天使の設定を固めました。

4Gamer:
 メインストーリーを読んでいても,天使は本当に特殊な存在ですよね。悪魔よりも怖いとさえ思いました。

実弥島氏:
 それは,私の「天使は怖いもの」という考えが入ってしまっているせいかもしれません。この怖いは,恐怖ではなく畏怖。人知の及ばないことをする,世界のためなら多少のことを犠牲にできる,理論としては分かるけど感情的に理解できないことをするのが天使なのかなと思っています。あくまで,日本のファンタジーにおけるイメージでのお話ですけどね。

尾崎氏:
 キャラクターデザインでも,実は天使はちょっと怖い存在としてデザインしています。今のお話を聞いて,一致していてうれしいですし,そのように描いていて良かったなと思いました。

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4Gamer:
 それぞれの種族を描くうえで,意識していることはありますか。

尾崎氏:
 基本的に天使は,世界をよくするためなら私情に関係なく動く存在だと思っています。そういう怖さをベースで考えていたので,純白というよりも黒の要素を入れました。表情とか色見とか,治安が悪そうに見えることを意識しています。PVにもそういう仕掛けが入っていて,「何か,ヤバそう」とほんのり感じられる点をチラチラ入れています。

 「あくあや」の悪魔は,どちらかと言えば人間に近いです。色はダークではありますが,表情が生き生きしているし,好き嫌いもはっきりしているし,分かりやすく描いています。

 人間は,個々の力では悪魔や天使にかなわないので,数で対抗するだろうと考え,アキレギア帝国は最初から軍人だと考えていました。かっちりとした制服を着せてパッと見たときに,一組織というのが分かりやすくし,人間同士の団結力を持たせています。それが,疑心暗鬼を生んでいるんですけど。

池田氏:
 確かに! 「この人たちどうなるの」って,心配してくださっている調律者さんが多いと思います。

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4Gamer:
 アキレギア帝国も,いろいろと大変ですからね。そのお話は,のちほどじっくり聞かせてください。実弥島先生はどうですか。

実弥島氏:
 ベースとしては,尾崎先生が話されていたのと同じです。天使については使命に忠実で,機械的なところがある存在をイメージしています。そこに好きな食べものや場所など嗜好を加えると,一気に人間的になってしまうのですが,それがキャラクターらしさでありファンの方に親しんでいただく取っ掛かりにもなります。

 その兼ね合いで悩んだのですが,「あくあや」の世界ではもともと天使も人間のように感情があるのに,高位の存在になるためにそれを切り捨てているという設定はどうかと……。だから上位の天使ほど感情がなく,カイやティスたち下位の天使は表情豊かでも問題ない。天使の感情から新たな天使が生まれる設定を,天使の持つ人間味についての設定でも,うまく使わせていただきました。

 悪魔は,感情を切り捨てることを嫌がった人たちだから,逆に感情がとても豊かなのかなと。人間は,現実世界に近い存在です。寿命が天使と悪魔とはまったく違うので,数で対抗し,世代を重ねてたくましく生きるイメージです。個人的には,人間が1番怖いと思っています(笑)。

4Gamer:
 そんな3種族にまつわる,ダークファンタジーという表現がぴったりなメインストーリーは現在展開しています。全体や各陣営で,テーマはありますか。

実弥島氏:
 最初にお話をいただいたときから,ダークファンタジーというのは固まっていました。でも人によってダークの捉え方は違っていて,呪術的なものや,サスペンス的な心理戦を連想する方もいます。そのため,分かりやすいようで難しい要素だなと思いました。

 いただいた軍や人間の魂を食らう悪魔の設定を見て,殺伐寄りのダークがいいのかなと。この世界に暮らす住人たちのなかで,争いによって生まれる軋轢,愛憎を取り入れたダークにすればキャラ設定が生きるかなと思って制作しました。

池田氏:
 陣営と種族があって,陣営で見ようとすると種族が入り混じる場合もあります。そこが面白いところであり,関係性を難しくしているポイントです。

実弥島氏:
 種族が入り混じっているからこそ,生まれる不協和音ってありますよね。聖地ジプソフィラやアキレギア帝国のように,単一種族だからこそ,精鋭化していく怖さもあります。どちらも,いいダークさになっていくと思います。

