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「VALORANT Championship Tour Pacific」Playoffs,韓国取材レポート。Masters Tokyoへの切符を手に入れたのはPRX,DRX,T1
VCT Pacificは東南アジア,日本,韓国,オセアニアから構成される地域リーグで,全10チームが参加。日本からはZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeの2チームが参加している。3月末からシングルラウンドロビンのリーグ戦を行い,上位6チームがPlayoffsに進出する。
DetonatioN FocusMeはPlayoffs進出を果たせなかったが,ZETA DIVISIONが4位でPlayoffs進出を決めた。Playoffsはリーグ1・2位のみがシード枠となるダブルエリミネーショントーナメントで行われ,上位3チームが,6月11日より日本で開催される「Masters Tokyo」への参加権を得る。
ZETA DIVISIONは初戦でTeam Secretに敗退し,ローワーブラケットへ。ローワーブラケットで2連勝すればMasters Tokyoへの切符を手にできたが,ローワーブラケットの1回戦でT1に敗北し,Masters Tokyoへ行くことは叶わなくなった。
アッパーファイナルズでは,DRXに勝利したPaper Rex(PRX)がグランドファイナルに進出。ローワーブラケットを勝ち抜いたT1,そしてPRXには敗北したもののDRXがMasters Tokyoへの参加権を獲得した。これによりMasters Tokyoは日本で開催されながらも,日本チームが出場できないという結果に終わった。
最終結果は,優勝PRX,準優勝DRX,3位T1となった。Masters Tokyoに進出する3チームが順位を確定するローワーファイナル,グランドファイナルの2試合を現地で取材してきたので,その様子をお届けする。
会場となった奨忠体育館は,ソウル最大の繁華街である明洞から徒歩15分程度の場所にあるイベント施設だ。バスケやバレーボールなどの室内スポーツを始め,K-POPのライブなどでも使用される。
VCT PacificのPlayoffs当日は,会場全体がVCT Pacific一色になっており,注目度の高さと力の入れようがうかがえる。当日は雨天だったため,会場の外には人がそんなに居なかったが,もし晴れていれば会場の内外でごった返していただろう。
会場外にはVCT Pacificの参加10チームのグッズが買える物販エリアや「VALORANT」を体験できるブース,撮影スポットなどがあり,チケットを購入していない人でも十分に楽しめるようになっていた。
奨忠体育館の収容人数は最大で4507席だが,今回はステージや演出用の機材などにより,2200人がMAXとのことだ。初日は全席が埋まっているわけではなかったが,2日目のグランドファイナルは満席状態だった。
会場は選手が対戦するステージ,選手が入場する花道が作られ,天井には4面の巨大スクリーンが吊されていた。また,会場の周囲をぐるっと囲むようにスクリーンが張り巡らされており,選手の顔や様々な演出などを施し,かなり豪華な作りとなっている。特に天井から吊されたスクリーンはその大きさが圧巻。会場が日本よりも狭めでスクリーンとの距離が近いこともあり,実際の大きさを比較することは難しいが,それでもいつもよりも大きく感じるスクリーンの迫力に圧倒される。
「VALORANT」の大会は基本的に鳴り物が禁止だ。先に行われた「VALORANT Challengers Japan Split1」のPlayoffs Finalsがインテックス大阪で行われた時もスティックバルーンは配布されておらず,音が出るものの持ち込みは禁止されていた。まだ新型コロナウイルスの5類移行も行われていなかったため,声出しも禁止され,拍手のみの応援となった。他のインターナショナルリーグのVCTも同じような状況だ。
しかし,なぜかVCT Pacificでは鳴り物が認められており,スティックバルーンは会場で配布され,中には太鼓を持ち込む応援団もいて,チーム名を連呼する応援が飛び交っていた。eスポーツ大会の中でもかなり賑やかな応援ができる大会といえる。
