プレイレポート
発売1か月で500万本突破の「Valheim」とはどんなゲームなのか? 戦うために作り,作るために戦い続ける本作の魅力を紹介
前述のように本作はアーリーアクセス版,つまり現状ではまだ未完成の作品ではあるが,多言語に向けたローカライズが行われており,日本語でのプレイも(若干説明不足を感じるところはあるものの)ほぼ支障がない状態となっている。今回は本作の基本システムを紹介しつつ,何が世界中のゲーマーを夢中にしているのか,プレイレポートを通じてお伝えしたい。
なお,本作ではアップデートが頻繁に行われているため,記事で紹介しているゲームの仕様が最新のものと異なる場合がある。その点はご了承いただきたい。
黄泉の国から甦ったプレイヤーが邪悪を打ち倒す旅に出る
はるか昔,最高神のオーディンは世界を統一し,邪悪な者を10番目の世界「Valheim(ヴァルへイム)」へと追放した。Valheimは流刑の地として他の世界から切り離され,長い年月を経て神々からも忘れられた世界となっていた。
数百年の後,Valheimに追放された邪悪な者たちが再び力を蓄えていることを知ったオーディンは,自身に仕えるワルキューレの手によって,戦場で散った偉大な戦士の魂を甦らせることを決意する。邪悪を打ち倒し,世界に平穏をもたらす勇者として……。
そんなプロローグで始まる本作は,北欧神話とバイキング文化をモチーフとした世界設定を持つ作品だ。オーディンやワルキューレなどは国内のゲームなどでもよく見かけるキャラクターであり,馴染みがあるゲーマーも多いことだろう。ただし,舞台となるValheimは本作オリジナルの世界で,神話そのものをゲーム化したものではない。文化や神話などの知識がなくても問題なく楽しめるので,安心してほしい。
さて,ゲームで最初に行うのはキャラクターメイキングだ。プレイヤーの分身となるキャラを作ることになるが,性別や髪型,肌の色などを数パターンから選ぶといった感じで,細かいカスタマイズはできない。これは本作が最先端のグラフィックスではなく,あえて“懐かしい”(数世代前の)グラフィックスを採用していることが要因だろう。女性を選択しても可憐な美少女になったりはしないが,世界観にはマッチしていると感じる。
キャラメイクが終了すると,次はプレイワールドの作成。本作では複数のワールドを1人のキャラでプレイすることができるし,逆に1つのワールドを複数のキャラで共有することも可能だ。ワールドは「シード値」という数字とアルファベットの文字列を元に自動生成されるので,最初にランダムで決定されるシード値からまったく新しい冒険を始めることもできるし,同じシード値を使ってマップを複製したり,ネット上に公開されているオススメマップなどをプレイすることもできる。またマルチプレイの場合は,ここでサーバーを公開したり,誰かのサーバーに参加したりすることとなる。
キャラとワールドを組み合わせてゲームを開始すれば,サバイバル生活の始まりだ。前述の導入部の物語が簡単に説明され,ほぼ裸一貫でValheimの地に降り立つ。ゲーム自体はスタンダードな三人称視点のアクションRPGで,最初は巨大なカラス「フギン」がナビゲーターとしてさまざまなヒントをくれる。ただし遠回しな物言いもあって何をどうしたらいいのか,ピンとこないプレイヤーも多いはず。特に操作方法の説明はほとんどないので,設定メニューから確認するなどしよう。
プレイヤーが目指すのは,オーディンに仇なす各エリアのボス「見捨てられしもの」を倒し,ゲーム開始時点である石碑にそのトロフィー(頭部)を持ち帰ること。ボスを倒せば新たなバフ(一時的な能力強化)能力やアイテムがアンロックされて,一区切りが付く。そして次の段階(新しいエリア)に挑む……というのが基本的な流れだ。
最初の草原エリアには「エイクスュル」という巨大な鹿のボスが登場するので,まずはこの討伐を目指すことになる。フギンが示す光る石に触れると,マップに出現場所がマークされるので,準備が整ったらそこを訪れよう。
とはいえゲーム開始直後のプレイヤーは能力が低いうえに丸腰なので,野生動物を倒すことにすら苦労する。エイクスュルに勝つ見込みはほとんどないと言っていいだろう。まずはValheimで生き抜くための準備を整える必要がある。
そこで重要となるのが,本作のキモである「クラフト」と「サバイバル」だ。
強くなりたければクラフトだ
本作では,材料を除けば大多数のアイテムがクラフトで作成するものとなっており,道具や装備品をそのまま手に入れる機会はほとんどない。まずは周囲の草原や森を散策し,「石」や「木の枝」を拾っていこう。
