レビュー
「他者と共に生きる」困難ときらめきを誠実に描く物語。5周年を迎える「魔法使いの約束」を全力でお勧めしたい
他者と共に生きるには,どうすればいいんだろう?小学生の道徳のようなテーマに聞こえるかもしれないが,大人にとってもこれは生々しい問題だ。いや,大人になってからのほうが余計に難しくなっているかもしれない。年を重ねたぶんだけ変に賢くなって,うわべの付き合いがうまくいってしまったり,長くこじらせた気持ちがあっても抑え込んで生きていけてしまったりして,自分の心をむき出しにするタイミングは減った。関わる人は増えるのに,どんどん一人ぼっちになっていくような気すらするのは,どうしてなんだろう。それが大人になるってことなのかもしれないけど,だとしたらこの先の人生の長さは,どうにも寂しいんじゃないか。
そういう問題に漠然とした悩みを抱いている人にこそおすすめしたいのが,colyのスマホ向け育成ゲーム「魔法使いの約束」(iOS / Android)――通称「まほやく」――である。なぜなら,本作のストーリーは,いずれも「他者のいる世界で,長い人生を懸命に生きる」ことの困難ときらめきを,丁寧に切り取っているからだ。
あなたがもし,人生の道のりの長さや,同じ世界を歩く人々との関係に戸惑い,迷っているのなら,ぜひ「魔法使いの約束」をプレイしてほしい。本稿は,その入り口を作るためのレビュー記事である。
あまりにも違う他者と,それでも友人であろうとすること
「魔法使いの約束」の舞台は,人間と魔法使いが共存している異世界だ。ここには〈大いなる厄災〉と呼ばれる巨大な月が存在し,年に一度,世界を破壊するために大接近する。その月を追い返すのが,21人の選ばれし魔法使いだ。プレイヤーは彼らを指揮する「賢者」として召喚され,個性豊かな魔法使いたちと共同生活を送りながら,世界の異変に立ち向かっていく。
魔法使いは,とても個性豊かで,そして人間とは生まれながらに異なる存在だ。魔法を使えるのはもちろんのこと,人間に比べて遥かに長い寿命を持ち,ときには数千年の時を生き抜く。そして死を迎えると,その身体は静かに魔力を帯びた石に変わる。
「僕らは孤独ですよ。どれだけ誰かと一緒にいても、最後はひとりで冷たい石に成り果てる。」
西の国の魔法使いであるラスティカは,あっさりとそう話す。魔法使いたちにとって,孤独は常に前提だ。魔法の力は心で使うから,自分の心を裏切る行為――すなわち,約束を破ること――をすれば,魔力のすべてを失ってしまう。それゆえに,魔法使いは自分の心にしか従えないのだ。
途方もなく長い時間を,自分の心に忠実に過ごす魔法使いの生きざまは,ひとりひとり違ったいびつさを抱えており,他者と折り合うのに適した姿をしているとはあまり言えない。例えば暴力をたったひとつの論理にして生きてきた者と,おのれの美意識を貫くことにすべてを捧げてきた者とが互いをすり合わせるのは,非常に難しいことだ。
そのようなバラバラの21人を束ね,世界の崩壊に対峙すること。賢者に課せられた使命はあまりに大きい。それでも賢者は,ひとりひとりを知ろうと努力し,「この人たちの良き友人でありたい」と望むのである。
この一見きれいごとにしか聞こえない願いを,そのおそろしいまでの困難さを含めてきちんと複雑に描いているのが,「魔法使いの約束」の魅力だろう。ストーリーには,児童文学のような温かみと希望にあふれた語り口と,一秒たりとも息を吐けないような緊張感が,不思議な形で同居している。今はみんなでお茶を囲んでいるけれど,誰かがたった一言余計な言葉を口にすれば,その場のすべてが崩壊してもおかしくないと,全員が理解している――そんな明るさと不穏さの奇妙なユニゾンが,目が離せなくなるような魅力的な緩急を,物語にもたらしているのだ。
他者と生きる経験は,極めて困難で,とても危うく,それ以上に愛おしい。「魔法使いの約束」は,それを熟知したうえで,あまりにも違う他者と共に生きるための懸命な交流を描き出している。
膠着した人間ドラマがほどける瞬間
そして「魔法使いの約束」の大きな魅力の一つが,魔法使い同士の関係性だろう。21人の魔法使いたちの中には,かつての相棒,かつての主従,師弟関係など,さまざまな絆を持つ者たちがいる。その複雑な絆が絡み合って生まれる人間ドラマは,極めて魅力的だ。
例えば東の魔法使いであるファウストは,もともと中央の国で人間の友人であるアレクらとともに革命を先導したが,魔法使いであるがゆえにアレクに疑われ,ついにはアレク本人から火あぶりにされるに至った。命からがら逃げ出したファウストは,最も近しい部下であった魔法使いのレノックスをも遠ざけて,東の国の奥地に蟄居してしまうのだ。残されたレノックスは,ファウストを求めて400年もの間世界をさまよい続けることとなる。
ファウストの青春は,アレクという得難い友人とのかけがえのない時間であり,それ以上に人間に対する絶望的なトラウマだった。そしてレノックスにとってファウストは,自らを革命へと立ち上がらせてくれた運命的な存在だが,同時に自らがファウストの青春の生き証人であるがゆえに,自分がまた接近すれば相手を脅かしてしまうのではないか,と考えざるを得ない対象なのだ。
