プレイレポート
Switch用RPG「幻影異聞録♯FE Encore」を紹介。華やかなバトルの魅力はそのままに遊びやすさが向上。新規ストーリーや楽曲もたっぷり楽しめる
オリジナルとなる「幻影異聞録♯FE」は,「ファイアーエムブレム」シリーズ制作でおなじみの任天堂とインテリジェントシステムズ,「真・女神転生」や「ペルソナ」シリーズで知られるアトラスのコラボレーションで生まれたRPG。芸能界を舞台に,現実世界で起こる怪異の謎を解くため異世界に挑む若者たちの物語が描かれる。
本稿では,新ストーリーや楽曲,コスチュームや,戦闘時の演出を高速化できるといった機能が追加され,より魅力的に,そして遊びやすくなった「♯FE Encore」を紹介していこう。
「幻影異聞録♯FE Encore」公式サイト
新規ストーリーでより深まる登場人物たちの魅力
バトル演出はより華やかに,より遊びやすくなった
本作の舞台は現代の東京。人間の心に宿る表現力の結晶「パフォーマ」を奪おうとする謎の侵略者「ミラージュ」によって,芸能界を中心にさまざまな怪異や失踪事件が起きていた。
主人公の蒼井 樹とその幼馴染みである織部つばさは,とある事件にてミラージュと邂逅。侵略者と対峙しうる力を持つ「ミラージュマスター」となった2人は,事件の調査を行う芸能事務所「フォルトナエンタテイメント」に所属し,表の世界では芸能人として活動しながら,裏では同じミラージュマスターの力を持つ仲間たちと怪異に挑むことになる。
“オモテ”の芸能界の物語は,基本的には明るいテイストで,いわゆる“お仕事モノ”のドラマのように展開する。とはいえ,華やかな世界だからといって明るく楽しい話だけではない。メインストーリーやキャラクター個別のサイドストーリーでは,芸能界で夢を追う仲間たちの悩みや葛藤,そして成長もしっかりと描かれているのだ。
樹や仲間たちの芸能活動を描くうえで大事な要素となっているのが,彼らが歌う楽曲とライブシーンだ。
楽曲をプロデュースしたのは,エイベックスで多くの有名アーティストを輩出した油井誠志氏。その歌唱を担当するのが,つばさ役の水瀬いのりさんやKiria(黒乃霧亜)役の南條愛乃さんなど,アーティストとしての活動も知られる声優陣ということで,そのクオリティの高さは説明不要だろう。
ライブシーンはアニマが3Dアニメーションを,STUDIO4℃が2Dアニメーションの制作を担当しており,こうして生まれた楽曲やライブは,プレイヤーの心の奥底へ響き,深い感動を与えてくれるはずだ。
怪異の謎を追うミラージュマスターとしての活動のメインとなるのは,イドラスフィアという異世界だ。シンボルエンカウント方式のダンジョンやオートマッピングで描き出されるマップを見ながら探索する点,さまざまなステージギミックを解きながら複数の階層を行き来する点など,基本はアトラスのRPGファンにはおなじみのシステムとなっている。
新たなルートを発見したときの嬉しさは格別なもの。窮地に陥ったときは一時撤退しつつ,怪異の真相とボスに迫っていくときに感じる静かな手応えと興奮は本作の醍醐味と言えるだろう。
敵とのバトルは,コマンド方式のターン制だ。ミラージュマスターはパートナーとなる味方ミラージュの力を借りて「カルネージフォーム」に変身し,味方ミラージュが変化した「カルネージ」を武器として敵に挑むこととなる。
樹はクロム,つばさはシーダといったように,彼らのパートナーである味方ミラージュは,異世界の英雄として登場する「ファイアーエムブレム」のキャラクターだ。武器となったときのミラージュをどのように鍛えるかによって戦い方は大きく変わる。
ダンジョンで敵シンボルを攻撃してバトルを開始すれば,先制攻撃を狙いやすい。逆に不意打ちを食らうと敵が先制となり,状況によっては壊滅寸前まで追い詰められることも珍しくない。敵のシンボルはフェイントをかけてくることも。1ラウンド分のアドバンテージは大きいので,ダンジョン探索時は敵の動きに注意を払おう。
アトラスのRPGでおなじみの,相手の弱点となる属性攻撃でバトルを有利に進められるという要素に,「剣は斧に強い」「斧は槍に強い」「槍は剣に強い」「弓はペガサス系に強い」という「ファイアーエムブレム」シリーズの兵種や武器同士の相性も取り入れられているのも注目だ。
