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新感覚FPS「Disintegration」は濃密なディストピア世界にも注目。Haloシリーズの中核を担ってきたMarcus Lehto氏へのインタビューも掲載
さらに今回,Bungieで長年「Halo」シリーズに携わってきたクリエイターであり,V1 Interactiveの共同設立者でもあるベテラン,Marcus Lehto(マーカス・レート)氏にインタビューを行う機会も得た。
「Disintegration」公式サイト
人類が生き残りをかけて行った「機械転向」とは
「Disintegration」は従来のシューター作品をミックスしたようなルックスを持つゲームだ。プレイヤーはグラヴサイクル(Gravcycle)と呼ばれる,両サイドに銃器を搭載したホバークラフトに乗り込み,地上に展開する複数のクルー(味方のNPC)に指示を出しながら戦いを繰り広げる。ビジュアルからはどこか「Halo」らしさが感じられるが,「タイタンフォール」やストラテジーゲームのような要素も持ち合わせている。
本作の舞台は,奇病の蔓延によって肉体が滅びてしまうというアポカリプスを体験した人類が,脳をアンドロイドの中に保存する「機械転向」(インテグレーション)によって生き残る決断をした未来の世界だ。アンドロイド化は元々,一時的な解決策だったが,脳自体もデジタルとすることで人間の痕跡を消し去り,完全な進化を目論む勢力「レイヨーン」(Rayonne)が大きな力を手にしていた。
今回のメディアブリーフィングでは,レイヨーンのリーダーであるブラックシャック(Black Shuck)というキャラクターが紹介されたが,都市のようなサイズの浮遊母艦・アイロンクラウドで航行しながら,隠れるように暮らす人間たちを捕獲しては,彼らの意思に反して機械転向を施し,レイヨーンの兵士を増やしているという状況だ。
主人公のローマー・ショールは早くから機械転向をしていたため,人間らしい感情を多分に残しているという設定になっている。ナチュラルズと呼ばれる人間たちと共存しつつ,いつかは自分の身体を再び人間へと戻す,つまり「ディスインテグレーション」を待ち望んでいる。
かつてはブラックシャックの元でグラヴサイクルのレーサーとして名を馳せていたが,意見の違いから反旗を翻すことになり,一旦は逮捕されて監禁されてしまう。しかし,逃走に成功し,わずかな仲間たちと共にレジスタンス活動を展開していく。ここまでがシングルプレイキャンペーンの導入部分にあたるようだ。
今回,レート氏は「これまでのテクニカルテストはマルチプレイモードで行ってきたため,多くのゲーマーにオンライン専用マルチプレイゲームだと誤解されている」と何度か口にしていたが,「Halo」シリーズと同様にシングルプレイキャンペーンでしっかりと世界観を構築したいと考えているようだ。
実際,ローマーと人間の女性が手を握り合い,互いの意思の疎通を示すかのようなドラマチックなシーンを確認することができたので,物語の展開も見どころの1つになるだろう。
RTSのコマンドシステムとFPSのユニークな融合
「Disintegration」のアクションはプレイヤーがグラヴサイクルに搭乗して,自由に動き回りながら全方位の敵と戦うというものだ。地上のクルーに指示を与えることができるが,画面の左右に表示される銃器で直接攻撃も可能。グラヴサイクルは全てシングルシートで,3タイプ(ヘヴィ/ミディアム/ライト)をミッションに応じて使い分けていく。
ちなみに地上のクルーたちには,どの場所に移動するか,どの敵を重点的に攻撃するかといった指示を与えるわけだが,開発陣はこうしたコマンドシステムの簡素化を重視していたという。
従来のFPSと大きく異なるのは,基本的なゲーム画面における「視点の高さ」だ。これはグラヴサイクルによるところが大きい。もちろん,グラヴサイクルを下げて地上からの視点で戦うことができるが,上空からの視点でマップを確認したり,クルーたちが対峙している敵の側面に回り込んで襲撃したりするシチュエーションもあり,戦況に合わせてさまざまな対応を迫られるようだ。
さらに,グラヴサイクルに乗った隊長格のボスや,相当巨大なサイズのボスの存在が明らかにされており,従来のFPSとは異なるプレイフィールに期待したいところだ。
プレイヤーの基地となるガレージでは,マップに点在する「サルベージ」と呼ばれるアイテムによって,グラヴサイクルにアップグレードを施すことが可能だ。今回は詳しく紹介されなかったが,グラヴサイクルから降りて基地内を自由に歩き回ったり,主要なクルーやNPCと会話をしたり,ロードアウトをチェックしたりすることもできるという。
