インタビュー
今回もすごい地獄が待っている。祁答院 慎氏ら「Death end re;Quest2」開発スタッフに話を聞いた
そんな本作について,本作のプロデューサーである東風輪敬久氏,ディレクターの野村 祥氏,キャラクターデザインのナナメダケイ氏,そしてシナリオライターの祁答院 慎氏に話を聞いた。
「Death end re;Quest2」公式サイト
よりホラー描写がパワーアップした「Death end re;Quest2」
よろしくお願いします。祁答院さんにもご同席いただけたので,まずは本作の物語におけるコンセプトから教えてください。
祁答院 慎氏(以下,祁答院氏):
「Death end re;Quest2」は,前作にもあった「オカルト」の要素によりフォーカスし,ホラー的な方向性を強めようというコンセプトから生まれました。怖さは前作よりパワーアップしていると思います。平和な日常がどんどん壊れていく様が個人的にも好きなので,こだわって書かせていただきました。
東風輪敬久氏(以下,東風輪氏):
個人的にも祁答院さんのシナリオが大好きなので,持ち味を最大限に出してもらうためにはどういうものがいいだろう……と考えて,今回は女子寮もので行こうと。
野村 祥氏(以下,野村氏):
祁答院さんらしさが振り切れていて,残酷描写も本当にすごいんです。デバッグチームでも気分が悪くなった人が出たほどですから。CERO「D」(17才以上対象)のギリギリを攻めた感じで,泣く泣く削ったシーンもたくさんあります。
ナナメダケイ氏(以下,ナナメダ氏):
なんといっても,冒頭からショッキングなシーンがありますからね。
野村氏:
あれでも半分以上削っているんですが……。
そのぶんは演出面の強化でカバーしています。
野村氏:
音などが想像力を刺激するので,絵がないほうがかえって怖いかもしれませんね。
祁答院氏:
今回はホラー描写にしろ,キャラクターの数にしろ,僕のワガママを聞いていただいたところがありました。キャラクターデザインの手間が何倍にもなったナナメダさんを始め,皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
4Gamer:
舞台となるリズ・ショアラと,女子寮ワーズワースはどういった場所になるんですか。
祁答院氏:
リズ・ショアラにはモデルがありますが,基本的には架空の街です。現代日本でのお話だった前作からはガラッと変えたいということで,洋風ホラーにふさわしい街になっています。ワーズワースは,身寄りがなかったり,辛い境遇にあっていたりする子供達が集まる女子寮です。寮母の「ミドラ」が母親代わりに世話をしていて,新しい家族の集まりという側面もあります。
4Gamer:
主人公の「まい」はそんなリズ・ショアラにやって来て,ワーズワースに入寮することになりますが,そこからどのように物語が展開していくのでしょう。
祁答院氏:
もともと,まいがワーズワース行きを希望したのは,妹の「さなえ」がそこにいたからです。しかし,実際にはさなえはおらず,寮生達も彼女のことを知らないというばかりなので,まいは疑いの心を抱きます。
そこに,ミドラの娘である「ロット」が猛アタックをかけてきて,少しずつ心を開いていくんです。そして,悪魔祓い師を目指す「リリアナ」を加えて,3人でさなえを探していくことになります。
4Gamer:
最初は周囲を信じられなかったまいが,だんだん打ち解けていくわけですね。
祁答院氏:
ただ,リズ・ショアラは夜になると呪いに侵食されてモンスターが徘徊する街です。住人達は夜の12時を過ぎると外へ出ないんですが,まいはそこに何か秘密があるんじゃないかと考えて,夜な夜な探索に行くことになります。ストーリーが進むと寮生達が惨劇に巻き込まれていくので,仲良くなるほどあとが辛いわけです(笑)。
4Gamer:
それはひどい……。
今回も選択を間違えるとバッドエンドに直行するのでしょうか?