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キャラクターを深掘り!
弔花者12人について聞く


4Gamer:
 作品を知り尽くしたお三方にお話を聞ける貴重な機会なので,ぜひそれぞれの目線で,各キャラクターについて教えてください。

【コルチカム王国】

●ディア
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尾崎氏:
 見た目はかわいい少年なんですが,長く生きているという設定は決まっていたので,どれくらい大人っぽさと言いますかセクシーさを入れるかを考えて描きました。ボイスを小林ゆうさんにお願いしたのも,それを表現していただけると確信していたからです。

池田氏:
 1000年の孤独というキーワードは,最初からありましたね。永き孤独のなかで少年が変質していくのを,見る人が心痛めると言いますか……。

実弥島氏:
 ディアは,辛い事件があって引きこもったまま,1000年以上を生きています。内にこもって己を傷つける彼と,誇り高い大人としての彼がいるんです。

 私自身,見た目は若くて中身が老成したキャラクターを描くことがたくさんあります。どのキャラクターにも共通しているのが,本人は内省して,成長したつもりでいても,鏡や窓に子どものままの自分が映るというギャップ,違和感を精神的に感じることがあるだろうという点です。

 ディアが甘いものが好きというのも,見た目に引きづられたり,在りし日の幸せな思い出に浸っていたりという部分があるのかなと思います。

●エスパダ
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尾崎氏:
 最初は,誰にも興味がないクールなキャラクターでしたが,感情の起伏はないけどディアに関してだけは生き生きするような,そんなかわいらしさのある人物としてエスパダをデザインしました。そこから実弥島先生にいろいろ設定を整えてもらって,どんどん魅力的になりました。

実弥島氏:
 設定をいただいたときから,ディアには絶対服従ということで,キャラクター性が明確でした。分かりやすいがゆえに,そこが弱点で,面白く見えてしまう可能性があります。面白いではなく,真面目に取り組んでいる方向に調整しました。

 エスパダは半人半魔で,さらに魔界の実力者が家族で,自分のプライドを守るための鎧を身に着ける必要があったのかなと。そんな彼だからこそ,ディアがいないと生きていけないとまでは言えませんが,お世話をすることで自分を救っているところがあると思っています。

尾崎氏:
 ベラドンナ家の兄弟が出てきたことによって,エスパダの魅力が増したなと思います。悪魔の血と葛藤する姿とか。

実弥島氏:
 完璧に見えて,完璧じゃない良さがありますよね。

●フィオーリ
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尾崎氏:
 悪魔たちの居城に,死ぬかもしれないのに単独で入り込むって,そうとう肝が据わっているなと思っていました。そのため,ただのぶりっ子にはしたくなかったですし,かといって急に怒る子でもないですし,自分で見て考えて,行動できる子にしたいなと思って描きました。

 シナリオでも,まさに「そうです,こういう子です!」という立ち回りができる,賢い子になっています。内面も魅力的なキャラクターにしていただきました。

実弥島氏:
 フィオーリは書きやすかったです。依頼を受ける前にトライアルで何本か短編テキストを書かせていただいたのですが,フィオーリを書いていて「分かる!」となりました。これは気持ちが分かるではなく,どのように動くのかが“分かる”です。とても楽しく書かせていただきました。

 とても頭がいいし,心が強い子なのかなと思います。頭がいいので目的のためにいろいろと考えるけど,手段を選ばないほど厳しくはなれないのが,フィオーリの良さですね。一線を越えれば楽になれる最後の一歩で踏みとどまり,自分自身,苦しんでいるキャラクターです。

池田氏:
 ディアとエスパダ,フィオーリは不思議なバランスの3人ですよね。お城で自分の居場所を作って,お互いに尊重していて。

実弥島氏:
 最後の一線を越えないフィオーリだから,あの城にいられるんだと思います。ちゃんと状況や相手を見て,地雷原の上でもダンスを踊れる子です。

池田氏:
 フィオーリは最初,もっと無茶な子になるのかなと思っていましたが,実弥島先生が書いてくださったシナリオで,本当に賢いなと感じました。調律者にも優しいし,世界のなかでうまく立ち回り,芯も曲げないという強い子ですね。

尾崎氏:
 調律者も,フィオーリが守ってくれないと危うい立ち位置です。

実弥島氏:
 あのメンバーだと,誰も調律者に興味を持ってくれないんですよね(笑)。フィオーリが声をかけてくれるのは,シナリオとしても本当に助かります。

【アキレギア帝国】

●クロード
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尾崎氏:
 見た目は清廉なんですが,裏があればいいなと思って描いていました。先ほどのフィオーリについて実弥島先生が「地雷原の上で踊れる子」と話されましたが,クロードは踏みながら突き進んでいるんじゃないかなと……。自分が不幸になる運命を受け入れ,振り切っていて,個人的には潔くて魅力的だと思っています。

