プレイレポート
miHoYoが乙女ゲーを作ったら!? 本格ミステリーな恋愛ADV「未定事件簿」先行プレイで見えた新時代
「原神」などで知られる中国のメーカーmiHoYoの最新作は,女性向けミステリー恋愛アドベンチャー「未定事件簿」(iOS / Android)。プレイヤーは弁護士として担当案件を調べる過程で,協力してくれる4人の男性と交流を深めていきます。本作の日本版リリースに先駆けて行われたクローズドβテストでは,美しいビジュアルや多彩なモードを体験できました。
本稿では,今回のプレイで見えてきた本作の魅力を詳しくお届けします。なお,システムの紹介のためスクリーンショットなどを掲載していますが,犯人や動機,トリックなどのネタバレは避けております。
※本記事のスクリーンショットは,クローズドβテスト時の画面となります。リリース時とは異なる場合がございますので,ご了承ください。
「未定事件簿」公式サイト
ともに事件を追う4人の男性たち
本作は架空の都市“ステラ市”が舞台。現代的な整った街並みの都会ですが,近年は精神異常をきたす人や失踪事件が増えているようです。弁護士である主人公は,そんな異常な事件の数々“未定事件簿”を人知れず調査している組織に参加することになります。そこで彼女と深く関わる4人の男性を見ていきましょう。
水無瀬夏彦(みなせ なつひこ)
CV:梶 裕貴
私立探偵で,主人公の幼なじみ。24歳。笑顔の絶えない明るい性格。大学では生物工学を専攻し,修士号を取得。現在は古物屋“タイムズショップ”を営みつつ,その2階に探偵事務所を構えている。主人公とは大学進学を境に久しく会っていなかったが,ある案件の調査で再会を果たす。ホームズのファン。
左京静真(さきょう しずま)
CV:諏訪部順一
テミス法律事務所のエリート弁護士で,主人公の先輩。29歳。合格率が極めて低い“上級弁護士”であり,高い勝訴率を誇るスター弁護士。感情に左右されない冷静さを持ち,近寄りがたく思われがちだが,相手をよく見ていて気遣う一面も。主人公の資質を評価し,業務のパートナーとして誘う。
和泉 景(いずみ けい)
CV:石川界人
財閥・パックスグループの御曹司。21歳。ある事件で主人公に弁護を依頼する。芸術をこよなく愛し,大学で油絵を学ぶかたわら,パックスグループの専務取締役として経営に携わる。セレブな金銭感覚や自由奔放さで主人公をよく振り回すが,いざというとき,頼りになる存在。
森月 黎(もりつき れい)
CV:福山 潤
精神科医であり,心理学者として教壇に立つこともある。27歳。左京のお使いでやって来た主人公に興味を抱く。ルックスと優雅な振る舞いでマスコミからも注目されているが,その素性は謎が多い。心理学の観点から証言者の嘘を見抜くなど,主人公の調査を手助けする。
彼のふとした視線にドキッ!
美麗イラストがスルスル動く
彼らの人となりは仕草にもよく表れています。会話シーンでは目パチ口パクだけでなく,髪や服が揺れることで息遣いが感じられるなど,話の流れによって表情が滑らかに変わります。手元を見ていた彼の視線が,ふっとこちらに向けられる場面なんて,あまりの生っぽさにドギマギしてしまいました。昨今ではイラストがアニメーションするゲームは珍しくはないですが,本作は使いどころ,動かしどころのセンスが抜群ですね。
自然なモーションは,彼らとのビデオ通話でポテンシャルを最大限に発揮。繊細な表情の変化に目が釘付けです。ストーリー中などでかけた電話やメッセージの履歴は,ホーム画面のスマホアイコンからメニューを開くことでいつでも再生できます。
アニメーションではないですが,差し込まれるイラストカットも乙女心を的確に突いています。森月の繊細な指先や,左京のスッとした男性らしい手をアップにするとか,分かってらっしゃる……!
調査&舌戦の先に見えてくる真実!
