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[GDC 2024]Epic Games StoreがiPhoneやAndroidにも登場? Epic Gamesがゲーム開発者に向けたストア施策を明らかに
本稿では,その中でも大きな注目を集めた「Epic Games Store」(以下,EGS)関連の話題をレポートしよう。
Epic Games Storeの近況
2023年に,EGSのアカウント総数は2億7000万を突破。月あたりのアクティブユーザーは7500万人以上となり,2023年内にユーザーが購入したコンテンツの総額は,9億5000万ドルにも達したという。氏は,
2023年中にEpic Gamesは,ユーザーがEGSで購入した場合は総額2000ドルに相当する人気ゲームを,80タイトルも無料配布した。無料配布期間中にユーザーがダウンロードしたタイトルは,永続的に無料のままプレイできるという太っ腹な試みだ。また定期的に,対象タイトルを購入すると購入金額の5%を還元する「Epic Rewards program」(Epic報酬プログラム)もスタート。これらの無償化や割り引きの費用は,すべてEpic Games側が負担しているという。
EGSがスタートしたのは2018年だが,「コンテンツ販売額の開発者取り分が88%,Epic Gamesの取り分は12%」というバランスは,依然と業界トップクラスであるとAllison氏は強調。前出の「When You Succeed We Succeed」のキャッチコピーを2024年も強く推進していくとアピールしていた。
そうした取り組みの最新事例が,開発者の取り分が100%になるプログラムだ。
開発者が100%の取り分を得るには?
まず,EGSで販売されたゲームにおいて,ゲーム内課金を行う場合が対象となる。
たとえば,ゲーム内で実装した独自の課金システムや,そのゲームから誘導された外部の課金システムを利用して,ユーザーが課金アイテムや関連DLCなどを購入した場合は,その収益は100%,開発者側が得られる。
事情通の読者には,ニヤリとした人もいるに違いない。
2020年にEpic Gamesは,看板タイトルである「Fortnite」のiOS版やAndroid版において,Appleの「App Store」,Googleの「Google Play」などが課す支払い方法を迂回できるように,独自の決済システム「Epic Direct Payment」を導入した。これに対してAppleやGoogleは,その行為を規約違反として,Fortniteをそれぞれのアプリストアから削除した。
Access Accepted第657回:Apple対Epic Games:「フォートナイト」のプレイヤーを巻き込んだ戦いの幕開け
Epic Gamesが配信するバトルロイヤルゲーム「フォートナイト」が,App StoreとGoogle Playから削除されるという出来事が起きた。理由は,2020年8月13日にスタートしたEpic Games独自のモバイル向け決済手段「Epic ディレクトペイメント」にあるという。今週はその話題を紹介したい。
この争いは,当然のごとく訴訟へと発展したうえで,いまだに係争中なので詳細は省く。だが,こうした動きもあってか,大手IT企業がデジタル市場での独占を禁じる「Digital Market Act」(デジタル市場法)が,2023年に欧州連合で成立するに至る。Appleは,Apple製ハードウェア向けのアプリを,第三者がApple以外のストアで販売する行為を認めざるを得なくなったわけだ。
それを受けて,Epic GamesはiOS向け独自ストアの開設に向けて準備を進めていたが,2024年3月6日にAppleは,Epic GamesのAppleハードウェア向け開発者アカウントを突如停止した。Epic Gamesはもちろん猛抗議。これが訴訟に発展したら勝ち目がないと考えたのか,Appleは,わずか2日で,開発者アカウントを再開させたのであった。
事の発端が「Fortnite内に実装した独自決済システム」だっただけに,Epic Gamesは,「うちは,ゲーム内で独自決済によるコンテンツ販売を認めてますよ」という,一連の経緯に対する皮肉を込めて,今回,発表したのであろう。
話を戻そう。Allison氏は,別の2つの開発者取り分100%キャンペーンについても,改めて告知した。
ひとつは,2023年10月に始まった「Now On Epic」キャンペーンだ。これは,他社のストアで販売中タイトルであっても,2024年内までにEGSでの販売を始めれば,6か月間は開発者の取り分が100%となるものだ。
2つめは「Epic First Run」キャンペーンで,開発した新作ゲームを最初にEGS独占で販売すれば,その後,6か月間は取り分が100%となる。
レベニューシェアが6か月間100%へ。Epic Gamesストアでデベロッパ/パブリッシャ向け新プログラム「Epic First Run」「Now On Epic」始動
Epic Gamesは,Epic Gamesストアにおいて,デベロッパおよびパブリッシャ向けのオプトイン独占プログラムとなる「Epic First Run」,そしてバックカタログにインセンティブを加える「Now On Epic」のプログラム追加をアナウンスした。最初の6か月間の限定ながらレベニューシェアは100%となる。
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- PC
- Epic Games
- ライター:奥谷海人
- 業界動向
なお,新キャンペーンではなく,従来からあったものだが,Unreal Engineを活用して開発されたゲームが,EGSで販売されたことで得た収益は,そのゲーム開発者に課せられるUnreal Engine利用ライセンス料の対象から除外されることを,Allison氏は改めて強調していた。今後,EGSへの移行が進むかどうか,関心が集まりそうである。
FortniteがiPhoneに帰ってくる?
そして最後に,「EGSがiOSとAndroidに帰ってくる」というメッセージとともに,EGSが販売するゲームコンテンツの対象プラットフォームを,iPhoneやiPadなどのiOS端末やAndroid端末に拡大することを,Allison氏が発表した。
リリース時期は未定だが,2024年内に提供される予定だとのこと。特別な手立てを使わずとも,iOS端末用アプリをApp Store以外で購入,インストールできるようになるのは,ユーザーにとっても業界にとっても,大きな出来事かもしれない。
改めて言うまでもないが,EGSでは,開発者の取り分が88%となるので,AppleがApp Storeで課している条件よりも,開発者の受け取り分は増える。こうしたEpic Gamesの一連の動きは,AppleやGoogleに対して,大きなプレッシャーを与えることになるはずだ。いわゆる「アプリストアのショバ代」が低くなるムーブメントが加速する可能性もある。
ゲーム開発者にとっても,自分の作品をどこで販売するのがいいか,選択肢が広がることにつながるだろう。
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