池田氏:
 目が離せない存在ですね。

実弥島氏:
 クロードは私も筆がのって,「大丈夫ですか? 挽回できますか?」と確認されることが多いです。調律者のなかには「えっ」と思われる方もいるかもしれませんが,彼はそういう生き方を選んだ人物なので,個人的には挽回しなくてもいいかなと思っています。

 フィオーリとは逆で,彼は一線を越えた人。だから何でもやるし,どんな手段もとるけど,自分も幸せになれるとは思っていない。だから見ている側としても,酷いだけの人とは思えないわけです。

 フィオーリもクロードもですが,設定をもらったときに思ったのが,「あくあや」の登場人物には頭が悪い人がいないんですよ。シナリオで描く際に,軽率な行動でトラブルを起こす人たちがいると,分かりやすく物語が展開していきます。

 でも「あくあや」は頭がいい人だらけなので,クロードのような人がやらかすのは何だと考えたときに,手段を選ばないからこそ事件を起こすんだろうという結論になりました。

尾崎氏:
 どうなるんだろうと,私もドキドキしながら見ています。

池田氏:
 幸せにならないルートを選びそうですからね。

●エリク
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尾崎氏:
 最初は,生意気要素を強めに作っていたのですが,周りが優秀で曲者ぞろいになりすぎたということで,真面目で勤勉なキャラクターになりました。また,アキレギア帝国はクロードもオスカーもワケありなので,ときには2人を照らす太陽になってほしいという願いも込めて,清らかなデザインになっています。

池田氏:
 最初は神経質な面が強かったように思います。

尾崎氏:
 神経質で,プライドも高かったです。もちろん今でも,プライドはしっかりあると思いますけど。人の指摘を受け入れないタイプだったので,今とは全然違います。

実弥島氏:
 真面目ないい子ですよね。あの陣営のなかで,うまくバランスを取って立ち回っている常識人です。読んでいる方が感情移入まではいかなくても,理解できる人物がいれば,物語への取っ掛かりになります。コルチカム王国がフィオーリだったら,アキレギア帝国はエリクだと思っています。

 彼はユーザーと同じところで,クロードやオスカーに「あれ?」と思ってくれる存在です。常識人だからこそ,ほかの2人の救いになれるんじゃないかなと思います。

●オスカー
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尾崎氏:
 当初は今よりも年上で,いろいろな経験を味わって,成熟した人を想定していました。設定を詰めていく中で年齢が若くなり,自身も悩むし,葛藤もするし,単体で見たときにいい塩梅のキャラクターになったなと思っています。

 陣営全体を見たときに,形はどうあれクロードを支えてあげてほしいという気持ちもあったんです。その設定はふんわりしていたので,実弥島先生に「お願いします」と託しました。

実弥島氏:
 クロードはとても頭がいいので,彼が本気で隠そうとしたら,その秘密は本当に誰も知らないものになってしまうんですよ。でも物語としては秘密を共有している人がいないと,毎回クロードのモノローグになってしまうという問題もあって(笑)。そういう事情もありつつ,オスカーは秘密を知っているキャラクターにしようと思いました。

 酸いも甘いもかみ分けた大人と,大人に擬態している大人がいるとしたら,オスカーは後者だと思っています。辛い過去があって一度空っぽになってしまって,大人に擬態して暮らしながら,欠けたものを埋めていっているような。

 だから空の部分を埋めてくれるエリクをかわいいと思うし,自分のように空っぽになりそうなクロードを心配しながら,自分を癒しているのかなと何となく思っています。

池田氏:
 オスカーにその自覚はあるんですか?