この,弱点を突くことで発生するのが,本作のバトルの特徴となっている「セッション」。これは,敵の弱点を突く攻撃をした際,その攻撃属性に呼応する「セッションスキル」を持つ仲間がいれば追撃してくれるというもの。セッションスキルが複数回つながれば,敵の行動を封じたまま勝利することも可能だ。
ゲームシステムだけではなく,バトルの演出やテンションもほかのゲームでは体験できないものとなっている。バトルはコンサートのステージようになっており,ミラージュマスターたちの動きも,ライブやコンサートでアーティストのステージパフォーマンスを見ているかのような華やかさと迫力がある。
ランダムで発動する強力な全体攻撃「アドリブパフォーマンス」,2人で発動する特殊攻撃「デュオアーツ」などのスキルでは,各キャラクターの楽曲のサビが流れ,まさにライブやミュージックビデオそのものといった演出になるので必見だ。
本作の新要素として,事務所の社長である志摩崎舞子や日本オタクなトレーナーのバリィ・グッドマン,ミラージュマスターたちのサポート役チキなど,バトルメンバー以外のキャラクターがセッションに参加するようになった。新規追加されたストーリーを進めると開放されるので,ぜひ物語を読み進めて彼らのパフォーマンスを見てほしい。
なお,セッションの演出を短縮する新機能「Quick Session」が追加されているので,短いプレイ時間でレベリングをしたいときは活用するといいだろう。
敵はなかなか手強く,気を抜くと簡単にやられてしまう。画面上部に表示される行動順番を見つつ,なるべくダメージを受けないよう行動前の敵を狙って倒していくのが定石だ。敵側もこちらの弱点を突いてセッションを仕掛けてくるので,仲間の弱点をカバーしながら戦おう。
とはいえ難度設定は幅広く,低難度にすればサクサク進められるので,ストーリーや華やかなバトル演出などが目当ての人でも楽しめるだろう。オリジナル版ではDLCとして配信されていた,経験値やお金などを効率よく入手できるサポートクエストが収録されており,第1章からこれに挑むことができる。こちらを活用すれば,「どうしても勝てない敵がいて進められなくなった」ということは起きないはず。
高難度にすれば“敵の弱点を突かないと勝てない”という,アトラスのRPGならではのシビアなバトルが楽しめるので,腕に覚えのある人はこちらに挑んでみよう。
メインストーリーやサイドストーリーを進めると,キャラクターたちが芸能人としての自分に向き合い,新たな可能性を探す物語が展開する新要素「EXストーリー」が開放される。ブルームパレスに出現するイドラスフィア「希望の幻想領域」を攻略するEXストーリーでは,Wii U版のDLCや本作の新規コスチュームも手に入るので,キャラクターたちの新たな一面に触れつつコスチュームを集めよう。
物語が進むと,ブルームパレスに新ダンジョン「希望の幻想領域」が出現する | |
物語に関連する仲間たちの思いや葛藤がうかがえるストーリーが展開 |
初期「真・女神転生」や「ファイアーエムブレム」の初期シリーズ作品を遊んで育った世代の筆者はオリジナル版のプレイで,最初はその世界観に戸惑いを感じたものの,ゲーム性の深さに魅了されたのを覚えている。同時に,Wii U後期だったこともあってか,筆者が思っていたほどには注目はされず,「トップレベルの才能が集結した一大エンターテイメント作品として,もっと評価されるべきなのに……」と感じたこともあった。
ネタバレになるので詳しくは触れられないが,本作の物語の魅力に,人から人へとつながれる「感動のリレー」がある。「ファイアーエムブレム」やアトラスのRPGのさまざまな要素を入れこみつつ,そのどれとも異なる独自の魅力を生み出した本作からは,まさにそれらのゲームがかつて生んだ「新しい感動」を,新しい世代のプレイヤーにリレーするかのような作品性を感じる。
「コラボのもととなった作品は知らない」「普段はRPGをやらない」といったことは関係ない。ゲームで新たな感動を味わいたいという人にはオススメしたい作品だ。
「幻影異聞録♯FE Encore」公式サイト
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