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印刷2019/10/21 16:41

プレイレポート

「レジェンド・オブ・ルーンテラ」プレビュー版のプレイレポート。大作を予感させる新作DCGは「M:tG」と「ハースストーン」の良いとこどり

 ライアットゲームズは2019年10月16日に開催した「リーグ・オブ・レジェンド」の10周年記念イベントで,新作デジタルカードゲーム(以下,DCG)「レジェンド・オブ・ルーンテラ」PC / iOS / Android。以下,LoR)を発表した。さらに10月16日から10月20日までの5日間には,招待プレイヤーや事前登録者に向けてプレビュー版が配信されていた。4Gamerでもこれに参加してきたので,本作がどのような作品なのかさっそくプレイレポートで紹介したい。

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「レジェンド・オブ・ルーンテラ」プレビュー版のプレイレポート。大作を予感させる新作DCGは「M:tG」と「ハースストーン」の良いとこどり

 DCGはこれまでも多くの作品がリリースされてきたが,本作はあの「リーグ・オブ・レジェンド」のライアットゲームズが世に送り出す新作である。DCG界における“黒船襲来”と言っても過言ではない。本作の今後によっては,「ハースストーン」(PC / iOS / Android)や「Shadowverse」(iOS / Android / PC)をはじめとしたDCG界の勢力図が塗り替えられてしまう可能性も十分に有り得るだろう。それほどの注目作と言える。

 果たしてLoRが“黒船”になり得るのか,本稿でその魅力を余さず解説していこう。基本的なゲームのシステムに関しては,下記の記事で紹介しているので,あらかじめ一読しておいてもらえると幸いだ。



一言で例えるなら「マジック・ザ・ギャザリング」と「ハースストーン」の良いとこどり


 さて,本作がどういったゲームなのかと言われれば,マジック・ザ・ギャザリング」(以下,M:tG)と「ハースストーン」の良いとこどり,という説明がしっくりくるだろう。行動権の移り変わり,攻撃側によるユニットの一斉アタックと守備側によるブロック,また相手の行動に対して後出しのスペルでカウンターできる点など,M:tGを彷彿とさせるシステムが目立つ。行動権のやり取りについては,1アクションごとに交互に入れ替わるので,正確には2018年にValveからリリースされたDCG「Artifact」PC / iOS / Android)のほうがより近い。

片方が1回アクションを行うと,行動権が相手側に移る。お互いがパスを選択したとき,はじめてラウンドが終了するのだ
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 一方で,カードを使用するマナコストが自動で溜まる点,初期手札の交換である「マリガン」が選択式である点,ユニットの体力が次のターン以降に持ち越され,ターンをまたいでも回復しない点は「ハースストーン」的なシステムだ。これは,国産DCGの「Shadowverse」をはじめ,現代のDCGで主流となっているシステムなので,既存のDCGプレイヤーにとってお馴染みと言えるだろう。

カードのコストとなるマナは自動で溜まり,ターンごとに上限が増えていく,いわゆる「ハースストーン」形式
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 しかし,LoRは,ただ既存のDCGの良いところを組み合わせただけというわけではない。というのも,ターン制DCGの最大の課題とも言える「先攻と後攻の格差問題」について,独自の新システムによって解決を図っているのだ。
 本作においても先攻後攻という概念は存在するが,あくまで1ターンごとに「攻撃側」「守備側」が入れ替わるだけ。攻撃側守備側どちらのプレイヤーも,マナを用いてカードを使用できる。また,両プレイヤーのマナは毎ターン全回復するので,攻守両方のプレイヤーが上限まですべてのマナを使用できるのだ。

この場面で,プレイヤーは守備側だが,所持している5マナを使ってユニットを展開できる
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 先攻と後攻の格差緩和については,「ハースストーン」のコインシステムも出来が良かったが,それとはまったく異なるやり方の解決策を出してきたのはLoRの素晴らしい点だ。
 先攻の相手に強いカードを使われてしまい,それによって生じたアドバンテージを後攻が取り返せないのが,カードゲームにおける先攻後攻システムの最大の問題点であった。
 しかし,LoRのシステムであれば,一方的に先攻側の相手にだけ強いカードを使われてしまうことはない。後攻になってしまうことがあっても,先攻後攻の問題がしきりに騒がれているDCGに比べれば,だいぶストレスを感じずにプレイできるはずだ。

