プレイレポート
ベヨ姐さんが満を持しての帰還。PS4版の発売前に振り返りたい,クライマックス・アクション「BAYONETTA」の魅力
「BAYONETTA&VANQUISH」公式サイト
2009年当時,魔女・ベヨネッタの登場は衝撃的だった。両手だけではなく両足にも銃を装備するという,まさかの四丁拳銃スタイルだ。しかも,ことあるごとに「バッボーイ(※Bad boy……“悪い子ね”)」と口にしながら,さまざまな拷問技“トーチャーアタック”で相手を始末していく女王様気質。必殺技のシーンでは服がはだけてほぼ全裸になり,危ない部分だけは器用に隠して,本人は謎のポーズをきめる。「魔女っていうか痴j……」と話題を呼んだ。
正直なところ,4Gamer読者に「BAYONETTA」というゲームを知らない人はいないのではないかと思う。しかし,その認知度の高さは,ベヨネッタというキャラクターの強烈さによるところが大きい。有名なダンスシーンだけを動画サイトで観て,実は未プレイという隠れバッボーイがいるのではないか……? というわけで,そんな人たちにトーチャーアタックを決めるべく,「BAYONETTA&VANQUISH」の中の1本,「BAYONETTA」の魅力を改めてお伝えしてみたい。なお,本稿で使用している画像はSteam版のものだ。ボタン表記はXbox Oneコントローラに合わせている。
最初から最後までクライマックス!
肩を並べられる作品がほかにないほどの贅沢な作り
オープニングでは,唐突に,落下するガレキの上でバトルが始まる。プレイヤーは,コントローラのボタンを適当にポチポチと押しながら操作を確認するわけだが,その間,ナレーションによって世界観のようなものが語られる。いわば,「BAYONETTA」の世界を説明するオープニングと,ゲームのチュートリアルが一体化しているのだ。
この,プレイヤーに無駄な時間を感じさせない作りは,ロード画面でも生かされている。ロード中に自由にベヨネッタを動かして,コンボの練習ができるようになっており,内容はプラクティスモードに相当する。つまり,ロード時間とプラクティスモードの一体化を図っているわけだ。
そんな感じでプレイヤーが基本操作をマスターしたと思ったら,1950年代のジャズの名曲「Fly Me to the Moon」をアレンジした「Fly Me to the Moon(∞ Climax Mix)」をBGMにベヨネッタが本格的に大暴れを開始する。筆者は2009年当時,ここでグッと心を掴まれたことを覚えている。
「Fly Me to the Moon」は,これまでにさまざまなアレンジで多くの作品に使われており,アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のエンディングテーマだったこともあって「聴いたことがある」という人は多かったと思う。しかし,アレンジの多くは原曲同様,しっとりとした雰囲気であり「Fly Me to the Moon」=静かな曲,という固定観念があった。
「なるほど,オープニングのインパクトを強くして,全力でツカミにかかったわけね」と思われるかもしれない……が,ちょっと違う。「BAYONETTA」は,全編がこんな調子なのだ。巨大なボス敵やド派手なイベントで次々とプレイヤーの意表を突いて,飽きさせない。本作は16チャプターあるが,静かで落ち着いた進行のチャプターは1つもない。毎チャプターが大事件,常時クライマックスな展開であり,アクション映画の見せ場ともいえるような派手な演出を惜しまない。これこそが,本作の代名詞「クライマックス・アクション」のゆえんでもある。
既存のアクションゲームにあった要素に対して,「もっと快適にできないか」「もっと面白くできないか」という挑戦,過去の名曲の新たな解釈,そして「毎チャプターがクライマックスで何が悪い!」という,豪華な力の入れ具合。「BAYONETTA」は,少なくとも筆者にとって,過去から受け継いだものをさらに磨き上げて前へと進む,アクションゲームの新時代を感じさせてくれた作品だった。
“難しそう”という偏見を持っていないか?
