プレイレポート
[プレイレポ]本格派宇宙開発シム「Kerbal Space Program 2」は遊びやすさが大幅に向上。アーリーアクセス版を一足早くプレイしてきた
メキシコのゲーム開発者であるフィリペ・ファランヘ(Felipe Falanghe)氏が2011年にα版を公開した「Kerbal Space Program」は,ロケットを自作したり,探査衛星を飛ばしたりする宇宙開発をテーマにしたシミュレーションゲームだ。同作は,大学でゲームデザインを勉強したのち,広報会社に入社したファランへ氏が個人制作していたもので,その広報会社であるSquadがプロデューサー的な役回りで世に送り出した。2013年にSteamでアーリーアクセス版を公開し,2015年に正式リリースを果たしているが,多くのファンに愛される“次のマインクラフト”と言われるほどまで成長を遂げた。
もっとも,ファランヘ氏は知識過多なゲーム作りに疲れてしまい,2016年にSquadを退社した。プロジェクトを持て余したSquadは翌年,Take-Two Interactiveに「Kerbal Space Program」の版権を売却。その後,Take-Two Interactiveは同作の大ファンだったというクリエイティブ・ディレクターのネイト・シンプソン(Nate Simpson)氏が率いていたStar Theory Gamesに運営や続編の開発を託した。こうした経緯については,2019年8月に開催されたgamescom 2019にて,シンプソン氏にインタビューを実施しているので目を通してほしい (関連記事)。
Star Theory Gamesは,やがてTake-Two Interactiveの新たな販売ブランドとして発足したPrivate Division傘下のIntercept Gamesに統合されて,現在は40人ほどのメンバーで開発を続けている。
ハードルを一気に下げるチュートリアル面の充実
待望の続編となる「Kerbal Space Program 2」(以下,KSP2)は,前作をベースにしつつも,ゲームデザインを作り直しており,次世代の宇宙開発シミュレーションを名乗るにふさわしいゲームとなっている。地球に似た惑星“カービン”に住む,底抜けに楽観的な“カーバル”たちと共に,ミッションの計画からロケットやスペースシップのデザイン,さらに月(ムン)や太陽(カーボル)に探査機を送り込んだり,さまざまな惑星や衛星,最果ての“イーロー”といったカーボル星系の有人飛行を試みたりできる。未来技術の獲得によって,銀河に広がる恒星間の移動も可能になった。双子恒星や灼熱の鉄の星など,広大な天体がシミュレートされている。
KSP2の最大の特徴は,チュートリアルがしっかりと作り込まれていることだ。プレイヤーの拠点,カーバル宇宙センターにあるトレーニングセンターにアクセスすると,「宇宙に行こう」「地面から飛び立つ」「軌道って変」「軌道の移動」という4つのカテゴリを自由にプレイできる。前作では文字だけの解説だったものが,KSP2では「p.a.i.g.e」(ペイジ)と名付けられたAIキャラクターがイロハを教えてくれるようになり,各カテゴリの開始時には2Dアニメーションによるムービーも流れる。なお,ほぼすべてのチュートリアルが日本語化されている。
もちろん,初心者であればチュートリアルを最初からプレイするに越したことはないが,ミッションを一時中断してトレーニングセンターにアクセスすれば,軌道の乗り方や探査車両の作り方といった特定の要素を復習することもできる。新しいコンテンツの拡充に合わせて,こうした宇宙技術の理解を深めるためのチュートリアルが加わるものと思われる。
何度失敗しても楽しいクラフト設計やミッション遂行
KSP2をプレイしてみたところ,前作よりインタフェースが見やすくなっていることに気づいた。計器類やボタンの配置換えにより,うまく整理されているのだ。スペースクラフト組立時のギアは,4つのカテゴリ(極小,小,中,大)に分類され,質量の違いや衝撃耐性,必要電力などの情報がハッキリと表示されている。
