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【PR】FFXIVサウンドディレクター祖堅正慶氏が惚れた! オーディオテクニカ「ATH-G1」の魅力をメーカー担当者と熱く語る
2019年7月に,オーディオテクニカが発売したゲーマー向けヘッドセット「ATH-G1」と「ATH-G1WL」は,オーディオ製品の老舗らしい優れた音質と定位感,軽い重量や装着感が評価されて,ゲーマーの間でも好評を得ているようだ(関連記事)。
そんなATH-G1シリーズが,スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」(以下,FFXIV)の推奨認定を取得した。しかも,単に動作検証を行って互換性を確認したというだけでなく,FFXIVのサウンドチームから,非常に高く評価されてのことだという。ATH-G1シリーズのどんなところを,FFXIVのサウンドチームは高く評価しているのだろうか。スクウェア・エニックスにて,FFXIVサウンドチームを率いる祖堅正慶(そけん まさよし)氏と,オーディオテクニカの担当者にインタビューを行い,MMORPGのサウンドとATH-G1シリーズの相性についてを解き明かしてみたい。
※The English version of this article is here.
なお,本稿ではATH-G1シリーズ自体の紹介や評価は行っていないので,
【PR】オーディオテクニカの「ATH-G1」は,高音質&優れた定位感で勝利をもたらすゲーマー向けヘッドセットだ
オーディオテクニカから,ひさしぶりにゲーマー向けヘッドセットの新製品「ATH-G1」が登場した。多彩なオーディオ製品を扱い,プロゲーマーからも評価される名門オーディオメーカーが手がけたピュア・アナログヘッドセットの実力はいかほどのものか。デザインから音質,マイクの品質まで,余すところなくチェックしてみよう。
オーディオテクニカのATH-G1製品情報ページ
「ぜひ推奨を」と強くプッシュした(祖堅氏)
4Gamer:
まずは,皆様の簡単な自己紹介からお願いできますでしょうか。
祖堅正慶氏(以下,祖堅):
平山 優氏(以下,平山):
オーディオテクニカ マーケティング部商品戦略課の平山と申します。商品戦略の中で,民生向けのヘッドフォンを担当しておりまして,ゲームカテゴリも弊社の中ではコンシューマ向けと捉えておりますので,その担当もしています。
植野祐介氏(以下,植野):
オーディオテクニカ 国際営業部コンシューマー営業課の植野と申します。普段は,海外市場向けに弊社製品の販売を行っており,海外市場の声を聞いて,それを物作りに生かすような仕事をしています。
安藤幸三氏(以下,安藤):
オーディオテクニカ 商品開発部の安藤と申します。ヘッドフォンの筐体設計およびアコースティック設計を担当しています。
平山 優氏(オーディオテクニカ マーケティング部商品戦略課 リーダー) |
植野祐介氏(同 国際営業部コンシューマー営業課) |
安藤幸三氏(同 商品開発部 ポータブルリスニング開発2課 マネージャー) |
4Gamer:
そもそも,FFXIVのサウンドチームとオーディオテクニカさんは,ATH-G1以前から交流はあったのでしょうか?
