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2人プレイ専用ゲームは,1人でもクリアできるのか? そして楽しめるのか? 究極のぼっちプレイに挑んだレポートをお届け
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印刷2023/05/19 08:00

企画記事

2人プレイ専用ゲームは,1人でもクリアできるのか? そして楽しめるのか? 究極のぼっちプレイに挑んだレポートをお届け

 筆者が最近気になっているものに,いくつかの2人以上専用ゲームタイトルがある。「2人で遊べる」ではなく,「2人いないと遊べない」,つまり1人でのプレイを想定していないタイトルだ。

 具体的には,The Game Awards 2021でGame of the Yearを受賞した「It Takes Two」,「ひとりぼっち惑星」を手がけたところにょり氏の新作「違う冬のぼくら」,「処理担当者」と「分析担当者」が協力して時限爆弾を止める「完全爆弾解除マニュアル:Keep Talking and Nobody Explodes」の3作品。

「It Takes Two」
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「違う冬のぼくら」
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「完全爆弾解除マニュアル:Keep Talking and Nobody Explodes」
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 いずれも評判がいいので,プレイしたいと思ってはいるものの,“2人用”というハードルがなかなか高い。
 オンラインプレイに対応しているタイトルもあるが,自動マッチングされるわけではないので,まずは気が合って暇そうな友人や知人を見つけなければならない。また,もし見つかったとしても,プレイ時間が合わない,嗜好が違う,対応ハードウェアを持っていないなど,さまざまな理由から声をかけるのをためらいがちだ。

 ならいっそのこと,1人でプレイしてしまえばいいのでは?

 それは,“見知った2人”で同じ時間を共有してほしいという,開発側が目指したであろう体験からは外れた遊び方になるかもしれない。でも,だからといって,スルーしてしまうにはあまりに惜しい。

 というわけで,邪道プレイを申し訳なく思いつつも,筆者のささやかな好奇心を満たすべく,玉砕覚悟で2人用ゲームに1人でチャレンジしてみることにした。

 なお,今回プレイしたのはいずれもSteam(PC)版。記事にはネタバレが含まれるので,まだクリアしていない人や,これからプレイする人は,その点を了承のうえで読み進めてほしい。


1人プレイには変態的パッド操作が必要

「It Takes Two」


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 1人プレイチャレンジ最初のタイトルは,スウェーデンのHazelight Studiosが開発したアクションアドベンチャー,「It Takes Two」だ。

 本作では,エンジニアのメイと主夫のコーディという離婚寸前の夫婦の意識が,ある出来事から人形に宿ってしまい,嫌々ながらも両者が協力して困難に挑む姿が描かれる。

 2人プレイ専用である本作には,「ローカルでプレイ」と「オンラインでプレイ」という2つのモードが用意されている。前者では,PCに入力デバイスを2つ接続するだけで同時にプレイできるので,今回はこのモードを利用することに。

オンラインプレイの場合は,一方が製品版を1つ購入し,もし一方は無料の「Friend’s Pass」版をインストールする
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最初に1Pと2Pがどの入力デバイスを使うか割り当てる
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左の木の人形がメイ,右の粘土人形がコーディ。チャプター2の「木」やチャプター6「庭」のステージでは虫が多く登場するので,苦手な人は要注意
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■1人プレイのために用意したもの

<1P側>
  • 対応ハードウェア:PC
  • ソフト:製品版(税込4300円)
  • アカウント:Steamアカウント,EAアカウント(Steamアカウントとのリンクに必要)
  • 入力デバイス:ゲームパッド

<2P側>
  • 対応ハードウェア:不要
  • ソフト:不要
  • アカウント:不要
  • 入力デバイス:ゲームパッド

※入力デバイスは,キーボードとゲームパッドの組み合わせでも可。キーボード2つの同時使用は不可


 ということでプレイ開始。メイとコーディのそれぞれに割り当てられたゲームパッドを操作して,ステージを進んでいく。スタート直後は,2人を交互に動かす形でも問題なく進んでいける。

 人によって差はあると思うのだが,1人プレイにおける最初の関門は,恐らく蛇腹ホースや断線ギミックが出てくるあたりになるだろう。何故かというと,そのあたりで2人のタイミングを合わせた動きが要求されることになるからだ。