ファウストはレノックスに,自分のことなど忘れて自由になってほしいと願っている。レノックスはファウストに,トラウマから遠ざかった今の暮らしを大切にしてほしいと思いつつ,もう一度自分をそばに置いてほしいと望んでいる。二人は偶然なのか必然なのか,今では同じ魔法舎で暮らしているが,双方が双方の幸福を願っているがゆえに,どうしても互いの手を取り合えない。
このように,「魔法使いの約束」は,長い時間を生きていく過程で奇妙な形に育ってしまった関係性がいくつも登場する。愛と憎しみでこじれにこじれていたり,「約束」のせいで関係性が歪んでしまっていたりと,その状況は人によってさまざまだ。プレイヤーは賢者としてそれを目前にし,どうしても考えざるを得ない。何か,この人たちによりよい未来を手渡すための手伝いができないものだろうか,と。
もちろん事態は簡単には動かない。数百年単位で重ねられた他者と他者との関係性に対して,第三者として介入できる余地は,必ずしも大きくない。うまくやろうと足掻いて,結果として何もできないこともたくさんある。
だが一瞬,ほんのわずかな時間かもしれないが,そのような困難な関係性がほどけるような瞬間が存在することも真実なのだ。もしかしたら,新しい関係性がこの先に築き直せるのではないか――他者と共に過ごすことが,そう信じたくなるような経験をもたらす。「魔法使いの約束」はそんな修復や再構築の兆しを丁寧に描くから,プレイヤーもまた,すべてを諦める必要はないんだと気付かされるのである。
あなたの思いを,誰も笑わない
さらに,「魔法使いの約束」で描かれる絆は,決してキャラクター同士のそれに限られない。ときには人でも魔法使いでもないものに対する深い思いが,ストーリーの主役になることもある。
「魔法使いは、心で魔法を使います。だから、愛が大好きなんですよ。同時に、愛が恐ろしくて、怖いんです。」「そのくせ、男にも、女にも、動物にも、星にも、魔法使いは恋をします。」「風に恋をして、世界中を追いかけて、花を恐れて、世界中を闇に覆おうとして、一生を終える魔法使いもいます。」「馬鹿らしいかもしれませんが、どうか、笑わないでください。賢者様。」
西の国の魔法使いシャイロックは,魔法使いの生き方をそのように説明する。魔法使いは自分の心に一途であるがゆえに,はたから見ると理解できない行動に人生を捧げる者が少なくないのだ。実際,物語の中には,人でも魔法使いでもないものに深い思いを寄せる魔法使いたちが多く登場する。
西の国の魔法使いムルは,〈大いなる厄災〉に恋焦がれるあまり月に接近しすぎて,魂を砕かれてしまったキャラクターだ。そのせいで記憶は混濁し,人格も魂が砕ける以前と以後とで違ったものになっている。世界を脅かす存在である月に恋をすることは,作中世界であってもクレイジーだし,周囲の魔法使いもそう思っている。だが,彼らは決してそれを嘲笑したり,くだらないことだとは言わないのだ。
ほかにも,イベントストーリー「雨宿りのカエルのエチュード」では,100年前に鳥にさらわれた最愛のカエル・クロ―ロスと再会するために,雨の降りやまない移動庭園を造ってクロ―ロスを探し続ける魔法使いが登場する。「硝子の塔と祝福のレガーロ」には,塔に恋をして添い遂げる魔法使いが出てくる。これらの物語においても,魔法使いたちは決してその愛を笑うことなく,最大限の祝福で受け止めるのである。
これらのストーリーでは,何を大切に思うのも自由だし,どんな相手に恋するのも自由だというメッセージが,魔法使いたちの態度のなかで告げられる。そのような物語の存在は,さまざまな形で自分の思いに悩んでいる人の救いになるだろう。
「魔法使いの約束」,始めるなら今
以上,「魔法使いの約束」の魅力について,「他者と生きること」に焦点を当てて解説を加えてきた。説明しきれなかった部分も多々あるので,少しでも関心を持ってもらえたならば,ぜひゲームをインストールしてほしい。
ゲーム内では,11月26日に5周年を迎えることを記念し,間もなくアニバーサリーイベントが開始される予定だ(2024年11月17日18:00から)。5周年を記念した無料ガチャやカウントダウンログインボーナスなども用意されているので,まさに「今が始めどき」と言えるだろう。
コンサートも開催予定
なんとなく人間関係にむなしさを覚えるとき,人生に期待するのをやめたいと思ってしまうとき,もしかしたらその心を支えてくれるのは物語かもしれない。「魔法使いの約束」がもたらしてくれる希望に,あなたも騙されたと思って,一度身を委ねてみてはいかがだろうか。
「魔法使いの約束」公式サイト
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(C)coly
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