平山:
いえ,なかったですね。
祖堅:
このATH-G1がきっかけでした。(サウンド製品に関する)FFXIVの推奨認定は,
4Gamer:
ゲームメーカー側からプッシュするというのは,ちょっと珍しい話ではありませんか。
祖堅:
短時間,たとえば20〜30分のプレイで終わるというのなら,それでも楽しくプレイできるとは思います。ですが,FFXIVなどのMMORPGのように,長時間プレイすることを前提に作られているゲームには,あまり効果的ではないんですね。僕らが作っているサウンドデザインとも,聞き応えが変わってしまい,こちらの意図と外れてしまいます。
僕らは推奨認定のとき,ダミーヘッドとかも使ってヘッドセットを細かくチェックしているのですが,(FFXIVに適したものは)あまりないんですね。
4Gamer:
そうかもしれませんね。
祖堅:
そうしたなかで,ATH-G1シリーズはすごく優れていたので,強くプッシュして「ぜひ推奨を」という感じで,いただいたお話をさらに膨らませて進めたという感じですね。
4Gamer:
以前から,祖堅さん自身やFFXIVのサウンドチームで,オーディオテクニカのヘッドフォンやヘッドセット製品は使っていたのでしょうか。
祖堅:
ATH-G1がきっかけで,使い始めた人が多いという印象ですね。制作や普段使いでは,オーディオテクニカ製品を使うことがあったのですけれど,ゲーム用ヘッドセットを積極的に使うということは,今までありませんでした。
4Gamer:
祖堅さんご自身は,サウンド制作と音楽のリスニング,あるいはゲームで,それぞれヘッドフォンを使い分けているのでしょうか。
祖堅:
かなり使い分けはしていますね。制作時は,やはりチェックがメインになり,リスニングとは使う脳も聞く耳も違うので,それが分かるようなヘッドフォンを使っています。一方,出勤や移動のときは,音を楽しみたいので楽しめるものを。それから,家に帰って友達とボイスチャットをしながらゲームをするときは,やはりゲーム用ヘッドセットを使うという具合に使い分けています。
4Gamer:
実は,以前にオーディオテクニカさんの企画で,若いプロゲーマーたちにインタビューしたことがあったのですが(関連記事),彼らはオーディオテクニカさんのモニターイヤフォン「ATH-E70」をかなり気に入っており,「ゲームも,音楽を聞くときも全部これです」と言っていたのが印象的でした。それで,サウンドのプロはどうなのかと興味を持っていました。
【PR】R6Sの強豪プロチーム「野良連合」が使うイヤフォン「ATH-E70」は,勝ちにつながるイヤフォンだ
「レインボーシックスシージ」の国際大会で活躍し,世界的にも強豪となった日本のプロゲームチーム「野良連合」。その選手たちが日常的に使っているイヤフォンは,ゲーマー向け製品ではなく,オーディオテクニカ製のモニター用イヤフォン「ATH-E70」だ。世界で戦うeスポーツ選手がATH-E70を選んだ理由をインタビューで解き明かしてみたい。
祖堅:
4Gamer:
一方,1人のゲーマーとしてゲーム用のヘッドセットを選ぶときは,どういった点を重視しているのでしょうか。
祖堅:
ポイントとしては,やはりゲームサウンドの情報がしっかり聞こえること。迫力を求めてドンシャリになるヘッドフォンも,それはそれでコンセプトとしてはいいと思うのですが,必要な情報が入ってこないことが多いのですね。迫力を増すことによって低音は聞こえますが,その低音につぶされて,たとえば敵の足音が聞こえないとか。
FFXIVで僕らは,環境音にすごくこだわって(サウンドを)作っていまして,今,広い空間にいるのか,それとも閉じた空間にいるのかというのを,心理的に分からせる音を実は混ぜています。しかし,(音の)解像度が高くないと,これは聞こえない音なんですね。
絵でたとえますと,たとえばディスプレイのサイズが同じでも,4K解像度とハーフHD(※1280×720)だと,ぜんぜん解像度が違いますよね。それと同じくらい音にも解像度というものがあって,よりしっかり細かい音までバランス良く聞こえるか,それとも,荒々しいけれども迫力ある音に聞こえるかというのは,ぜんぜん違ったベクトルなのです。
それを追求していくと,バトルのときはより盛り上がるけれど,なんでもないときはラウドネス値(※人間が感じる主観的な音量)も低くなるように聴き疲れしないということを制作段階からかなり意識して作っているので,それを表現できるヘッドセットを推奨認定における1つの大きな柱としています。
4Gamer:
いまだにゲーマー向けヘッドセットでは,やたらと残響感を効かせたものも少なくないですが,正直,ちょっとそれは違うんじゃないの? というのはありますね。
祖堅:
ただ,それをヘッドフォンで再生する場合,5.1chで作っているサウンドを2chにダウンミックスするのですが,各社のハードウェアが持つ係数でダウンミックスすると,僕らが想定している2chに落としたときの広がり感や狭まり感が変わってしまうのですね。僕らはそこを見越して,(FFXIV内に)独自のダウンミックス係数を用意しています。たとえばPCの場合,サウンドデバイスが2スピーカーであれば,マルチチャンネルで制作しているFFXIVの音は,本来であればOSのダウンミックス係数を通ってステレオ出力されますが,その係数は,我々の狙っている音場空間に対して適切なダウンミックス係数ではないのですね。ですので,OSのダウンミックス回路をバイパスし,僕らが作ったダウンミックス係数を通してステレオ化してからアウトプットすることで,プレイヤー側のステレオ環境で再生するようにしています。普通のゲームだとあまりやらないんじゃないかな。それくらいFFXIVの音響は,こだわってアウトプットしているんですね。