祁答院氏:
そうですね。ただ今回はどの選択肢を選ぶと助かるか,ある程度は推理できるようになっています。また本作には「バッドエンドをコレクションする」という裏コンセプトがあって,凄惨なバッドエンドがたくさん用意されていますから,あえて間違った選択をするという楽しみ方もできますよ。
4Gamer:
そもそもバッドエンドをコレクションするというのが,すごい発想ですよね。
自主規制でだいぶカットしましたが,それでもかなりボリュームがあります。今回はバッドエンドの8〜9割に専用のCGがあり,描写も前作よりねっとりとしています。台詞はもちろんフルボイスなので,声優さんにもしっかりと演技していただきました。
ナナメダ氏:
前作をプレイされた方から「バッドエンドにもCGが欲しい」というお声を多くいただいていたので,どこまでやれるか試行錯誤しつつの制作でしたね。
4Gamer:
前作では声優さんによるバッドエンドの演技を聞いているだけでも辛かったのに,そこに絵まで付いてしまったら……。
前作の謎に決着をつけつつ,新規の人にも楽しめる物語に
4Gamer:
本作では舞台だけでなく主人公達も一新されていますが,とくに注目してほしいキャラクターはいますか。
祁答院氏:
みんな等しく好きですが,あえて言うならロットちゃんですね。プロットを作るうえで狂言回しとしていろいろ活躍してくれましたし,まいが心を開くきっかけになる子でもありますから。少し抜けている感じが可愛いんですが,ナナメダさんがイメージどおりのデザインにしてくださいました。
万人受けするのとは少し違った方向性を持つまい,まだ幼いけれど頭がいいリリアナ,そしてこのロットと,3人がいいバランスでうまくお話を回してくれた感じですね。
ナナメダ氏:
どのキャラクターも,デザインに関しては基本的に僕にお任せいただいたんですが,リリアナだけは「白い感じにしてほしい」という祁答院さんからの要望があり,現在の形になっています。最初期はみんなが同じワーズワースの制服を着ていて,もっとモノトーンな感じでした。ただ,それだと並んだときに似たような感じになってしまうので,主人公の3人は上着の色やデザインなどで差別化しています。
4Gamer:
さらには20人以上の寮生が登場するので,こちらの描き分けも大変そうですね。
ナナメダ氏:
僕がメインで進めつつ,一部,サポートのスタッフに入ってもらったりもしましたが,キャラクターの個性を反映しつつ,かつ見た目が被らないようにデザインしていくのには苦労しました。
4Gamer:
これだけのキャラクター数になると,シナリオ制作でもかなりの苦労があったのではないでしょうか。
野村氏:
人数が多いので,当然ですが会話の回し方やシナリオの組み立てにはかなり時間をかけています。今回はサブシナリオだけでも80〜90個が存在していて,プレイヤーさんが見る順番によっては印象が変わったり,矛盾が出たりもしますので,そうしたことのないように構成しつつ,祁答院さんの世界観に落とし込んでいくのが大変でしたね。
4Gamer:
その中でも,とくに気を配った点はありますか。
野村氏:
寮生達が惨劇に巻き込まれるにしても,プレイヤーさんに愛着を持ってもらったうえでないと演出的な効果が薄いので,「一度見れば名前を覚えてもらえるように」というところを心がけています。
4Gamer:
確かに,記憶に残っていないキャラクターが惨劇に巻き込まれるよりは,見知った人のほうが怖く感じられますからね。
野村氏:
そうですね。そのために,テストプレイのあとでテスターさんに「寮生全員の名前を言えるかどうか」を確認したりもしました。ただ,ワーズワースは基本的にまい達が帰ってくる家としての場所なので,そこでの会話は寮生との日常生活を楽しんでいただけるようになっています。
4Gamer:
では,前作とのつながりはいかがでしょうか。公式サイトでは前作の主人公である「二ノ宮しいな」「水梨 新」も紹介されていますが。
祁答院氏:
本作は,前作のエンディングから1年後の話で,しいなについては敵か味方か分からないような形で,まいの前に姿を現します。新は何らかの理由で姿を消しているので,前作のあとに何が起きたのかも楽しみにしていてください。
野村氏:
ほかにも,前作のキャラクターはほぼ全員が登場します。前作に残されていた謎も解決されて,物語を追い続けてくださったプレイヤーさんも納得していただけるものになっています。本作からプレイされる方はまい視点で楽しんでいただけますし,前作の振り返りもあります。このあたりは祁答院さんの力量で,皆さんが楽しめるようなものにしていただけたので,ぜひ期待してください。
