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ロト三部作の楽曲がクラシックの殿堂・サントリーホールで披露された「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」をレポート
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印刷2019/12/06 14:36

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ロト三部作の楽曲がクラシックの殿堂・サントリーホールで披露された「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」をレポート

 キョードー東京は2019年12月4日,「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」を東京・サントリーホール 大ホールにて開催した。本公演では,作曲・すぎやまこういち氏,吹奏楽編曲・真島俊夫氏による「ドラゴンクエスト」シリーズのロト三部作「I」「II」「III」の楽曲が,大井剛史氏の指揮のもと,東京佼成ウインドオーケストラの演奏で披露された。

撮影協力:サントリーホール
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 コンサートのオープニングを飾ったのは,「ドラゴンクエストI」から「序曲」。今やスマートフォンを含め多様なプラットフォーム向けに展開している「ドラゴンクエスト」シリーズだけに,この曲はテレビCMなど生活のさまざまなシーンで耳にする機会も増えたが,会場では吹奏楽オーケストラの生演奏により桁違いの迫力を堪能できた。

 指揮者の大井氏は,「序曲」イントロのホルンのフレーズについて説明。それによると,ホルンはもともと狩りに使用された楽器で,音楽に詳しい人であればあのフレーズを聴くと森や草原などを連想するという。そのため大井氏は,すぎやま氏が「ドラゴンクエストI」のフィールドをイメージして作曲したのではないかと話していた。
 また「序曲」のメインフレーズに使われる「ソドレミ」の4つの音はクラシックの楽曲では定番の音型で,例えば逆から演奏するとブラームスの交響曲第1番のフレーズになるなど,さまざまな形で使われていることも紹介された。

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 続いて「ドラゴンクエストI」から優美な「ラダトーム城」,そしてメリハリを付けるかのように華やかな「フィナーレ」が披露された。
 大井氏によると,「ラダトーム城」はもともと通常のオーケストラで演奏することを想定した楽曲で,吹奏楽でニュアンスの表現がしづらいのだという。そのため,この曲は吹奏楽による「ドラゴンクエスト」シリーズの楽曲の中では最も難しいそうなのだが,大井氏は今回の演奏を「今まで聴いた中で一番美しかった」と絶賛していた。

 また「フィナーレ」の冒頭は,序曲と同じリズムフレーズをトランペットで演奏しているが,それによって華やかな雰囲気を演出し,王宮の中で勇者が称えられているイメージを出していることや,「ドラゴンクエスト」シリーズの楽曲ではタンバリンの刻むリズムが重要なキーになっていることも紹介された。

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 続く4曲は「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」の楽曲。「遥かなる旅路〜広野を行く〜果てしなき世界」はフィールド曲のメドレーで,その中でも「広野を行く」はロト三部作すべてに使われているが,大井氏は現在主流で使われている「ドレミファソラシド」が発明される前の「ドリア旋法」で作曲されているため,どこか懐かしさを覚える曲調になっていることを明かした。

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 一方,「遥かなる旅路」は「広野を行く」と同じようなフレーズが出てくるが,「ドラゴンクエストII」が「I」の100年後の世界を描いているため,少し現代寄りにアレンジされていることも紹介された。
 また大井氏は,「恐怖の地下洞〜魔の塔」のメドレーについても,暗がりをあちこちウロウロしているかのような「恐怖の地下洞」と,上階を目指して登っていくような「魔の塔」の曲調の対比についても言及した。
 そして神秘的な「聖なるほこら」と,エンディングを飾った「この道わが旅」が演奏され,「ドラゴンクエストII」のパートは締めくくられた。

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 休憩を挟んで始まった第二部は,全編「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」のパートだ。冒頭,大井氏は会場となったサントリーホールが「ドラゴンクエストI」の発売された1986年に開館したことや,ゲーム音楽のコンサートに使われるケースが少ないことに言及。世界的にも屈指のコンサートホールと言われるこの会場で,「ドラゴンクエスト」シリーズの楽曲を演奏できることに喜びを示した。

