インタビュー
[インタビュー]プロトタイプに3年,開発に5年。「BLUE PROTOCOL」は世界中の人達に楽しんでもらうためにすべきことを徹底的に行った
ブルプロは徹底的にこだわったアニメ調のグラフィックスや,初級者から上級者まで幅広く楽しめるアクション要素など,間口が広く作られている。オンラインゲームの注目作は正式サービスの開始直後,“お祭り”にも似た盛り上がりを見せるが,その点においても今回は大いに期待できるだろう。ベテランのオンラインゲーマーにとっては懐かしく,また,若い世代のゲーマーにとっては新鮮な体験となりそうだ。
今回は,ブルプロの開発・運営作業の陣頭指揮を執る3名にインタビューを行い,その特徴や見どころをはじめ,オンラインゲームとしての設計思想,ゲームに対するアツい想いなど,さまざまな話を聞いてきた。かねてよりブルプロに注目している人はもちろん,本作に最近興味を持ったという人も,ぜひ一読して欲しい。
スタートは8年前!
3年かけたプロトタイプを経て本開発が始まる
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まず最初に,今回のインタビュー記事で皆さんのことを初めて知るという人に向けて,担当されているお仕事について簡単に教えてください。
下岡聡吉氏(以下,下岡氏):
今から約8年前に,バンダイナムコとしてのオリジナルIPを創出するべくPROJECT SKY BLUEを立ち上げました。そして,この世界を象徴し,またIPを牽引するフラッグシップの作品としてブルプロを開発しており,現在はこれらの総指揮を執っています。
4Gamer:
8年も前から開発していたんですね。
下岡氏:
厳密に言うと,PROJECT SKY BLUEを立ち上げてから最初の3年間は,ブルプロのプリプロ,いわゆるプロトタイプを開発していました。それが社内で高く評価されてから,本格的な開発チームを立ち上げたので,実際の開発期間は5年程といえるのかもしれません。
4Gamer:
それでは続きまして,鈴木さんの紹介をお願いします。
鈴木貴宏氏(以下,鈴木氏):
ブルプロの開発作業がある程度進んで,正式サービス開始後の運営面を視野に入れていく必要が生じた時期に,いち運営スタッフとして入社しました。そこから年月が経過するうちに担当する領域が次第に増え,今ではこのような肩書きが付いてしまっています。
下岡氏:
バンダイナムコオンラインの社名にあるとおり,弊社は以前からオンラインゲームを数多く手がけています。ですが,本格的なオンライアクションRPGの長期運営というのは,今回が初めてなんです。これまでのタイトル運営では経験したことのない作業が多く,鈴木さんには助けられています。
4Gamer:
鈴木さんにとって,バンダイナムコオンラインの入社直後はどういった印象でしたか?
鈴木氏:
これまでのオンラインゲーム運営を経て培ってきた常識というか,運営観とのギャップを感じることが多かったですね。
運営施策を行うことによる効果やメリットを開発チームに伝えると共に,それを遂行するために現在何が足りなくて,どのようにして得ていくのかを共有しながら,オンラインアクションRPGの長期運営に耐えうる社内環境を整えていきました。
4Gamer:
ブルプロの開発作業はバンダイナムコスタジオ,つまり,同じグループ企業内で行われています。この点においても,これまで鈴木さんが関わられたタイトルとは大きく違っていると思うのですが,いかがでしょうか。
鈴木氏:
そうですね。ブルプロでは開発チームがすぐ近くにいて,その気になれば直ちにコンタクトも取れます。コミュニケーションが非常に取りやすいですね。
私は運営の立場としてどのような考えを持っているのかを開発者に説明する機会が多いのですが,そういった経験を通じて,私自身も開発側の考えが少しずつ理解できるようになっています。その点においても,ブルプロのプロジェクトに対してはやり応えを感じています。
福崎惠介氏(以下,福崎氏):
僕たち開発側のスタッフにとっても,鈴木さんのような人と一緒に仕事をすることで,運営側の視点がより深く理解できるようになっていますよ。
4Gamer:
では,その開発側のトップである福崎さんについての紹介をお願いします。
福崎氏:
ブルプロの開発チームは規模が大きく,ディレクターも複数名による体制を取っています。各ディレクターに指示を出したり,それぞれが開発してきた成果物に対して最終判断を下したりして,ブルプロ全体の開発作業を進行させています。
4Gamer:
福崎さんは立ち上がりからの参加なんですか?
