プレイレポート
「メタルマックスゼノ リボーン」プレイレポート。戦闘システムを総入れ替えし,メタルマックスシリーズに新たな可能性を示す
発売に先駆け,製品版に近いビルドをプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けする。
「メタルマックスゼノ リボーン」(以下,リボーン)は,文明が滅んだ世紀末世界を舞台に,“モンスターハンター”の青年・タリスの戦いを描くRPGだ。
人類はモンスターによって絶滅寸前にまで追い込まれており,今や数人が軍施設「アイアンベース」に残るのみ。そのアイアンベースにも強大なモンスターが迫っており,いつ攻め込まれるか分からない状況の中,過去の人類が残した反攻プロジェクト「シェルブール作戦」が明らかになり,希望の兆しが見えてくることになる。
主人公のタリスは機械化された左腕を持つモンスターハンター。モンスターを倒すことに異常な執念を燃やす |
ヒロインの1人,トニ。自分を救ってくれたタリスを憎からず思っているようだ |
2018年4月に発売された「METAL MAX Xeno」(以下,Xeno)は,文明が崩壊した世紀末世界を舞台にクルマを駆って戦うという「メタルマックス」シリーズのアウトラインを踏襲しつつも,自由度の低い一本道的な展開や犬のリストラなどが議論を呼んだ。
そんな「Xeno」を再構築したのが,今回の「リボーン」だ。リボーン(再生)の名は伊達ではなく,「Xeno」のシステムを全て破棄した上で,新しいバトルなどを提示。もはや別のゲームといってもよい程に変化しているのだ。
「メタルマックスゼノ リボーン」公式サイト
ターン制から半リアルタイムに。リボーンした戦闘システム
「Xeno」と「リボーン」で最も大きく変化したのは戦闘システムだろう。「Xeno」の戦闘はターン制のコマンド入力式。移動中にモンスターに遭遇すると戦闘モードに切り替わり,コマンド入力後,敵味方が順番に撃ち合うというトラディショナルなスタイルだった。
一方「リボーン」では,コマンド入力式という基本はそのままだが,移動と戦闘でモードが切り替わることがないシームレス型で,敵味方が入り乱れ,素早い順番にコマンド入力・行動する半リアルタイム式となっている。なお,コマンドを入力する際は時間が停止するので,じっくりと戦略を練ることができる。これに,敵との位置関係や武器の射程といった要素が加わり,戦車戦らしい駆け引きが可能になっているのだ。
「リボーン」の戦闘は,まずフィールド上の敵に遭遇するところからスタートする。こちらが敵の視界内に入っていれば敵の警戒ゲージが上昇。MAXに達するとバトルが開始し,素早い順番に行動が可能になっていく。
素早さで負けると敵が先に攻撃してくることになるのだが,敵の警戒度がMAXになる前に,射撃モードを使って攻撃すると,先制して一撃を加えられる。「Xeno」にもこうしたシステムは存在したが,今回は自分で敵に狙いを付け,敵の警戒度がMAXになる前に発射しなければならない。クルマによって砲塔の旋回速度も違う上,武器ごとに射程の長短があるため,クルマというマシーンを操作している感覚や,照準を合わせるスリルを楽しめるのだ。
モンスターの視界内に入っていると,視線を示す「ターゲットライン」が伸びる。画面上部の警戒ゲージが伸びていき,MAXになると戦闘開始だ |
「射撃モード」では,自分で照準を動かして狙いを定め,先制攻撃を行う |
また,敵が強く,絶対に先制を取りたい場合は,視界外の側面や後方に回り込むことが有効となる。この敵が持つ視界は非常に重要で,敵を避けながら目的地へと移動したいときも意識する必要があるのだ。
手ごわいモンスターでも,背後や側面からなら忍び寄れる。視界に入っていないため,ターゲットラインも伸びていない。先制攻撃のチャンス |
先制攻撃時に活用したいのは「○○ラッシュ」の特性チップである。クルマにセットすると,機銃や大砲などの武器を一斉発射できるシリーズお馴染みの品だが,「リボーン」では射撃モードにおいても作用し,戦闘に入る前に先手の一斉発射を浴びせられる。
例えば「モンスターバギー」に5門の機銃を積み込み,「バルカンラッシュ」の特性チップをはめ込んだとしよう。この状態で射撃モードを使えば,5門の機銃が一斉に発射される。機銃は攻撃回数が多く,射撃モードでもこれは同様に作用する。4発銃撃する機銃を5門用意すれば,4×5=20発の攻撃が瞬時に叩き込まれるわけで,たくさんのダメージ数字が敵から飛び出す様はまさに“ハチの巣”。世紀末世界にふさわしいインパクトがあり,実に爽快だ。
