プレイレポート
動きすぎる新作DCG「Lost Archive」のプレイレポート。バトルの掟は,挟んで並べて一発逆転
システム面の作り込みはしっかりしており,同じようなゲームの体験者,ないし初めて遊ぶ人もまず好感触を得られるだろう。そのうえで特筆すべきは“画面内がほぼずっと動いている”ところだった。
ロスアカはカードゲームだけれど,ちょっとしたシステム画面や目の端で,大体なにかが動いている。端末の60fps対応を要求するそれが,本作のゲームプレイの快感を支えているようにも思えた。
今回はそれらも含め,配信に先駆けて遊んだ感想をお届けする。
「Lost Archive -ロストアーカイブ-」公式サイト
「Lost Archive -ロストアーカイブ-」ダウンロードページ
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単色か,混色か,問われるスタイル
天使と悪魔と人間による戦争を収めた,ひとりの勇者。3勢力はその偉業を讃え,彼の死地にそれぞれの英知を結集すると,そこに大樹が生まれた。それから1000年後,ふたたび争いの幕が上がった。
ロスアカでは世界観とカードシステムを含めて,アタック重視の赤色「アードベッグ」,スペル重視の青色「ポートエレン」,レリック重視の緑色「カリラ」という3勢力で区分されている。TCG用語に置き換えるのなら,ビートダウン,コントロール,コンボと認識してほしい。
ビートダウン:数の暴力による速攻型
コントロール:相手妨害による知略型
コンボ:カードの組み合わせで畳む型
勢力ごとの視点で進んでいく物語,その第1章アードベッグ編では,若き研究者「ドイル」,貴族の少女「ナル」,謎の女戦士「シャーロット」の3人が,壮大な世界の思わくに巻き込まれていくようだった。
重厚な物語を謳っているだけあり,「父親譲りの古書店を営む青年の元に,店の上客で貴族令嬢な幼なじみの元気娘が家出して転がり込んできて,素性も知れぬミステリアスなお姉さんとひょんなことから旅に出る」と,立ち上がりは万全だ。「絶対にデッキ破壊してやる」と宣言するときのような,特定のターゲット層に向けての強い意志がうかがえる。
なお,上記のストーリーはシングルプレイで体験していく。後述するバトルとあわせて,本作のメインコンテンツである。ただし“ストーリーバトルは1日3回まで”のスタミナ性が採用されているので,どちらに傾倒するでもなく,両立しながら遊ぶものなのかもしれない。
などと説明したが,DCGに物語を求める人はそれほど多くないだろう。「遊ぶ前から」じゃ,なおさらだ。これは貶しているわけではない。どんなカードゲームにおいても,支持の基盤となるのは“ゲームシステムはどうなんだ”にほかならない。それ以外はすべて装飾品だ。
どれほどデジタル化されようとも,根幹的なゲームデザインの出来栄えこそが最も重要視される。これというのはRPGやSLGとはまた違う,カードゲームジャンルが切っても切れないアナログ性なのかもしれない。
というわけで,ここからが本題だ。カードの種類を含む「デッキ」と,それを用いて戦う「バトル」について紹介していこう。
デッキは30枚構築。カードの色はアードベッグ,ポートエレン,カリラの全3色で,それぞれの勢力には戦いの主役「ミニオン」,魔法的な「スペル」,装備的な「レリック」の3種類のカードが存在する。個々のカードが有するのはHP,攻撃力,スキルやフレーバーテキストだ。
デッキ構成は混色も可能だが,単色か混色かでシステム的な恩恵,もしくは制限がかかる。具体的には以下となる。
■単色デッキ「バトル開始時にドロー+1枚」
いずれか1勢力で固めたときのみ,上記の効果発動。
■2色デッキ「サブ勢力に設定したカードのマナコスト+1」
例:赤メインで20枚,青サブで10枚としたとき,青のカードはプレイする際,オリジナル表記の使用コストに+1される。重くなる。
■3色デッキ「アクセント勢力のカードのマナコスト+2」
例:赤メインで20枚,青サブで7枚,緑アクセントで3枚としたとき,青はコスト+1,緑はコスト+2される。すごく重くなる。
普通に考えると,無条件でハンドアドバンテージを得られる単色デッキにしたくなる。ドロー+1の価値は大きすぎるとしか言えないので,ゲーム開始時は「この青のカードも可愛いから使いたい」といった理由以外で,サブやアクセントを設定するのはそれだけで不利に思える。