4Gamer:
気になるキャラクターと言えば,どこかで見たような人物が登場するようですが……。
祁答院氏:
「カジータ・ロッソ」ですね。見てのとおり,マフィア梶田さんがモデルになっていて,オカルト好きの間で噂になっているリズ・ショアラの調査にやって来た,伝説の冒険家という設定です。ご本人のキャラクターそのままに大活躍し,まい達のピンチを救ってくれたりもしますが,女子寮には入れないのでメインストーリーには絡みません(笑)。ゲスト的なイメージですね。
野村氏:
声もご本人に当てていただいているんですが,台詞についてもいろいろとご提案いただきました。
祁答院氏:
「ここはあまり自分に寄せすぎずに,カジータ・ロッソの台詞としてはこんな風にしたほうがいいのでは?」といった感じで,真摯に作品と向き合ってくださいました。
4Gamer:
カジータ・ロッソの活躍にも注目ですね(笑)。
爽快感重視の方向に舵を切ったバトルシステム
4Gamer:
続いて,ゲームシステムの概要についても改めてご紹介ください。
野村氏:
「昼」パートはワーズワースを舞台としたアドベンチャー,「夜」パートはモンスターが徘徊するリズ・ショアラを探索するRPGという構成になっており,「帰ってくるホームとしての平穏な昼,異世界の夜」がコンセプトです。基本的に,ワーズワースは探索で大変な目に遭ったあとに安堵できる場所なんですが,前作同様に呪いの侵食が進んでしまい,いろいろと大変なことになっていきます。
4Gamer:
RPGとなる「夜」パートの探索はどのようなものでしょうか。
野村氏:
イメージとしては前作におけるダンジョン探索に近いのですが,今回は普通に歩いているだけでもまい達がいろいろと会話をしてくれるというように,コミカルさやキャラクター性もしっかり演出されています。そうした中で,残酷な事件が起こっていくわけです。
祁答院氏:
会話が多いから,ダンジョンを歩くのが楽しいんですよね。
野村氏:
1万5000ワードにおよぶ会話を作り込んでいて,パーティメンバーの組み合わせで内容が変化するのはもちろん,目的地と違う場所へ行った場合にも専用の会話があったりします。
4Gamer:
それはかなりの量ですね。
野村氏:
本来はプレイヤーさんを迷わせないために用意したものだったんですが,「会話があるということは,この先に何かあるかも?」と逆に迷わせてしまうことになるかもしれません(笑)。いろいろと探して楽しんでみてください。
4Gamer:
ダンジョン探索におけるギミックはどのようなものになっていますか。
野村氏:
こちらも,前作同様の「バグアクション」が用意されています。今回はただボタンを押すだけでなく,プレイヤーさんが自分で操作するようなものになっていて,例えばまいは街のあちこちにある監視カメラをハッキング可能です。プレイヤーさんが自分で監視カメラを動かして,ギミックを見つけ出すという感じですね。
4Gamer:
バトルは前作からどのように変化しているのでしょう。
野村氏:
前作のコンセプトは「メリットとデメリットを取捨選択する」ものでしたが,今回は基本的に「メリットが重なっていく」というバトルになっています。
4Gamer:
大きな方向転換ですね。
野村氏:
そうした部分が色濃く表れているのが「グリッジスタイル」でしょうか。地面にある「呪い床」(前作の「フィールドバグ」)を踏んだり,敵から攻撃を受けたりすると「汚染度」が上がり,80%以上になると変身してパワーアップするというシステムです。
前作では汚染度が100%になるとキャラクターが行動不能になりましたが,今回は何のデメリットもありません。さらに,毎回の戦闘でグリッジスタイルになれるくらいに調整しているので,ガンガン変身して敵を蹴散らしてほしいですね。
4Gamer:
爽快感重視の調整になっていると。
野村氏:
敵をおはじきのように,ほかの敵や味方キャラクターにぶつけてダメージを与える「ノックバグ」も,吹き飛ばす距離が3〜4倍に伸びています。また,特定の攻撃時にタイミング良くボタンを押すと,今回追加された「スーパーノックバグ」となり,吹き飛ばす距離がさらに伸びるうえ,ぶつけた際のダメージが倍々に上昇していくのでかなり爽快ですよ。
4Gamer:
そういえば,戦闘中に味方を助けてくれる「バグゥ」やグリッジスタイルに変身中のデザインは,今回も虫をモチーフにしているんですよね。
ナナメダ氏:
ええ,“バグ”を“虫”として表現するのがシリーズらしさですからね。まいのバグゥはカタツムリで,デザイン的に記号化しやすいので前々から使いたいと思っていました。ロットは蚊がモチーフになっています。
