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印刷2021/11/09 12:00

プレイレポート

「ヘブンバーンズレッド」CBTレポート。ボケとツッコミの応酬はKey節が炸裂,しかし学園の外では世界と人類が――

 WFSとKeyが手がける,新作スマホアプリ「ヘブンバーンズレッド(Heaven Burns Red)」iOS / Android。以下ヘブバン)のクローズドβテストを遊んだので,ゲーム序盤の概要を紹介していく。

 ボケとツッコミの応酬からはじまる学園物語は,ファンにはおなじみの心地よきKey節が炸裂しているが,にぎやかな学園の外には人類の窮地を表す,この世界の現実が広がっていた。

(C)WFS Developed by WRIGHT FLYER STUDIOS (C) VISUAL ARTS / Key
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ボケとツッコミの応酬!
そんなコミカルな物語と思いきや……?


 Keyといえば,世代や界隈によっては“泣きゲー”の愛称でなじみ深い,数々の名作アドベンチャーゲームを送り出してきたビジュアルアーツのゲームブランドの一つだ。今回のヘブバンは「アナザーエデン」や「消滅都市」のWFSと組んで作られ,スマホRPGとして提供される。

 とくに「Kanon」「AIR」「CLANNAD」などの脚本を手がけてきた麻枝 准氏による“15年ぶりの完全新作ゲーム”(※)とあってか,その道のファンであればスタッフ面だけでも触れるに値することだろう。

※2007年7月発売のPCゲーム「リトルバスターズ!」から数えて。それ以降の「AngelBeats!」シリーズはオリジナルテレビアニメ主導の作品のため,除かれているものと思われる

■クリエイター
原案・メインシナリオ:麻枝 准
キャラクターデザイン/メインビジュアル:ゆーげん
キャラクター原案:Na-Ga/ふむゆん/まろやか/ゆーげん
音楽プロデュース:麻枝 准
主題歌・劇中歌:麻枝 准 × やなぎなぎ

 空から隕石が飛来したその日,人類は窮地に立たされた。
 人々は地球上に広がる謎の生命体“キャンサー”に脅かされ,やがて生活圏である陸地の多くを奪われることになった。

 キャンサーには人類の通常兵器が効かず,対抗策もないと思われたが,特別な兵器“セラフ”を操る少女たちの可能性により,わずかな希望が生まれる。そして物語は,特別な才能を持つ少女「茅森月歌(かやもり るか)」が学園基地に入学するところから動きはじめる。

物語は,主人公「茅森月歌」たちが学園基地に入学するところからスタート
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キャンサーには通常兵器では太刀打ちできず,人類は窮地に追いやられていた
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 ヘブバンの構図は端的に,未知の生命体による地球侵略に対し,少女たちだけが操れる近未来武器で対抗するというものだ。
 一見するとシリアスな印象が先行する世界観ながら,ストーリーがはじまってみると,ずいぶんと明るい雰囲気で進んでいく。

 物語冒頭,月歌はいきなりキャンサーと戦うはめになるが,背景でボロボロの構造物が映し出される世紀末状態にあって,女の子たちの雰囲気はユルいものだ。世界の危機的状況に比べ,その現実を理解しているのか,していないのか,登場人物たちの脳天気さが小気味よい。

敵を目前にして,武器を使うためのワードのダサさに突っ込むユルさ
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年齢相応の振る舞いも,人類の絶望的な窮地も,この世界のリアルだ
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 ストーリーはフルボイスとなり,読み物としてのボリュームも序盤だけで相当なものであった。また,学園内での出来事は基本的にコメディ寄りであり,にぎにぎしいボケとツッコミの応酬が繰り広げられる。
 とくに月歌は,少女たちを取りまとめる第31A部隊(通称さんいちえー)の部隊長に任命されるが,序盤からボケ倒している始末だ。

 一方で,彼女たちは学園で訓練を受けながら,この世界の状況を学び,実戦におもむく。そこで破壊しつくされた都市に現れるキャンサーと対峙したとき,ユニークな会話劇を見ているときには忘れていた,シリアスな現状と向き合うことになる。
 こうした温度差のある場面が色鮮やかに交互するのが面白く,彼女らの心境がどのように変化していくのかを期待してならない。

 知らない人にも知っている人にも,良くも悪くも「まさにKey作品」といった走り出しのため,好みと思ったらあとは突っ走るだけだ。

真面目キャラには大体,ツッコミ用のカットインが用意されている
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あらためて向き合う,この世界の悲惨な現状
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作中では戦いの日々だけでなく,ノリと勢いで唐突にバンドを結成したりもする。それが天才ボーカリスト,天才ハッカー,自称天才サイキッカー,ポンコツ諜報員,二重人格の殺人鬼,ちびっ子艦長が属する彼女たち第31A部隊なのである
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 ストーリーパートはテキストをただ読み進めるだけでなく,3Dフィールドの学園内を自由に移動し,仲間と交流を深めたり,そこでの会話シーンで選択肢を選んだりといったイベントも発生する。

 このあたりは任意のゲーム内時間に巻き戻して,別の選択肢を選んだときの反応の変化やエピソードも再体験することもできた。
 その際はアドベンチャーゲームのフラグ回収のように,既読スキップでサクサクと選択肢まで進めるので,進行もスムーズだ。

