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TVアニメ「トライブナイン」完成披露会をレポート。制作陣&キャストが野球であって野球ではない“エクストリームベースボール”を語る
「TRIBE NINE」は,20XX年のネオトーキョー国に存在する架空の東京23区を舞台とし,各区のアウトロー集団「トライブ」が野球をベースにした「エクストリームベースボール」(以下,「XB」)で抗争をくり広げるという物語を描く作品だ。すでにテレビアニメをはじめ,スマートフォン向けゲームアプリやWebtoon(縦読みのWebマンガ)の制作が決定しており,作中に登場する7つのトライブと所属メンバー,CVを担当する声優の情報なども公開されている。
まずは,原案を担当したトゥーキョーゲームスの小高和剛氏が登場。本プロジェクトはアニメとゲーム,2つの柱で制作していることに触れ,新たなIPとして挑戦するために必要な“独自性”を出すことに強くこだわったという。しかし,独自性を発揮するほど一見分かりにくくなりやすいため,アニメで広くフォローしつつゲーム開発も進めるという形をアカツキへ提案したと続けた。また,世界観は共有しつつもゲームとアニメではストーリーがまったく異なり,アニメは映像としての楽しさを追求したそうだ。
続けて,監督の青木 悠氏は最初に「野球なんだけど,野球じゃないんです」といった禅問答のような説明を受けたと振り返る。「誰も見たことのないものを作りたい」というオファーに加えて,今回が青木氏初の監督作品となるため,不安を抱えつつもチャンスと捉えたそうだ。本作はアニメ作品として区切るのではなく,ゲームのフィードバックも受けながら密にコミュニケーションを図って進行したのが難しくもあり,楽しかったと語ってくれた。
野球がベースだが,野球に詳しくない人が敬遠しないよう「打った」「走った」「殴った」「倒した」で決着がつくような作品になっていると青木氏。まずは小高氏らと「ファールはあるのか」「点数はどうするのか」といった,XBのルール面での話し合いからスタートしたという。絵コンテもすべて青木氏が手掛けており,その過程で固まったXBの総体をゲームへ取り入れる……と二人三脚で進行していったそうだ。
小高氏は,打ち合わせでスタッフ皆が「細かいことはいいんだ!」と口にしていたとコメント。理屈としてどうこうではなく,少年漫画のようなけれん味を詰め込み,それが映像になるとより魅力的に描かれていると青木氏も語る。
そして戦いといえどXBというスポーツの上で行うため,善悪ではなく双方に道理や正当性のある駆け引きが楽しめるのも本作のポイントの1つ。各キャラクターやトライブの印象もストーリーが進むと大きく変化するようだが,小高氏はストーリーの中心となるミナトトライブについて「若さっていいなと思う可愛さがある」と答えていた。
白金ハルを演じた堀江 瞬さんは,トゥーキョーゲームスの手掛けたテレビアニメ「アクダマドライブ」にも出演している。「そのときとはまた違った角度で攻めてきた」と作品への手応えを感じたそうだ。
本作の第一印象については,テープオーディションのときにキャラクターだけでなく「自身の声でしゃべってほしい」と日常の一コマのようなセリフを求められたのが印象に残ったと話す。この指示は青木氏からのオーダーで,オリジナル作品のためシナリオが決定していないなか,キャストの声からもインスピレーションが欲しいという思いからだと明かした。
収録のエピソードを聞かれると,有栖川さおりを演じた渕上 舞さんは,堀江さんのTwitterと本人のギャップに触れて笑いを誘う。とくに堀江さん,渕上さん,タイガ役の沢城千春さんと3人で一緒に芝居をするシーンが非常に多く,ストーリーが進むごとに絆も深まったそうだ。
一方で最初に収録をするケースも多く,ミナトトライブのリーダー・神谷 瞬を演じる石田 彰さんのボイスすら滅多に聞くことがなかったと振り返る。そうした別録りのなかでもキャラクター同士がその場にいるような会話になっていて,音響監督が絶賛していたと青木氏が付け加える。
渕上さんはオーディションの資料を読んでもXBが何なのか分からず,例えば有栖川さおりの「ボールを取ったらブチのめす」というセリフも,ギャグなのか生死がかかっている状態なのか判断に迷ったという。また,スポーツものといえば青空の下で爽やかなイメージの作品が多いなか,本作はキービジュアルから夜のような暗い雰囲気で興味をそそられたそうだ。
