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[gamescom]クロアチアで開発中のデジタルカードゲーム「Phageborn」はこんなゲーム。そしてビジネスブースにカオスをもたらす“ハッピーアワー”とは
なお本作「Phageborn」は,gamescomではクロアチアブースでのみ試遊可能だったタイトルだ。このためクロアチアブースに長居せざるを得なかったのだが,結果としてgamescomのビジネスブース恒例の“ハッピーアワー”にも巻き込まれたので,ついでにその様子もレポートする。この機会に,世界のゲームショウの持つもう一つの顔,地獄のハッピーアワーについて知っていただければ幸いだ。
「Phagebone」公式サイト(英語)
2レーン制のバトルを実装した「Phageborn」
「Phageborn」の基本的なデザインは,とくに奇をてらったところのない,素直なデジタルカードゲームだ。基本は「ハースストーン」を踏襲し,1ターンごとに使えるマナ(的なもの)が増えていくあたりは完全に一致している。まあ,この部分は対戦カードゲームのシステムとして「堅牢」としか言いようのない作りでもあるので,無理に工夫する必要もないのだろう。またクリーチャーを召喚して敵プレイヤーを攻撃し,相手のHPをゼロ以下にしてしまえば勝利というのも変わらない。シンプルで分かりやすい勝利条件である。
クリーチャーの性能にしても,パワーとタフネスの2つを有し,戦闘で減ったタフネスは減りっぱなしになるという「ハースストーン」ライクなものだ。クリーチャーにさまざまな特殊能力があったり,戦闘を補助するスペルがあったりするのも同様である。
では「Phageborn」の工夫はどこにあるのかというと,まず第一に「クリーチャーの配置と戦闘」がある。本作では,クリーチャーを配置できる場所が,2つのレーンに分かれているのだ。以下,左のレーンをAレーン,右のレーンをBレーンと呼ぶことにしよう。
それぞれのレーンには,4体までしかクリーチャーを配置できない。またAレーンにいるクリーチャーは,敵のAレーンにいるクリーチャーしか攻撃できないし,あるいは敵のAレーンからの攻撃しかブロックできない。Bレーンも同様だ。
このため,例えAレーンに強力なクリーチャーを召喚したとしても,相手がAレーンに弱い防御型クリーチャーを配置し続ければ,攻撃が封殺されてしまう。それだけでなく,もし相手がBレーンに強力なクリーチャーを召喚し,それに対してBレーン内で対応できなければ,Bレーンからの攻撃で手ひどいダメージを受けることになり得る。
レーンが1本しかないゲームの場合,「強力なクリーチャーは,アタッカーとしても,ディフェンダーとしても優秀」ということになりがちだが,「Phageborn」においては,とくにディフェンス面においては「パワーとタフネスの数字が大きい」だけではその性能を十全に発揮できるとは限らないのである。
ただし召喚したクリーチャーは,必ずそのレーンに居座り続けねばならない……というワケではない。1ターン使えばレーンの移動は可能なので,戦況に応じてレーンを移動するのは重要な戦術となる。
またクリーチャーの中には,「レーンを移動した直後に攻撃可能」という能力を持つ者もいる。これは想像以上に強力な能力で,「Phageborn」におけるクリーチャーを評価するにあたっては,「戦場での機動力」もまた,重要な評価基準となるわけだ。
本作の第2の工夫は,「アバターの設置」だ。「マジック:ザ・ギャザリング」をご存知であれば,このアバターは「プレインズウォーカーのようなもの」と表現するのが一番話が早いだろう。
「Phageborn」におけるアバターは,アバターが持つマナ(エネルギー)を消費することで,アバター固有の能力を発揮できる,というもの。アバターが持つマナは,それぞれのプレイヤーのターン開始時に「エネルギーを獲得する」という行動を選択をすることで増大させられる。
ちなみにターン開始時には,このほかに「リーダーシップ値を上げる」(特定のカードに影響),「ライフを払ってカードを追加で引く」の行動を選択でき,逆に言えばこのタイミング以外でエネルギーを増やすことは原則としてできない。なのでアバターの特殊能力を活用したプレイをしたいときには注意が必要になる。
もちろんアバターの持つ特殊能力は強力なもので,除去や対除去(死んだらトークンに変わるなど)の能力を付与できたりする。ただしアバターもまた,レーンの影響を受けるので,Aレーンに配置したアバターは,同じくAレーンの敵と味方しか能力のターゲットにできない制限を受ける。
なおクリーチャー同様にアバターもレーンの移動が可能だ。守る側としては,「ここぞという場面なのに別のレーンにいた」ということがないようにアバターを配置するべきだし,攻撃するにあたっては,敵アバターをうまく欺き,邪魔な相手のいないレーンで致命的な一撃を放てるようにしたい。
ゲームモードにも工夫が見られる。中でも最大の特徴は2vs.2のマッチが可能というところで,これまた「マジック:ザ・ギャザリング」ファンなら「アレか」と思うかもしれないが,面白いものは面白い。
「Phageborn」は現在,期間限定のクローズドβ中だが,日本からのテストプレイヤーもぜひ募りたいとのこと。詳しい情報は4Gamerでも今後お伝えしていくつもりなので,デジタルカードゲームファンは楽しみにしていてほしい。
地獄のハッピーアワー
……さて。
「Phageborn」を鋭意制作中のGames Revoltedは,前述のとおりクロアチアのデベロッパである。そしてクロアチアのゲーム業界における重要人物――なにせgamescomの直前に開催された技術カンファレンス・devcomで「ヨーロッパのゲーム業界に多大な貢献をした人物」として表彰されたくらい――であるDamir Đurović氏は,とても,とても,とてつもなく,お酒が好きだ。
かつgamescomのビジネスブースには,イタリア,オランダ,スイス,ポーランドといった「国別のパビリオン」が存在しており,そうした場所では特定の時間になると飲み物と食べ物が無料で提供される「ハッピーアワー」が開始される。この時間において,クロアチアブースで何が起こるかは自明であろう。
以下,写真でその模様をご紹介しよう。
なお写真に写っているボトルはクロアチアの地酒で,さまざまな味があるが,共通するのは「最低でもアルコール度数が30度以上」という点だ。40度ですら珍しくなく,間違いなく美味しいお酒ではなるが,がぶ飲みするものではないのは言うまでもない。
ちなみにクロアチアのハッピーアワーに参加した同国のとあるゲーム開発者は「僕はクロアチア人だけど,あの飲み会の中心部に巻き込まれたら,絶対にその場で酔い潰れる自信がある」と断言していた。実に恐ろしい。
とはいえ,こうやってお酒を飲み,開発の現状や自分の好きなゲームについて腹蔵(ふくぞう)なく意見交換するのもまた,gamescomの醍醐味であるのは間違いない。ハッピーアワーにはさまざまな国から参加者が訪れ,筆者もまた40度の酒を片手に,Bohemia Interactiveの開発者と長時間にわたって意見交換をする機会を得た。……このときに得た情報を記事にしないのは,情報提供者もまた,40度の酒を飲んでいたからである。眉唾どころの話ではない。
「ビジネスブース」というと何かと堅苦しいイメージがあるし,実際に東京ゲームショウのビジネスブースならいたって真面目に商談だけが進む傾向にあるが,世界のゲームショウにおけるビジネスブースは,こんなにもカオスで,かつ濃厚な情報が渦巻く場所だということは,知っておいて損のない事実かと思う。……それを日本でもやるべきかどうかはともかくとして。
「Phagebone」公式サイト(英語)
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