そのため,そうした要求にもしっかり応えてくれるヘッドセットでないと,(ちゃんと)鳴りません。別にそれは,高級品が必要というわけではないんです。やはり相性というか,ヘッドセットでも素材だったり大きさだったりが,僕らのサウンドデザインと噛み合うかどうかが非常に大きなところです。だから,実際にゲームをプレイしてみて,ヘッドセットが良いか悪いかという判断を,たくさんの項目に対して検証しているのです。
4Gamer:
なるほど。それに対して,ATH-G1は合格点を与えられるレベルであった。だから推奨認定を出したと。
祖堅:
合格点どころか,素晴らしかったですね。
平山:
私も,推奨プログラムにおけるスクウェア・エニックスさんでの評価については,少しメールで読んだくらいでしたので,そこまでの時間と手間と,いろいろな角度から評価していたというのを知って,すごくありがたいです。
祖堅:
絵に対して,音は見えないものですから,お金をかけてサウンドデバイスをグレードアップするというのは,ユーザーさんにとって,けっこう勇気がいることだと思うんですね。絵は,お金をかけるとその分だけ見た目で分かるので分かりやすい面がありますが,音はやはり目で見えるものではないから分かりにくい。そういう意味でも,あまり高価格帯ではなく,(ゲーマーが)買える範囲内でいいものになると限られてきます。そんな中でも,ATH-G1は,値段のわりにすごく高性能なので,素晴らしいなと。それが日本のメーカーから,というのがまたよかったですね(笑)。
4Gamer:
サウンド製品を,頻繁に買い換える人はあまりいません。とくに自分の耳に合った物に出会えれば,それこそ5年でも10年でも使い続けたいというのがあるので,「サウンドには,ちょっとお金出してもいいんじゃない?」という方向では訴えたいですね。
世界への没入感やバトルにおける音の味付けが,FFXIVに向いている
4Gamer:
話を戻して,祖堅さん,あるいはFFXIVサウンドチームは,ATH-G1のどこに惚れ込んだのでしょうか。
祖堅:
どんな空間にいるというのが,音をパッと聞いただけでなんとなく分かるという表現力は,実はものすごく難しいことです。いいたとえではないかもしれませんが,たとえば,天気予報で雲の流れをシミュレートするために,現実ではスーパーコンピュータを使って,温度と気圧,何月何日か,海洋温度はとさまざなデータを入力したうえで,すごい計算でシミュレートすることで,雲の細かい流れをアウトプットしますよね。
同じようにサウンドも,強力なコンピュータでシミュレート結果を重ねると,ものすごく自然な音ができます。たとえば,森の中で,細かい風の音や木々がざわめく音,鳥のさえずり,これらがいつ何時,どんなランダムなタイミングで発生して,それが上下左右含めた自分の周囲360度で鳴っているという状況も,再現はできるでしょう。しかし,それを限られた性能のハードウェアで再現するのは,すごく難度が高いことです。CPUになるべく処理負荷をかけずに,再生チャンネル数もなるべく抑えて,より容量を小さくしたうえで再生できるかというと,すごく技術的には難しくなります。
もちろん,この部屋※のようにマルチチャンネルスピーカーで聞けると,鳴っている200〜300の音がすべてリアルタイムに定位して聞こえます。しかし,ヘッドセットでそうはいきませんので,細かい情報を(ヘッドセットの)2スピーカーに向けてダウンミックスしたときに,相性がいいというか,解像度が高いとより分かりやすいというか,気持ちよく,なおかつ長時間気持ちよく聞いていられる音場空間になるように目指しています。
そのうえ,バトルコンテンツがメインとなるゲームシステムなので,そのときにより盛り上がれるかどうか。単純にオールフラットな音でいいかというと,そうでもないので,ヘッドセットにもある程度の味付けはあってほしいんですね。ATH-G1は,その味付けがすごくうちのゲームに向いていたなという印象です。ピュアであり,迫力がある。難しいですけどね(笑)
※インタビューはスクウェア・エニックスのサウンド制作室内で行った。
4Gamer:
たとえば,FFXIVのなかで,ピュアであり迫力があるのが分かりやすいシーンはありますか。
祖堅:
一方,バトルに関しては,没入感は大前提として,敵がどこから来るかという情報や,どれだけやばい技が来るかという情報は,サウンドで知らせる必要があります。爆発音にしても,ガラス交じりの爆発なのか,水交じりの爆発なのかで全然情報量が変わりますし,それに対してプレイヤーがどういうアクションを起こせばいいのかというのも変わってくるので,ゲームのシステムとして大事な情報です。
森の中にいるときや,ハウジングやクラフトで素材を集めているときは,バトルとは全然違うプレイスタイルですが,そのどちらもちゃんと実現できるヘッドセットというのは少ないと思いますね。