ゲームディレクター マーカス・レート氏にインタビュー
今回,レート氏にじっくりと話を伺うことができたので,その模様を紹介しよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
さっそくですが,「Disintegration」の企画はどのように進められたのでしょうか。「Halo」シリーズのようでありながら,ユニットを動かして戦略的にプレイしていく「Myth: The Fallen Lords」のような雰囲気も感じました。
Marcus Lehto氏:
そうなんです。ゲームのプロトタイプを作っていたときは,今よりもずっとスタンダードなRTSに近いものでした。世界観はあまり変わっていませんが,斜め見下ろし視点で地上のユニットを操作していくというものだったんです。
その時点で良い手ごたえを感じていたものの,プレイヤーがより直接的に世界に関与していくという点で,特別なものが欠けていると思いました。ストラテジーゲームにせよ,シューターにせよ,市場にはすばらしい作品が存在しています。そのなかで,頭1つ抜け出すためにはどうすればいいのかと考えました。
そこで,ユニットの1つであるビークルにプレイヤー視点のカメラを固定して,マイクロマネジメントを極限まで削ぎ落した戦略性と,シューターらしいアクティブな体験を両立させることを試みました。このバランス調整は試行錯誤の連続でしたが,何がうまくできていて,何ができていないのかを発見する過程は非常に有意義なものでした。
4Gamer:
2019年8月のgamescom 2019では,マルチプレイのα版をプレイしました(関連記事)。その後,どのような調整や改良が行われてきたのでしょうか。
Marcus Lehto氏:
プレイヤーがグラヴサイクルを操作したときの感覚やマップの環境,プレイヤーの視界範囲といったメカニック部分を調整しました。また,地上の兵士たちの移動速度を上げたり,プレイヤーの指示に対する反応などのAIにも改良を加えたりしています。
もちろん,スムーズにプレイできるように全体的なパフォーマンスのチューニングも行っています。
4Gamer:
ブラックシャックとローマーの関係について教えてください。
Marcus Lehto氏:
主人公のローマーは,企業家だったブラックシャックの元で雇用されていました。ローマーは幼少の頃からグラヴサイクルのパイロットであり,人気テレビ番組のホストにまで上り詰めましたが,その方向性や視聴率を巡って言い争い,2人の関係は良好ではなくなりました。
その後,ブラックシャックが急進的になり,レイヨーンの私設軍隊を組織化する一方,ローマーはグラヴサイクルのリポマン(支払い滞納者に対する回収業者)のようなことを生業にしていました。そこでナチュラルズ(生身の人間)に手を貸したことで,レイヨーンに逮捕され,監獄に送られましたが,数人の囚人たちと脱獄に成功します。ここまでがストーリーの導入部ですね。ローマーのような存在は「アウトロー」と呼ばれており,レイヨーンの捜査や追跡の対象になっているのです。
4Gamer:
ストーリーでは「人間とは何か」といった深いテーマが描かれているようですね。メディアブリーフィングでは,ナチュラルと思われる女性とローマーが手を取り合うシーンが紹介されました。
Marcus Lehto氏:
ナチュラルの女性はタラというキャラクターです。タラとは序盤で出会い,2人は互いを尊重し合う関係になります。ストーリーでは「機械の中に人間性を見出す」シーンが登場しますし,機械化したキャラクターたちも会話などから個性があることを感じていただけるでしょう。
4Gamer:
今回のデモでは3人のクルーを引き連れていましたが,彼らはクラスを代表している存在なのでしょうか。
Marcus Lehto氏:
はい。Ox-Eyeが「ウォーリアー」,Doyleが「ストライカー」,そしてSeguinが「レンジャー」というクラスのキャラクターです。ほかには「デストロイヤー」と「タンク」というクラスがあり,それぞれに特殊なアビリティを持っています。
この5つのクラスはマルチプレイモードにも登場します。
4Gamer:
キャンペーン中にクルーがキルされることはありますか。
Marcus Lehto氏:
マルチプレイモードと同様,クルーが破壊されてしまった場合は,その核心である脳をプレイヤーが回収すること蘇生させることができます。ただ,キャンペーンでは一定の時間内に倒れたクルーの脳を回収しないと,ゲームオーバーになることがあります。