材料を入手した時点で新たなレシピがアンロックされる。最低限のものは素手で作り出せるので,まずは「石の斧」「棍棒」「ハンマー」を作成するのがいいだろう。斧を作れば大木を伐採して木材を簡単に入手できるようになるし,野生動物程度は棍棒で殴ればすぐに倒せる。さらにハンマーを使えば,新たな道具の作成に必要な「作業台」が作れる。作業台は今後長くお世話になるものだが,その“最初の一歩”というわけだ。
本作はスキル制が採用されており,基本的に“ある動作を行うとその能力が上昇する”といった仕組みになっている。具体的には斧で木を切れば「木の伐採」がアップし,ダッシュで走り回ると「走り」が上達するといった塩梅だ。よく使うスキルは自然に上がっていく一方,プレイスタイルによってはほとんど上がらないものも出てくるので,場合によっては意図的に鍛えることも必要になるだろう。
さて,装備の製作と並行して行う必要があるのが,食料の調達だ。本作ではサバイバルが重要なテーマになっているが,渇きや空腹で死ぬことはなく,何日間放置しても生存自体に影響はない。だだし,主人公のライフは野生のイノシシに何度か攻撃されただけで尽きるうえに,自動回復はしない。戦闘や採取のアクションに必要なスタミナもすぐに切れてしまう。このままでこの世界を生き抜くことは困難なので,食事による底上げが必要なのだ。
最大3種類の食べ物を組み合わせて食べることによって,ライフとスタミナの上限をアップできる。また,減ったライフが時間経過で回復するようになるので,戦闘や探索がしやすくなるはずだ。基本的にベリーやキノコなどの簡単に採取できるものは効果が低く,逆に調理が必要なものほど上昇値が大きいので,未知のフィールドや強力な敵に挑むときは,その時点で手に入る「最大限の腹ごしらえ」をしておくことが肝要。
食事の効果は一定時間で切れる(空腹になる)ので,遠出をするときは“補給用燃料”も忘れずに。
繰り返すが,主人公は“素の状態”だと笑ってしまうほどひ弱なので,ピンチのときは食べ物が尽きた時点で命運が尽きるといっても過言ではない。幸い,食料は通常のアイテムと同じく,インベントリに複数スタックが可能なので,余分に持ち歩くくらいでいいだろう。
装備と食料が揃ったら,お次は拠点となる家の建設。というのも本作では,基本的な装備を作る「作業台」が,屋根の下に設置しないと使えないシステムになっているからだ。作業台用の小さな屋根を作ってしまうのもいいが,どうせなら自身が休むための家を作り,そこに作業台を置いた方がいい。
より詳しく説明すると,本作のクラフトは「作業台を中心にクラフト可能エリアが形成される」という仕組みになっているため,新たな拠点を建設する時も,まずは作業台の設置から入る必要がある。つまり作業台こそが,Valheimにおけるクラフト作業の基本中の基本となるものなのだ。
簡単な家ならば,ハンマーと木材から作れる素材で建築できる。まずは壁を建ててつなぎ,最後に屋根をかぶせればいい。床やドアがあるに越したことはないが,なくてもゲーム内の“家”としては問題ない。これだけで雨風がしのげるし,たき火を置けば食材の調理なども安全に行えるのだ。
ただし,屋根が低く密閉された家になっていると,たき火の煙が籠もり,いぶされてダメージを受けてしまう。屋根の一部を煙突のような構造にしたり,あえて通気口を開けておくなどの工夫が必要だ。
またベッドを設置して睡眠を取れば,暗いうえに寒さで体力が減り,敵の動きも活発になる夜をスキップできる。また,インベントリが狭い関係上,チェストを置いておくとより採取がはかどるだろう。こうして作った家を拠点に,素材と食料を集めて装備を揃え,ボス戦に挑むのだ。
なお,本作には農業や醸造,畜産といった要素もある。用意できる道具が少ない序盤でも,イノシシなら飼い慣らすことができるのだ。具体的には入り口を設けた柵で檻を作り,イノシシがこちらを追ってくる習性を利用して誘い込むだけ。入ったら入り口を閉鎖して,あとは定期的にキノコなどを投げ込めば(檻の中に向かって食料を捨てればいい),時間はかかるものの家畜にできる。繁殖も可能なので,肉や皮の生産に役立つだろう。
前述したように,本作は装備と食事が主人公の能力に直結するうえ,装備はクラフトしないと手に入らず,採取しただけの食べ物は効果が低めだ。つまりクラフトこそがゲームの進行を左右する。これが本作の魅力でもあるので,冒険や探索と平行させつつ,“我が家”を強化していこう。
力尽きればすべてを失う。拠点を作りながら慎重に探索せよ
道具と武器,そして拠点となる家が完成すれば,そろそろ本格的なサバイバル,冒険に出るタイミングだ。といっても本作の探検は山あり谷ありで,そう簡単には進められない。詰まりそうなポイントと,その対処法を簡単に紹介しよう。