4Gamer:
FPSに向いているものと,環境の中で音楽や効果音を楽しむもので,両立できているヘッドセットはあまりないですね。昔のMMORPGは,戦闘中心のゲームで,それに加えてBGMや環境音がそれなりに鳴っている程度でしたが,FFXIV以降は,シングルプレイのゲームと同じように物語も楽しむゲームが出てきた。そうなると,物語を楽しむための音,環境を楽しむための音,バトルを楽しむための音,ヘッドセットにもそれぞれ違うものが要求されてくるわけですね。
少しヘッドセットの話からそれますが,FFXIVの場合,バトル,BGM,環境音とどういう重み付けで,サウンドを制作しているのでしょうか。
祖堅:
FFXIVは,ストーリーを大きな主軸にしているMMORPGです。やはり「ファイナルファンタジー」となると,物語を重視するお客様がたくさんいらっしゃるわけです。ナンバリングのパッケージゲームで作ってきたサウンドデザインと同等のものを作るだけでもすごく大変な作業なのですが,それを満了したうえにプラスして,拡張パッケージも3つ出ているので,とにかく広大な世界があります。
4Gamer:
毎年何回かの大きめなアップデートがあり,拡張パッケージは2年に1回とかもう少し間が空くとしても,AAAレベルほどではなくとも相当な規模がありますから。
祖堅:
4Gamer:
MMORPGで新しい拡張パッケージが出て,新しい舞台が追加されると,そこに行ったときに,カルチャーの違う世界にいるというのを,音楽でも表現してほしい。そして,実際にそういう音楽が聞こえてくるから,「ああ,自分は今,違う世界に来たんだ」というのが,
祖堅:
そうですね。ストーリーを主軸にしていると言いましたが,パッケージゲームを買ったくらいボリューム感のあるゲームプレイ体験を用意するというのが,チームの主軸になっているので,20〜30時間遊べるようなボリュームを用意していくと,おのずとAAAを作ることになっちゃうんですよね(笑)。パッケージゲーム1本分を次の拡張で作るぞという意気込みで作っているタイトルは,けっこう珍しいんじゃないかと思いますね。
平山:
ギネスレコードか何かを取られてましたよね。
祖堅:
ちょうど部屋の外に(認定証が)ありますよ。BGMの曲数が多すぎてギネスをもらったという(笑)。それでも通過点でしかないですけどね。
「ファイナルファンタジーXIV」,パッチ3.55aは2月28日に公開。PS4 Proでより快適にプレイできる対応パッチの実施も明らかに
スクウェア・エニックスは2017年2月18日,19日にドイツ・フランクフルトで,MMORPG「ファイナルファンタジーXIV」のファンイベント「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2016 Frankfurt」を開催した。その2日めに「出張FFXIVプロデューサーレターLIVE in Frankfurt」が行われ,欧州のコミュニティに寄せられたプレイヤーからの質問に吉田直樹氏が回答した。
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- PC:ファイナルファンタジーXIV
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- PC:ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド
- PS4:ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド
- PS3:ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド
- PS3
- MAC:ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド
- PC:ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- PC
- PS4:ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- PS4
- MAC:ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター
- MAC
- ニュース
- イベント
- ライター:宮崎真一
祖堅:
話を戻しましょう。MMORPGの場合,もう1つ特殊なことがあります。同じコンテンツを何回も繰り返してトークンを集めるといったプレイスタイルがあるので,いかに飽きさせないかというのを,かなり綿密に計算してサウンドデザインしているんです。そうなると,20〜30時間遊べる通常のパッケージゲームと比べて,4〜5倍のリソースを用意しないと,やはり音から飽きを感じてしまうんですね。それを飽きさせないための工夫というのを,常時やっている感じです。
4Gamer:
バトル中は,なんらかのBGMがありつつ,エフェクトの音,攻撃の音,攻撃や回復のスキルの音,それから一番重要な,敵が何をしてくるかの音,いろいろあります。そういう音の重み付けで,一番重要な音はどれになるのでしょうか。やはり敵が出す音ですか?