 第二部で最初に披露されたのは,「世界をまわる(街〜ジパング〜ピラミッド〜村)」と「冒険の旅」。「世界をまわる」では,「ドラゴンクエストIII」で大きく広がった世界を表すかのようにオリエンタル調だったりエキゾチック調だったり,あるいは街と村の違いを表現したりと,次々に異なる曲調が飛び出した。
 また「冒険の旅」は,それまでの2作とは異なる勇壮なフィールド曲だったため,初めて聞いた当時の大井氏は驚いたという。演奏終了後も「燃えますね」とコメントしていた。

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 続いて4曲が披露された。大井氏は,すぎやま氏がフルオーケストラを想定して作曲するようになったこと,さらにそれまでよりも音楽にメモリの容量を多く割けるようになったことから,「ドラゴンクエストIII」以降は重厚な曲が増え,名曲も多いと説明。
 「海を越えて」は文字どおり海の楽曲で,3拍子によって「どんぶらこ」というイメージを表現しているという。また人気の高い「おおぞらをとぶ」は,伝説の不死鳥・ラーミアが生まれたのではなく蘇ったという設定から,上記のドリア旋法を含む「教会旋法」で作曲されており,懐かしさを醸し出しているとのことだ。

 「戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦」は,フィールドでのバトルから最終ボスのゾーマ戦に至るまでの流れに沿ったバトル曲メドレー。「戦闘のテーマ」では3つの音を使って不吉な雰囲気を出していること,「勇者の挑戦」では4拍子,3拍子,5/8拍子と変拍子にすることでたたみかけるような構成にして,プレイヤーの緊張感を煽っていることが紹介された。
 第二部を締めくくったのは,ゲームのエンディング曲「そして伝説へ」だ。大井氏が「『ドラゴンクエストI』や『II』とは違った,壮大な曲」と表現したとおり,ひときわスケールの大きい演奏でコンサート本編は幕となった。

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 アンコールでは,ロト三部作の楽曲を10分弱のメドレーにした「ドラゴンクエストによるコンサート・セレクション」が披露された。大井氏によると,現在「ドラゴンクエスト」シリーズの楽曲を公の場で披露する場合,基本的にすぎやま氏の書いたオーケストラの楽譜そのままの編曲で演奏するケースのみ許可が下りるとのこと。しかしこの楽曲は,すぎやま氏が信頼していた真島氏が編曲を手がけたため,例外的に演奏することを許されているそうだ。
 今回のコンサートを振り返るかのような,またロト三部作を遊んでいた当時を思い起こさせるかのような演奏のあとには,会場が大きな拍手に包まれた。「もう一度『ドラクエ』をプレイしてみたくなった」という声も,筆者の後方の席から挙がっていた。

 なお「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」は,12月30日と31日の両日,東京国際フォーラム ホールCでも開催される。12月30日は「ドラゴンクエストVII」「VIII」「IX」,12月31日昼の部は「IV」「V」「VI」,12月31日夜の部は「I」「II」「III」の楽曲がそれぞれ演奏されるとのこと。気になる人はチェックしてみよう。

「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」公式サイト


■「『ドラゴンクエスト』ウインドオーケストラコンサート」(2019年12月4日)概要

指揮:
大井剛史

演奏:
東京佼成ウインドオーケストラ

プログラム:
すぎやまこういち(作曲) 真島俊夫(吹奏楽編曲)
吹奏楽による「ドラゴンクエストI, II, III」

<第一部>
「ドラゴンクエストI」
序曲
ラダトーム城
フィナーレ

「ドラゴンクエストII」
遥かなる旅路〜広野を行く〜果てしなき世界
恐怖の地下洞〜魔の塔
聖なるほこら
この道わが旅

<第二部>
「ドラゴンクエストIII」
世界をまわる(街〜ジパング〜ピラミッド〜村)
冒険の旅
海を越えて
おおぞらをとぶ
戦闘のテーマ〜アレフガルドにて〜勇者の挑戦
そして伝説へ

主催:
キョードー東京

協力:
スギヤマ工房有限会社/株式会社スクウェア・エニックス
(敬称略)
  • 関連タイトル:

    ドラゴンクエスト

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