プレイレポート
近接バトル系バトロワ「シャドウアリーナ」は「黒い砂漠」を知らなくても楽しめるのか。最終βテストのレポートをお届け
シャドウアリーナはすでに数回のクローズドβテストが行われているが,今回は「黒い砂漠のことをまったく知らない新規プレイヤー」として,このテストに参加してみた。筆者のような“原作未経験者”でも問題なく楽しめるのか,「純粋な新作バトロワ作品」という視点で見たプレイレポートをお届けしよう。
ルールは正統派のバトルロイヤル系対戦ゲームながら,随所にあるRPGを彷彿とさせる味付けが特徴的
冒頭で触れたように,本作は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)や「Apex Legends」といった作品と同じ“バトルロイヤル系”(以下バトロワ)のマルチプレイ対戦ゲームだ。4Gamerの読者には釈迦に説法だと思うが念のため説明しておくと,バトロワ系とは「複数のプレイヤーが同じフィールドで戦い,最後まで残っていた者が勝者となる」というゲームのこと。
ルールとしてはPUBGが確立した「裸一貫かそれに近い形で始まり,各地でランダムで入手できるアイテムを集めつつ,徐々に狭まるフィールドで生き残る」というパターンが多く,シャドウアリーナも基本的にはこのルールで立ち回っていくことになる。
基本システムは三人称視点のアクションゲームで,(初期設定なら)キーボードの[W/A/S/D]キーで移動し,マウスの左ボタンで通常攻撃,マウスの右と数字の1〜4で特殊スキルが発動して,アイテムも割り当てたキーで使う――といった感じで,PCのオンラインRPGなどでは一般的な操作方法だ。
対戦を開始すると対戦フィールドの中央辺りにあるロビーに集められ,最低30人から最高40人までのプレイヤーが集まるとカウントダウンが開始。キャラクターが黒い玉のような「闇の精霊」に変化し,無敵状態でフィールドの東西南北の任意の方向に発射される。
着地後はそのまますぐに行動を開始してもいいし,そのまま高速で好きな場所に移動できるので,望みのロケーションまで足を伸ばすことも可能だ。攻撃などのアクションを発動すれば,人間の状態に戻り対戦が始まる。
本作はMMORPGを元にしているので,NPC(BOT)を倒して装備集めを行う。フィールドのあらゆるところに小型〜中型の雑魚がうろついているため,それを次々と撃破していって,装備を集めたり,キャラ固有のスキルをアンロックしていく形だ。
入手できるアイテムはランダムだが,プレイした印象では,大きくて強い敵からの方が若干良いアイテムが入手できる気がした。またチェストもフィールドに大量に設置されているので,これを破壊することでもアイテムが手に入る。
シュータータイプのバトロワ作品では,拾った武器のパーツを探しまわり,運よく見つけられればカスタマイズできるが,本作ではその辺りが徹底的に簡略化されている。具体的には「今より強い装備が入手できたらワンキー(デフォルトは[G])で装着でき,同じ装備が3つ手に入ったら,同じくワンキーで合成・強化ができる」という仕組みだ。
装備自体もキャラごとに固有のものとなっているため,そもそも“武器を切り替える”という概念はない。強い装備に切り替えると,単純に攻撃力と防御力のステータスが上がる,という塩梅だ。
拾えるアイテムは装備以外にも,回復やバフ用のポーション,消費型の飛び道具や罠などがあり,これらはショートカットから任意のタイミングで使用できる。また対戦開始前に1つだけ「封印アイテム」を持ち込むことが可能で,対戦中に比較的簡単な条件を満たすことで使えるようになる。
インベントリの整理も可能だが,一回のセッションが10〜20分程度なので,使い切れないほどアイテムを抱えることは少なかった。なので毎回時間を使ってバッグの中身とにらめっこする,といったことは起こらないだろう。
基本的な流れとしては,そうやってキャラクターを強化しながら,一定時間ごとに「黒い霧」によって徐々に狭まるフィールドを移動し,少しでも長く生き残って最後のひとりを目指す。黒い霧の内部では文字通り周囲が暗くなり,体力がどんどん減少していくだけでなく,強力なNPCも出現する。即死するわけではないので多少の活動は可能だが,何か理由がない限りは,自ら飛び込む理由はほとんどないだろう。