祖堅:
いえ,個々の技の音とインフォメーションですね。これから8人が集まって技を受けなきゃいけない予兆のエフェクトは,やはり必要なインフォメーションとなります。それから,一発逆転のリミットブレイク,いわゆる必殺技を撃つときの音もインフォメーションとして大事です。
敵も必殺技を撃ってくるのですが,ここぞというときに,カットシーンで敵の必殺技が流れるとき,その変調に合わせて曲がストップしたり,曲が切り替わったり,あるいは無音になったり,効果音が派手になったりします。これはすごく大事なインフォメーションなので,ありとあらゆる手を尽くして,より聞こえるにはどうしたらいいかと考えます。たとえば,インフォメーションがボイスだった場合,効果音や音楽を下げないと聞こえません。ですので,ボイスが鳴ったら自動的にBGMトラックと効果音トラックの音量が一定値まで下がり,再生が終わってから戻るダッキングシステムも,随所に入っています。
4Gamer:
なるほど。プレイヤーの立場だと,負けない戦い方を音からもできるというのは確かに重要ですし,MMORPGならではかもしれませんね。
祖堅:
FFXIVでは,パッチと呼ばれる大きなバージョンアップが3か月に1回入るのですが,そのたびに大きなボス級の敵を追加しています。8人で力を合わせないと勝てない強敵なので,見ず知らずの人たちと集まって戦ったとしても,高揚できるように配慮しています。たとえば,ボス戦の後半に向かって曲が切り替わってどんどん激しくなったり,クライマックスでいきなり印象的なボーカル曲が鳴り始めたりですね。それに合わせて,タイミング良く敵が攻撃してくるバトルシーケンスを組んでもらうといった具合で,パッケージゲーム以上の内容に仕上がるよう綿密に,そのうえで,繰り返し遊んでも飽きないようなデザインを心がけていますね。
4Gamer:
先ほどの爆発の話がありましたが,たとえば,石畳のフロアで戦うのと,土の地面,あるいは水浸しの床で,音の聞こえ方は本来は違います。しかし,そこまでサウンドにリソースを割けないゲームですと,そこで音の聞こえ方を変えるということまではできないと思います。しかし,FFXIVはそこを気にしているゲームということですね。
祖堅:
はい。加えてプレイヤーの種族,子供サイズからでかい獣サイズまであり,モンスターも何千体といるのですが,足の種類は全部違うので,当然足音はすべて変えています。そうは言っても,リソースは限られてはいます。無尽蔵に作ってもサウンドの容量が増えるだけなので,いかに少ない容量で違った音に聞こえるかという技術を駆使して,アウトプットしています。
ただ,床の材質が変われば音も絶対に変わるというのは,念入りにやっています。マップは広大ですが,そのすべてに床の材質における違いとか,空間における残響の違いは,マップごとに全部変わるように仕込んであります。
それから,家の中に調度品を置いたり,庭に池を置いたりとか,何百何千というパーツを置けるのですが,そのすべてに効果音が追従しています。「野菜スープ」という小さなアイテムがあるんですが,その中に小さな玩具が落ちると,「ジャブジャブ」と音を立てるというところまで,細かくやっています。やらなくてもいいんでしょうけどね(笑)。
4Gamer:
そこをやるのが。
祖堅:
こだわりですね。たまにプレイヤーさんに発見されて,「細かい!」と言われたりもします。
4Gamer:
たんにストーリーを追ってプレイしているときは,細かいところまでは頭に入ってこないのですが,後で改めて見直す,あるいは別のキャラクターでやり直すときに,「こうだったのか」と再発見することは多いですね。音はとくにそういうものかもしれません。
祖堅:
そうですね。全然違うと思います。FFXIVの場合,ジョブといって職業はかなりあるのですが,それによって効果音はまったくセットが変わるので,かなりバリエーションには富んでいると思います。
いやぁ……作るのは大変っす(笑)。僕は,もう(FFXIVに)足を突っ込んでいるからやりますけど,「もう1本,MMORPG作りたいから」と言われたら絶対断りますね(笑)。
4Gamer:
今,とくにPCメインのゲーマー向けヘッドセットになると,どうしても方向性がeスポーツタイトルに向きがちで,敵がどこにいるかや,誰がどこで何をしたかが分かる音の正確さが,ヘッドセットにおいてなにより重要という印象を受けます。しかし,MMORPGですと,効果音以外の音楽でも盛り上げてほしいし,たとえば新しい街や城に入ったときの環境音や,新しい人物に出会ったときのカットシーンの音でも盛り上げてほしい。そうなると,eスポーツ志向のヘッドセットとは求められるところが違うだろうと思うのですが,ATH-G1は,その点どうだったのでしょうか。
