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ウェビナー「『このファン』『マジカミ』マーケティング担当者が登壇!IP&オリジナルタイトルの垂直立ち上げ戦略」をレポート
●「『このファン』『マジカミ』マーケティング担当者が登壇!IP&オリジナルタイトルの垂直立ち上げ戦略」登壇者
・サムザップ
プロダクトマーケティング室 室長 原田隆太氏
プロダクトマーケティング室 『このファン』プロモーションチーム リーダー 運上雅展氏
原田隆太氏 |
運上雅展氏 |
・Studio MGCM
マーケティング責任者 兼 経営企画責任者 西原 政比彦氏
・MOTTO
代表取締役 佐藤 基氏(司会)
佐藤 基氏 |
今回のテーマとなったアプリは,原作のあるタイトルとオリジナルタイトルの2本だ。
前者は「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」(以下,このファン)で,テレビアニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」(以下,このすば)原作のゲームアプリ。2020年2月27日に正式サービスを開始した。
後者の「マジカミ」はオリジナルIPであり,ブラウザ版が2019年6月26日,アプリ版が2020年6月11日にそれぞれサービスを開始している。
どちらも配信開始後に好調な立ち上がりを見せており,その秘密についてキーマンたちが語った。
あくまで原作を尊重する「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」
「このファン」では,「原作アニメのファンに『このファン』を知ってもらい,事前登録をしてもらう」という目標の元,「アニメ&ラノベファンファーストの徹底」「Twitterを徹底的にやり切る」「ユーザーがツッコめる余白を残した企画」をコンセプトにした事前プロモーションが展開されている。
原田氏いわく「IPものは初動が命」というくらいに重要なのが立ち上げ段階だが,想定を上回った効果が得られたという。
1:「アニメ&ラノベファンファーストの徹底」
運上氏は積極的にアニメを観る習慣を持たなかったものの,「このファン」に携わることになって原作アニメやインターネット生放送,社内の「このすば」ファンへのインタビュー,Twitterをチェックしてファン心理を研究し,情報をどのような順番・優先度で露出するかの設計を行ったという。
印象深いのが,「ゲームオリジナルキャラクターよりも,原作の世界観が再現されていることを優先する」という姿勢だろう。
原作のあるタイトルでは,ゲームオリジナルキャラクターの露出が先行しがちだ。しかし本作では,原作の世界観を再現していることを発信してこれを周知した。その後に公式生放送において,原作キャラクターの声優によって,ゲームオリジナルキャラクターの存在を告知している。
原作のファンがまず見たいのは,原作の世界観やキャラクターたちと,これらが再現されているかどうか。こうした点で安心できてから初めてゲームオリジナルキャラクターを受け入れられるというわけで,ファン心理を優先した原作ありきのタイトルならではの配慮と言えるだろう。
2:「Twitterをすべてやり切る」
原作アニメの公式Twitterをリサーチしたところ,「このすば」ファンはレスポンスが非常に良いことが分かったという。そこで「このファン」のプロモーションでは,ターゲットとなる原作アニメファンが多いTwitterに注力し,原作アニメのファンをターゲットにさまざまな施策を行った。Twitter専用のキャラクター紹介PVを作成し,新規にボイスとLive2Dを用意したのだから,かなり徹底している。
事前登録期間の実に6割は何らかのキャンペーンを展開し,フォロー&RTを使ったキャンペーンであっても,「原作で女騎士ダクネスが空飛ぶキャベツに蹂躙されるシーンをTwitterのRTで疑似再現したRTキャンペーン」「作中のアクシズ教(宗教)に入るか否かをRTといいねで意思表示し,入信する人には原作どおりに石けんをプレゼント(入信しない人にも抽選で石けんをプレゼントした)」と,原作のネタを盛り込むことによって強いインパクトを与えることに成功している。
また,ユーザー参加型企画も工夫が凝らされている。「『このファン』キャラクター診断」は質問に答えると診断(ここではユーザーに近いキャラクターは誰であるか)を下すいわゆる“診断もの”だが,実際は19ものキャラクターを提示することで話題を呼んでいる。
「毎日,ナイス,爆裂!キャンペーン」は指定のハッシュタグをツイートすると,景品の当たり外れがその場で当たる企画だが,新規のボイスとLive2Dを用意することで原作アニメのファンにアピールしている。結果的にどちらの企画も高いリーチ数を得たそうだ。
こうした企画を行ううえでは,版元(原作サイド)からの理解があったことも大きかったという。これは原作がギャグアニメだったために,ユニークなアイデアも理解してくれる環境が整っており,本気でバカなことをやることで話題につなげていくという取り組みができたそうだ。無数のアプリがあるなかでいかに記憶に留めてもらうかは大事なテーマであり,「このファン」での取り組みと原作への気遣いは,ほかのアプリでも参考にできるのではないだろうか。
「三重苦」の弱点を反転して強みとし,「地下アイドルがファンと一緒にメジャーに駆け上がっていくようなグルーヴ感」で走った「マジカミ」