こと組立においては,三方向(x-軸,y-軸,z-軸)からスペースクラフトを表示できる「設計図モード」が大きな助けになりそうだ。ウィングの高さなどにもこだわり,機体の微妙なバランスを調整したい人は使い込むことになるだろう。さらに,選んだパーツの状況を表示する「パーツマネージャー」や,スペースクラフトの色をプライマリとセカンダリに分けて設定・保存する機能も追加されている。
もちろん,ギアにも技術革新や将来的な展望に合わせた新要素がある。水素エンジンのような前作にはなかった要素に加え,バリアントが細かく改良されていたり,別のパーツに接続するときもプロシージャルに形状を変更したりするのだ。
アーリーアクセス版ではすべての機能がアクティブというわけではないが,古参のプレイヤーが戸惑うような簡略化を行わない形で,新規や若年層のプレイヤーも遊びやすくなっている印象を受けた。
こうした「前作より遊びやすくなっている」部分は,何度も繰り返し紹介したいほどにKSP2において重要な話だ。前作ではチュートリアルでさえ,なかなかうまく消化できなかった筆者のようなプレイヤーは少なくないだろう。遊びやすさの大幅な向上は,夜空に目を向ける青少年たちに宇宙開発の楽しさや難しさを教えるための,良い教材になり得る進化だと感じた。
実際,技術研究センター職員の立ち話に耳を傾けたところ,KSP2では何度もスペースクラフトを作り,失敗したら何が間違っていたのかを考えながら調整していくという,宇宙開拓の難しさと楽しさを高いレベルでシミュレートしていると話していた。
アーリーアクセス版の内容と今後の予定
アーリーアクセス版では,チュートリアルとサンドボックスモードの実装が予定されており,その後はアップデートによって,新種のエンジンや燃料といったツールやテクノロジーが追加となる。テクノロジーツリーは公開されていなかったが,「どうすれば新しい技術を獲得できるのか」をプレイヤー自身が試行錯誤していくことになる。さらにカーボル星系から外に出て,冷却冬眠やワープといった超未来的な技術を獲得しながら,やがて銀河を探索するというわけだ。
宇宙探索や技術革新を行ううえで,KSP2に用意されているのが「コロニー」である。宇宙ステーションであれ,月面やその他の星の環境であれ,それぞれに特有の物理や生物学的な課題がある。プレイヤーは鉱物や水などの資源採取を行い,建造物の拡張し,居住地や特殊な燃料を生み出す必要がある。最終的にはコロニーから宇宙船を建造できるレベルまでに発展し,より遠い宇宙空間への進出が可能になるという。
こうしたカーボル星系外の天体は,プロシージャルではなくフィックスされたものが用意されるようだ。今回のイベントでは灼熱の鉄の星「チャー」,容赦ない重力と環を持つスーパーアース「オヴィン」,そして予想もつかない重力を持つ双子星「レスク&ラスク」などが紹介された。
また,KSP2の大きな目玉となるのが,欧州宇宙機関(ESA)と共同で開発したミッションだ。前作では,アリアン5ロケットの制作や2本のシナリオを体験できる無料アップデート「Shared Horizons」がリリースされているが,今回はさらに一歩踏み込んで,ESAの成果を時系列的に辿っていくようなミッションになるという。
ESAと言えば,2014年にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到達した“ロゼッタ計画”をはじめ,今後行われる月面有人着陸計画“アルテミス I”,火星へ探査機を送り込む“ロザリンド・フランクリン計画”などが知られている。果たして,どのようなミッションが登場するのだろうか。
冒頭で触れたとおり,KSP2は2月24日(おそらく北米時間)にアーリーアクセス版がリリースされる。今後のロードマップによると,前作と同様にMOD機能を追加するほか,新たにマルチプレイモードの搭載を計画しているようだ。
今回,筆者がプレイしたバージョンではチュートリアルをはじめ,多くの部分で日本語化が進められていた。宇宙開発の楽しさを味わいたい人であれば,誰もが参加できるようなゲームになるはずだ。ファンの能動的なフィードバックが開発チームに届くことで,さらに良質なシミュレーションゲームへと進化していくだろう。
「Kerbal Space Program 2」公式サイト
「Kerbal Space Program 2」Steamストアページ
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