 例えば蛇腹ホースでは,一方がホースの向きを調整したうえで,もう一方がそこから飛び出して高所へ登るといった感じなのだが,パッドを持ち替える時間がない。2人でプレイをしていたなら,絶対に直面することのない悩みだろう。

筆者が最初に投げ出しそうになった,蛇腹ホースのギミック。位置調整が間に合わず,キャラが何度も明後日の方向へ飛んでいった
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 何かいい方法はないかと,しばらく考えたり調べたりした末にたどり着いたのが,パッドを持ち替えるのではなく,2台とも置いて操作するスタイルだ。

 ただ,自分の場合は,どうしても一方の操作にもう一方がつられがちだったため,極力「どちらかが最小限の操作」になるよう,ギミック前にキャラ配置などを念入りに行うようにした。

 パッドを置いての操作はなかなか安定しなかったのだが,何度かトライするうちに成功。ピアノなどの経験があるプレイヤーなら,もっと楽にクリアできるかもしれない。

 しかし,この“据え置きスタイル”だけで押し通せるほど甘くはない。本作全体を通して1人プレイの難しさを感じたのは,ギミックによってパッドの使い方を工夫しなければならないところだ。
 場合によっては,1つを片手で持ち,もう1つは下に置いた状態でアナログスティックに触れながらトリガーボタンを引くという,指がつりそうな操作をしなければならなかったことも。

 “モンハン持ち”“AC持ち”など,ゲームに合わせた風変わりなパッドの持ち方は多々あるが,それとは違ったベクトルの変態度。ふと我に返ったときに,自分は何をやっているんだろうと真顔になることも何度かあった。

 そのうえで1人プレイで必要なのは,なりふり構わず,使えるものは何でも利用する精神だ。一方がチェックポイントらしき場所まで進んでいると,リスタート時にもう一方がそこまでワープしてくれるシステムや,安全地帯を発見したときほど,「天の助け」を実感したことはない。1人では無理と思われたいくつかのギミックも,そんな裏技的なものに多少甘えさせてもらいながら,何とかやり過ごすことができたのであった。

コーディのパンツをウィングにした飛行機を操縦する中で格ゲーがスタート。格闘はひたすらボタン連打でよかったが,飛行機が障害物にぶつかると爆発するので,操縦には気を使った
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ピンボールのようなギミック。ボールを左右に操作するかたわらで,障害物となるパネルを操作し,ボールが通るルートを作らねばならず,とても忙しい
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上下に動く飛び石のような台に2人が交互に乗っていくギミック。どうしても操作が間に合わず,やむなく安全地帯を利用することに。悔しい……
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同じような飛び石タイプのギミック。本来は一定時間内に2人が渡りきらなければならないが,両方は無理だったので,メイを先に行かせ,コーディーをリスタート時に引き寄せた。悔しい……
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 そうこうして進むうちに,本作最後のチャプターに。

 決してボリュームが少ないわけではないのに,1人プレイでもくじけることなく進められた理由の1つは,シューティングに格闘ゲーム,レース,音ゲーなどなど,ギミックやアクションが豊富で退屈する暇がなかったから。
 それに加えて,前述したワープの仕様のように,2人プレイ前提で整えられた設計が,1人プレイでもいい感じに働いて,非常にストレスフリーなつくりになっていたからだろう。

 ギミックごとにゲージや時間制限といったものはあるが,ほとんどの部分でプレイを急かされるようなことはないので,その点でも気楽にプレイできた。

ギミックによっては横分割画面になることも。釘や銃を使うときなどは,強力なオートエイム機能に随分と助けられた
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 また,道中でもボス戦でも,ゲームオーバー時はほとんどの場合,直前からリトライできたので,心が折れそうになることも少なかった(ムービーがスキップできれば,さらによかったと思う)。

 特に,ボス戦では2人同時にダウンしない限りゲームオーバーにはならないため,一方に集中していてもバトルを継続できる。「1人プレイでも便利」どころか,なくてはならないシステムになっているのだ。

