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コズミック・サイコホラー「SIGNALIS」プレイレポート。ドットアートとローポリゴンで描かれる,理解を超えた何かに近づいていく怖さ
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印刷2022/10/27 12:00

プレイレポート

コズミック・サイコホラー「SIGNALIS」プレイレポート。ドットアートとローポリゴンで描かれる,理解を超えた何かに近づいていく怖さ

 PLAYISMは,「SIGNALIS」PC / PS4 / Nintendo Switch ※Xbox版はHumble Gamesが発売)を本日(2022年10月27日 ※ダウンロード版は23:00に配信)リリースする。

画像集 No.001のサムネイル画像 / コズミック・サイコホラー「SIGNALIS」プレイレポート。ドットアートとローポリゴンで描かれる,理解を超えた何かに近づいていく怖さ

 本作はディストピアな未来世界を舞台としたコズミック・サイコホラーゲームだ。特徴的なのは,そのグラフィックスで,ドットアートとローポリゴンが同居している。舞台は非常に未来的なSFながらも,見せ方はレトロ寄り。そんな世界で,一体どんなホラーを見せてくれるのか。今回,リリース前にプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けする。


リソースコントロールと謎解き。随所に見られる,名作サバイバルホラーへのリスペクト


 物語は,人型アンドロイドのエルスターがコールドスリープから目覚める場面から始まる。この世界での人型アンドロイドは“レプリカ”と呼ばれており,目的や用途に合わせた,さまざまな種類が存在する。主人公も,名前がエルスターなのではなく,「エルスターユニット」という種類のレプリカのようだ。

「オ・キ・テ」という謎の声に応じるかのように目覚めるエルスター。なぜコールドスリープしていたのか,なぜここにいるのかは謎だ
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こちらは「オイレー」と「シュタール」。オイレーは万能型,シュタールは保安担当の戦闘向けユニットらしい。エルスターと同様に,レプリカの種類名であり,個体名ではない。みんな,可愛い女の子風の見た目なのが気になるところだが……
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 コールドスリープから目覚めた場所は壊れた宇宙船内のようで,静まり返っていて,人の気配はない。ひとまず,行ける範囲をくまなく探索してキーアイテムを探し,それを使うべき場所を考えていく。宇宙船内はそこまで広くはなく,マップもいつでも確認できるので,迷うことはないだろう。

画面は見下ろし型。入手できるアイテムや,読めるテキストファイルがある場所はカーソルが表示される
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マップはいつでも確認できる。青い扉は通行済み,赤い扉は故障で通行不可,グレーの扉は未通過を指す。このほか,黄色い扉もあり,何らかのキーアイテムがあればそこで進展があることを示している
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場所によっては主観視点になり,視界内をグルグルまわして調べることができる。気になる所はどんどん調べていこう
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 基本は見下ろし型の画面で進行し,謎解きなどの要所ではそこがズームアップされる。緻密なドットアートとローポリゴンで描かれるグラフィックスは初代PlayStation時代を思わせ,極限までBGMを抑えた環境音のみのシーンが,孤独な恐怖感を駆り立てる。
 壊れた宇宙船内の探索は,探索とアイテムの発見,そのアイテムを“どう使うか”を考えさせるチュートリアルのようなもので,まずは小手調べといったところだろう。

アイテムは個別に調べたり,ほかのアイテムと組み合わせたりできる
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耐寒スーツらしき物を装着し,宇宙船外へ出るエルスター。外は猛吹雪で何も見えない
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 その後,舞台はシェルピンスキーという施設に移る。施設内では,レプリカの各種ユニットが何らかの理由で誤動作を起こしており,エルスターに対して攻撃を仕掛けてくる。

こちらから攻撃するには武器が必要。武器を入手したら,右スティックで照準を合わせて撃とう
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 敵として襲いかかってくるレプリカは,マップを何度も行き来していると復活することがある。つまり,無駄にウロウロしすぎると,せっかく倒した意味がなくなってしまうというわけだ。

 探索して集めた弾薬と回復アイテムをどこで使って,どこで節約するのか。どの敵を倒して,どの敵は戦わずにスルーするのか。このあたりから,初期の「バイオハザード」などに代表される“リソースコントロール”のゲーム性が明確になってくる。持ち歩けるアイテムは6つと限られているため,武器・弾薬・回復アイテムをしっかり持ちすぎると,探索の果てにやっと見つけたキーアイテムが持てず,泣く泣く引き返すハメになることも。

セーフルームには「保管庫」があり,持ち切れないアイテムはここに入れておける。保管庫に入れたアイテムは,他のセーフルームの保管庫からも取り出せる。どこかで見た気がする性質の箱だ
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せっかくアイテムを見つけても,アイテムを6つ持っていると,入手できない。弾薬や回復アイテムは意外と豊富に落ちているので,アイテム欄はなるべく少なくしておきたい
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 また,本作にはダッシュ移動はなく,“早歩き”がダッシュ移動に該当する。敵もこちらの早歩きに合わせた程度の動きなので,「敵の動きが早すぎて,狙いをつけている余裕がない!」とか,「敵の動きが素早すぎて避けられない!」ということがない。こうしたタイプのゲームでは,敵を避けるにも反射神経や素早く的確な操作が要求されることが多いが,本作の場合,そこまでシビアではなく,より多くの層が楽しめるようになっていると感じる。もちろん,狭い通路だと避けづらいし,敵に体当たりをするようなストレートな動きでは,攻撃をくらってしまうが。