初日はインフルエンサーとプロ選手によるエキシビションマッチとローワーファイナルの2試合を実施。エキシビションマッチはBO1,ローワーファイナルはBO5で行われる。
エキシビションマッチはTEAM BNYとTEAM SPBとの対戦。TEAM BNYはBunnyBunny,xffero,cgrs,xnfri,Clutch Fiの5名。日本からはxnfriとClutch Fiが参加した。TEAM SPBはSuperBusS,Crws,YuRiHaNa,t3xture,RazzieBinxの5名の参加となった。マップはバインドを使用。結果はTEAM BNYが13-6で勝利となった。
ローワーファイナルは,BO5による対戦。リーグ戦,PlayoffsともにBO3での対戦となっていたので,初めての長期戦だ。そのため,単純にプレイのうまさや強さだけでなく,長い時間プレイし続けられる体力,メンタル面の強さも重要だ。また試合するマップの種類が増えることから,どれだけ多くのマップの戦術を持っているか,マップ毎の練度の高さも問われることとなる。
対戦するのは,同じ韓国を拠点とするDRXとT1の2チーム。どちらもホームといえるチームだが,会場はDRXファンの方が多い印象だ。T1は結成半年のチームということもあり,老舗のDRXは古参ファンが多いということだろう。
「VALORANT」の対戦はまず使用するマップの選択を行う。お互いに使用禁止となるマップを選ぶバンと,使用するマップを選ぶピックが行われる。バンは自分が苦手なマップを選んだり,相手が得意なマップを選んだりと,理由はともかく,その対戦では使用できなくなるというものだ。
ピックはバンされなかったマップから使用したいものを選択する。これも自分が得意なマップもしくは相手が苦手なマップを選ぶのが常套手段だ。BO5の場合,最短3試合で終わってしまうので,早めに得意マップを選択することも重要といえる。最後の1マップはバンでもピックでも選ばれなかった残りのマップが選ばれる,いわゆるディサイダーマップとなる。
ローワーファイナルでは,ロータスとスプリットがバンされた。ロータスはDRXがバンしたマップだが,リーグ戦,Playoffsと必ずバンしてきたマップ。T1が選んだスプリットも,これまでの試合では選びがちなマップだったので,予想通りの結果といえる。ピックはDRX,T1の順番で2周選択する。
Map1はDRXがピックしたアセント。両チームとも同じエージェント(キャラクター)構成で挑むミラーマッチとなった。ハーフタイムまでは9-3と圧倒的な強さを見せたDRXだが,攻守が入れ替わった後半はT1が怒濤の追い上げをみせる。9勝2敗と逆転し,マッチポイントを迎え,T1はそのまま勝ちきることに成功した。
Map2はT1がピックしたフラクチャー。T1の得意マップで,DRXは勝率が低い。そこでDRXはピックする回数が少ないネオンをエージェントのひとりとして選択。構成を変更し,対抗する手段に打って出た。前半はT1が8-4で折り返したが,最後は13-11でDRXが逆転勝利となった。これで,お互いがピックしたマップで敗北したことになる。
Map3はDRXがピックしたヘイブン。両チームとも得意といえるマップのひとつ。エージェントピックは同じ構成のミラーマッチに。DRXが絶えず勝利を先行する形で終盤まで持ち込み,11-12まで追いすがられるものの,逃げ切りに成功。DRXが勝利し,決勝戦進出にリーチをかけた。
Map4はT1がピックしたバインド。T1とDRXはリーグ戦にて,バインドで戦ったことがあるが,その時はDRXが勝利を収めた。もう負けられないT1にとってみると厳しい状況だ。しかし,序盤こそ競っていたものの,そこからDRXを突き放すT1。攻守が入れ替わってもその勢いは止まらず,13-6の大差で勝利した。ここまでの結果はすべてフルカウントだったので,初めて大きな差が付いた。