対戦開始直後はフィールドが広いので,ほかのプレイヤーと鉢合わせすることは多くないし,戦闘開始から4分間は猶予が与えられるので,仮に倒されても離れた場所でリスポーンが可能だ。
今回のテストでは,初心者というのもあるので,この時間はとにかくキャラの強化に努めるようにしていた。とはいえライバルを倒した分はきっちりとキルカウントされるので,積極的に戦いに行くスタイルもありだし,逆に猶予時間後も逃げたり隠れたりをメインにして生き残る作戦も有用だ。運が良ければラスト近くで,ほかのバトロワ作品と同じように,消耗したほかのプレイヤーを隙を突く漁夫の利プレイも狙えるだろう。
マップの表示は分かりやすく,黒い霧が迫ってくる範囲を示す「危険地域」,まだ飲み込まれる危険性がない「安全地域」,敵を倒すことによって減った体力が回復できる「HP回復地域」がエリア分けされて表示される。黒い霧は迫ってくる前に目立つ形で通知が表示されるので,気がつかないうちに取り残される危険性は低いだろう。
またマップにも表示されるが,各地には輝く祭壇が設置されている。これは時間経過で出現する「闇の君主」という巨大な敵NPCを倒すことで活性化できる装置で。例えば起動すると巨大ロボットのようなキャラクターに乗り移って大暴れできたりと,対戦を有利に進められる。
実際は闇の君主の出現場所が非常に遠かったり,あるいは後半になると祭壇が黒い霧に取り込まれて使用できなかったりと,利用できるシチュエーションは限られる印象だったが,元がRPGらしい凝った仕掛けといえそうだ。
個性的な9人の中から,好きなキャラを選んでプレイ。対戦モードは事実上バトロワのみだが,練習モードは充実
ルール説明でも部分的に触れたが,本作は用意された9人のキャラクターから1人を選び,対戦を開始する仕組みだ。容姿を変えるなどのカスタマイズ要素はなく,ルックスと装備,そしてスキルも設定されている。そのためどのキャラが自分のプレイスタイルに合うかは,後述する練習モードで試してみるしかないが,まずは見た目で選んでもいいだろう。
キャラクターは剣と盾を装備した騎士,両手に斧を持った荒々しい戦士,弓装備の女性エルフなどRPGでよく見るタイプから,隠密に長けたくのいちや着物っぽい服装の女性剣士など,アジアっぽさを感じるキャラもいて個性豊かだ。個人的には,使い勝手の良いカウンタースキルを持つ前述の女剣士「蓮花」がお気に入りだ。
本作の対戦モードは非常にシンプルで,実質的にバトルロイヤルのみ。メインとしてはノーマル対戦をおこなう「個人戦」,最大2人のパーティを組み戦う「チーム戦」,個人のランキングポイントが集計されない「非競争戦」,そしてフレンドなどとプライベートマッチをおこなう「秘密ルーム」が用意されているが,ルールとやること自体に差はほぼない。NPCを捌きながら敵プレイヤーを倒し,最後まで立っていたものが勝者となる。
毛色が違うのが残り2つの「AI練習戦」と「決闘場」だ。前者は文字通りAI(BOT)相手に戦う練習モードで,参加したプレイヤー以外の操作はすべてコンピューターが行い,“人間対AI”の対戦が繰り広げられる。
このモードの敵はあくまでBOTのみで,プレイヤー同士が争っても互いにダメージは入らない。ほかのプレイヤーと協力しつつ,BOTを殲滅すれば勝利という仕組みだが,それ以外の要素はメインの個人戦などと変わらないため,NPCへの対処方法やアイテムの扱い,そして狭くなるフィールドなどの感覚を掴むのに最適だ。筆者のような初心者は,まずはこのモードで基本を学ぼう。
とはいえ本作の場合,それだけ学んでも勝ちを掴み取るのはかなり難しい。というのも結局対人戦で勝てないと最後まで残れないし,仮にステルスで終盤まで生き残ったとしても,どこかで必ず戦闘は発生するからだ。
バトル自体はNPC相手にも行うし,スキルは対戦中いつでも発動できるのだが,攻撃やスキルの使い勝手は棒立ちに近いNPCとほかのプレイヤーとではまったく違う。そしてほかのバトロワ系ゲームと同じように,戦闘の場数をそれなりに踏まない限り,プレイヤー自身のスキルはいつまでも向上しない。
もう1つの「決闘場」は,このギャップを埋めるためのものだ。仕組み自体は個人戦などのロビーと同じで,自由に攻撃やスキルが発動でき,決闘を申し込んで承諾されるとそのプレイヤーに実際にダメージや状態変化などが発生する。
