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[インタビュー]「地球防衛軍6」の壮大なシナリオは,前作からの緻密な伏線によって生まれた。岡島Pとサンドロットのメンバーが語る開発の裏話とは
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印刷2022/12/29 08:30

インタビュー

[インタビュー]「地球防衛軍6」の壮大なシナリオは,前作からの緻密な伏線によって生まれた。岡島Pとサンドロットのメンバーが語る開発の裏話とは

誰が見てもひと目で分かるような敵デザインが,地球防衛軍らしさ


4Gamer:
 6では「相手を狙い撃つ遊び」がこれまで以上に充実しているという印象です。敵に弱点の概念が追加され,機体中央が弱点の「タイプ3ドローン」「キュクロプス」。手足が細いので大きな頭を撃ちたくなるけれど,フラフラと動くので狙いにくい「アンドロイド」というように,デザインと遊びがリンクしている感があります。敵キャラクターをデザインする際は,こうした遊びの要素を前提にして形を決めていくのでしょうか。

野口氏:
 敵に関してはデザイン先行で,まず五十嵐が考えたものを元にその形状に合わせた遊びをこちらで遊びを考えています。

五十嵐氏:
 シリーズも長いので「こういう使われ方をするんじゃないか」とある程度アタリを付けてデザインはしています。ただ,予想外の使われ方をすることもあり,唸らされることもありますね。

4Gamer:
 そうした驚きがあった具体例を教えてください。

五十嵐氏:
 タイプ3ドローンですね。企画からのオファーは「空を飛ぶ機械生命体」でした。今回は海の生物がモチーフという今回の方向性があったので,クラゲやヒトデのようなデザインにロボットの頭が逆向きにぶら下がっているというデザインで出しました。
 そうしたらいつの間にか頭が弱点になっていて,いいフィードバックをもらったなと思いましたね。キュクロプスの目玉もデザインの後で弱点になったパターンです。

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4Gamer:
 デザインと遊びがしっかり融合しているので,てっきり当初からのコンセプトに沿ったデザインだと思っていました。アンドロイドもかなり印象的な敵ですが,あれもデザインから決まっていったのでしょうか。

五十嵐氏:
 アンドロイドもデザインベースで進んでいきましたね。今まで巨大生物と戦ってきた「地球防衛軍」ですが,「進軍してくる多数の小型メカと戦うシチュエーションもそろそろ要るだろう」という話は前から出ていたんです。
 最初はよくある見た目のいかにも「雑魚メカ」という感じのものを作り,そこからいろいろなものを削ぎ落して,最終的に風船のような現在の形に落ち着いています。

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4Gamer:
 シンプルだけれどインパクトが大きなデザインですよね。ズラリと並んだ時の圧が凄いというか,街角で鉢合わせになるといまだにギョッとします。

五十嵐氏:
 ユーザーから「このキャラクターは『地球防衛軍』だよね」とすぐに覚えてもらえるものを目指しています。そうした結果,半端にカッコイイものや恐ろしげなデザインではなく,ああしたシンプルなものになることが多いんです。

4Gamer:
 確かにゴテゴテしている敵は少ないですよね。アンドロイドは見た目はメカニカルだけれど,撃つと装甲が剥がれて有機的な器官が出てくるのも面白いです。

本間氏:
 最初は中身もメカだったんですが,ほかの敵と比べて撃ったときのプレイの感触が良くなかったんです。いろいろな所をいじっていき,撃っていくと脳のような有機的な中身が出てくる現在の形になったんです。

野口氏:
 スキュラの毒霧も,五十嵐にもらったデザインから遊びが生まれたパターンです。霧の中から姿を現すというイメージでお願いしたんですが,上がってきたデザインはヌメヌメしていて臭そうだなと思ったんです。だったら毒霧くらい出すだろうと実装が決まりました。

本間氏:
 巨大な敵は昔からいるので,スキュラは近づかれて毒霧が出ている時には大ダメージを受ける巨大な敵としてデザインしました。距離を考えて戦うゲーム性を突き詰めていったのですが,ゲームとして面白くなったのは,かなり時間が経ってからですね。