実弥島氏:
 オスカー自身に,埋めていっている自覚はないと思います。ただ空っぽの自覚はあるから,どんな酷いことでもクロードの手伝いができるんです。でも本当はちゃんと埋まっていっていて,それが擬態している大人の成長として描けたらと思っています。

【聖地ジプソフィラ】

●メーレ
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尾崎氏:
 設定を詰める前から,“サイコママ”という設定が固まっていましたし,開発内での評判も良かったです。それに天使は異質な存在なので,それを表現する存在としてメーレを描かせていただきました。

実弥島氏:
 設定をいただいたときに,“サイコママ”とは何だろうと,すごく難しかったです(笑)。何をもってサイコと思うかにも個人差がありますし,言葉そのものの意味も時代や文化のなかで変わっています。ママも同じく,いろいろな受け取り方のある言葉ですよね。どの組み合わせなのか,「天使が難しい,メーレが分からない」と何度も相談した気がします(笑)。

 そのなかで,メーレは人の気持ちが分からないというのが特徴なのだと確定させました。しかも,分かっていないのに分かった気になっているタイプで,面倒なことが起きるのに自分が原因だとは思っていないという。ママの部分も,おままごとなんですよね。

 それでも天使としての役目はしっかりやっていて,そのギャップが面白いです。自分の引き出しのなかにはなかったキャラクターなので,書いていて楽しいです。

●カイ
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尾崎氏:
 すべてにおいてマイナス思考のキャラなんですが,うじうじしたキャラクターにはしたくなくて。マイナスにポジティブと言いますか,「僕はダメなんです」と淡々と言うイメージが頭の中で固まっていました。カイは,魅力が分かりやすく,スムーズに表現できたキャラクターです。

実弥島氏:
 カイは設定の段階から仕上がっていたので,私はとくに手を加えていないです。すべてが“ポジティブネガティブ”で完成していて,一番手のかからないキャラクターでした。あの天使陣営では,精神的に一番強い気がします。

4Gamer:
 各キャラクターとの会話のなかで,カイの強さという面白さが分かりますよね。

尾崎氏:
 人の言葉に傷つくのではなく,自分で傷ついて結論を出しているタイプですからね。外部からの影響で,凹むことはない感じがします。

実弥島氏:
 いい鎧ですよね。人に「お前ダメだな」と言われても,「そうですけど,何か?」と(笑)。カイのなかでシミュレーションができていて,何を言われても,自分のなかで何万回も想定して,分かりきってましたがと言える強さがあります。

池田氏:
 強い(笑)。その強さが欲しい。

尾崎氏:
 アダラの嫌味も,あまり聞いてなさそうですよね。

実弥島氏:
 あの世界では,カイはトップクラスに心が強いと思います。もしも上位の天使になるために,感情を切り落とさなければいけないときがきたら,カイにとって一番の試練になるでしょうね。

●ティス
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尾崎氏:
 ティスは楽しいことを基準で生きていて,初期は面白ければ周りが傷ついていても構わないという感じの子でした。でも西山宏太朗さんのお芝居で,明るく太陽のような子だと感じ,それこそがティスだなと思えたんです。

 また,カイにとって大事な存在であってほしいという気持ちもあり,いい子だけど周囲から見ればとんでもないものを背負っている今のティスになりました。そこがティスの辛いところでもあり,良さでもあるのかなと思っています。

実弥島氏:
 最初に設定をいただいたときに,楽しさを優先する考えがローゼとかぶる可能性があるなと感じました。そこで自分も気にしないし,相手も気にしない,ただし相手を気にしないのは間合いを掴んでいるからこそという方向に変換しました。

 明るくいい子なんですが,そういう彼でいられるのは,踏み込み過ぎないからこそかなと思っています。踏み込まないから人の毒に当てられないで,キラキラしていられる。そんな何もしないティス相手では,カイもネガティブさのバリアを発揮できないんですよね。だからカイはティスに弱くて,そんな2人だから関係が成り立つのかなと思います。

【魔都ベラドンナ】

●アダラ
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尾崎氏:
 ちゃんとした悪魔を描いていなかったので,悪魔界のボスとして,圧倒的な強さと威圧感を表現したいなと思いました。諏訪部順一さんの素晴らしいお芝居もあり,強いキャラクターとして立たせられました。

実弥島氏:
 最初に書いてあった設定では,べらんめえ(江戸っ子)口調で,荒っぽさの質が今とは違っていたんです。それに合わせて書いていたんですが修正が入って,「もしかして,こちらの方向性じゃないですか」と今の形を提案したら「そうです」とまとまりました(笑)。

 威圧感はありますが,品がいいんですよね。任侠ものやマフィアもの作品ではお約束だと思うのですが,下っ端はガラが悪くても,偉くなるほど社会に擬態しているから落ち着いているんです。それに偉い人って,言葉数が多くなるほど,その威厳が失われていきますよね。アダラはいかに言葉少なに,出番とセリフを増やすかが難しかったです。