 また,DCGの問題点の1つでもある「マナ事故」についても,LoRは新たなシステムで切り込んでいる。
 このゲームでは,前のターンで余ったマナが最大3マナまで蓄積可能な「スペルマナ」として次ターン以降に持ち越される。スペルマナは文字通り,消費してプレイできるのが「スペル」のみという制限はあるが,マナを余らせてターンを終えたとしても,次のターン以降で仕事をしてくれるのだ。

余ったマナは,「スペルマナ」として次のターン以降に3マナまで持ち越すことができる
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 過去に出た大作DCGの良いところを,ただなぞっただけではない。取り入れられるところは取り入れつつ,過去作の問題点は独自のシステムで解決を図っていく。この姿勢は,非常に好感が持てる点だ。DCG界を席巻してもおかしくない大作であることを予感させてくれる。
 プレビュー版の時点でこうなのだから,もちろん,これからさらなる改善にも期待できる。まさに「マジック・ザ・ギャザリング×ハースストーン」の良いとこどり,と言える作品だ。


「スペルマナ」や行動権のやり取りによる選択肢は無限大!


 「スペルマナ」については,もう少し深く触れておこう。使用できるのはスペルに限定されるとはいえ,次ターンにマナを持ち越し可能というのは,それだけで行動の選択肢を大いに広げてくれる。例えば,そのターンで3マナ分の行動ができたとしても,あえてスペルマナを3マナ持ち越し,次のターンにビッグアクションを狙っていく……,といった行動も可能になるのだ。
 「結局,運ゲーじゃないか」というのはDCGにおいてよくある批判だが,LoRはこのように選択の幅が広いので,結果に実力がより反映されやすい。いわゆる「運ゲー」に眉をひそめていた“プレイング”で勝ちたいカードゲーマーにとっては,大いに歓迎できる話だろう。

「スペルマナ」を溜めておけば,1ターンに最大13マナまで使えてしまう
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 実力が反映されるのは,スペルマナのシステムだけではない。行動権のやり取りのシステムも,一手のミスが致命傷となるものになっており,より実力勝負なゲーム性となっている。
 先ほど,1アクションごとに行動権が移り変わるという話をしたが,攻撃側は最初のアクションでいきなり「アタック」を仕掛けることができる。「アタック」を仕掛けると行動権は守備側に移るのだが,相手に「アタック」されているタイミングでは,守備側はマナを使ってユニットの召喚ができない。「ブロック」と「スペルの使用」のみで対処しなければならないのだ。

ターンの開始時にいきなり「アタック」をすれば,相手はユニットを追加で召喚できないまま,対応に回らなければならない
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 なので,防御側は前の攻撃ターンで相手にいきなり「アタック」を仕掛けられても困らない盤面を整えておくことが必要だと言える。それにより攻撃側にも,守備側が追加でユニットを召喚できないうちにいきなり「アタック」をするのか,もしくは行動権は移るが,先にスペルなどを使用して,相手の盤面に影響を与えてから「アタック」するかの選択肢が生まれてくる。
 この選択がそのまま勝敗に直結することもあり,カードゲーマーにとっては,まさに自身の腕の見せどころだ。

 スペルについても,「スロウ」「ファスト」「バースト」の3種類がある。スロウはM:tGでいう「ソーサリー」的なスペルで「非戦闘中かつ,ほかのスペルを詠唱していないときのみ使用できる」というものだ。
 一方,ファストはM:tGでいうところの「インスタント」で,いつでも詠唱できる。これらのスペルに対しては,効果の解決前に行動権が移った相手によってカウンターされることもある。ちなみに,ユニットプレイ時のスキルもファストスペルと同様にカウンター可能だ。

 しかし,残る1つのバーストスペルは,「いつでも詠唱でき,さらにすぐに解決され,行動権も移らない」というものだ。スペルによってカウンターすることができないので,スロウやファストと異なり,スペルの効果解決が保証されている。

スペルには「スロウ」「ファスト」「バースト」の3種類があり,それぞれ使用できるタイミングなどが異なる
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 これら,3種類のスペルの使いどころは,勝敗の分水嶺となり得る重要なポイントだ。代表的なスペルへのカウンター手段として,「ファストスペル,スロウスペル,またはユニットによるスキルを阻止する」効果を持った「拒絶」があるが,これはバーストスペルに対してだけはカウンターができない。そのため,「拒絶」を抱えていても,バーストスペルへのケアを怠っていると,計算が狂ってしまう可能性があるのだ。