原作がある「このファン」とは対照的なのが「マジカミ」はオリジナルIPであり,アプリ版に先立ってPC版が一般向けとR18の2バージョンが展開されている。
そんな「マジカミ」アプリ版のプロモーションにおいて,西原氏は「三重苦」があったと語る。それは「PC版が先行しているため,新規タイトルとしての話題性が薄い」「R18があることで,有名人の起用や,取り上げてもらえる媒体に制限が掛かる」「オリジナルIPなので埋もれてしまいやすい」という3つのポイントだった。
そこで西原氏は,こうした弱点を反転して強みとすることにより,プロモーション戦略を構築する助けとしている。前述の「三重苦」について,「PC版の先行は,すでにコアファンがいるということ」「R18があるなら,これをフックにして差別化と訴求をする」「オリジナルIPなので,原作ものにできない施策がやれる」と捉えたわけだ。
こうして方向性が決まった「マジカミ」アプリ版のプロモーションだが,まずは「訴求すべきポイントの調査」からスタートした。ピックアップする部分が異なる8パターンの訴求軸を作り,どの訴求軸への反応が良かったかを定量的にチェックしたそうだ。
「3Dグラフィックスによるバトル」「日常モノ風だがダークな展開」といった「マジカミ」のさまざまな側面をフィーチャーした訴求軸が作成されたが,もっとも注目されたのは「エロゲー史上最大級の制作費12億円」というもの。PC版ですでにフィーチャーされていたポイントであり,優先順位は低かったのだが,群を抜いた反応があったのだという。
そのうえで,“ゲームアプリマーケティングの常識として,この施策はやらないといけない”という常識を疑い,「効果が見えないが予算や工数が掛かる施策」の優先度を下げていき,本当に必要な施策を探っていったとのことだ。
そして「薄く広い認知度よりも,プレイしてくれそうなニッチ層を取る」という方針が決まり,限られた予算を効果的に配分していったという。
最終的に「マジカミ」のマーケティングコンセプトは「地下アイドルがファンと一緒にメジャーに駆け上がっていくようなグルーヴ感」に決まった。もともと「マジカミ」には,「R18からメジャー化を目指す」というバックボーンが存在する。これを踏まえたうえで,「アプリのヒットを皆で喜べる状態にする」「既存のPC版ユーザーと新規のアプリ版ユーザーが一緒に盛り上がるようにする」「施策の結果をユーザーへ共有することで,盛り上がっている感を作り出す」という方向性が策定された。
施策の中で印象的なのが,アプリ版の配信と同時にスタートした初心者を応援する「【#マジ神ユーザー】キャンペーン」(https://www.magicami.jp/news/article/?id=2101)だ。アプリ版から入った初心者がハッシュタグをつけて攻略に関する質問をツイートすると,PC版を遊んでいた経験者が答えてくれるのだ。最終的にはすべての質問に返事があったうえ,経験者が自発的にクイズや情報のまとめを作ってくれるという効果が得られたという。オンラインゲームにおいて,初心者と経験者をいかに融和させるかは永遠のテーマである。
これまでにも,経験者が初心者に付き合うとボーナスをもらえるメンター(導師)や,強力なレベルシンクなど,ゲームシステムでの解決が試みられてきたが,こちらはSNSを使っているあたりがユニークなところだ。質問や回答がSNSで行われること自体に露出効果があるうえ,ゲーム側でややこしい実装を行わなくて済む。個人的にはほかのゲームでも応用できそうな手法であると感じられた。
PC版の1周年記念では,「(アプリ版は)#2週間だけど1周年」というキャンペーンを展開し,ユーザー自身にゲームの魅力をツイートしてもらっている。熱いツイートが集まることにより,運営サイドのモチベーションも上がったという。
また,VTuber界隈で「企業案件」と呼ばれるVTuberを巻き込んだ施策も行われている。マーケチームに所属するVTuberコアファンが,VTuberたちが持つ文脈に合わせた企画を提案し,案件用のイベントも実装するなど高い熱量を持って取り組んだことも功を奏して,高い効果が得られたそうだ。
結果として「マジカミ」ではアプリ版が出たことにより,ユーザー数や売上といった「タイトル規模感」が7倍以上となり,R18版とアプリ版の両方をプレイする人も出たというから,大きな成功と言えるだろう。また,ほかのオリジナルタイトルと比較して,3分の1程度の広告費で平均以上の流入を獲得できたという。
一方,狙っていたターゲットには届けることができたので,今後は一般層の認知も拡大していけるような施策も考えているとのこと。
「三重苦」を強みと捉え,ゲーム自体のバックボーンを取り入れてプロモーション戦略を作り,「地下アイドルがファンと一緒にメジャーに駆け上がっていくようなグルーヴ感」を演出した「マジカミ」。今後メジャーを目指すうえでどのような施策が行われるかに注目したい。
「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」公式サイト
「この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ」ダウンロードページ
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(C)2019 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/映画このすば製作委員会 (C)Sumzap, Inc.
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