ダウンした側の画面にはハートが表示され,ボタンを連打するとその分早く復帰できる
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 プレイを始めた直後から「2つのゲームパッドを1人で操作してこのタイトルをクリアできるのは,ドラゴンクエストの『じごくのきし』ぐらいかも……」と弱気になっていたが,運も味方して,まさかの全チャプタークリアに至ることができた。

 不思議なのは,どのギミックやボス戦も,数度のリトライでクリアできてしまったこと。死にゲーのように,ひりつくようなバトルを何時間も繰り返したわけでなく,筆者のスーパープレイが炸裂したわけでもないのに,である。

 新しいギミックが出てくるたびに対策を考える必要はあるが,いくつかの例外を除き,いい意味で“雑なプレイ”でも許されるところがある。少なくとも,フレーム単位のタイミングや,両手で対応できないくらいのボタンを押すことになる場面はない。途中からは,もはや“スピーディーな脳トレ”と無意識に認識してプレイしていたような気もする。
 変態的なスタイルでパッドの操作をしなければならないことを考えなければ(これが一番大変と言えば大変だが),1人プレイは,そこそこの歯ごたえがある,絶妙な難度だ。

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最後のステージで音ゲーが始まったときは焦ったが,同じタイミングで2つのパッドの同じ位置のボタンを押せばよかったので,本当に助かった……
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 予想以上に1人でも楽しめ,クリアもできてしまった本作なので,2人で協力すれば余裕を持ってのんびりプレイできて,楽しくなりそう。プレイフィールがとてもいいので,それほどゲームに慣れていない家族や友人でも誘ってみて,声をかけ合いながら楽しんでほしい。


2つの世界が混じり合って大混乱

「違う冬のぼくら」


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 2タイトル目は,現在アーリーアクセス版が配信されている2人プレイ専用の横スクロール型パズルアドベンチャー「違う冬のぼくら」。主人公である少年2人の,ノスタルジックなひと冬の旅の過程を追体験できる。

 優しくてほっこりするグラフィックスなので,癒し系ゲームかと思いきや,展開されるのは「死」や「大人」といったテーマに向き合うストーリー。そこに時折差し込まれてくるダークな描写や演出は,事あるごとにプレイヤーをぎょっとさせる。どことなく,映画「スタンド・バイ・ミー」を思い起こさせる,エモい作品だ。

 ローカルでの2人プレイはできないが,一方がアーリーアクセス版を購入すれば,もう一方は無料の「Friend's Pass Demo」版でオンラインでの2人プレイ(今回は1人での疑似2人プレイ)が可能だ。具体的には,ホスト側で発行したパスワードを,Friend's Pass Demo版に入力してプレイを開始する流れになる。

■1人プレイのために用意したもの

<1P側>
  • 対応ハードウェア:PC
  • ソフト:アーリーアクセス版(税込1420円)
  • アカウント:Steamアカウント
  • 入力デバイス:ゲームパッド

<2P側>
  • 対応ハードウェア:PC
  • ソフト:Friend's Pass Demo版(無料)
  • アカウント:Steamアカウント ※1P側とは別のアカウント
  • 入力デバイス:ゲームパッド

※入力デバイスはキーボードも可


 2人の青年が昔を回想するところから物語は始まる。それぞれが「青いパーカーの少年」と「赤いマフラーの少年」だった過去にさかのぼり,プレイヤーは彼らの行動をなぞっていくことになる。

 冒頭の早い段階で,少年たちの外見がそれぞれ「ロボット」と「鳥」になってしまうイベントがあるのだが,以降,2人の目に映る世界は一変してしまう。言葉を変えると,プレイヤーそれぞれの画面に映るグラフィックスが,まったく異なったものになるのだ。

ロボットになった青いパーカーの少年の前に広がる「色褪せて荒廃した無機質な世界」
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鳥になった赤いマフラーの少年の前に広がる「カラフルな童話絵本の中のような世界」
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 2人用ゲームの多くは,同じ世界を同時に眺めるものが多いため,こういった描かれ方はとても新鮮だ。本作が想定している形の2人プレイであれば,それぞれの世界がどうなっているかを説明し合うだけでもきっと盛り上がるはず。だが,その場合は相手の画面を実際に見られるわけではないので,具体的にどんな世界なのかは,あくまで想像を働かせるしかないだろう。