盾を持ったレプリカも登場する。正面から攻撃しても防がれてしまうため,倒すのであれば,地形を利用してうまく背後にまわる必要がある
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シェルピンスキーの施設内にいるのは,狂ってしまったレプリカだけではない。狂ってしまったレプリカと交戦したのか,傷ついて動けなくなっている「シュタール」。主人公は写真の女性を捜しているようだが……
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皆がおかしくなってしまったことに恐怖し,部屋にこもっているオイレー。狂ったレプリカたちは,いきなりではなく,徐々におかしくなっていったらしい
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狂ったレプリカと戦ったと思われる人間とも遭遇。ゲシュタルトというのは,レプリカではなく,この世界でいう人間のことだと思うが……
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ボス級のレプリカとの戦いも。こうしたときに備えて,強力な武器とその弾薬はかき集めておきたい
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かつてない,奇妙極まりないサバイバルホラー。この“怖さ”は新しい


 本作は,往年のサバイバルホラーの名作へのリスペクトが大いに感じられ,探索・リソースコントロール・謎解きが大好きな人にはたまらない作品となっている。

 特に謎解きが,易しすぎず難しすぎずの“ちょうどいい”ラインを攻めてくれていて,クオリティも高い。ヒントらしいヒントがない謎解きも多いのだが,言語に関係なく楽しめるように作られており,程よく頭を悩ませてくれて,長時間詰まるものがなかったのが印象的だった。

ピッキングの謎解き。とくにヒントも説明もなく,画面を見ながらスイッチをいじり倒すしかないと思うのだが,何度かいじっているうちに自然と理解できてくる
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サバイバルホラーではよく見る気がする,水を移動させるパズル。この謎解きだけは近くにあるテキストファイルに解き方がまんま書いてある。この謎解きを入れておくこと自体が,往年のサバイバルホラーへのラブコールなのだろう
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フラッシュライトをどこかで見つけてこなければ,暗くて先へ進めないという場所も。サバイバルホラーといえば懐中電灯!
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 ただ,世界設定や,ゲシュタルトやレプリカに関する詳細な説明が特にないままゲームは進むため,状況やストーリーの把握は難しい。状況の不可解さについては,ある程度は意図的に作られているのだと感じるが,非常に特殊な世界設定でもあるため,分かりづらい部分が多いことは否めない。また,ゲームが進むにつれて謎が少しずつ明かされていくのではなく,進んでも進んでも,よく分からない状況が続く。

イベントシーンはエルスターのフラッシュバックが多く,時系列を考えるといつのできごとなのか,そもそもこれは現実にあったことなのか白昼夢なのか……といったことからも分からない
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序盤で会った,ゲシュタルトの女性。彼女もまたエルスターと同様に何らかの目的があってシェルピンスキーに来ているようだ。包丁を手にしているだけに,信用しても大丈夫な人物なのだろうか……。顔の細部が分からないローポリゴンでのイベントシーンは,なんともいえない懐かしさを伴った緊張感がある
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「シュタール」は妙に足が長いのが気になっていたのだが,歩幅を生かした機動性がウリのユニットらしく,なるほど……と設定に納得させられる
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 一方で,そうした分かりづらい部分は本作のミステリアスな世界の演出に一役買っており,各所に残されたメモから得られる情報を元に,想像を張り巡らせる楽しみがある。全編通して薄暗い場所の探索が続くし,探索ペースはゆっくりなので,ゲームとして地味ではあるのだが,SFミステリー小説が好きな層には刺さるであろう,“静かな凄味”がある。

実にホラーゲームらしいメモも
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何気ないシーンでサラリと見せられるドットアートの素晴らしさに,思わず息を呑むことも
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 分かりづらい部分は,決してローカライズによるものではないことだけは書いておきたい。非常に複雑な内容であることもあり,ローカライズは大変だったと思うが,違和感を覚える箇所はひとつもなかった。ローカライズには定評があるPLAYISMということもあり,この点は安心してプレイできると保証する。

「ほんと,もう無理」といった,今の時代に合わせた見事な表現も。レプリカの人間臭さが感じられる
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 ホラーには,「オカルト系の怖さ」「物理的に何かが襲いかかってくる怖さ」「急に何かが出てきてビックリさせる怖さ」など,さまざまな種類があるが,本作はそのどれでもない。特殊な世界設定と,「ここで何が起きてこうなったのか」が,なかなか明かされないストーリー展開。「理解を超えた何かに近づいていく怖さ」とでも言うのだろうか。「怖いもの見たさ」という言葉があるが,本作の牽引力は,まさにそれだ。

ゲームが進むと,マップが確認できないエリアも出てくる。これまたサバイバルホラーのお約束
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 ホラーゲームが好きな人はもちろんのこと,自分が何者なのかを探るような,目に映るものすべてを疑ってかかりたくなるような物語が好きな人にもオススメの作品だ。

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