ただ,リリアナのバグゥについては悩みました。形に特徴があって,あまり良い印象がない虫は前作でほぼ出尽くしていましたので。そこで,いろいろと探したところ見つけたのがウデムシです。害虫ではないんですが“世界三大奇虫”と呼ばれるくらいに見た目のインパクトが強く,バグっぽさもあって,このゲームにぴったりだと思います。
4Gamer:
ウデムシ……。初めて聞く名前ですが,シリーズ化すると虫探しもだんだん大変になっていきますね。
ナナメダ氏:
そうなんですよ。例えばゴキブリは誰もが嫌う害虫ですが,形自体は意外とシンプルなので,害虫であれば何でもアリというわけにはいきません。実はゴキブリのバグゥを作ろうかと考えたこともあったんですが,さすがに害虫としてのインパクトが強すぎるのもあって断念しました(笑)。
4Gamer:
個人的には没になって良かったと思います(笑)。
「青鬼」とのコラボやコンパイルハート史上最大級の2周目要素も
4Gamer:
ところで,本作ではゲーム内で「青鬼」とのコラボが行われるそうですが,これはどういった経緯で実現したのでしょうか。
東風輪氏:
本作の初期コンセプトは「黒い怪異から逃れるゲーム」だったんですが,それならコラボ先は「青鬼」さんしかないだろうというところから,お声がけさせていただきました。
野村氏:
具体的には本編のクリア後に遊べるミニゲームで,青鬼からひたすら逃げるという内容です。原作同様にタンスが置いてあり,そこに隠れることができるんですが,青鬼に見つかってしまう……というようなシーンもあります。
東風輪氏:
無事に逃げ切れるとタイムが記録されるんですが,これが果たして成功する人がいるのかというくらいに難しいです。
野村氏:
社内でもクリアできたのが2人だけでしたからね。祁答院さんにもテストプレイしていただいたんですが,30分かけて全行程の半分進めるかどうかといったところでしたし。
4Gamer:
それはかなり難しそうですね。
野村氏:
ハードだと,クリアできる人がほとんどいないんじゃないだろうか,というくらいに難しいです。ただ,難易度を下げてイージーにすると,誰でもクリアできるくらい緩くなりますし,報酬の青鬼装備もちゃんともらえます。ステータスがものすごくアップする,強い装備ですよ。スタッフの最高記録はノーマルで47秒,ハードでは49秒ですので,ぜひチャレンジしてみてください。
4Gamer:
2周目要素はほかにどういったものがありますか。
野村氏:
今回は「コンパイルハート史上,最も2周目のボリュームが多いゲーム」になっています。東風輪も把握していないような要素をいっぱい仕込んでありますよ(笑)。前作にあった隠しダンジョンもありますし,ほかにも“何か”が仕込まれています。それがシステムなのかシナリオなのかは,乞うご期待といったところでしょうか。
ほかにもDLCとして,しいなのメイド服バージョンを配信予定です。
4Gamer:
楽しみにしています。
では最後に,本作に期待している読者に向けてメッセージをお願いします。
祁答院氏:
「女子寮ものホラー」は,ずっと書きたかったテーマの1つです。いっぱい気持ちを込めて書きましたし,皆さんに無理を聞いていただいたおかげもあって,愛情が持てるゲームに仕上がりました。今回もすごい地獄が待っていますので,楽しんでいただければと思います。
東風輪氏:
「Death end re;Quest」は,コンパイルハートとしても刺激的なシリーズにしていきたいと考えています。残酷な描写もありますが,プレイしていると自分の趣味趣向が変わっていくような,新しい何かに目覚めてしまう可能性も秘めたゲームに仕上がっていますので,ぜひ楽しんでください。
野村氏:
残酷な運命に立ち向かっていくキャラクター達を見て,一緒になって恐怖や絶望を楽しんでください。あと,良い子は真似しないでくださいね(笑)。
ナナメダ氏:
可愛い女の子がいっぱい出てきて,キャラクター同士の関係性やワイワイとした掛け合いが楽しめます。その一方で「Death end re;Quest」シリーズらしく,いろいろと辛い目に遭ってしまったりもするので,両者のギャップを楽しんでください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Death end re;Quest2」公式サイト
(2020年1月31日収録)
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