 対して1人プレイでは,それぞれの世界がどんなふうに変わってしまったのかを一瞬で把握できるため,言ってみればその驚きは2倍。PCが2台必要になるというハードルの高さはあるが,2つの世界を並行体験できる楽しさを味わえる。

2人で同じ答えを選択しなければ先に進めない局面もある。1人プレイなら何の問題もないのだが,それはそれで味気ないような
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 2つのディスプレイを見比べつつ,「置かれた環境や価値観によって,物事の受け止め方とか考え方って変わってくるよね」などと,何か悟ったようなことを考えながらゲームを進めていくのは,本作の1人プレイにおける醍醐味の1つかもしれない。異論は認める。

 2人の世界の見え方の違いは,パズルやアクションにも影響を及ぼす。ロボットと鳥の間で見えるものが違っていたり,どちらか一方でしか見えないものが出てきたりするため,それぞれがどちらの役割を担うのか,明確に分かれてくるからだ。
 段差に乗るために箱を移動させたり,一方が渡る橋を,もう一方が壊れないように下から支えたりと,最初のうちはシンプルだったパズルは,世界の変化を受けて段々と複雑なものになっていく。

ロボットの少年が機械の動物らしきものに近付くと,支柱のようなものが伸び,踏み台として使えるようになる。ロボットの少年は機械から攻撃されることはない
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逆に,鳥の少年側で同じ場所にいる犬(もう一方で機械の動物に見えるもの)に近付くと,攻撃されてゲームオーバーに。ロボットの少年が機械の支柱を伸ばすという光景は,犬の背骨が飛び出すという見え方になる。少々グロいが,この状態なら鳥の少年が攻撃されることはない
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 「It Takes Two」を動とするなら本作は静の部類に入るだろうが,パズルの中には,落下してくるキャラをテンポよく受け止めたりするような,タイミングが要求される類のアクションも少々ある。

 プレイヤーがもう1人いてくれれば……と思うこともなくはなかったが,アクションが極端に苦手でない限り,焦らず落ち着いて操作すれば,(変態的ではなく)普通にパッドを持ち替える1人プレイでもなんとか対応できるはずだ。

 パズル自体にはプレイヤーを惑わせるような意地悪な要素もなく,「なぜここにそのオブジェクトがあるのか?」といったことを考えれば,素直に解けるだろう。ただし,知恵は2人分絞らなければならないが(涙)。

勇気を出してFLY HIGH! クマの死体をクッション代わりに使うアクションには,なかなか闇を感じる
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 そして大きく戸惑ったのは,2つの世界を行ったり来たりしながら遊んでいると,結構な頻度で世界の区別がつかなくなってくることだ。
 最初のうちは「見え方が違う」だけで済んでいたのだが,ゲームを進めるうちに「あるはずのものがない」「ないはずのものがある」というステージが多くなり,かなり混乱することになった。

同じ場所でもそれぞれの視点で見えるものと見えないもの,触れられるものと触れられないものがある
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 バグりつつある脳で,ときには長考しながら,8時間ほどかけてクリア。2人プレイでの目安時間が3〜4時間ということらしいので,ほどほどの結果ではないだろうか。

 ところで,本作では相手のプレイを待つ間,手持ち無沙汰にならないようにと,親切に「ひまつぶしモード」という名のミニゲームが用意されている。
 もちろん今回は待ち時間などあるはずもなく,1度もこのミニゲームのお世話にならなかったことは言うまでもない。機会を見て,遊んでみたいと思う。

どこかで見たことがあるような携帯ゲーム機でミニゲームが遊べる。主人公たちが当時ハマって遊んでいたという設定なのだろうか
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パーティーゲームがストイックな作品に激変

「完全爆弾解除マニュアル:Keep Talking and Nobody Explodes」


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 最後のチャレンジは,マニュアルの確認というアナログ的な作業と,ゲームの中での爆弾解除というデジタル要素が組み合わさった,一風変わった体験を味わえる「完全爆弾解除マニュアル:Keep Talking and Nobody Explodes」。厳密には,2人“以上”で爆発阻止の任務を遂行するのが本来の遊び方となる。