逆にそれ以外のプレイヤーには,命中のエフェクトやモーションが発生するだけで何も起こらない。また仮に決闘を行ってダメージを受けたり倒れたりしても,ペナルティは一切ないので,人間が相手の「戦闘練習モード」になるというわけだ。
シンプルなアイテム周りの仕組みに比べ,バトルシステムは結構複雑で初心者にはハードルが高いというのが正直な印象だ。一般的なシュータータイプの対戦ゲームなら,「スナイパーライフルは遠距離戦の狙撃に向き,ショットガンなら接近戦専用。射撃時はなるべくヘッドショットを狙う」といった一般的な知識が役立つが,前述のように本作は装備もスキルもすべて(キャラごとの)固有のものであるため,ゼロから学ばないといけない。
戦闘自体は「出会い頭に瞬殺される」といったことはほぼなく,むしろ手数を重ねてHPを削っていくタイプなのだが,スタンや弱体化といったデバフが強力な印象で,始めたばかりの筆者は「初手にスタンやダウンを食らい,弱体化や行動制限の攻撃を重ねられたあげく,ほとんど手出しできないままやられる」ということがままあった。
回避手段はロールや瞬間移動,黒い霧になっての無敵化など種類は多く,逃げるぐらいの時間は大概確保できるが,それだけでは勝てないのでなかなかもどかしい。
もっとも,ある程度理解が進んだ後の対戦は白熱しそうな雰囲気だ。対戦中に負けるとほかのプレイヤーの視点に切り替えて見学が可能なのだが,うまいプレイヤーの動きはかなり参考になる。
立ち回りやコンボなどは前述の決闘場でそのまま試せるので,上達するための“とっかかり”は悪くないように思う。もちろんそう簡単に真似できるとは限らないのだが,手軽な練習手段が用意されているのは嬉しいところだ。
バトロワのルール自体はシンプル。RPG的な味付けと,駆け引きが重要な近接戦闘が印象的な一作
元々MMORPGのいちコンテンツだった本作だが,バトロワ作品としてのルール自体はスタンダードである。強化の手段としてNPCを倒す必要があったり,大型MOBの撃破で特殊なバフが受けられたりと,見慣れない要素もあるが,今までバトロワ作品をプレイしたことがあるなら慣れるのに時間はかからないだろう。
対戦開始後には4分間のリスポーン可能時間もあるので,ロビーで待つだけ待ったのに瞬殺されてがっかり,といったこともない。アイテムや装備を細かく取捨選択するような必要もなく,拾って強ければ装着を繰り返せばいいだけなので非常にお手軽だ。
スキルも「ポイントがあるときに(好きなものを)強化するか,しないか」だけなので,自分にとって使いやすいものだけを優先的に成長させればいい。
その反面,UIや操作系はMMORPGそのものと言ってもいいので,プレイ感はPUBGのようなシューターとはだいぶ違う。それが大きく現れているのがバトルで,相手の隙をうかがいつつ,状態変化(あるいは自己強化)のスキルを状況に応じて活用して,HPを削りきるといった流れは,まさに“アクションRPG”といった印象だ。
そのため,操作の技術や戦闘時の位置取りといったテクニカルな腕前もさることながら,(ゲームやキャラクタースキルの)知識や経験がものを言う場面が少なくないように感じる。初心者が先手を取っても経験者を出し抜ける機会は,決して多くないように思う。
ただそういった特徴から,練習モードが充実しているのは嬉しいところだ。BOT相手でも自分のスキルの特徴ぐらいは掴むことができるし,決闘場なら人間相手に思う存分試行錯誤ができる。今回はプレイ期間が短かったので,目に見えた上達はできなかったが,リリース後はじっくりと時間をかけて遊んでみたい。
βテスト全体としては,テスト開始当日はクライアントがうまく起動しなかったり,UIの言語が切り替えられなかったりとトラブルも少なくなかった印象だが,2日目以降は解決して比較的安定してプレイできる状態になっていた。
前述のように完全な初心者には少し難しい部分もあるが,グラフィックスは美しいし,1セッションが短めで気軽にプレイできるのは嬉しいところ。ひと味違ったバトロワ作品を楽しんでみたいゲーマーは,5月21日のリリースを楽しみに待とう。
「シャドウアリーナ」公式サイト
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