祖堅:
というのも,いくら「FFXIVの推奨商品ですよ」と言っても,ほかのゲームで一切使えないというのはよくないな,と思っています。それはマイクひとつとってもそうで,たとえば,ラジオから聞こえるような声よりも悪い音質になってしまい,ぜんぜん相手の声が聞き取れなくてコミュニケーションができないヘッドセットも中にはあるのですが,そういう物は(推奨から)弾いてしまいます。なぜかと言えば,僕らがゲーマーだからです。ゲーマーとして,ゲームを遊ぶときに必要な情報を得られないヘッドセットは推奨しないです。
だから,今回のATH-G1も,FPSで使ってまったく問題なく,むしろ「これ使えば勝てるんじゃない?」と,僕たちは思っていますね。もちろん,FFXIVに特化して素晴らしいというのは重要な評価軸ですが,ほかのゲームでどうかというのも,しっかり評価の範疇に入っているんですね。そこは,僕らを信用していただければと思います(笑)。
祖堅氏が制作で使うのは,開放型ヘッドフォン「ATH-R70x」
少し話は逸れるが,祖堅氏がサウンド制作の作業で使っているオーディオテクニカ製ヘッドフォン「ATH-R70x」の話題が出た。これも興味深い話だったので,触れておきたい。
4Gamer:
ATH-R70xは,開放型(オープンエア型)ヘッドフォンですね。これはどういう製品なのでしょう。
植野:
4Gamer:
ご先祖的な製品ですか。
平山:
そうですね。2015年から販売しています。
祖堅:
しかし,なにせスケジュールがタイトなので,どうしてもここ(制作室)が空いていないということもあるんですね。それでも,作業しないと間に合わないというときに,これが使えるんです。まるでスピーカーで鳴らしているようなモニタリングができるのがすごいんです。だから,僕は音楽を作るとき,最初からこれを使っています。作業時間を短縮できるんですよね。
4Gamer:
作業時間の短縮は,プロとしては相当に重要ですね。
祖堅:
これがないと,今は作業できないですもん,ホント。
植野:
海外のミュージシャンにも,ツアーでバス生活が続いているような忙しい方はスタジオに入れないので,バスの中でMacとATH-R70xを使って,スピーカー代わりにしてツアー中でも楽曲を制作している人がいる,といった話を聞いたことがありますね。
祖堅:
安藤:
メイドインジャパンなので,成瀬(※オーディオテクニカ 成瀬事業所)で作っていて,これは上司が担当していました。
平山:
これ以前から,背面を密閉しない開放型は,ハイファイホームオーディオ用では商品化していました。その蓄積から,ひとつイノベーションが起きて,スタジオモニタ用でも開放型を出せたわけです。それまで弊社は,密閉型しかありませんでした。
祖堅:
密閉型のも使ったことがありますが,やはり,いわゆるモニターヘッドフォンの音がします。でもATH-R70xは,本当にスピーカーで聞いている感じですね。すごいです,このヘッドフォンは。
安藤:
海外に視察へ行ったときも,「これにマイク付けてくれれば十分だ」という意見が(笑)。けっこう高いんですけどね。
祖堅:
もしかしたらですが,ゲームで使うとなると,少しプレゼンス※が足りないかもしれませんね。
※2kHz〜4kHz付近の周波数帯域のこと。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域である。
植野:
そうですね。先ほどおっしゃられた迫力的なものが。
祖堅:
オーディオテクニカのATH-R70x製品情報ページ
作り手の音をそのまま出力。長時間の着用を想定して低音を少し強調
4Gamer:
そこで改めて伺いたいのですが,
祖堅:
それは僕もすごく聞きたいですね。
平山:
もともと弊社は,以前からゲーム向け製品をやってはいたのですが,このATH-G1とATH-G1 WLで,もう一度しっかりやっていきましょうと仕切り直しをして,製品開発なりマーケティングなりをしっかりと取り組んでいます。
音作りの部分では,今までやってきたこととそんなに変わりません。ヘッドフォンの役割を私共のエンジニアが表現して,入ってきた音をなるべくロスさせずにお客様の耳に届けるというところは,今までの製品もやってきましたし,これでも変わらず,手を抜かずにしっかりと実現しています。