Map5はバンとピックで選ばれなかった残りもののパール。エージェントピックはミラーに。前半戦は8-4とDRXが有利に。「VALORANT」は攻撃側,守備側で差が出るケースが多く,攻守を交代すると一気に盛り返すことができる。今回も8-4もしくは9-3で折り返してから逆転されるパターンが多く,まったく安心できない展開だ。しかし,攻守交代してもT1の反抗を許さず,13-9でDRXが勝利。翌日のグランドファイナルに進出を決めた。
2日目となるグランドファイナルは,ローワーファイナルから勝ち上がってきたDRXと,VCT Pacific Playoffsで1回も負けていないシンガポールのPRXとの対戦。この2チームはPlayoffsでもアッパーファイナルで対戦しており,その時はPRXが勝利した。
Playoffsはダブルエリミネーショントーナメントとなっているので,本来であればPRXは一度負けてもリセット状態となり,さらにもう一戦するのが常套だ。しかし,BO5の試合を最大2セット,1日で行うには時間的にも選手の体力的にも無理があるので,1回のみ対戦で決着付けられるようになっている。
その分,無敗のPRXにはアドバンテージが用意されている。マップのバンの権利は2回ともPRXにあり,ピックもPRXからの選択順だ。
これにより,PRXはいつも選択しているヘイブンとDRXの得意マップであるスプリットをバン。そして,Map1はPRXがフラクチャーをピック,Map2はDRXがアセントを選択した。Map3はPRXがロータスをピック,Map4はDRXがパールを選んだ。最後に残ったバインドがディサイダーマップとなった。
ロータスはこれまでDRXが確実にバンしてきたマップ。VCT Pacificでは一度も対戦したことがない。もっとも新しいマップだけに練度の差が出やすいマップといえる。
ロータスを捨てることで他のマップの練度を上げられ,またバンで回避できることを考えると,戦略としてはあながち間違いとも言えない。ただ,今回はバンの権利がなく,DRXはロータスで戦わなければならなくなった。希望的観測があるとすれば,ロータスを一度も選択していないことにより,DRXのロータス戦術を晒していないとも言え,実は秘密兵器として隠している可能性もあることだ。
Map1はPRXがピックしたフラクチャー。しかし,守備側時で大きく差を付けられて,ハーフタイムに。攻守交代後も巻き返しができず,13-6の大差でDRXが勝利した。
Map2はDRXがピックしたアセント。ここでPRXの奇策が炸裂。アセントでは選択することがめずらしいエージェントであるレイナ,バイパー,ハーバーを選択。解説者も「バインドと勘違いしていないですよね?」と驚きを隠せないほど。結果,オーバータイム(延長戦)にもつれ込むほどの拮抗した勝負となったが,あと一歩及ばず,16-14でDRXが逆転勝利を収めた。これでDRXが優勝にリーチをかけるセットポイントを獲得した。
Map3はPRXがピックしたロータス。DRXにとって練度の低い鬼門のマップとなるのか,隠し球としてカウンターを取れるマップなのか。ファンの注目を集めたが,終わってみれば13-3という大きな差でPRXが勝利を収めた。
Map4はDRXがピックしたパール。パールはDRXがVCT Pacificで無敗を誇る得意マップだ。PRXも1敗しかしておらず,苦手とは言えない。ディサイダーマップに突入するまでに決着を付けたいDRXだったが,序盤からリードを許すと,そのまま巻き返すことができず,13-8でPRXが勝利した。これで連日の2-2,フルセットカウントになった。
最終マップはバインド。VCT PacificでDRXとPRXの直接対決があったマップで,その時は13-6でPRXが勝利している。お互いにダブルコントローラー,ダブルデュエリストの構成で挑んだ。結果は前回の対戦と同じスコアの13-6で再びPRXが勝利した。2連敗からの3連勝という劇的な幕切れでVCT Pacific Playoffsは終了した。
Masters Tokyoは日本チーム不参加という残念な結果となったが,世界最高峰のプレイヤーが一堂に会する貴重な機会。日本チームが出ていなくても観戦する価値はあるだろう。Masters Tokyoは6月11日より約2週間かけて行われる。会場に訪れる方はもちろん,動画配信で視聴の方も多いに盛り上げていきたいところだ。
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