背後から撃ち込めば確実にバルカンラッシュを叩き込めるし,威力が十分なら反撃を受けることなく一方的にモンスターを葬り去れるので,ラッシュ系のチップを手に入れたら対応した武器種とあわせて必ずセットしておきたい。
機銃を5門積んだモンスターバギーから,相手に気づかれる前に「バルカンラッシュ」で一斉射撃。無数のダメージ数値が飛び出るのできもちがいい |
戦いでは,敵の射程距離を把握するのも重要である。普通に撃ち合ったのではとても勝てないモンスターであっても,動きが遅くて進行を阻む地形があるといった条件が揃っているなら,こちらが射撃モードで撃った後に射程外へ逃げ出す“ヒットアンドアウェイ”で対抗できる。ハメに近い行動も可能で,状況によっては強大なWANTEDモンスターでさえ仕留めることができるのだが,これも自由度の高さとしてあえて可能にしてあるようだ。
また,人間でしか入れないフィールドがあった場合,通常なら降車して生身で戦うのだが,止めてあるクルマの射程内までモンスターをおびき寄せ,機銃や大砲で一網打尽にできたりもする。なにしろ敵はいくらでも沸いてくるモンスターで,こちらは人間。どんな手を使っても構わないのだ。
ただ,敵の攻撃に対して,“キャラクターを移動して避ける”といったことはできない。回避できるかは,キャラクターの能力値で計算。あくまで半リアルタイムかつ位置関係が影響するコマンド式戦闘であり,アクションゲームではないというわけだ。
生身でしか入れないエリア。モンスターどもを戦車の近くまでおびき寄せ,一網打尽に |
強力なWANTEDモンスターの1体「ガンタウロス」。コンテナに守られたこの場所なら,入ってこられないので,ヒットアンドアウェイが可能 |
進行は半リアルタイムだが,アクションゲームではない。キャラクターの行動はコマンドで選択する |
ターン制のコマンド選択式戦闘から,モード切替なしにマップ上でそのまま戦える半リアルタイム戦闘へ。プレイフィールと戦略の両面において,「Xeno」とは異なったものになっているのがわかる。
ヒロインですら見捨てることが可能に! 自由度がアップしたゲーム展開
戦闘システムが大きく変化した本作だが,ゲームの進行システムにも手が加えられており自由度の幅が広がった。
仲間に関しては,加入させるかどうかを自分で選ぶことが可能になっており,荒野や地下で行き倒れている彼らを放置して見殺しにもできてしまう。
仲間にまつわるイベントも,「Xeno」からは大きく変えられている。ヒロインのトニが半裸でクモの巣に捕らえられていたり,女戦士のマリアがタリスにディープキスをしたりといったお色気シーンはなくなり,メンバーたちが赤裸々にセックスを話題にするようなシーンも少なくなっている。この辺りは「Xeno」で賛否両論だっただけに,キャラクターへの印象も大きく変わるだろう。
地面に倒れている,みすぼらしい姿の女性。これが「リボーン」でのトニ初登場。「Xeno」では半裸でクモの巣に捕らえられていたが,かなり印象が違う |
この“イキのいい死体”がディラン。「Xeno」では死んだふりをして油断を誘い,タリスの戦車を奪おうとする……という好感を抱きにくい加入イベントだったが,「リボーン」ではガチで死んでいる |
女戦士・マリアは「Xeno」のようなキス魔ではない。死んだ仲間との約束を守って独り戦い続けたストイックさが強調されている |
また,フィールドのあちこちにはWANTEDモンスターが待ち構えているのだが,どう立ち向かうかもプレイヤーに任されている。コツコツとレベルを上げたり,装備を強化したりしてから倒してもいいし,一気に突っ切って先へ進み,強力な装備を手に入れてからリベンジしてもいい。フィールドに落ちている装備は結構強力なものが多く,戦いが激変することも珍しくない。それまでは手こずっていた敵であっても,良い装備を手に入れれば,射撃モードの一撃で倒せるようになったりもするのだ。
フィールドには装備品が入った箱だけでなく,クルマや武器の製造・改造に使う「鉄くず」や「ハイテクスクラップ」などが入手できるポイントが存在している。場所によっては,戦車を掘り当てることができるので,フィールドを隅から隅まで巡ってみたくなる。