「拒絶」はカウンタースペルの代表格だが,「バースト」スペルだけはカウンターできない
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 また,スロウスペルは相手にアタックされてしまうとプレイできないので,こちらも使用タイミングが非常に限られている。特に除去系のスロウスペルは,相手にアタックされてからプレイしても効果が薄いので,見切り発車で使っていくことが必要となる場合もある。逆に攻撃側は,相手のスロウスペルを見越して早めにアタックを仕掛けておくことが正解である場合もあり,どう動いていくかの塩梅が非常に難しいのだ。

「スロウ」のスペルは強烈な効果のものが多いが,使用できるタイミングが限られ,またカウンターされてしまうリスクも持つ
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 このスペルマナや行動権のやり取り,3種類のスペルによって,本作の選択肢は無限大に広がる。しかも,どの選択肢を選んだかが,勝敗に直結するのだ。このゲーム性はまさに「骨太」の一言で,歴戦のカードゲーマーにとっては非常にやり甲斐のある内容となっている。DCGにおいてもeスポーツが何かと叫ばれる昨今であるが,実力が発揮されやすいという意味でも本作は,eスポーツ種目として,大いに期待が持てるのではないだろうか。


「チャンピオン」による,コンセプトの分かりやすさ


 本作のもう1つの魅力は,原作である「リーグ・オブ・レジェンド」でも活躍した「チャンピオン」たちの存在である。ゲームのデッキは40枚で構築され,そのうち「チャンピオン」はデッキに6枚までしか積めないという制限があるが,そのぶん性能は非常に強力だ。そのまま「デッキコンセプト」となるようなものも存在しており,「チャンピオン」をうまく用いることで勝利できるというのは,初心者にとっては分かりやすくありがたい要素の1つと言える。

 例えば,非常にコンセプトが分かりやすいのは「フィオラ」だ。彼女は一度条件を満たして「レベルアップ」すると,「このユニットが敵を4体キルして生き残った場合,このゲームに勝利する」という特殊勝利の効果を持つ。このチャンピオンを活かそうとするなら,必然的にデッキも「フィオラ」を守りながら戦うコンセプトに寄せることになるだろう。

「フィオラ」は「レベルアップ」することで,特殊勝利が可能になる。特殊勝利を狙うなら,デッキも彼女を守るコンセプトに落ち着くだろう
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 コンセプトという意味では,「カルマ」も非常に分かりやすい。「カルマ」は,上限マナが10マナになるという「エンライト」の条件を満たすことで「レベルアップ」が可能になり,場にいることでスペルが2回発動するという強力無比な効果を持つようになる。つまり,このカードを最大限に活かすためには,10マナまで溜めてから本領を発揮するような遅めの「コントロールデッキ」を組む必要がある。

「カルマ」は10マナまで達したときに「レベルアップ」し,連続でスペルを放てるようになる。低速の「コントロールデッキ」の要となるチャンピオンだ
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 また,単純に「チャンピオンの活躍が勝敗に直結する」というのは,各チャンピオンを「リーグ・オブ・レジェンド」から愛好していたファンにとっても嬉しい話だ。お気に入りのチャンピオンを用いて,それを最大限に活躍させるデッキを組むのもまた一興だろう。


プレビュー版にして,すでに大作の予感。正式リリースが楽しみな作品


 プレイした所感としては,プレビュー版ながら非常に完成度が高く,すでに未来の大作の予感を感じさせてくれるものだった。冒頭で述べたDCG界の“黒船”として勢力図を塗り替えるポテンシャルは十分に持っており,「あのライアットゲームズが満を持して送り出すDCG」という前評判に違わぬ出来であると言える。

 もちろん,まったく不安要素がないわけではない。例えば,ゲーム自体は骨太ではあるが,システムが難解な部分もあり,カードゲーム初心者にはハードルが高いのではないか,という点だ。DCGはゲーム全体の人口で言えば,カジュアル層が大多数を占めるので,そこを果たして取り込めるのかは気になる点だ。

 とはいえ,そこに関しては「リーグ・オブ・レジェンド」があまりに強力なIPなので,多少難しくてもなんとかなってしまいそうな気もするし,非常に充実したチュートリアルがあるので,致命的な弱点ではないと思っている。日本で流行するかどうか,という点までは確信を持って言えないが,世界的に覇権を取るDCGになる可能性は非常に高いだろう。

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 ちなみに,発表されているロードマップでは,11月に再びドラフトゲームモードを加えたプレビュー版を6日間配信予定だ。さらに来年2020年の早春には,ランク戦等を加えたクローズドβ版をプレイ可能とのこと。現時点でも非常に完成度が高いのに,クローズドβ版や正式リリース版ではどうなってしまうのだろうか。大いに期待しながら待つことにしたい。

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