 なお選択肢の内容に関しては,月歌もやはりKey主人公。真面目なものから尖ったものまで,頭の柔らかい返答を用意している。

学園パートでは,周囲にいるキャラクターに話しかけるとイベントが発生
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イベントスチルもあり。表情などの差分もあり,選択肢次第で変化する
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気になる子と交流を深めて,仲間たちの新たな一面を知ろう
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 月歌の選択肢は,会話内容だけでなく“シックスセンス”というパーソナル値にも影響する。これは「カリスマ」「天然」「メンタル」「優しさ」などの性格を6分類したもので,選んだ行動に応じて数値が変動する。たとえば,真面目な場面でふざければクレイジー値が上がる。

 ヘブバンではこのシックスセンスの状態が,登場人物たちの個別エピソードの開放条件となっている。自分の思うがままに好きな返事をするのもありだが,相手に応じてリアクションを考え,同時に攻略相手に特化させた性格向上を心がけるのもありだろう。

特定の時間にアクティビティをこなせば,任意の数値を上げられる
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シックスセンスを上げることで,新たな交流が生まれる
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ゲームのホーム画面からは,いろいろな項目にアクセスできる
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2つのゲージが特徴のコマンドバトル


 ここまでは物語や世界観の説明に重きを置いたが,ヘブバンはRPGであり,キャンサーとはターン制のコマンドバトルで戦っていく。

 戦闘には前衛3人+後衛3人の計6人編成で挑むが,キモとなるのは「前衛だけが行動可能・敵から攻撃される」「前衛・後衛はターン中に切り換え可能」な点だ。前衛・後衛の切り替えもとくにリスクがないため,状況に応じた組み合わせを考え,入れ替えるのが戦略と言える。

各キャラクターはアタッカー,ディフェンダー,ブレイカー,ヒーラーなど7種類のロールや攻撃属性が振り分けられている。単純な話,戦うのは前衛3人だけのため「ザコ掃除用の攻撃偏重3人」「ボス用の長期戦向け3人」など2パーティを内包させるなど,それらを入れ替え,組み合わせるのが大切になっていく
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 戦いの流れはシンプルで,敵に「通常攻撃」か,毎ターン回復するSPを消費する「スキル」かを選ぶだけだ。攻撃属性には斬・打・突の3タイプがあり,相手との有利不利でダメージが増減する。

 また大きな特徴的となるのが,敵味方の体力ゲージが2種類あることだ。攻撃ダメージはまず青緑色の「DPゲージ(ディフレクトポイント)」を削り,DPがゼロになると紫色の「HPゲージ」に届く。
 そしてDPは回復可能だが,一度ゼロになると回復不能となる。HPについてはもとから回復手段がなく,戦闘中に1人でもHPがゼロになってしまうとゲームオーバーとなる。つまり,回復可能なバリアを壊されないように維持して,HPへの致命打をさけるのが大事なわけだ。

 一方で敵の場合,DPゲージを破壊すると「ブレイク」で1ターン行動不能にさせられる。強敵相手のときは,どのタイミングでブレイクさせて猶予ターンを確保するか,なども重要になりそうだった。

敵も味方も,攻撃されると青緑色のDPゲージから削れる
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DPをすべて削るとブレイク。敵は1ターン行動不能になるので,HPも削りきろう
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 DPが少ないときに受ける攻撃は致命的なので,余裕があるうちにDPを回復しておいたり,ピンチならいったん後衛に下げたりなどの状況判断が必須だ。またDP回復スキルも使用回数が制限されているので,使いどころを考えなくてはならない。バトルにはAUTO機能もあるものの,難しい局面は1ターンずつ手動で攻略するのがオススメである。

 そしてこれら編成と属性,2種類のゲージの存在,1人でも落ちたらゲームオーバーといった要素により,戦闘中は前衛・後衛の切り換えが生きてくる。シンプルなコマンド式ながら緊張感があり,それを編成の切り替えで支えていくことから,熱い戦いが楽しめるわけだ。

 なお,ストーリーバトルはその場限りの一戦に注力すればいいが,バトルコンテンツではDP/HPを持ち越しで連戦することもあるため,回復系スキルの使用機会も含めて,シビアなゲージ管理が求められる。

強敵相手では長期戦になりやすいので,DPゲージを破壊されてしまいHPが丸裸になったら,前衛・後衛の入れ替えを駆使しよう。また,DPがなくともここぞというときにフィニッシャーとして呼び戻すなど,判断次第でいろいろな打開策が生まれる
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なお,世界観設定としてはDPは“少女たちを守るバリア”であり,作中でもDPを破壊されたときは撤退するよう指示されている
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 装備面には各種ステータスを向上させられる「アクセサリ」や,ショップで購入できる「チップ」などがあり,スマホRPGらしい育成面もゲーム的なやり込みを備えている。

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 ヘブバンはストーリーだけでも相当なボリュームを備えつつ,育成面は当然のように整備,さらにチャレンジ系のコンテンツも幅広く用意しており,スマホ向けのRPGとしてしっかりと構築されていて,長期間じっくりと遊べるようなタイトルであることが分かった。

 つかみは明るくキャッチーに,それでいて真相に迫るほど,胸がつまるような事態に差しかかっていく。これはネタバレではなく,ただの予感と感想だが,おそらく間違いないだろう。そう確信させてくれるのが,このゲームを手がけている布陣なのだから。

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