しかし,ドローのメリットを捨てて,マナコストのデメリットを抱えてもなお「差せば勝てる1枚」を見つけられたのなら,デッキ構成の事情は大きく動くのだろう。むしろ,こういうシステムにしているのだから,そういう環境の駆け引きがあってしかるべき,と考えておきたい。
余談だが,最初から詰めすぎても息苦しいかと思うので,「可愛いだけで使ってしまうだろうカード」をいくつかピックアップした。遊んだのが配信前とあり,対戦環境についてはさっぱり掴めていないので,可愛いだけで勝負するミニオンである。当然,ほかにもいっぱいいる。
選出理由:可愛い |
選出理由:かわいい |
選出理由:カッコいい |
選出理由:勝負してる |
作成したデッキはほかのプレイヤーと共有することができ,誰かに使われるとカウントされる「作成者ランキング」も存在する。No.1デッキマイスター狙いというのも,昨今らしい遊び方なのかもしれない。
一応,デッキ共有時に「ビートダウン」「コンボ」「コントロール」のラベル付けが求められる。つまるところ,ロスアカにおける戦略は大別するとこの3種類のいずれかを目指せばいいというわけだ。もちろん,細部の調整で派生させてしまうのがカードゲーマーだろうが。
また,カードは「カードパックの購入」のほか,「カード分解・生成」で任意のものを獲得できる。カードは同じものでも通常版,アニメーション付きのプレミアム版,さらにイラストレーターのサイン入り版が存在し,生成でのみ入手できる。闘争心か気持ちか。葛藤しよう。
挟んで並べれば,一瞬で逆転
デッキを用意したら,ランキング制の「ランクバトル」,鍵有り無しの「ルームバトル」,AI相手の「プラクティス」などに挑もう。
バトルは1対1のターン制で,自ターンごとに+1ずつ増えていくマナコストを支払い,ミニオンをフィールドに配置したり,スペルをプレイしたりして,対戦相手のアバターキャラクターのHPを0にしたほうが勝利だ。1プレイは10分程度だが,相手によって早くも遅くもなり得る。
ミニオン同士の戦いは「両ユニットが相手の攻撃力−自分のHP」で,ミニオンvs.アバターの戦いは「アバター側だけ相手の攻撃力−自分のHP」となる。基本は隣接攻撃のみだが,スキル次第で遠距離攻撃も可能となっている。複雑なことはないので,まずは直感的に殴り合おう。
盤面のマス目は,端っこであろうと,敵前であろうと,マナさえあれば好きな場所にミニオンを配置できる。「だったら敵を囲んじゃおう」と考えたくなるが,それを許さないシステムも用意されている。
フィールド上では,相手ミニオンを自分ミニオンでオセロのように挟んでダメージを与える「狭撃」,自分ミニオンを3体直列で並べるとドローや強化が発動する「結信」がある。これらは王将のように置かれたアバターを含んでもいいので,飛び地を作れば一手で覆される。
一例を挙げると,オセロのように端を取らずに敵前にミニオンを置くと,次のターンに配置されたミニオンに挟まれて,挟撃だけで消滅してしまう。狭撃も結信も手番消費はないので,そのあとにミニオンで攻撃されたら取り返しがつかない。その反面,逆転もしやすい(ミニオンの配置ターンはミニオンにのみ攻撃可能。アバターには次ターンから)。
1度配置したミニオンは「移動スキル持ち」かスペル効果でしか動かせない。岩のように置く,風のように動く,戦術も分かれそうだ。
ミニオンはそれぞれ強烈な攻撃性能,強化やドローにちなんだ補助性能を備えるが,言ってしまえば肉弾戦のための戦力だ。そこでロスアカでは「スペル」と「レリック」の駆け引きが存在している。これらはシステムではなく,デッキに投入したカードがもたらすギミックである。
スペルは「指定したミニオンに2ダメージ」「マナコストを支払ってドロー+2」といった,手札からプレイする1度限りのキャスト効果である。TCGやDCGではお馴染みだろう。ただし,ロスアカではTCGっぽさに一歩踏み込み,相手ターンに干渉できる「カウンター」が存在する。
TCGではよくある「それ打ち消しますね」だが,DCGだと意外と再現されていない。その理由にはバトルの複雑化,プレイの長時間化,初心者の分かりやすさなどが挙げられそうだが,やはりというか,あると緊張感が違う(それを疑似再現したカード効果などは存在するものの)。