引き込まれる本格ミステリー
メインストーリーである“事件簿”では,章ごとに異なる事件に挑みます。各章はストーリーや現場検証などのパートで構成されており,そのなかで情報を集めながら裁判での勝利を目指します。ここでは具体的な調査の流れを紹介しましょう。なお,各パートをプレイするには一定の体力を消費しますが,体力は時間とともに回復します(ストーリーパートは初回のみ体力消費で,以降は体力不要で何度でもプレイ可能です)。
◆対話と観察で手掛かりを見つける
依頼人や関係者との対話から事件の詳細を引き出します。相手の様子がおかしい場合は,観察モードへと自動的に移行。カーソルを動かして怪しい部分に注目し,それが何を意味するのか推察します。
◆現場検証で証拠を探す
3Dで描かれた事件現場では,気になるものにタップして証拠が残されていないか調べます。なかなか見つけられないときは,画面左上の虫眼鏡アイコンを押してヒント機能を使ってみましょう。証拠品がハイライトされます。関係ないものでも,調べると主人公や同行者である組織メンバーのコメントが見られますよ。また,一部の証拠品は3Dモデルを回転したりタップしたりすることでさらなる情報が得られます。
◆情報をまとめて推理
ある程度手掛かりが得られたら,推理するパートに移行します。関連しそうな事柄を二つ組み合わせて疑問を解消しましょう。ここでミスしてもペナルティはないうえ,間違えている部分が分かるので,推理が苦手だという方も心配無用です。
◆突然の妨害!? 絡んでくる人々を論破しよう
各パートの合間に,事件とは無関係な人物とのバトルが発生します。彼らのとんでもないイチャモンに反論し,相手の自信値(HP)をゼロにして退けましょう。このとき,主人公の力となるのが4人の男性たちの“思い出”です。思い出はガチャなどで獲得できる,いわばカードのようなもの。それぞれレアリティや属性,スキルなどを持っています。
これら思い出で組んだデッキから,場にランダムで思い出が配られます。そのなかから1枚を選ぶことで,相手にダメージを与えるのです。指定のターン数以内に相手を倒せば勝利となりますが,ターンが尽きたり主人公のHPがゼロになったりすると負けてしまいます。章を進めるにつれ相手も強くなっていくので,勝てなくなってきたら思い出のレベルを上げて強化したり,デッキの編成を見直したりしてみましょう。
◆いよいよ開廷! 証拠と弁論で勝利をもぎ取る!!
厳かな法廷で行われる裁判パートは,まさに章のクライマックス。相対する弁護士や検察官の陳述を覆すべく,これまでの調査で得た証拠を挙げていきます。ここでもミスした際のペナルティはありませんが,裁判の終盤で発生する被告や証人との弁論には勝たねばなりません。見事,勝利すれば審理の結果も勝訴となります。案件が解決すれば,新たな章がオープンします。
個人ストーリーや触れ合いに
心ときめいて
本作はメインストーリーのほかにもたくさんのコンテンツが用意されています。彼らに会いにいける“訪問”メニューからは,恋模様が描かれる“個人ストーリー”,タッチやミニゲームで好感度を高める“交流”が行えます。個人ストーリーも進め方はメインストーリーと同様ですが,続きの物語を開放するには好感度を満たす必要があります。
訪問画面では,彼らの普段の様子が垣間見られます。ずっと見ていたいほど美麗……。個人ストーリーなどの項目を選んだ際にこちらを見てくれるのもたまりません。
ミニゲームはババ抜きやジャンケンなど。反応にも彼らの性格がよく出ています。
組織の基地で
強化に必要な素材をゲット!
メインストーリーを進めると,主人公が加入する組織NXX(エヌトゥーエックス)の基地に入れるようになります。ここでは各種施設を利用して,思い出の強化に使用する素材などを集められます。
基地内は近未来的でカッコイイ。メインストーリーの進行度に沿ってメンバーが1人ずつ姿を現すようになります。三つある施設のうち,“資料申請”と“資料室”はおもに一定時間が経過することで素材が手に入る仕組みになっています。三つめの“研修室”は主人公のHPアップや,デッキの底上げを図るメニューで,スキルツリーのような形式になっています。
基地ではこれまで関わった事件のデータも閲覧できます。コードネームでの記載ですが,組織のメンバーたちが書き添えたメモなども見られます。もし調査の途中でお話が分からなくなってしまったら,ここで事件を振り返ってみることをオススメします。ステラ市のことや学術用語などを知りたい場合は,ホーム画面のスマホアイコンから見られる“BDCラボ”で閲覧できますよ。
まさかのレトロゲーム風モード
“女神の試練”
本作にはギリシャ神話をモチーフにしたミニゲーム“女神の試練”も収録されています。こちらもメインストーリーを進めることで解禁されるものですが,レトロゲーム風のビジュアルがインパクト大。なんとサウンドもピコピコな音色になっているこだわりようです。女神テミスの生まれ変わりである少女となり,世界を救うという内容ですが,ゲームは宝箱や敵とのバトルなどを選んでいくだけの簡単操作。バトルでは本編同様に弁論で対決します。クリア報酬として思い出の強化素材などが得られるので,積極的にプレイしたいですね。
思い出の強化素材を獲得できるモードは女神の試練だけではありません。曜日ごとの“素材クエスト”や,メインストーリーのハードモードに当たる“異常”。これらはバトルのみのステージなのでサクサクと進められます。ちなみに一度クリアすれば,自動でプレイしてくれる周回モードが利用可能になります。
楽しいミニゲームはイベントでも追加されていくようです。今回はクローズドβテスト用イベントとして,パズルの“甘い一時”がプレイできました。イベントミッションのお題をクリアしてパズルのピースを集め,イラストの完成を目指します。一定の完成度に達するごとに,通貨などのご褒美がもらえました。正式サービス開始後も,絵柄は違えど同様のパズルを配信予定とのことで,楽しみですね。
メンバーのことがもっと好きになる!