五十嵐氏:
 初期のころはあまりにも強すぎてスキュラに囲まれたら勝てないという状況でした。「魚人のミッションができたからプレイしてみて」と言われて遊んでみたら,酷い目に遭わされた(笑)。

4Gamer:
 今回は,いろいろとテクニカルな遊びが盛り込まれている敵が多いですよね。

野口氏:
 そこも開発のうえでかなり問題になりました。新鮮さという意味では6ならではの敵を早い段階で出さなければならない。けれど追加した敵にはテクニカルなものが多いので,ゲームを始めて間もない段階でクセのある敵と戦わせるのかと。

4Gamer:
 5と6が密接に関係しているからこその難しさですね。ちなみに制作に最も時間がかかった敵はどれですか。

野口氏:
 クルールですね。「プレイヤーの攻撃をシールドで防ぐ」特徴を持たせましたが,プレイヤーの視点からすると,攻撃を防がれてしまって一切有利になれる要素がないのが問題でした。そこで「シールドを撃ち続けるとオーバーヒートする」要素を導入しましたが,最後までバランス調整を悩みましたね。
 シールドが完全に攻撃を防がないと存在している意味がないですし,オーバーヒートの時間が長すぎたり,シールドの耐久力が低すぎたりしてもやはり存在意義がない。多くの人にとってベストな調整はどこだろうと,繰り返し調整をしていきました。

4Gamer:
 クルールはタコのような姿をしているステレオタイプな火星人ですよね。

五十嵐氏:
 5ではついに宇宙人が姿を現すということでグレイ型のエイリアンを出しましたが,6で「次の宇宙人をどうしよう」ということになったんです。そこで宇宙人の代名詞とも言えるウェルズ型火星人()をベースにクルールを描きました。

※イギリスの作家であるH・G・ウェルズ氏が1898年の古典SF「宇宙戦争」で表現した火星人

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4Gamer:
 完全にオリジナルの宇宙人を出そうという考えはなかったのでしょうか。

五十嵐氏:
 「地球防衛軍」の根っこの考え方に「誰が見てもひと目で分かる敵を出す」という部分があります。昔からUFOらしいUFOや,アリ型の巨大生物などを登場させてきたシリーズです。だから宇宙人といえばグレイやタコ型の火星人だろうという考えでした。
 ちなみに,クルールが触手を器用に使って武器やシールドを操作するアクションが追加されたのはデザインの後のことです。これも私がデザインした段階ではまったく考慮していなかった動きですね。

本間氏:
 新しい敵を作っても,最もベーシックなアリと戦っている以上の爽快感はなかなか出せないので,いろいろと工夫する必要があるんですよね。6の開発中は「戦っていてアリ以上に楽しく,かつテクニカルな要素を持つ敵とは何なんだろう?」と自問自答する日々で,ゲーム性を出すのにここまで苦戦したのは初めての経験でした。


神は細部に宿る。「地球防衛軍」街歩きに見る,背景が生み出すドラマ


4Gamer:
 街のお店や看板も毎回凝ってますよね。6でもきれいなゲームセンターや日替わりで鶏唐揚げ256種を謳う弁当屋,街に並ぶ多種多様な看板などさまざまなスポットがありました。

五十嵐氏:
 お店や看板についてはマップ担当者が好きに作っていいことになっていて,毎回いろいろなアイデアを絞り出しています。

野口氏:
 個人的に印象的だったのはゲームセンターですね。今回「タイムリープを繰り返す中で戦況が好転し,人類が発展したことを表現しよう」ということで,看板を電光掲示板のようにアニメーションさせられる仕組みを用意したんです。なのに,その仕組みで真っ先に使われたのがゲーセンの中をビカビカ光らせることで,「それ,看板じゃないよね」って(笑)。

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五十嵐氏:
 お店を作っていく中で,誰かが「今回の看板の仕組みが使えるぞ!」って言い出したので,やってみたんです。お店のお品書きをはじめとして,どこかにひとネタ入れてやろうとみんなでネタを出している。担当者個人個人の頑張りでクオリティが保たれているわけです。