福崎氏:
プリプロが立ち上がった頃の僕は,別タイトルの開発チームに在籍していて,当時は社内の定例会でブルプロのことを伝え聞いていました。
ここまで大規模なオンラインアクションRPGは,バンダイナムコグループにとっても初めてのことで,しかもUnreal Engine 4を使ってゼロから作っています。定例会で最初に聞いたときは,「これはエグいプロジェクトだな」と思っていました(笑)。ところがプリプロの後に本開発がスタートした頃,開発チームに参加することになったんです。
4Gamer:
ブルプロの開発チームに参加した当時の印象はいかがでしたか。
福崎氏:
プリプロでは,細部のゲームシステムやゲームサイクルなど,オンラインゲームとしての根幹部分の多くが決まっていなかったんです。開発スタッフのオンラインゲームに対する認識もバラバラで,ディレクターとしていったい何から手を付けたらいいのか分からず苦労しましたね。
社内の誰もがブルプロのグラフィックスに魅せられた
4Gamer:
プリプロの段階では,オンラインゲームとしての屋台骨が決まっていなかったわけですね。そういった部分をプロトタイプで真っ先に決めるものだと思ってたので,ちょっと意外に聞こえます。
下岡氏:
普通のゲーム開発ではそうなんですが,ブルプロの場合は特殊でした。
というのもブルプロのプロジェクトが立ち上がった最初のきっかけは,提案した大枠の世界設定に対して,アートディレクターの奥村(※)がビジュアルのプレゼンをしてくれたことなんです。これを見た僕は衝撃を受け,これは自分の人生を賭けるに値するプロジェクトだと確信しました。
そこで,最大の武器になるであろうグラフィックスを中心にしてプリプロを開発しました。つまりブルプロは,ビジュアルを先行させる形で立ち上がったプロジェクトなんです。
※奥村大悟氏:バンダイナムコスタジオ所属のイラストレーター。数多くの「テイルズ オブ」シリーズを手がけ,ブルプロではアートディレクターを担当している
4Gamer:
2019年6月に,ブルプロが一般向けに初公開されたときのことはいまも覚えています。歴戦のオンラインゲーマーも含め,あのグラフィックスを目にして「なんだこれは!?」とザワついていました。
下岡氏:
社内向けにプレゼンを行ったときの反響もすごかったです。
最初に奥村のビジュアルを見せて,そのあといつのまにか実機映像に移り変わっていて,キャラクターが動き始めるというプレゼンを行った時,皆がブルプロのグラフィックスに魅入っていました。「これは完成したらすごいものになる」,「このグラフィックスでマルチプレイを楽しめたら,いったいどうなるんだ?」,「妥協せずに最後までしっかりと作り込むべき」といった,良い評価をたくさん受けたんです。
4Gamer:
では,グラフィックが先行する形で立ち上がったブルプロは,どのようにオンラインゲームとしての骨格を作り上げていったのでしょうか。
福崎氏:
そこからの作業が,本当に大変でした。
先ほども少し言いましたが,オンラインゲームに対する認識がスタッフ間でバラバラだったんですよ。骨組みを検討する前に,オンラインゲームにおける面白さの共通認識を広めるところから始めなければなりませんでした。
下岡氏:
ブルプロの開発チームは数百名規模で,世代やオンラインゲームの遍歴も大きく違います。「ウルティマ オンライン」や「ファイナルファンタジーXI」の頃からプレイしている古強者もいれば,最近のFPSで初めて触れたような若者もいるわけです。そして,オンラインゲームの遍歴が違うということは,プレイスタイルも違うし,ゲームのどの部分に魅力を感じるのかも違います。
4Gamer:
オンラインゲームが人気を博するようになって25年以上が経ちますし,ジェネレーションギャップも生じてそうです。
下岡氏:
僕たち3人は“初期の「ファイナルファンタジーXI」が好き”という部分が共通していて,よく昔話で盛り上がるんです。けれども,そういった面白さが若いスタッフにも伝わるとは限りません。
鈴木氏:
オンラインRPGのプレイスタイルにおいても,ソロプレイが好きな人もいれば,仲間との協力プレイが好きな人もいます。見知らぬ人との一期一会の機会を求める人もいれば,気心の知れたフレンドとまったり遊びたい人もいます。特にスマホが台頭してからは,MMORPGのジャンルに対する認識すら大きく変わりましたよね。
4Gamer:
難しそうな問題ですね。ブルプロでは最終的に,どのように落とし込んだのでしょうか。
下岡氏:
オンラインゲームのどの部分に対して面白さを見い出しているのかは,人それぞれです。だから,そのなかの一部を切り捨てたり,こちらからプレイスタイルを押しつけたりするのは極力したくないと思いました。そして,できる限り幅広いスタイルを許容することを目指したんです。
たとえば現実世界の旅行でも,一人でふらりと行動したり,気心の知れた仲間と行ったり,パックツアーを利用したり,ガイドブックで綿密に調べたりと,いろいろな楽しみ方があるじゃないですか。ブルプロにおいても,プレイヤーが選んだスタイルで楽しめるようにすることが重要であって,そのアプローチを強制したくはなかった。
4Gamer:
ブルプロって各種メニューやUIのカスタマイズ幅がやたらと広いですが,そういった考えがあったんですね。
鈴木氏:
パーティ編成やコミュニケーションにおいても,我々3人は募集システムを使ったり,全体チャットで集めることに馴染みがあります。でも,オートマッチングを使ったり,ボイスチャットでコミュニケーションを取ったりするのが当たり前の人もいますよね。
LINEがメジャーになってからは,スタンプで意思疎通を行うのが当たり前になりましたし,最近のスマホゲームを遊ぶような人にとっては,他プレイヤーと深いコミュニケーションを行う必要性すらあまり感じていないのかもしれません。だからブルプロでは,どのスタイルにも対応しました。お好きなスタイルを選んでいただければと。
4Gamer:
でも,幅広く対応するためのゲーム内環境を整えるのは大変でしょうし,開発スケジュールにも影響を与えそうです。
福崎氏:
まぁ,口で言うほど簡単な作業ではなかったですね(苦笑)。
プレイスタイルの幅を狭めていれば,ブルプロの開発作業はもっと楽だったと思います。また,こういった内容を開発メンバー間で周知させようとしても,「で,それってターゲット層は誰なの?」と聞かれることもしょっちゅうでしたし。
でも僕たちは,オンラインゲームに対して色々な楽しみ方があることを知っています。ブルプロのグラフィックスは世界中の人が興味を持つはずだし,そうやってゲームに来てくれた人に対してプレイスタイルの幅を狭めたり,間口の広さや可能性を損ったりすることは極力したくなかったんです。
“お祭り”を成功させるために必要なこと
4Gamer:
国産かつ新規IPによる大型オンラインゲームがPC向け(※)に展開されることは,たいへんに珍しいです。アニメ絵のグラフィックスを採用したライバル作も多いです。さらにブルプロのビジネスモデルはPay to Winではなく,“Pay to Joy”を標榜しています。そうやって作られるブルプロは,いったい何を持って“成功”だと考えているのでしょうか?
※今後はPlayStation 5とXbox Series X|S版もリリース予定
下岡氏:
最初の自己紹介で話したことにもつながりますが,ブルプロが魅力的なIPとなることです。長きにわたって多くのファンの皆さんに楽しんでもらい,日本だけでなく世界中で認知され,何年か経っても誰かの思い出に残るようなプレイ体験を提供する。PROJECT SKY BLUEと共に,ブルプロがそういった存在になった時に,初めて成功と言えるのではないでしょうか。
4Gamer:
そのためには,ここまで大規模なプロジェクトでなくてはならなかったと。
下岡氏:
私はこれまで,バンダイナムコに関するさまざまなIPや,それらを手がけた先輩方の仕事を見てきました。そうして得た教訓のひとつが,IPの立ち上げを成功させるために最も大事なことのひとつは,一番最初のタイミングで魅力的に感じていただき,多くの方に集まっていただくことです。
よく例えて話すのが“お祭り”です。人が集まることでお祭りが盛り上がり,それに惹かれて遠方からも観光客がやってきて,屋台も軒を並べるなど,さまざまな展開が見込めるようになるわけです。
鈴木氏:
特にオンラインゲームの場合は,たくさんのプレイヤーが集まるタイトルは,そのコミュニティが新たな魅力となり,さらに盛り上がっていきます。逆に最初のお祭りで人を集められなかった場合,そこから挽回するのは極めて難しいでしょう。
福崎氏:
公式番組の『ブルプロ通信』でも紹介している通り,ブルプロではプレイヤーキャラの性能面に直結する課金アイテムが少なく,コンテンツの攻略上も必須のバランスにはしていません。