往年のRPGらしく,スタート地点から遠くに行けば行くほど強力な装備が手に入るのだが,ストーリーの進行によって行ける場所が制限されるといったことは基本的にない。先に触れたように“強いWANTEDモンスターからひとまず逃げて,先のフィールドで強力な装備を拾う”といったことができる。
空に浮かぶのはWANTEDモンスター「デスデリバラー」。プレイ中は,ゲームのチュートリアルや攻略のヒントが表示されるので,「メタルマックス」シリーズ初心者でも安心して遊べる |
少し無茶がすぎて,強いWANTEDモンスターに挑んで全滅しても心配はご無用。本作はデスペナルティがまったくなく,所持金や経験値が減ることがない。壊れたクルマも無料で回収してもらえ,修理代を取られることもないので,安心して試行錯誤することができるのだ。
どんな無茶苦茶をやって全滅しようと,何かを消費することなく完全回復 |
お気に入りの車体を選択し,自由に改造したクルマで突っ走る
「リボーン」では,クルマ関連のシステムも「Xeno」から大きく変更されている。特に面白いのが,クルマごとに走行速度が異なるところだろう。
戦車は丈夫な代わりにスピードが遅く,モンスターバギーや野バスといった車両系は高速で走り回れるが耐久力は低い。遠距離を移動する際や,強い敵から逃げる際は車両系。モンスターの群れに飛び込む時は戦車系といった使い分けも大事になってくるので,いろいろなクルマを改造して強くしたくなるのだ。
クルマには自由に乗り降りできる。戦車の巨大さを実感できるのが嬉しい |
モンスターバギーはスピードが速い。モンスターから見つかっても簡単に逃げ切れるのでフィールドの探索にはもってこい |
戦闘や移動で利用するクルマだが,ときに無意味にフィールドを疾走したくなることもある。ゲーム内では,時間経過とともに昼夜が訪れるのだが,夕暮れで真っ赤に染まった荒野を駆けたり,星空の元でクルマのライトを頼りに廃墟を巡るといったロマンあふれる旅を味わいたくなる。
クルマは,旅の中で拾った鉄くずなどの素材や,モンスターからドロップしたパーツ類を使えば,新しい武器やエンジンを製造・強化して戦力を増強できる。
強化自体は「Xeno」にも存在した要素なのだが,今回はパラメータが半端なくアップすることが特徴で,武器なら攻撃力が倍近くになることもあるのだから,なんともブッ飛んでいる。こうしてパワーアップした装備を使えば,これまで以上に素早くサクサクとモンスターを倒せるようになるのだから,強化やそれに必要な素材集めにやっきになってしまう。
強化を進めると「ゲームバランスなど知ったことか!」といわんばかりの強さに |
クルマは,強化のほか大砲や機銃といった武器とエンジン,そして様々な特性を与える「特性チップ」を積むといったカスタマイズも可能だ。
それぞれの車体(シャシー)には,武器用の「穴」と特性チップの「ソケット」が存在し,穴とソケットの数だけ武器や特性チップをセットできる。そして穴には大砲用,機銃用,特殊武器「S-E」用があり,それぞれのカテゴリに合致した武器なら積み込めるというわけだ。
「Xeno」ではシャシーごとに穴の数とカテゴリ,そしてソケットの数が決められていた。それによりシャシーの個性が演出されていたのだが,思うように武器や特性チップをセットできないといったケースが発生。ディレクターの友野祐介氏曰く「“穴1”の種類が大砲でないシャシーは最終的に使う意味がない」(関連記事)というようなことも起こっていた。
一方,「リボーン」では全てのシャシーに最大となる5つの穴とソケットを開けられる。穴のカテゴリは自由に変えられる上,特定の穴に決められた武器しかセットできない「固定兵器」のシステムが削除されたので,武器と特性チップの両面でカスタマイズの幅が大きく広がっている。
例えば戦車「おチビちゃん」は「Xeno」だと,5つある穴に大砲しか装備できないシャシーだが,「リボーン」だと全ての穴を機銃やS-Eに変えてしまうこともできる。前述した強化による強烈なパワーアップと合わせ,クルマのカスタマイズがより面白くなっているのだ。
このシステムにより,高出力のエンジンと最小限度の武器だけを積み込んでSP(耐久力)を追求したり,5つの穴を全てを機銃にして,バルカンラッシュでの雑魚敵掃討マシーンにするなど,様々なカスタマイズが可能。積み込んだ武器が戦車の外見に反映されることを利用し,刀のような外見をしている大砲を積み込んで見た目のインパクトだけを追求することもできる。カラーリングの変更とあわせて,自分だけのクルマを作ってみるのも楽しいだろう。