本間氏:
 毎回どこかに鉄道を走らせたがるんですよね(笑)。

五十嵐氏:
 ただ,いろいろなネタひとつでも単に面白要素として入れているわけではないんです。自分たちの街を守るのが「地球防衛軍」なので,街が単なる背景であってはいけない。今はいないけれど,人が暮らしていた空気を出さないといけないということはずっと考えています。そのためには街の看板も絶対に必要なんです。

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本間氏:
 お上品な看板ばかりでは生活感も出ませんから,ひとネタ入っているという感じです。あと「温泉街に温泉がない!」という声はよくいただきますね(笑)。

野口氏:
 どこかに「ドリームクラブ」()を作りたいという話もありましたよね。

※ディースリー・パブリッシャーの恋愛シミュレーションゲーム。本シリーズのホストガールが「地球防衛軍」にデコイとして登場するなど,両作品の縁は深い

4Gamer:
 ドリームクラブと言えば,5までは彼女たちのピュアデコイランチャーが使えていましたが,今回はホロライブとのコラボによる「兵士募集用デコイ リクルーター」になりましたね。

岡島氏:
 「地球防衛軍」好きのバーチャルYouTuberである大神ミオさんに生放送へご出演いただいたので,それならコラボさせていただこうとなったんです。幸運なことにサンドロットさんにVTuber好きの方がおられ,想定を上回るクオリティのものが仕上がってきたので驚きましたね。

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4Gamer:
 デコイ関連は毎回面白いですよね。前作まで登場していた「ドリームクラブ」のキャラクターを模した「ピュアデコイ」も踊るようになったり,被弾で服が脱げるようになったりと進化して行き,旺盛なサービス精神が感じられます。

本間氏:
 脱げるデコイは,「敵が被弾すると装甲が剥げていくシステム」を応用して作ったものです。5では「ドリームクラブ」のキャラクター13体のデコイを作ったんですが,かなり時間がかかりましたね。

4Gamer:
 デコイ1体にどれくらいの時間がかかっているのでしょう。

本間氏:
 ピュアデコイは1体当たり3日ほどで作ったんですが,ホロライブさんのデコイは1体に1か月かかっていますね。

岡島氏:
 これに関しては,弊社から「作る数が減ったんだから,凝ったものにしてください」的なリクエストを出したわけではなく,サンドロットさんが自主的に作り込んでくださったんです。

本間氏:
 クオリティ不足ではファンの方々に申し訳ないですし,担当者自体がファンなので手を抜けないんですよ。ただ今回は実在するVTuberさんを「地球防衛軍」に登場させるわけですから,これまでとは事情が違いました。ゲームの世界に3人を違和感なく入らせないと,もともとのEDFファンにも納得してもらえません。
 そこで「政府が発注してできたアイドル,兵士を勧誘するキャラクター」という設定にして,世界にマッチした存在として落とし込みました。プレッシャーもありましたし,セリフに関してはかなり悩みましたね。ホロライブさんにもすごく協力していただいて,歌まで歌っていただけたのはありがたかったですね。


4兵科の行方と今後の展開について。6のDLCも鋭意制作中


4Gamer:
 地球防衛軍はシリーズを経るごとに兵科にさまざまなな変更がありますが,今回最も大きく変化したのはエアレイダーだと思います。これまでは他の部隊に爆撃や砲撃を依頼していたのに,6では世界が荒廃したためドローンを駆使することになりましたね。

野口氏:
 地球がボロボロになっているなら,支援してくれる部隊もいなくなっているだろうし,このままだとエアレイダーは何もできないから,新しい装備を作らなければならない。自分の手元に収まるくらいのサイズ感でありつつ,エアレイダーらしさを失わない装備ということでドローンになりました。
 もともと装備が多いエアレイダーに,さらにたくさんの武器が追加されることになりましたが。逆にフェンサーの変化があまりない形になってしまいましたね。

4Gamer:
 マルチプレイ前提のゲームならキャラクターの特徴付けをするために「盾役」「火力役」「回復役」といった区分をするところですが,「地球防衛軍」の場合はこうした分け方はありません。シングルプレイも楽しみ,マルチプレイも楽しむゲームですから,とくに兵科ごとの調整は大変なのではないでしょうか。

野口氏:
 そうですね。兵科の特徴を強くし過ぎると特定の場面でしか活躍できなくなります。「地球防衛軍」ではシングルプレイも楽しめつつ,各兵科の特徴を出すことが求められます。