ブルプロは新規IPで認知度は低いですし,正式サービスの開始後は様子見で来られる方も多いでしょう。そういった状況でPay to Winライクな課金アイテムを押し売りするのは,ブルプロが目指している方法ではありません。仮に僕がプレイヤーだったとしても,そういうのは残念に思うでしょうし。
4Gamer:
確かにそうですね。
福崎氏:
多くの人がブルプロに集まって定着してくれれば,将来的には「こういう価値はどうでしょう?」と新しいアイテムを提案するチャンスが出てくるかもしれません。あるいは,我々にとって思いもよらぬ部分に,皆さんが価値を見いだしてくれるかもしれません。
でも,いずれにせよ,そういったことは現時点で考えることではありません。今は多くの人を集めて,ブルプロがゲームとして楽しい世界であることを理解してもうことを最優先に考えています。
下岡氏:
もちろん企業活動である以上,ブルプロのサービスを続けていくだけの予算が必要ですし,楽しんでいただいた結果としての対価を得ることも大切です。でも,それが一番の目的ではないことは,この場を通じてあらためて強調させてください。新たなIPの創出を成功させることで,さまざまなシナジーも芽生えるでしょうし,目先のことにはとらわれていません。
4Gamer:
たとえばですが,ブルプロが魅力的なオンラインゲームとして周知されれば,他のPROJECT SKY BLUEの展開にも注目してもらえるチャンスが高まるでしょうしね。
下岡氏:
ええ,そういうことです。
4Gamer:
それにしても,ブルプロに対してとんでもないコストが掛けられていることは想像に難くないですし,そういったスタンスでの開発作業を許すバンダイナムコの懐の深さというか,企業としての体力には驚かされます。
下岡氏:
会社的に考えると,1本のゲームを開発するというよりは,IPへの投資に近い感覚なのかもしれませんね。投資額に値するプロジェクトであることを認めてくれたから,ここまで続けることができたわけで。逆に,見合うプロジェクトではないと判断されていたら,ブルプロはもっと早い段階で正式サービスを迎えているか,あるいはキャンセルされていたと思います。
福崎氏:
バンダイナムコって,現場の人間の“モノを作る”意志の力を信じる風潮が強いんですよね。
鈴木氏:
少し前にメタバースのブームが到来したとき,ゲーム業界では“新たな世界を作る”ことが高く評価されていました。あのブームも,ブルプロにとって追い風になったのかもしれません。
下岡氏:
でも,ブルプロが投資に値するプロジェクトかどうか,つまり我々がどれくらい真剣なのかは,相当しっかりと見られていたと思います。ブルプロの開発作業を延期させるたびに,僕は多くの人に説明をし続けてきましたが,そのときのプレッシャーはかなりのものでした(苦笑)。
4Gamer:
その結果,ゲームクリエイターとして存分に作り込むことができたわけですね。でも,その一方で,1日も早く正式サービスを開始して,プレイヤーが楽しむ様を見たいといった別の欲求は無かったのでしょうか。
下岡氏:
それはもちろんあります。むしろ我々3人が最も,1日も早く正式サービスを開始したかった。
でも,自分たちですら納得がいっていないモノを世に出しても,お客さんにはすぐに見限られてしまうでしょう。しかもサービスの開始直後は,ずっと前から期待している熱心なファンが来てくれるわけで,そういった人達を落胆させるのは絶対に嫌でした。
「オンラインゲームだから運営しながら修正していけばいいじゃん」と言われることもあるんですけど,それも良くないと思っています。なので,皆さんに最後に笑ってもらうために,「ごめん,今は泣いてくれ!」という断腸の思いでやってきました。
自分がカスタマイズした主人公を
劇場版アニメのなかに入り込ませて冒険ができる
4Gamer:
それでは続きまして,ブルプロの主な魅力について深掘りをさせてください。やっぱり1番の魅力となると,グラフィックスになるのでしょうか。
鈴木氏:
ええ,そうですね。ブルプロを一言でいうと,「自分がカスタマイズした主人公を,劇場版アニメのなかに入り込ませて冒険ができるオンラインアクションRPG」となります。
4Gamer:
近年では,アニメ絵のグラフィックスを採用したゲームは珍しくないです。他タイトルとの差別化に関しては,どういった部分をアピールされますか?