 プレイヤーが担う2つの役割が,ゲーム画面の中の爆弾を解除する「処理担当者」と,爆弾のマニュアルを読み,遠隔地から爆弾の解除法を指示する「分析担当者」という非対称の作業になっていることが特徴。爆弾は,モジュールと呼ばれる複数の仕掛けから構成されていて,爆発を止めるにはすべてのモジュールを解除することが必要だ。

 処理担当者はマニュアルを読めず,分析担当者は爆弾が映った画面を見ることができないため,普通にプレイした場合はプレイヤー間の正確なコミュニケーションがクリアへのカギとなる。そんな本作を1人で遊ぶということは,カンペを見ながら試験に臨むようなもの。きっと楽勝に違いない。

 本作には,「ノーマルモード」と「フリーモード」の2つがあり,前者ではクリア時間でランク付けされるようなので,どうせなら上のランクでも狙ってみようかしらと軽く考え,ノーマルモードにチャレンジしてみることにした。

ノーマルモードには,7つのセクションに分けられた34のステージが用意されている
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フリーモードでは爆弾のカスタマイズができるが,時間を無制限にしたり,モジュールの個数を2つ以下にしたりといった,極端な変更はできない
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■1人プレイのために用意したもの

<1P側:処理担当者>
  • 対応ハードウェア:PC
  • ソフト:製品版(税込1480円)
  • アカウント:Steamアカウント
  • 入力デバイス:キーボードとマウス

※入力デバイスはゲームパッドも可

<2P側:分析担当者>
  • 対応ハードウェア:不要
  • ソフト:不要
  • アカウント:不要
  • 入力デバイス:不要
  • マニュアル(公式サイトからリンクされているWebページやPDF,またはそれを紙に出力したもの)
※ほかにペンと紙などがあると,プレイに必要な情報をメモできて便利


 プレイ開始から数時間後,「楽勝」とか言っていた少し前の自分を殴ってやりたい,と思っている爆死続きの筆者がいた。

 1人プレイの状況を例えるなら,海外ドラマ「24」の捜査官ジャック・バウアーと分析官クロエ・オブライエンの仕事を1人でこなす完全なワンオペ。とんでもないブラックな任務だったのである。

 最大の敵は「時間」だ。34あるステージのほとんどで,爆発までのタイムリミットは5分。単純計算ではあるが,2人プレイの場合はそれぞれの担当者が5分ずつ,計10分の時間を持てるのに対し,1人プレイの場合は5分のまま。圧倒的な時間不足ということになるわけだ。

処理担当(自分)視点の爆弾画面。序盤のここでは「サイモンゲーム」(左下)「ワイヤ」(中央下)「ボタン」(右上)という3つのモジュールが取り付けられている
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分析担当(自分)が読むことになるマニュアル全ページの一覧。基本モジュールに加えて,解除を妨害してくる上級向けの特殊モジュールや付録などについての記載も含まれている
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 11種類ある爆弾の基本モジュールの解除方法は,23ページにわたるマニュアルの中に掲載されていて,該当ページにたどりつくだけでも結構な時間を要する。

 その時間を詰めるために,まずマニュアルを壁に貼ることにした。代償として,筆者の部屋は爆弾犯のアジトのようになってしまったが,これなら一目瞭然。どこにどのモジュールの情報があるかを記憶すれば,ページをめくる時間分を短縮できるはずだ。

 このおかげで爆死こそしないようにはなったものの,上位ランクには届かない。やはりマニュアルを暗記するしかないのか……。

 とはいってもモジュールは,解除までにいくつもの分岐があるなど,一筋縄ではいかないものばかり。ゲームの性質上,ワンパターン化や暗記を防ぐためだと思われる。
 普段なら非常によく練られていると絶賛したいところだが,今はこのいやらしさが,ただただ憎い。