アンドロイドの“ポM”と犬の“ポチ”が参戦!生身のバトルもより楽しく
「メタルマックス」シリーズのファンならご存じだろうが,戦闘や移動は降車した状態でも行える。要は,タリスをはじめとするキャラクターが生身で戦うわけだが,彼ら自身の特性や育成についても大きな変更が加えられた。
まず,キャラクターごとに固定であった「職業」の概念が無くなり,成長はレベルアップで得られたポイントを複数のスキルツリーに割り振るシステムに。これにより,キャラクターをこれまで以上の自由度で成長させられるというわけだ。
もちろん,生身の戦闘も半リアルタイム進行のコマンド選択式。射撃モードによる先制ができるのはもちろんのこと,マシンガンをはじめとした広範囲武器を有効に使うための位置取りも重要になる。
また,クルマでは侵入できず,生身で戦うことが強要されるダンジョン「リメインズ」にも様々なギミックが用意されている。例えば,とあるリメインズにはシリーズお馴染みの「うろつきポリタン」が多数棲息しており,倒すと爆発してひどい目に遭わされるのだが,先に奥に進みスプリンクラーを作動させておけば,爆発を防ぐことができる。
さらに本作では,アンドロイドの“ポM”と犬の“ポチ”が,パーティーメンバーとして新規参戦している。「Xeno」のポMは,アイアンベース内でプレイヤーを手助けしてくれる存在だったが,今回は条件を満たすことで,タリスとともに旅に出てくれるようになるのだ。
ほかのキャラクターと違ってスキルツリーが1つしか存在せず,当初はパッシブ系のスキルしか覚えないが,成長させると他のキャラクターのいい所取りをしたようなスキルを習得できるので,根気よく育成すれば心強い仲間になるだろう。
アンドロイドらしく人命に頓着しない合理主義的なところがありつつも,中原中也の詩を吟じるような面も併せ持つ……とキャラも立っていただけに,一緒に戦えるのが嬉しいという人も多いのではないだろうか。
今回はタリス抜きでもパーティを組めるため,このような女子会も可能 |
ポチは「メタルマックス」の代名詞ともいえる戦闘犬だ。小さな身体に銃をくくりつけ,タリスに従って戦う様は頼もしいと同時に,見ていてハラハラもする。なぜなら,クルマに乗って戦うことができないため,死ぬ時はあっさりと死ぬからだ。
死にペナルティがない本作ではあるものの,モンスターのミサイルや大砲を食らってポチが倒れる姿は理屈抜きで悲しい。そして,タリスとポチが荒野を旅する光景には,独特の詩情がある。世紀末世界の殺伐とした中に,こうしたウェットな心の揺れ動きがある辺りは「メタルマックス」的といえるだろう。
なお,アイアンベースでは,ポチを撫でたり,芸をさせたりと触れあうことができるので,思う存分可愛らしさを堪能してほしい。
「メタルマックス」の代名詞,戦闘犬ポチが復活 |
ポチはタリスに従ってどこまでもついてくる。犬好きの筆者としては軽く涙腺が緩むシーンだ |
けなげに戦うポチに,敵の戦車砲が直撃。犬好きの筆者としては涙ぐむシーンだ |
ころりと倒れたポチ。人間用の復活スキル「戦場のAED」で復活させられるのが救い |
アイアンベースではポチとふれ合える。モンスター抹殺に執念を燃やす側面が強調された「Xeno」のタリスだが,「リボーン」では新しい一面を見せる |
ロード画面ではポチのイラストが出てくることも。嬉しい |
“人類が絶滅寸前となった世紀末世界で,モンスターハンターのタリスが戦う”というアウトラインは同じながらも,ゲームシステムは異なる「Xeno」と「リボーン」。ハードが世代をまたいだ後のリメイクならともかくも,同じハードかつ2年という短い期間でリボーンするのは非常に珍しいケースだろう。
いい意味で昔のRPGを思わせるプレイフィールと,画面が切り替わることのない半リアルタイム進行コマンド選択式のバトルは,「メタルマックス」シリーズに新しい可能性をもたらした感があり,今後の進化が楽しみになってきた。「Xeno」未プレイ者はもちろんだが,ゲームデザインがいかに大きな影響を与えるかが実感できるので,同作を遊んだことがある人もぜひ触れてみてほしい。
「メタルマックスゼノ リボーン」公式サイト
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