インタビュー
[TGS 2019]「アルビレオ珈琲店」は夢間集シリーズの外伝。作品のポイントや日本展開への意気込みをプロデューサーの欧陽丹傑氏に聞いた
先日,発表されたばかりの「アルビレオ珈琲店」は,同社の夢間集シリーズのひとつだ。TGS 2019では開発中のバージョンがプレイアブル出展されており,その体験模様をプレイレポート記事で紹介する予定なので,楽しみにしてほしい。出展されていたものは中国語ではあったが,珈琲店経営や,キャラクターとの交流システムにはシミュレーションゲームの楽しさが詰まっているようにみえた。
今回,プロデューサーの欧陽丹傑氏に本作の魅力をはじめ,日本展開への意気込みや,日本と中国の女性向けゲームの印象を聞く機会を得られたので,その模様をお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。前回お話を伺ったのは2017年のTGSでしたが(関連記事),TGS 2019の雰囲気はいかがでしょうか。
欧陽丹傑氏(以下,欧陽氏):
TGS 2017と同様,活気があって楽しいです。日本の大手ゲームメーカーのブースも見応えがありますね。中国メーカーの出展が増えているのも興味深いところです。
4Gamer:
夢間集シリーズは開発中のタイトルも含めて複数ありますが,今回出展されたのは2タイトルですか?
欧陽氏:
はい。シリーズとしては2018年12月11日に日本でリリースした「夢間集 -ムカンシュウ-」(iOS / Android)と,来年リリース予定の「アルビレオ珈琲店」,そして現在開発中の「夢間集2」の3タイトルがありますが,今回試遊機を用意したのは夢間集とアルビレオ珈琲店です。シリーズのプロデューサーとしては,すべてのタイトルを日本で展開したいと考えています。
4Gamer:
「アルビレオ珈琲店」は夢間集の次にリリースされるシリーズ作品ですが,雰囲気がガラリと変わりましたね。
欧陽氏:
「アルビレオ珈琲店」は夢間集シリーズの外伝,アナザーストーリー的な作品で,前作との直接的なつながりは夢間集2のほうが強いんです。
4Gamer:
タイトルに“夢間集”を入れなかったことに,何か理由はあるんでしょうか。
欧陽氏:
夢間集という言葉には,夢の中でなにかを集める,みたいな意味があるんですが,日本ではちょっと分かりにくいですよね。パブリッシャからも同様の意見をもらっていて,より分かりやすい形にしてみました。
4Gamer:
中国で公開されたPVを見る限り,夢間集2は世界観が近未来になっていますか……?
欧陽氏:
それに関しては中国のファンの間でも話題になっているんですが……現時点ではノーコメントということで(笑)。ただ,シリーズ作品の時間軸としては,1が過去,アルビレオ珈琲店が現代,2が近未来というイメージでおおむね間違っていませんよ。
4Gamer:
「アルビレオ珈琲店」が外伝的な作品である,というのは納得です。純粋な続編ではなさそうですが,一部の登場キャラクターが夢間集と共通していますもんね。
欧陽氏:
アルビレオ珈琲店で攻略できる男の子は6人いるんですが,そのうち4人が夢間集にゆかりのあるキャラクターで,ほかの2人は新規です。主人公も夢間集とのつながりがありますが,夢間集の主人公,無剣ではありません。
夢間集ゆかりの4人が,なぜアルビレオ珈琲店に登場するのか……。
欧陽氏:
そこが,「アルビレオ珈琲店」の最大の謎ですね。ストーリーを進めていくと,その謎が解けるかもしれません。4人を選んだ理由はさまざまで,もちろん夢間集での人気も関係しているんですが,実際に遊んでみると,そういった疑問も解消されると思います。
4Gamer:
ブースでアルビレオ珈琲店を遊ばせてもらいましたが,中国語が読めないのでストーリー展開はよく分からなかったものの,キャラクターが魅力的で,珈琲店を成長させていく過程も面白く,しばらく遊びこんでしまいました。
欧陽氏:
ありがとうございます。私は日本産女性向けゲームの初期からのファンなのですが,ここ最近の日本のタイトルは,ゲームシステムの部分があまり重視されていないような印象を受けることもあります。
夢間集シリーズはすべて日本に進出する予定ですが,そこを意識して,ゲーム部分を本格的にしています。カフェ経営というジャンルは女の子でも楽しみやすいですし,主人公の見た目を変更できるメイクアップシステムなども用意しているので,さまざまな層にアピールできるかなと。
4Gamer:
確かに夢間集シリーズは,カジュアルな女性向けゲームと比べて攻略要素が多めかもしれません。間口の広さとゲームシステムの複雑さのバランスがちょうどいい印象ですね。
欧陽氏:
これからは女性向けゲームも,ゲーム性を重視する時代がくるのかなって,個人的には考えています。魅力的なキャラクターに関してはあらゆる設定,属性が出そろっていて,あとは組み合わせの問題になってきているところもありますし。私は女性向けゲームの古くからのファンですが,同時にゲームデザイナーでもあるので,やはりゲーム性に対してはいろいろと考えてしまいます。
4Gamer:
欧陽さんから見て,日本と中国のキャラクターデザインの差や人気の違いのようなものはありますか?
欧陽氏:
中国は女性向けゲームの歴史が浅いので,日本ほど,個性的だったり濃かったりするキャラクターはそれほど多くない印象ですね。規制の面からいっても,日本では一般的な“変態っぽいイケメン”のようなキャラクターは,少なくとも今は作りにくいところがあります(笑)。
4Gamer:
ちなみに,中国の女性向けゲームって比較的ピンク頭の主人公が多いような気がするんですが,人気があるんでしょうか。
欧陽氏:
もしかしたら,コーエーやKONAMIの女性向けゲームや,有名なアニメなどの影響かもしれません。私自身,昔からピンクのイメージがありますね。日本の20年くらいの歴史を,中国が猛スピードで追っているような感じなのかも。
4Gamer:
そういえばブースには,VRモードを楽しめるコーナーもありましたが,あれはアプリに実装されるんですか?
欧陽氏:
現在検討中です。端末の問題で誰もが楽しめるものではないので,現時点では,イベントなどで使う特別なバージョンという形ですね。
4Gamer:
気になる配信時期は?
欧陽氏:
アルビレオ珈琲店は,中国ではすでに国家の承認を得た状況で,そう遠くない時期にリリースできると思います。日本では来年のリリースになりますが,ゲームは完成しているのでローカライズとキャスティング,音声収録などを進めている状況ですね。夢間集の10倍ほどのシナリオ量なので,テキストも音声収録も大変ですが……。本当に来年に出せるといいなと(笑)。
4Gamer:
欧陽さんは日本の女性向けゲームにも詳しいですね。
欧陽氏:
実際に遊んだこともありますよ。日本で発売された最初の頃の乙女ゲームは,システムはちょっと複雑だけどそれを苦と思わせないほどの魅力を表現できていますね。
ゲームシステムに関しては先ほども話しましたが,女性向けでもそうでなくても,中国のクリエイターは今,みんなゲームシステムについての研究を深めているので,ちょっとすると独特なゲームが生まれてくるんじゃないかと考えています。
4Gamer:
プレイヤーの意識も,ものすごい勢いで変化していそうですしね。
欧陽氏:
おっしゃるとおりです。今中国のゲームとその周辺は,激しく変化しています。もともと変化が早い国ですから,我々もそういった変化を見ながら,乗り遅れないように頑張っていきます。
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。