 すべての暗記はさすがに無理なので,シンプルなものや,自分が覚えやすく感じたものに絞り込む。そして,モノクロだったり,回りくどい表現だったりなマニュアル(これはゲーム性を高めるためにあえてそうしているのだろう)の内容を自分に分かりやすくなるよう整理して,できるだけ頭に叩き込むことに。

「表比較」モジュールでは,ディスプレイに表示される情報と,マニュアルの表を照らし合わせて解読しなければならない。しかも2ステップに分かれている凶悪さ
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 しばらくの試行錯誤の甲斐あってか,セクション3(中程度レベル)までは,なんとか通しで「トップ1%」のランクに潜り込むことができた。軽い思いつきから生まれた目標は達成できたものの,途中から自分との闘いのようにもなっていて,ものすごく疲れた&つ,つらかった……。RTA走者の苦労がほんの少しだけ分かった気がする。

 これこそパーティーゲームといた感じのタイトルが,1人プレイになるとこんなにもストイックになるとは,正直なところ予想外だった。
 ただ,あまりにもストイックすぎて,2人プレイと同じように楽しいのかと聞かれると,個人的には肩に付くくらい首を傾げたいところだ。

 確かに苦労はしたけれども,「ほかの人と本作を遊ぶ機会があれば,無双できるに違いない」と気を取り直した筆者だったが,マニュアルが不定期にアップデートされることを後に知ってくずおれたのであった。

序盤は3つ程度のモジュールが,セクション3最後のステージでは裏表で8個に。ノーマルモードのモジュールはランダムな組み合わせなので,“モジュールガチャ”を回し続けるのも作戦の1つだ
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シンプルな最初のミッションで高スコアを狙うのは難しい。自己ベストは7秒だったが,この場合,1モジュールを約2.3秒で解除している計算になる。これ以上の更新は無理……
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■モールス信号の学習にぴったり?

マニュアル内の,モールス信号モジュールのページ。こうして見ると「SOS」で使われる「S」と「O」は,かなり覚えやすいことが分かる
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 マニュアルの暗記ですっかりくたびれてしまった筆者だったが,ちょっと気になっていたモジュールがあったので,合間に少し遊んでみることに。
 そのモジュールは「モールス信号」。よく映画などで「SOS」を発信するときなどに使われる,「トン」と「ツー」の2つで構成される信号だ。

 本作でのモールス信号モジュールの解除法は,「トン」と「ツー」で点灯するランプからアルファベットを読み取り,マニュアルに書かれている35個の単語のどれに該当するかを判別して,その単語に対応する周波数を入力するというもの。

 特徴的な文字の信号を先に覚えて,そこから単語を推測することも不可能ではないため,割と初心者でも取り組みやすく,少しずつ自力で解けるようになってくると,それなりに楽しい。

周波数が表示されている中央下のパーツがモールス信号のモジュール
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 勉強だと思うとなかなかやる気が起こらないものだが,本作を通してならモールス信号の学習もなんだか捗りそうな気がしてきた。これを機に練習してみようと思う筆者であった。


 2人用ゲームの1人プレイは,ある種の縛りプレイと言っていい。プラットフォームアクションである「It Takes Two」のプレイが大変になることは覚悟していたが,“1人2役”が有利に働くと思っていた「違う冬のぼくら」「完全爆弾解除マニュアル」で苦戦するのは予想外だった。

 2人分の作業を1人でこなすため,せわしない中で2倍考えながら“いかにして両者の無駄を減らすか”が重要になる場面が多くなるのは,本稿を読んだ人ならば分かってもらえるのではないだろうか。そのプロセスで,2人プレイより密度の高い体験が得られることは間違いない

 今回紹介した3タイトルは1人プレイでも(たまたま)クリアできて,達成感は大きかったが,その分疲労も倍という“諸刃の剣”のように感じた。ひと通りプレイした後,カロリー消費が激しいのか少し体重が減った(やつれていた?)ので,プチダイエットの候補としていかがだろうか?

 最後に改めてお伝えするが,今回のプレイは,開発側が目指したであろう体験からは外れたものなので,その点はくれぐれもご了承いただきたい。
 筆者のように自分を追い込まず,気軽に楽しみたいのであれば,間違いなく2人でのプレイがお勧めだ。当たり前だが……。
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