2023年7月25日,東京国際フォーラムで開幕したWeb3カンファレンス
「WebX」において,
「大企業がWeb3メタバースに参入した理由」をテーマとしたトークセッションが行われた。
ここでモデレーターを務めたのは,Minto 代表取締役
水野和寛氏。登壇者は,The Sandbox Japan CEO
遠藤有貴子氏,東映アニメーション デジタルプロダクト推進室室長
植野良太郎氏,SHIBUYA109エンタテイメント 代表取締役社長
石川あゆみ氏,そしてエイベックス Web3/Blockchainテクノロジー顧問
岩永朝陽氏の4名だ。
各社とも,Web3メタバース「
The Sandbox」上で「LAND」(「The Sandbox」内の土地。ここでさまざまなサービスやデジタルアイテムの販売などが行える)を展開,あるいは展開準備中だが,各社がWeb3メタバースに進出するに至った理由や,いざ進出するにあたって直面した困難などについて,それぞれの立場から語られた。
石川氏「渋谷の街をリアルを再現するだけでなくメタバースならではの面白いクエストを入れていく。リアルなファッションがNFTに,メタバース上で盛り上がったファッションをリアルに展開するといったところまで見据えつつ,コンテンツを構築していく」
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すでに「SHIBUYA109 LAND」を展開しているSHIBUYA109エンタテイメントの石川氏は,2021年,コロナ禍にあって大型商業施設であるSHIBUYA109に政府から休館を要請されたことなどが,大きなきっかけだったと語る。実店舗にお客さんを入れられない状況下,買い物自体の代替性を求めるのではなく,109らしい楽しさ,ワクワク自体を届けるための試みとしてメタバースへの進出を決めたそうだ。なお,石川氏と遠藤氏はかつて同じ会社に勤めていたこともあり,そうした縁もあって話が進んだのだという。
植野氏「アニメを作って届けるという一方通行ではなく,一緒に作る,作る過程を見ていただくなど,コミュニケーションが取れる仕組みを考えたい。そのうえでクリエイターに直接還元できるようなアニメの作り方の可能性なども感じて,企画を進めている」
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1948年に創業し,数々のアニメ作品というIPを保持する東映アニメーションの場合は,まず社内や原作者などからの理解を得るのに苦心したと植野氏はコメント。メタバース以外にもNFTプロジェクト「電殿神伝-DenDekaDen-」などに取り組んでいるが,古い体質の業界で新しいものに挑戦することの難しさを実感しているようだ。ただ,「お客さんからのマイナスの声はいっさいなく,期待を寄せられている」そうで,その期待に応えられず中途半端になってしまうようなことがないよう,頑張っていきたいと語っていた。
岩永氏「音楽事業は著作権や原盤権など,さまざまな権利がある。それをファンの人達とどう共有し,一体感を高めていけるかなどの議論を内部で行っている」
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新しいことに積極的に取り組む社風であるというエイベックスでは,「The Sandbox」への進出も松浦勝人代表取締役会長などが後押しをしてくれるとのこと。しかし,いざ進めようとなると経理や会計監査法人が「クリプトとは?」「『The Sandbox』の『LAND』は資産なのか」といった調子で,取り扱いに戸惑ってしまっていると岩永氏はこぼす。一方,デジタルでアーティストをプッシュしていくような仕組みも整備されていないのも実際のところで,デジタルの場合どういったライセンス形態にするべきかなど,仕組みを作り上げる必要性とハードルの高さを感じているようだった。
またThe Sandboxの遠藤氏はメタバースの難しさとして,「アバター自身がアメリカに住んでいるアメリカ人だったらアメリカの法律が,日本に住んでいる日本人だったら日本の法律が適用される。同じ空間だからといって同じ法律が適用されるわけではない」といった点を上げていた。ただ,同社としてそのあたりの確認をきちんと行ってきたことで,さまざまな企業と取り組みができていると考えているそうだ。
それぞれの立場から,それぞれの抱える課題について語られた本セッションは,水野氏の「Web3メタバースに若者が集まって,どんどん新しいコンテンツが生まれていくといいな」とのコメントで幕を下ろした。
遠藤氏 |
水野氏 |