青木氏は,有栖川さおりの「女性的すぎず,それでいて繊細さも持ち合わせたキャラクター」といったイメージを掴むのが難しかったそうだが,小高氏は「女性らしさもありつつ,芯の強いキャラクター」として渕上さんの演技はバッチリだったと話す。
気になるキャラクターを聞かれると,渕上さんは熊谷健太郎さんの演じるアダチトライブのリーダー・千住百太郎が物語上の絡みもあるので注目してほしいと語りつつ,個人的な好みとしてタイトウトライブの2人を挙げる。堀江さんは曲者揃いのオオタトライブをチョイスし,近藤玲奈さん演じる雪谷えのきが気になると答えていた。
オープニング・エンディングテーマと映像について聞かれた青木氏は,オープニングのコンセプトはオリジナル作品のため,まずこれを見ただけでも世界観が分かるような構造にしたと説明する。ネタバレにならない範囲で見せ場のシーンも散りばめているので,話数が進むごとに「これはあのシーンなのか」と回収でき,すべて見終えた後に見直したくなるような映像を目指したそうだ。エンディングではXBをプレイする「街」を描きたいと考え,独自性のある世界観をポップに見せる点を意識して制作したとのこと。
公式YouTubeチャンネルではアニメのオープニング・エンディングのほか,各トライブごとに用意されたMVも視聴できる。
本作の見どころを聞かれた堀江さんは,ただXBで戦うだけでなく個々人のドラマや成長にも触れており,とくに気弱な少年だった白金ハルがミナトドライブやXBと出会い,どう変化していくかを見届けてほしいと話す。渕上さんはビジュアル的な部分のほか,XBを主軸にいろいろな要素が詰め込まれているが,メインストーリーは分かりやすく描いているとコメント。今後の展望として,XBにちなんだ始球式やトライブのメンバーでゲームが行えたらいいと語ってくれた。
応援大使のえなこさんは有栖川さおり,つんこさんは神谷 瞬のコスプレ姿で登場。えなこさんはスカートの位置も自身でしっかり調整したそうで,渕上さんも髪の絶妙なボリューム感までそっくりだと感想を述べる。つんこさんは独特の髪型や,シンプルだが長さやシルエットまでこだわった衣装について紹介していた。
ここで放送に先駆け,完成した第1話が上映された。ストーリーとしては,白金ハルがひょんなことからタイガや最強XBプレイヤー・神谷 瞬と出会い,ミナトトライブの一員としてXBへ挑むことになる……といった流れで,文字にすれば意外なほど王道で拍子抜けしてしまうかもしれない。
しかし,XBがはっきり言って滅茶苦茶で「どう見ても1塁と3塁の距離がおかしい」「捕球の位置が想像の100倍は高かった」「身体能力を強化するギアが使えるっていっても,これは身体能力の強化っていうレベルか!?」「海が……マグロが見える……!?」「バットが物理的に伸びているが,これはどういう仕組みなんだ……?」「一般的な野球のベンチとだいぶ様子が違う」「ただ殴るのはアウトだけど再起不能はセーフなんだ……」「ここで試合が終了してしまったー!?!?」などなど,ツッコミが止まらなかった。実際に1話を観れば,これが決して大げさな物言いでも嘘でもないことが分かるはずだ。
そしてオープニングやMVだけでなく,「ダンガンロンパ」シリーズを手掛けた高田雅史氏によるBGMが,スピーディでテンポのいい展開をさらに盛り上げている。本作の独自性の一端を担うBGMにも大いに注目してほしい。
放送が待ちきれないファンは,あわせて公開されたアニメーションPV第2弾を視聴しよう。チヨダトライブの粛清,均衡の崩れた各トライブの駆け引き,ミナトトライブへ迫る謎の男性,拳でぶつかりあう神谷 瞬など,気になるシーンがこれでもかと詰め込まれている。果たして王道スポ根となるのか,どこか邪道な物語なのか……想像を膨らませながら2022年1月10日より順次スタートする放送,配信を待とう。
「TRIBE NINE」公式サイト
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TRIBE NINE
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