それに加えて,とくにゲーマーのプレイスタイル,たとえば長時間プレイで気になる装着感や重さを考慮して,ATH-G1シリーズは,かなり軽く作っています。軽くというのは重量だけでなく,側圧,耳にギュッと押しつける力も,ATH-G1はかなり軽めに作っています。
4Gamer:
側圧って,お店でちょっと試用しただけだと分かりにくいですよね。購入してしばらく使って,「あれ? これ3時間着けていると痛いな」と分かることもあり,なかなか難しいです。そういう点は,私共でもレビューでフォローしようとしています。
祖堅:
僕からも質問していいですか。どうして,この製品で仕切り直しになったのでしょうか。今までも(ゲーマー向けヘッドセットは)作っていらっしゃいましたよね。
平山:
それに対して今回の製品は,筐体もドライバもすべてがゲーム用ヘッドセットとして一から企画して作ったということです。
祖堅:
なるほど。だからゲーム用途でちゃんとしているんだ。
4Gamer:
そうなると,ATH-G1を作るに当たって,オーディオテクニカはゲーマー向けヘッドセットには何が必要だ,逆に何は切り捨ててもいいと考えたのでしょうか。
植野:
あくまでも,ユーザーさんが長時間使えて,作り手が意図している音を聞いていただけるようなものにしようと。そこが意識したところです。
4Gamer:
音楽鑑賞やホームシアター向けのヘッドフォンと,とにかく忠実で解像感が高いモニター志向のヘッドフォンは,違う方向性だと思うのですが,ATH-G1は,必ずしもモニター用ヘッドフォンを単にゲーム用にしたわけではないですよね。ゲーマー向けとしてどこに重きを置いたのか,どういうバランスを選んだのかに興味があります。
平山:
基本的に私共は,音楽と音,どちらもしっかり再現したい。音だけが鳴っていれば音楽は……ということはなく,入ってきた情報はもらさず足さず,全部出すというところは同じです。
基本的なところはモニター用ヘッドフォンを作るときと同じで,音がスッと素早く立ち上がって,情報がなくなったらスッと消えていく。そこに,ちょっとゲーマー向けの要素,楽しんでいただけるような味付けを少し入っています。
4Gamer:
その楽しめる要素,というのは具体的にどういうことなんでしょうか。
安藤:
ゲーマーの方々にとって,1〜2時間プレイするのは当たり前,多い人にしてみれば7時間くらいやっている。オーストラリアのメルボルンで行われた「PAX Australia」というイベントを視察したときに,そういう話を聞きました。そうすると,従来のヘッドフォンにおける作りとは違う方向性にしないといけないということで,足したとすればそこくらいですね。それを「迫力がある」と感じていただける人もいれば,「ちょっと低音出すぎてるかも」と評価する人もいるかもしれませんが。
平山も申したように,弊社における過去のゲーマー向け製品は,もともとあるヘッドフォンにマイクを付けてゲーム用という,言わば実験的な製品が多かった。それとは全然違う考え方の製品になっていると思います。
平山:
ゲーマーの方向けに,ゼロから作った。有り物を転用したということではないのです。
4Gamer:
PAX Australiaとは,珍しいですね。
植野:
弊社のマーケットで,一番ゲーム向け製品を売っているのがオーストラリアにいる販売部隊なんですね。その部隊が,すごく「ゲーム用ヘッドセットをやるべきだ」と声を挙げていました。普通,海外で展示会ならアメリカへ行くところなんですが,当社はアメリカよりもオーストラリアの人たちのほうがゲーム用ヘッドセットを求める声が大きかった。そういった経緯から,技術者もPAX Australiaに行って,何が求められているのかを持ち帰って,安藤が技術としてそれを製品に落とし込んだわけです。
4Gamer:
私も,以前にeスポーツイベントの取材でオーストラリアのシドニーに行きましたが,人口が少ないわりに,熱心なゲーマーが多いよねという印象を受けました。
安藤:
4Gamer:
イヤーパッドは,合皮製が多いですよね。
安藤:
密閉するほうが,FPSで足音とかを聞くためには適するのですが,やはり長時間使うとなると蒸れます。蒸れないように(イヤーパッドを)布地にしつつ,でも低域が抜けてしまうと迫力がなくなるので味を付けるというのが,唯一やったことですかね。