「ベヨネッタ」は“誰でも”楽しめる爽快アクションだ
本作の魅力はいろいろとあるが,特に推しておきたいのは,難しさでプレイヤーを置いてけぼりにしないという点だ。
アクションゲームは反射神経や操作技術がものを言うことが多く,「自分の腕前ではクリアできないのではないか」「何度もリトライを強いられるのではないか」という不安を感じる人もいるかもしれない。しかし,本作の難度は「Normal」をベースとして,その下に「Easy」と「Very Easy」が用意されている。
このVery Easyは,ディレクターの神谷英樹氏が「ウチのオカンでもクリアできるように」と難度を調整したモードで,通称“オカンモード”と呼ばれている。実際,かなりカンタンで,Normalと比べると被ダメージが半分,与ダメージが2倍,ベヨネッタの初期体力が2倍,このほかボタンアクション(※QTEのようなもの)が必ず成功し,体力が自動回復する。さらに“Automaticモード”が可能になるアクセサリー「永遠なるマリオネット」を最初から所持しているという,いたれりつくせりな仕様だ。
Automaticモードは,ボタンを適当に押しているだけで自動的にコンボ攻撃にしてくれるというもので,「これ以上はカンタンにできない……っ!」という開発側の悲鳴が聞こえてきそうなほどだが,それでいて,爽快感は失われていない。
もちろん,歯ごたえを求める層には「Hard」「∞Climax」といった上位の難度も用意されており,各ステージでは成績によってブロンズやプラチナといったクリアランクの格付けも行われる。難度∞Climaxでピュアプラチナアワード獲得を目指せば,やりごたえは充分だろう。
上位難度への挑戦にしても,純粋にプレイヤーの腕前だけで立ち向かう必要はない。新たな武器・アクセサリーの入手や,技の習得でベヨネッタを強化していくことができるので,アクションが得意ではない人は,ひとまず下位難度で1周してストーリーを堪能し,それらを揃えた後で上位の難度に……というプレイがオススメだ。
そのほかにも,やりこみ要素は豊富だ。難度Normal以上で全チャプターをクリアすることでコスチュームチェンジが可能になったり,「アルフヘイム」という特殊な戦闘フィールドをすべてクリアすると,「BAYONETTA」の最終コンテンツと言える「エンジェルスレイヤー」が解禁されたりする。エンジェルスレイヤーは,トロフィー/実績の対象にはなっていない,恐ろしく難度の高い戦闘フィールドだ。
「BAYONETTA」というゲームをしゃぶり尽くすことが山の頂上だとするなら,そこへ向かうための道は1本ではない。自信があるならば,武器やアクセサリーには目もくれず,ガシガシと上位の難度に突き進めばいい。そうでないなら,アイテムを充実させていくという回り道が用意されている。それでもまだ食い足りないという人には,エンジェルスレイヤーが待っている。まさに,初心者から上級者までを完璧にカバーした,理想的な作りだといえる。オカンからゲームマニアまで,「BAYONETTA」というゲームを味わうことは,本当に“誰でも”可能なのだ。
家庭用現行機のファイナルバージョン
より美しくなったベヨ姐さんと,Let's Dance, Boys!
PS3/Xbox360からWii U,Steam,Nintendo Switchと数多くのハードへ移植されてきた「BAYONETTA」。2014年に発売されたWii U版以降では日本語音声が付き,2017年にリリースされたSteam版では4K解像度に対応した。今回のPS4版は,家庭用ゲーム機の中では最もハイスペックなファイナルバージョンと言える。Wii U版以降はデフォルトが日本語音声になっているが,ベヨ姐さんの「バッボーイ」が聞けるのは英語音声なので,ゼヒ,1度は英語音声でプレイしてみてほしい。また,Steam版以降は,ロード時間がかなり速くなっている。
「BAYONETTA」は“バカゲー”に数えられることも多い。作中,謎のダンス対決やエンディングスタッフロール後に唐突に始まるダンスPV(ぜひ,クリアして見てほしい)など,バカゲーと言われてもおかしくない要素は,たしかにある。
「カ,カッコいい……!」という感情がレッドゾーンを振り切った先にあるのは,意外と,“笑い”の感情なのではないかと思う。「もう笑うしかない」という表現があるように,何事も限界を超えると,人は笑う。カッコ良すぎるものを見たときも,きっと,人は笑ってしまう。「BAYONETTA」に感じられるバカゲー的な要素は,“スタイリッシュ”,そして“クライマックス”の次にある,“もう笑うしかない”の次元の産物ではないか……と思うのだ。
本作は,ベヨネッタが記憶を探し求める旅物語でもある。彼女は20年前まで,湖底に沈められた棺の中で眠っており,眠っていた理由も,それ以前に何をしていたのかも,どれくらい眠っていたのかも,すっかり忘れてしまっている。唯一,知り合いだったらしいジャンヌが手がかりを知っているようだが,ジャンヌは時折現れては,ベヨネッタに攻撃を仕掛けて去っていく。
一方,「父をベヨネッタに殺された」と言う青年・ルカや,ベヨネッタを「マミー」と慕う謎の少女・セレッサも登場し,物語面でも気になる要素がどんどん出てくるわけだが……プレイ済みの人でも,果たしてすべてを正確に記憶しているだろうか。何せ,11年前である。
筆者は11年前にXbox 360版をクリアしているが,大筋は覚えているものの,正直なところ,細部は忘れてしまっていた。プレイ済みの人も,ベヨネッタと共に,このゲームをクリアした記憶を探し求めてみてはいかがだろうか。
あるいは,「あの頃はゲームの腕前も未熟だった……今なら!」と,当時は諦めた高難度に挑戦してみる良い機会かもしれない。そして,今まで未プレイだったバッボーイたちも,あの頃よりも美しく,よりプレイしやすくなった「BAYONETTA」に触れてみてほしい。11年前のゲームとは思えないほど新鮮でインパクトのある,クライマックスな体験が待っているはずだ。
「BAYONETTA&VANQUISH」公式サイト
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