カウンターは相手の特定の行動に手札から差し込むもので,シンプルに一手番で解決される。複雑な重ね合いやチェーン処理など,リアルでも頭が混乱しがちなところまではいかない。手札を豊富に保っているだけの見せかけの罠も楽しそうだが,“相手ターンまでマナを残す”ことが求められるので,このあたりのプレイングは注意したい。
もうひとつのレリックは,1人3枚まで同時配置できる「場全体に効果を発揮するもの」だ。消費マナが半分になるものも,特定ミニオンを強化するものも,場に出たら自分のみならず相手にも適用される。場合によっては,プレイした側がうまく乗っかられるだけの危険性もある。
こういった影響力の強いカード種を気軽に差せるため,環境メタは盛んになりそうだ。とはいえ,戦士デッキがトップメタになったとして,戦士デッキ同士は安易にシナジーを送れないが,魔法使いデッキに対しては一方的になるなど,繊細な調整が求められるところでもありそう。
もう1点,各プレイヤーは対戦開始前に「奥義」を設定できる。これはバトル中に一定ターンが経過すると,それ以降は任意のタイミングで発動できる,名前どおりの効果絶大なアクションである。
「雲外蒼天」:相手ミニオンにダメージ。10ターンで使用可能
「明鏡止水」:相手レリックを破壊する。4ターンで使用可能
相手のデッキの勢力構成,カード種ごとの投入枚数,各カードのコスト割合は対戦開始前に見られる。そのため「ミニオン重視には雲外蒼天(でも10ターンは長い)」「レリック重視には明鏡止水」と,相手のアンチを選択できる仕組みだ。当然,奥義込みのデッキ構成もありだろうが,当面はピーキーすぎるだろうから対応目的で選ぶのが安心か。
それと,冒頭からまったく触れずに温めてきてしまったが,ロスアカの魅力はDCGとしてのゲームデザインを第一としつつも,個人的には「遊んでいるときに目がずっと楽しい」ことが印象深かった。
描画設定はローモデルからハイスペックまで変更可能だが,最大値の「高」設定にしていると,起動画面やホーム画面,カードのプレミアム演出やミニオンの挙動,コンテンツの選択ボタンなどのUI関連も,とにかく画面中の至るところがアニメーションや淡い明滅をしている。60fps対応を謳っているだけに,挙動もシャキシャキで軽快なものだ。
3Dモデルがスペシャルなまでに優れているわけではない。Live2Dの類が切り札になるほど盛り込まれているわけでもない。バッテリーなどの端末負荷からも目をそらすことはできない。だが,上記の高設定で遊んでいると,ちょっとした画面遷移ですら“なんとなく楽しい感じ”で心地よい。「UX(ユーザーエクスペリエンス。モノやサービスに触れた体験)を大切に考えたUIデザイン」とでも言うべきなのだろうか。
これはゲームバランスやレベルデザインなど,面白さを担保する要素とはまったく関係ない。けれど“そういうところを大事にしているゲームは,遊びの最中じゃなくても自然と楽しい”ことがよく分かる好例だと思う。声高に言いはやされる「3Dキャラがぬるぬる動く!」それだけとはまた違う,それ以外のぞんざいにされがちな部分がこうなると,こんなにも目が楽しい。ゲーム部分を放ってしまって非常に恐縮だが,個人的にはとにかく画面を見てほしい。UIデザイナーなら,まず悔しがるのかも。
DCGとしてのスタンスは,カジュアルかつスポーツライク。システム面がとても強力なので,それを軸に自分なりのデッキとプレイングを詰めていく。厳しいことを言えば,最近は「カードとボードの新感覚の融合」自体,もはや普遍的な感覚になってきてしまったが,それを踏まえてもファーストインプレッションでマイナスに感じたところはなく,激推ししてしまったUIおよびUX回りで確実に打点を高めている。残念なことに,ロスアカは現在配信中だ。これで遊べない理由もなくなった。
★遊びはじめの小ネタをひとつ
最後に,ゲームを遊びはじめる人への小ネタをひとつ。本作ではデータダウンロードと並行して体験できるチュートリアルの終了後,何度でも引き直しできる「カードパックプレゼント」を受けられる。
ここでは最高レアリティ「レジェンド」も排出されるので,ゲームをはじめた人は「レア2枚きたラッキー」などと納得せず,「最低レジェンド1枚(2枚排出は確認していない。SNSなどの情報共有を待とう)」は狙ってみてほしい。でも,単体狙いはさすがにやめておこう。
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