本間氏:
 これがオンライン専用ゲームなら,回復役が1人でプレイすると辛い,というように極端な差を付けても大丈夫ですが,「地球防衛軍」においては,それぞれの兵科があらゆる状況に対応できる能力を一通り持っていないといけません。

4Gamer:
 とはいえ,すべての兵科が同じように戦えるのでは4兵科にしている意味がないですよね。

本間氏:
 兵科によって操作難度や強さの差はあるべきです。例えばフェンサーは操作が難しいのに,簡単に遊べるレンジャーと同じ強さというわけにはいきません。だからといって,全員がフェンサーを選ぶほど差を付けてもよくない。
 シングルプレイであらゆる状況に対応でき,なおかつ4人でオンラインプレイをした場合にそれぞれの役割を持てて,兵科ごとに操作の難度が違う。これらの要素をすべて同時に成立させたいので,調整はなかなか難儀ですね。

4Gamer:
 仮に今後新しい兵科を追加するなら,どういったものになるんでしょう。今のバランスが完成されていて,何かの遊びが足りないというところがないように思えます。

野口氏:
 そこは難しい所ですよね。今のままの形に,新しい兵科を追加するというのは少しマズイんじゃないかという気はします。それこそオンライン専用のゲームにおける専門職のような感じでないと。それとも兵科の統合を進めていくのがいいのか……。

本間氏:
 シングルでもオンラインでも遊べるというのは,ゲームデザインにおける大きな縛りなんですよね。ひとつの兵科がある程度万能でありつつ,4人でも遊べるなんて兵科をさらに1つ追加することにゲームデザイン上の意味はあるのかという気はします。今後の「地球防衛軍」のゲームデザインをどこへ持っていくのかに絡む議題ではあるんじゃないでしょうか。

野口氏:
 現行の4兵科になって4,4.1,5,6と4作が過ぎているのも事実です。なので,もし次があるなら新しい試みができるように見直しているところです。

4Gamer:
 あと,6のDLCはどういう内容になるのでしょうか。楽しみにしている方も多いと思いますが。

岡島氏:
 これに関しては鋭意制作中です。申し訳ないですが,詳しい内容を申し上げられる段階ではありません。楽しみに待っていてください。

本間氏:
 5で基本的な敵が出て,6でテクニカルな敵を追加したばかりなので,どのような内容にするか今悪戦苦闘しているところです。

4Gamer:
 分かりました。楽しみにしています。まだまだお話は伺っていたいですが,そろそろお時間です。最後に読者へメッセージをお願いできますか。

岡島氏:
 恐らくこれを読んでいるのは6をプレイ済みの方だと思いますが,友人にすすめていただく際はぜひ5からプレイしてほしいと言ってあげてください。宇宙人つながりで言えば映画「エイリアン」を見ないで「エイリアン2」から見るようなものですし,前作をプレイしていただいたほうがより6を楽しめると思いますので。ただ,マルチプレイの人口もありますから,マルチプレイ派の友人には6を勧めていただければと思います。

本間氏:
 これまで「地球防衛軍」シリーズを支えて下さったユーザーにはとても感謝しています。何度も歴史を繰り返す物語の原型は,これまでのシリーズで我々の想定外であるINFERNOまで繰り返し遊んで下さった皆さん自身です。こうした皆さんの行動をストーリーに落とし込む形で6の物語が作られました。
 我々の想定以上に6の発売直近まで5を遊んで下さっていた方が多くて,6の序盤で「また同じ敵が出てきた」と思わせてしまったことは申し訳ありませんでしたが,それも我々が想定した以上に「地球防衛軍」をプレイしてくださったからだと考えています。本当に感謝しかありません。
 エンディングの最後の2行はプロフェッサーからストーム1への言葉ですが,シリーズを支えてくださったファンの方々へ,我々からの感謝の言葉でもあります。そう君こそが…………。

画像集 No.023のサムネイル画像 / [インタビュー]「地球防衛軍6」の壮大なシナリオは,前作からの緻密な伏線によって生まれた。岡島Pとサンドロットのメンバーが語る開発の裏話とは

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