4Gamer:
なるほど,言われてみれば確かにそうですね。
祖堅:
僕はゲーマーですけど,仕事はサウンド屋さんじゃないですか。サウンド屋の視点から,オーディオテクニカ製品の特徴的なことは何かと言うと,ピュアでフラット,素直な音というイメージがすごく強いんです。
だから今おっしゃっていたように,ゲーマーに向けて低音を味付けしたとのことですが,僕らからすると,味付けの領域じゃないくらいまろやかな味付けですね。オーディオテクニカ製ヘッドフォンの特性を生かしたうえで,オーディオテクニカが作るゲーム用ヘッドセットという音になっているなと個人的にはすごく思います。
平山:
祖堅:
すごく難しいですよね。
普通の(音を)フラットにしようとしたヘッドセットって,足し算をどんどんして山をなだらかにしている音の印象が強いんです。一方,僕が最初にこのヘッドセットに持った印象は,そういうところがなくて最初からフラットで全部出ているようで,今でもすごいと思いますね。
4Gamer:
ヘッドセットに限りませんが,何か新しい製品を作るときは足し算をしがちですよね。どんどん足し算方向でやってしまいがち。PC製品って本当に足し算の製品が多く,どうしてもそういう方向になりがちです。でも,足し算ではないことでアピールするのは,すごく難しいですよね。
祖堅:
めちゃめちゃ難しいですよ。
植野:
うちもそうです。開発の初期段階では,足したがりの声もけっこうありましたね。「ゲーマーって,きっとこうだ」というステレオタイプなイメージでいろんなアイデアが出てくるんですが,ゲーマーやゲームの現場に近い人の話を聞くと,やっぱりそうではないのです。「LEDなんかいらない,軽さが一番だ」とかですね。そういうことが分かってきて,結果としてATH-G1シリーズはこうなりました。
裏を返すと,強みのような部分が(オーディオテクニカでは)すべて当たり前すぎて,特徴を言いづらいですね。「なんとかサラウンドシステム」とか,そういう強いマーケティングワードはありません。
安藤:
祖堅さんがおっしゃっていたように,5.1chから2chにするときに独自のアルゴリズムで作っているゲームなら,ヘッドセットでまたサウンドエフェクトをかけちゃうのは失礼ですよね。
植野:
作り手の意図が,結局伝わらなくなってしまいます。
安藤:
なので,ATH-G1 WLはバーチャルサラウンドの機能を持っていますが,最後まで,いるかいらないかで議論がありました(笑)。
平山:
ゲームでは,最後にステレオで聞くように(音が)出てきていると思いますので,そこが優先順位としては高いのです。サラウンドのほうが良く聞こえるように音作りを変えたりはしていません。優先順位はステレオの再生です。
祖堅:
そもそも,日本のオーディオメーカーさんで,ゲーム市場へ本格的に参入しようというメーカーさんは少ないですよね。ゲームサウンド市場についてどんな感じなのか,というヒアリングのお話はけっこういただくのですが。しかし,オーディオ市場は,ユーザーにも製品が行き渡っている状態だと思います。必要な人は全部持っています。
でも,ゲーマーという,もっと大きなユーザー層が日本にもあるのに,あまりそこに向けてしっかり製品を作っている日本企業が少ないことを,僕はすごく残念に思っています。昔から蓄積してきたオーディオの技術を,もっとゲーム市場に生かしていただけると,嬉しいなと。映画よりもすごいことをゲームのサウンドはやっているので,そこにいいアウトプットのできる製品がないというのは,僕たちにとっては寂しいことです。やはりもっとオーディオメーカーさんにこの巨大なマーケットに来ていただいて,真剣にいい音を届ける製品をどんどん出してほしいなと切実に思います。
しかも日本のメーカーさんだと,やり取りが楽なので(笑)。
4Gamer:
要望があれば直接言えるし,顔を合わせて話すこともできなくはないですからね。
祖堅:
きめ細やかな製品を作るのは,やはり日本のメーカーさんが得意とするところです。ゲーマーってこだわりの強い人が多いので,そこに対してリーチできるのは,本来なら日本のメーカーさんなのかと思います。こういった素晴らしい製品はどんどん広まってほしいので,広まるといいなと思いますね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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