プレイレポート
コズミック・サイコホラー「SIGNALIS」プレイレポート。ドットアートとローポリゴンで描かれる,理解を超えた何かに近づいていく怖さ
本作はディストピアな未来世界を舞台としたコズミック・サイコホラーゲームだ。特徴的なのは,そのグラフィックスで,ドットアートとローポリゴンが同居している。舞台は非常に未来的なSFながらも,見せ方はレトロ寄り。そんな世界で,一体どんなホラーを見せてくれるのか。今回,リリース前にプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けする。
リソースコントロールと謎解き。随所に見られる,名作サバイバルホラーへのリスペクト
物語は,人型アンドロイドのエルスターがコールドスリープから目覚める場面から始まる。この世界での人型アンドロイドは“レプリカ”と呼ばれており,目的や用途に合わせた,さまざまな種類が存在する。主人公も,名前がエルスターなのではなく,「エルスターユニット」という種類のレプリカのようだ。
コールドスリープから目覚めた場所は壊れた宇宙船内のようで,静まり返っていて,人の気配はない。ひとまず,行ける範囲をくまなく探索してキーアイテムを探し,それを使うべき場所を考えていく。宇宙船内はそこまで広くはなく,マップもいつでも確認できるので,迷うことはないだろう。
基本は見下ろし型の画面で進行し,謎解きなどの要所ではそこがズームアップされる。緻密なドットアートとローポリゴンで描かれるグラフィックスは初代PlayStation時代を思わせ,極限までBGMを抑えた環境音のみのシーンが,孤独な恐怖感を駆り立てる。
壊れた宇宙船内の探索は,探索とアイテムの発見,そのアイテムを“どう使うか”を考えさせるチュートリアルのようなもので,まずは小手調べといったところだろう。
その後,舞台はシェルピンスキーという施設に移る。施設内では,レプリカの各種ユニットが何らかの理由で誤動作を起こしており,エルスターに対して攻撃を仕掛けてくる。
敵として襲いかかってくるレプリカは,マップを何度も行き来していると復活することがある。つまり,無駄にウロウロしすぎると,せっかく倒した意味がなくなってしまうというわけだ。
探索して集めた弾薬と回復アイテムをどこで使って,どこで節約するのか。どの敵を倒して,どの敵は戦わずにスルーするのか。このあたりから,初期の「バイオハザード」などに代表される“リソースコントロール”のゲーム性が明確になってくる。持ち歩けるアイテムは6つと限られているため,武器・弾薬・回復アイテムをしっかり持ちすぎると,探索の果てにやっと見つけたキーアイテムが持てず,泣く泣く引き返すハメになることも。
また,本作にはダッシュ移動はなく,“早歩き”がダッシュ移動に該当する。敵もこちらの早歩きに合わせた程度の動きなので,「敵の動きが早すぎて,狙いをつけている余裕がない!」とか,「敵の動きが素早すぎて避けられない!」ということがない。こうしたタイプのゲームでは,敵を避けるにも反射神経や素早く的確な操作が要求されることが多いが,本作の場合,そこまでシビアではなく,より多くの層が楽しめるようになっていると感じる。もちろん,狭い通路だと避けづらいし,敵に体当たりをするようなストレートな動きでは,攻撃をくらってしまうが。
かつてない,奇妙極まりないサバイバルホラー。この“怖さ”は新しい
本作は,往年のサバイバルホラーの名作へのリスペクトが大いに感じられ,探索・リソースコントロール・謎解きが大好きな人にはたまらない作品となっている。
特に謎解きが,易しすぎず難しすぎずの“ちょうどいい”ラインを攻めてくれていて,クオリティも高い。ヒントらしいヒントがない謎解きも多いのだが,言語に関係なく楽しめるように作られており,程よく頭を悩ませてくれて,長時間詰まるものがなかったのが印象的だった。
ただ,世界設定や,ゲシュタルトやレプリカに関する詳細な説明が特にないままゲームは進むため,状況やストーリーの把握は難しい。状況の不可解さについては,ある程度は意図的に作られているのだと感じるが,非常に特殊な世界設定でもあるため,分かりづらい部分が多いことは否めない。また,ゲームが進むにつれて謎が少しずつ明かされていくのではなく,進んでも進んでも,よく分からない状況が続く。
一方で,そうした分かりづらい部分は本作のミステリアスな世界の演出に一役買っており,各所に残されたメモから得られる情報を元に,想像を張り巡らせる楽しみがある。全編通して薄暗い場所の探索が続くし,探索ペースはゆっくりなので,ゲームとして地味ではあるのだが,SFミステリー小説が好きな層には刺さるであろう,“静かな凄味”がある。
分かりづらい部分は,決してローカライズによるものではないことだけは書いておきたい。非常に複雑な内容であることもあり,ローカライズは大変だったと思うが,違和感を覚える箇所はひとつもなかった。ローカライズには定評があるPLAYISMということもあり,この点は安心してプレイできると保証する。
ホラーには,「オカルト系の怖さ」「物理的に何かが襲いかかってくる怖さ」「急に何かが出てきてビックリさせる怖さ」など,さまざまな種類があるが,本作はそのどれでもない。特殊な世界設定と,「ここで何が起きてこうなったのか」が,なかなか明かされないストーリー展開。「理解を超えた何かに近づいていく怖さ」とでも言うのだろうか。「怖いもの見たさ」という言葉があるが,本作の牽引力は,まさにそれだ。
ホラーゲームが好きな人はもちろんのこと,自分が何者なのかを探るような,目に映るものすべてを疑ってかかりたくなるような物語が好きな人にもオススメの作品だ。
「SIGNALIS」公式サイト
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(C)2022 rose-engine. All rights reserved.
Licensed to Humble Bundle, Inc.. Sub-licensed and published by Active Gaming Media Inc.
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