4Gamer:
シングルプレイキャンペーンでも,プレイヤーはミッションごとにクルーやグラヴサイクルのタイプを選べますか。
Marcus Lehto氏:
それぞれのミッションでは3種類(ヘビー/ミディアム/ライト)のグラヴサイクルの中から1つ,その内容に合わせた2〜4人のクルーが自動的に選択されるシステムになっています。
さらに,ストーリーの展開に応じたキャラクターや囚われているアウトローを解放することで,ミッション中に仲間が増えることがあります。こうしたキャラクターをいかに生存させられるかが,攻略における重要な要素になります。
4Gamer:
一人ひとりのクルーに指示を出せるのでしょうか。
Marcus Lehto氏:
クルーたちは基本的に「1つのグループ」として,プレイヤーが指示を与えることになります。例えば,特定のポイントにフラッグを立てると,クルーやアウトローがそこに移動して,カバーを取れるような場所を自動的に見つけて銃撃戦に移行します。また,特定のキャラクターを指定して,重点的に攻撃させることもできます。操作自体はシンプルなものです。
このほか,クルーが持つ特殊なアビリティ――ストライカーであればエリア攻撃が可能な爆撃弾を撃ち込む――を任意に選択して,戦略的に使うことが可能です。シングルプレイキャンペーンに限られますが,プレイヤーが時間の流れをスローモーションにすることもできます。
4Gamer:
なるほど。
ミッション中は高い場所からマップを見下ろすシチュエーションが多いと感じました。
Marcus Lehto氏:
そうですね。高い場所から鳥瞰的に戦場を確認することは重要になります。プレイヤーが到達すべき拠点などを確認することができますが,それによりミニマップを表示する必要がなくなっています。
4Gamer:
地上から高い場所まで対応することで,レベルデザインにおける難しさはありましたか。
Marcus Lehto氏:
ええ。地上の作り込みにも注力しています。キャラクターの動きが見えづらくならないようにしたり,AIキャラクターをいかにスムーズに移動させたりする部分で苦心しました。集中攻撃を受けた際にグラヴサイクルが一時的に避難できるような場所も必要ですし,敵を迂回できるような道筋も用意しています。レベルデザインの作業は,石像のような立体物を作っている感覚に近いものでした。
4Gamer:
ゲーム中にカットシーンは多用していますか。
Marcus Lehto氏:
V1 Interactiveは30人前後のチームですが,ベテラン開発者と有能な若い人材がうまく融合しています。この規模のチームとは思えないほど,表現力の高いストーリーやカットシーンをお見せできると思います。
4Gamer:
レートさんがかつて携わった「Halo」シリーズでは,キャンペーンモードをクリアしたり,対戦に疲れたりしたときでも,「Forge」モードでまったりと楽しむことができました。「Disintegration」では,こうしたエンドコンテンツを提供する予定はありますか。
Marcus Lehto氏:
「Forge」モードを初めてリリースしたのは「Halo 3」でしたね。第1作「Halo: Combat Evolved」の成功を受けて,続編「Halo 2」を作り始めたとき,Bungieは45人程度のチームだったと思います。V1 Interactiveはそれよりも小さい規模ですが,こうしたデベロッパにとって最大の懸念事項は,やりたいことを詰め込んでいく際に「どのフィーチャーを重点的に開発していくか」を決断することです。
現在,エンドコンテンツに関するさまざまな計画はありますが,それを実行するには至っていません。これまでのテストで寄せられた要望では,サンドボックス型マルチプレイのような,必ずしも競争的ではないコンテンツの実装が多かったです。当然,我々としてもローンチ以降に検討したいと考えています。
4Gamer:
クロスプラットフォーム対応の予定はいかがでしょうか。
Marcus Lehto氏:
それもローンチ以降に検討することになるでしょうね。
4Gamer:
ありがとうございました。今後の展開に期待しています。
Marcus Lehto氏:
「これまでとは違うゲームを体験してみたい」というゲーマーの皆さんに,ぜひプレイしてもらいたいですね。キャンペーンモードのストーリーに共感していただける人は多いでしょうし,クルーを引き連れて戦うマルチプレイモードもぜひ体験してもらいたいと思います。
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