プレイして驚くのは,本作のフィールドが極めて広いことだろう。自動生成されたフィールドは複数のバイオーム(エリア)がシームレスにつながっており,ゲーム内で丸一日歩いた程度ではまったく探索が進まない。
また,前述のように夜は危険が多いので,むやみやたらに動き回るとあっさり敵にやられてしまう。本作は力尽きると「その場に所有アイテムをすべて落とし,スキルが低下する」という厳しめのペナルティがある。仮に手間暇かけた装備を持っていても,回収できなければすべて失ってしまうわけだ。
なので新たな土地を探索するときは,まず家を建設し,そこを拠点として少しずつ行動範囲を広げていくのがいい。家の中に設置したベッドを利用するとそこがリスポーンポイントとなるので,仮に死んでしまったとしても,はるか遠くの拠点から死に場所に戻るよりずっと楽だ。
ありがたいことに,本作では家を解体すると建設に使った材料が戻ってくるので,ある程度の規模までなら“引っ越し”も割とスムーズにできる。木材や石などは入手が難しくないので,拠点を丸ごと持って行く必要はないが,材料の入手が面倒なものは解体して運び,現地で再度組み立てればいい。
拠点となる家を増やしたい理由はもう1つある。それは食事以外のバフを付与したり,逆にデバフを減らしたりするためだ。例えばベッドやたき火がある自宅で一定時間休んでいれば,「休憩済み」というバフでライフやスタミナの回復速度が増加し,冒険を有利に進められる。
逆に屋根のない場所で雨に打たれれば濡れてしまい,それだけでライフ回復などに悪影響が発生するし,寒い夜に出歩けば文字通り「寒さ」というデバフが追加されてしまう。前述のように飲まず食わずでも死にはしないが,Valheimの環境は厳しい。適時休憩できる拠点が増えれば,生存できる可能性も高まるわけだ。
ただしここで注意したいのは,拠点へは一定の頻度で襲撃が発生すること。
ゲームの進行に応じて「森が動いている……」などのメッセージと同時に,大量の敵が押し寄せてくる。この時はプレイヤーはもちろん,中にいれば拠点も同時に攻撃されるので,“掘っ立て小屋”でこれを防ぐのは非常に難しい。時間と材料を惜しみなく使えば拠点を要塞化できるが,攻略するエリアが変わっていく以上,自分で本拠と決めた場所はともかく,仮住まいにどこまで手間をかけるべきかは,プレイヤーにとって悩みどころとなるだろう。
また襲撃に絡む要素でもあるのだが,本作の戦闘はなかなかシビアだ。最初の草原エリアこそ(昼間は)大した敵は出てこないが,次に挑むことになる「黒い森」からは敵の攻撃が一気に厳しくなり,気楽に探索できなくなってくる。可能な限りの装備を集め,十分な食料を用意しても,戦闘の立ち回りが悪ければ容赦なく,自分の死体が転がることになるだろう。
本作の戦闘にはガードや回避の要素があり,これを敵の攻撃に合わせて発動しないと,ライフがいくらあっても足りない。強い敵は一撃が非常に“重い”ので,武器を振り回しているだけだと勝負にならないのだ。また多勢に無勢でタコ殴りにされることも多いので,“ギリギリ倒せる”ぐらいの敵が複数いる場所に正面から突っ込むのは自殺行為だ。
これは本作のバランスが,ソロプレイ向けに調整されていないことが要因のひとつのようだ。Steamのページにも「3〜5人での協力プレイを推奨」と記載されており,ある程度チームを組んで進むことを前提にしているのだろう。
もちろん筆者のようにソロプレイでも進められるが,入念な準備と慎重な行動を心がけないと,デスペナルティを連続で食らうハメになってしまう。原稿執筆時点では難度設定も用意されていないため,プレイヤーの好みに合わせた歯ごたえに調節できないのは,少し残念なところだと思う。
また場合によっては,目的のエリアやボスがいつまでも見つからないことがある。これは本作のフィールドが自動生成される関係上,ゲーム開始地点のはるか遠く,あるいは容易に進めない場所に目的地が設定されるからだ。ありがちなのが「目的地が海の向こう」というシチュエーションで,この場合は船を作成して海を渡る必要がある。
船を作成すること自体はそれほど困難ではなく,水辺の近くに作業台を設置して“水の上に置く”感じでイカダ(raft)を作成すれば,最低限の航海の準備は完了する。材料は序盤で入手できるアイテムで十分だ。イカダの操作自体は少々複雑だが,陸の近くではオールを,沖まで進めたら帆と風をうまく使えば,「少し離れた島にたどり着く」ぐらいはすぐにできるだろう。
とはいえ海には海のモンスターがおり,大概は自由に動く(船を動かす)こともできないので,序盤からバイキングごっこをするのは不可能だ。初歩的な船しか作れない間の航海は,「泳ぐよりマシ」程度の存在と割り切って,より高度なクラフトが可能になるまで待とう。場合によっては,海岸沿いをひたすら歩けば目的の場所に陸路(と最低限の水泳)で行ける……ということもあるので,慌てて荒波に繰り出す前に,ひとまず陸の探索を進めるのも手だろう。