池田氏:
 クロードは,思いのままに動いてますけどね。

実弥島氏:
 クロードも身分は高いですが,より上の立場の人間がいるじゃないですか。ディアは動かないほうですし,国が滅んでいるぶん,まだ動きようもあります。だから,アダラが大変です。

●ローゼ
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尾崎氏:
 ローゼは,エロスとセクシーさ,狂気的な雰囲気を出したデザインにしています。気品があって落ち着いたキャラクターが多いので,いろいろかき乱してほしいという願いも込めています。すべてにおいて弟のエスパダと正反対で,でもローゼは彼が大好きというのも,あべこべ感があってシナリオを読んでいて楽しいし魅力的です。

実弥島氏:
 ローゼはエスパダが大好きですし,それ以外の人にもぐいぐい絡んでいくのが面白いと思っています。ローゼのようなトリッキーなキャラクターは,個性的すぎるがゆえについていけないということもあるんですが,彼の場合は人を惹きつける愛嬌があるんですよね。

 それが好かれるためでなく,そう振舞う自分が好きなだけという冷たさ,怖さがあります。彼の言葉で救われる人間がいても,傷つく人がいてもどうでもいいというのが根幹なのかなと思います。現実の世界における悪魔のイメージに近いですが,「あくあや」の世界では秩序を乱す変わった存在ですね。

●ヴァニス
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尾崎氏:
 ローゼとは違う色気,一緒に堕ちてしまいそうな妖しさを全面的に出しています。でも本当は,メーレから生まれた元天使「憤怒」の存在で,そこから想像できない姿になっているのが1つの魅力なのかなと思っています。

 堕天使はもともと黒いイメージがありますが,「あくあや」では天使の出生を考えて,いろいろなものが抜け落ちていく途中,最後は空になってほしいと考えました。そんなミステリアスさを考えてデザインした結果,今のヴァニスになりました。

実弥島氏:
 私のところに来た段階では,堕天使に対する設定がそれほど固まっていませんでした。天使から悪魔になる途中の存在なのかなと考え,魔界にはいるけどどこにいるか定まっていない,自由だけど孤独なのがヴァニスの良さなのかなと思っています。

 でも堕天使とは何かと考えたときに,天使にもなれず,悪魔にもなれず,自由だけど1番縛られた存在なのかなと感じました。ヴァニスは軽い言動でそれを隠しているけれど,そこに憤怒の感情は残っているんじゃないかなと思います。

4Gamer:
 ありがとうございます! 各キャラクターについてより深く理解できた気がします。「あくあや」にはお話しいただいたとおり,魅力的な国や陣営が多数登場しますが,今後増える予定はありますか。

池田氏:
 どうですかね。まだ,ちょっと気が早いのではないでしょうか(笑)。でも,国や世界はいくらでも広がっていく可能性がありますので,楽しみにお待ちください。

4Gamer:
 楽しみにしています! 運営型のため流動的だとは思いますが,物語の結末はある程度決まっていますか。

池田氏:
 長期的に見て,実弥島先生に固めていただいています。

実弥島氏:
 大まかなプロットは用意していて,こうなるかなという展開は一応用意しています。

4Gamer:
 なるほど。お話しいただける範囲で,今後の展望を教えてください。

池田氏:
 公式Xでスペースを何度か実施していますが,今後も継続していきたいなと思っています。アプリ内イベントも定期的に開催予定です。また,メインストーリー7章は,それほどお待たせせずにお届けできるかなと。その後の展開も鋭意制作中です。

4Gamer:
 期待しています! 最後にファンの皆さんに,メッセージをお願いします。

池田氏:
 サービス開始となり,自分もいちユーザーとして遊んでいます。これからもっと大きくし,皆さんに楽しんでいただけるコンテンツを増やしていきたいと思っていますので,応援をよろしくお願いします。

尾崎氏:
 やっとリリースできて,一旦安心しております。今後もイベントやグッズなどゲーム以外のコンテンツでも,たくさんイラストを用意しているので,楽しみにしていただけますと幸いです。

実弥島氏:
 まだメインシナリオの制作途中なのですが,いろいろなトラブルとか,トラブルとか,トラブルが待ち受けています(笑)。そのなかで彼らがどのように行動し,思うのかが,物語を楽しむポイントにもなると思いながら,一生懸命書いています。長く愛していただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

4Gamer:
 ありがとうございました。

――2024年6月17日収録

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