福崎氏:
単にアニメ絵というだけでなく,画面全体としての統一感が取れている部分に注目してほしいですね。一例を挙げると,キャラクターと背景の親和性が非常に高く,画面全体として,とてもアニメっぽい絵に仕上がっているんですよ。
下岡氏:
そこは奥村と一緒にブルプロを立ち上げた当初から,すごく大事にしているところですね。
ちなみに,プリプロの頃はゲーム的なUIが無かったのですが,その際に撮影したスクリーンショットを見た他のスタッフから,「これは何のアニメ作品?」と聞かれることが多かったですね。
4Gamer:
そのあたりを支える技術面について,軽く紹介をしていただけますか。
福崎氏:
たとえばカメラ視点を動かして,プレイヤーキャラを色々な角度から眺めても,光源の処理なども含めアニメ絵として破綻が少ないです。画面を見るだけでは何も感じないかもしれませんが,これって実は,すごいことを行っているんですよ。
下岡氏:
3Dグラフィックスを採用したアニメーションの制作現場だと,キャラを魅力的に見せるために,カメラの角度によってはキャラクターモデル自体をゆがめて理想の1枚を創ることもあります。“俯瞰煽り”などは角度的にキャラクターの魅力を表現しにくく,このカメラ視点が指定されたら3Dモデルの担当者が身を構えてしまうことも多いです。
そういった3Dでは苦手な角度でも極力魅力的に見せられるように,ブルプロでは適切な処理をリアルタイムで行っています。
福崎氏:
これを実現するために膨大な技術の積み重ねがあるんですけど,あまりにも細かな部分が多すぎて,僕でも全部は把握しきれていません。“よくわからない技術の集合体”という認識です(笑)。
4Gamer:
いずれCEDECの講演で詳しく聞いてみたいですね。
下岡氏:
こういった小さなこだわりの積み重ねが,アニメ絵のゲームが当たり前になった2023年においても,他との差別化につながっています。
しかも,グラフィックスの方向性はプリプロの頃からブレていません。当時から社内で高く評価されていた部分が,8年の歳月をかけて研ぎに研ぎ澄まされて,いまではキレッキレになっています。当時から奥村は,細かい部分ほどしっかりと確認していましたが,あらためて「神は細部に宿る」ということを実感します。
福崎氏:
難しいことを考えずともグラフィックスのすごさを実感しやすいのは,スクリーンショットです。しかも,キャラクターの外見やカメラワークにこだわらず,ゲームプレイ中の何気ないシーンを撮影してみてください。それでもアニメっぽい絵作りになっていて,全体としての違和感も覚えないはずですよ。
4Gamer:
でも見方を変えると,第一印象ではグラフィックスのすごさが100%伝わりきらない,とも言えそうです。アニメ絵によるグラフィックスを採用した他のゲームと安易に比較されることに対しては,どのように考えていますか?
鈴木氏:
確かにコミュニティを眺めていると,「ブルプロは**に勝てるのか?」みたいな話題をよく目にしますね。
私としては,たとえぱっと見で近しい印象を受けたとしても,細部はけっこう違っていると思います。それどころかゲームジャンルも,プレイサイクルも,ビジネスモデルも全然違います。まったく違うゲームという認識ですね。
福崎氏:
ゲームに限りませんけど,他と比較されるのは避けられないですよね。
下岡氏:
それに対しては,僕は違ったことも考えています。
業界的によく勝ち負けとかパイの奪い合いという話が出やすいのですが,そもそも今はひとつのタイトルを遊ぶのではなく,複数を並行して遊ぶのが当たり前の時代だと思うんですよ。
しかもスマホが出てからは,YouTubeとかAmazon Prime Videoとか電子書籍とか,さまざまな娯楽がこの端末1台で楽しめ,スキマ時間や可処分時間の奪い合いも加速しています。そういったなか,ブルプロが“ゲーム”の枠組みのなかで競争するのは視野が狭いというか。ライバル視するのなら,その相手はブルプロ以外の娯楽全部だと思うんですよ。
4Gamer:
なるほど。
下岡氏:
ブルプロは,他のゲームタイトルに勝つことを目標にサービスを行うのではありません。では何を目標としているのかというと,娯楽の選択肢がこれだけ多くある時代において,プレイヤーの娯楽の選択肢のなかのひとつとしてブルプロが認知され,それを維持し続けることです。
もちろん,ブルプロが多くの人にとっての1番の選択肢になってほしいと思いますよ。でも,そういった熱心なファンを囲い込んで他のゲームに逃がさないようにしたり,他にたくさんある娯楽に触れないようにしたいとは考えていません。
4Gamer:
昔のMMORPGなんかは,いかに長時間を遊ばせるかという部分に重きが置かれていて,いわゆる“囲い込み”も激しかったですよね。その辺りの認識も改めねばならないなと思いました。
下岡氏:
なので,他のゲームをライバル視するのではなく,むしろ協力してゲームファンの裾野を広げたいと考えています。今あるパイを切り分けるのではなく,パイ自体をみんなで大きくすれば,切り分けたときにもっと大きくなるのだから。具体的な名前を出すと迷惑を掛けてしまうかもしれないので控えますが,他のゲームメーカーさんからはブルプロにエールをいただいていて,スタッフ一同勇気付けられることも多く,とても感謝しています。
※次ページに続く
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BLUE PROTOCOL
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