アーリーアクセスらしさが目立つが,コツコツと進めるのが楽しい一作
以上のように本作は,クラフトと冒険・探索要素がガッチリと噛み合ったゲームだ。クラフトをしないと装備が手に入らず,強敵は倒せないし,逆に探索やボス討伐を進めないと新たな材料がアンロックされず,装備や設備のアップグレードができない。どちらが欠けても先に進むことができないので,自然と両方をこなす必要に迫られる仕組みになっている。自前の道具や手塩にかけた拠点が充実していき,結果として探索に苦労した場所を楽に進めるようになったり,手強かった敵をあまり苦労せず倒せるようになるのは,それだけで楽しい。
また,新たな材料を入手したり,設備を設置して新規のレシピがアンロックされたときは,すぐにでも作りたくなるワクワク感もある。グラフィックスもモデリングやテクスチャは簡素だが,あからさまな“安っぽさ”を感じるほどではない。特にフィールドに関しては,晴天や雨,嵐,霧などの多彩な天候や,昼夜の移り変わりの表現と相まって雰囲気が出ていると感じた。
その反面,オープンワールドではあるがボスを倒さないと重要レシピが開放されないため,進行の自由度は思ったより低めだ。例えば「プレイヤーが好きなエリアを先んじて冒険し,入念な準備をしてボスを自由な順番で倒していく」といったプレイは非常に難しい。あくまで全体の進行自体は,リニアに設定されている印象を受けた。
とはいえこれは,同じクラフト要素のあるゲームだが,“完全放任”の色が強い「Minecraft」のような作品に比べて,短期的な目標が立てやすいとも言えるし,プレイを進めるためのガイドのように機能していると見ることもできる。「広大な世界で何をすればいいのか分からず,途方に暮れる」となるプレイヤーは少ないはずだ。前述のように全体の難度は高めなので,手近なボス退治がモチベーションになってくれるのはありがたい。またこれによって一定のストーリー性も生まれているため,世界観を堪能しやすくなっている印象だ。
さらに世界のすべてがブロックで形成されているMinecraftほどの自由度ではないが,つるはしやクワである程度地形を変形(掘ったり盛ったり)させることができる。拠点や建物を作るときには,土地にもこだわれるわけだ。本作のようにクラフトをメインとしつつも,地形に関しては一切いじれない作品もあるので,建築物を作り込みたいプレイヤーには嬉しいポイントとなるだろう。
アーリーアクセス版ということで,今後改善を期待したいポイントも挙げておきたい。全体的には,ゲーム内の説明が少々不足していて,プレイ時に迷うことが多い印象を受けた。チュートリアルキャラとしてカラスのフギンがいるものの,今時の作品としてみると“不親切”気味で,特に実際の操作方法に関しては普通のゲームを進める中でほぼ何の解説もないのは少々残念だ。
細かいところでは,「建材は簡単に解体できるのに,装備やアイテムや素材は消せない」(捨てても残り続ける)のが個人的にはストレスだった。別のワールドを作って“捨てに行く”ことはできるのだが,面倒なのは否めない。
また,食事の効果が切れたことを知らせるメッセージが「美味しかった」になっているなど,戸惑う表示がいくつかあったので,正式リリースまでにはローカライズの改善も期待したいところだ。
このように,開発途上ゆえの“手が行き届いていない”感はあるものの,多くのゲーマーを引きつける魅力は疑いのないところだ。クラフトした装備を持って冒険し,そこで得た素材で新たな装備をクラフト……と,一度ハマれば「プレイ時間がいくらあっても足りない!」となるほど熱中できるだろう。
前述したように,特にソロプレイは決して簡単ではないが,逆に言えばそれだけ緊張感の高いサバイバルを楽しめるゲームでもある。マップが自動生成である関係上,シード値によってプレイのしやすさが大きく変わるようなので,気に入らなければ新マップを作ったり,ネット上で公開されているオススメマップを試しみたりするのもいい。
本作のアーリーアクセスは1年以上を予定しているとのこと。この原稿を書き進めている間にも頻繁なアップデートが重ねられ,今後も新しいエリアやボス,素材などの追加が予定されている。クラフトやサンドボックス系の作品,あるいは歯ごたえのあるRPGに興味があるなら,ぜひ触ってみてほしい一作だ。
「Valheim」公式サイト
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Valheim
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