魅力あふれる仕掛けの数々
ここまで紹介したとおり,素材を得る機会が多いのはそれだけ思い出の強化が重要だからです。バトルの推奨戦力に若干及ばなくても,属性やスキルを意識してプレイすれば勝てることはままありますが,そのうち規定ターン内に倒しきれなくなり……。戦力の底上げが課題になってきます。
しかし,バトルで勝つこと以上に,強化を推し進めたくなる理由があります。それは思い出のレベルに応じて開放されるストーリー。こちらは思い出のイラストにまつわるお話が綴られていくもので,先述の個人ストーリーとは異なります。彼らのオフの物語だったり,意外な一面を見せたりする場面が描かれていて「えっ,こんな顔するんだ……」と舞い上がってしまうこと必至です。ただ,ストーリーが収録されているのはレアリティSR以上ですが,レアリティRも捨てたものではありません。
一番低いレアリティのRも“覚醒”による絵柄のグレードアップが可能なのです。もちろん,レアリティが高いほうがより覚醒の段階が多いですし,絵が豪華なのは言うまでもありませんが,どの思い出も育てたくなること請け合いです。
未開放状態でもうっすら覚醒後の絵柄が見えます。これでモチベーションも上がるというもの。覚醒の三段階目ともなると,表情差分だとか装飾が増えたとかそんなレベルじゃありません。「これもう別の絵だよね!?」と興奮してしまうくらいの変貌ぶり。美しいのもそのはず,思い出ストーリーのスチルになっていたりします。
メンバーといえば,主人公もなかなか好感が持てる人物でした。ときおり,ディープな知識を披露したりと弁護士らしい聡明な部分を見せたかと思えば,間違った証拠を提示してしまい「これじゃない!」と頭をかく仕草をしたり。金銭感覚が大きくズレている和泉とのやり取りではジト目の頻度が高く,親近感を抱かせてくれました。
今回は第四章の最後までプレイが可能でしたが,この後もどんな事件に関わっていくのか楽しみですね。また,本作のオープニングで彼女の見ていた不気味な夢も気になるところ。何かを暗示しているのでしょうか……。
今回のクローズドβテストでは,「未定事件簿」がいかに力を注いで作られているかがよく分かりました。イラストや演出,各種モードの充実ぶりは,乙女ゲーム屈指の豪華さと言えると思います。
ミステリーアドベンチャーとして見ても本格的で,チュートリアルを兼ねた第一章こそ明快でしたが,第二章以降の事件背景はどれもそう単純な話ではなく,浮かび上がった真相には驚かされました。どちらかと言うと特殊なトリックを用いた犯行というより,人間関係や動機に重きを置いたシナリオなので,ミステリーに不慣れという方もプレイしやすいのではと思います。
かく言う筆者はミステリーものが大好きですが,登場人物の見えざるつながりを想像しながら読み進めるのも楽しいものでした。事件の複雑さに比例してボリュームもかなりのものなのに,通りがかりの人にまでボイスが入っているのもスゴイですね。
恋愛面での糖度不足を心配される方もいるかもしれませんが,メンバーたちはチラリチラリとですがちゃんと好意を示してくれていました。出会って間もないキャラクターもいるので,このくらいが自然なのかもしれません。個人ストーリーや,思い出のストーリーはよりキュンとするシチュエーションが詰め込まれていますので,糖分補給もご安心を。正式サービスが開始された暁には,彼らの麗しい姿を目いっぱい堪能してください!
「未定事件簿」公式サイト
(C) miHoYo Inc.
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