プレイレポート
ラリーの醍醐味を体験できるPS4用ラリーゲーム「WRC8」のインプレッション。チーム運営もこなしながら世界チャンピオンを目指そう
本作は,国際自動車連盟(FIA)からワールドラリーチャンピオンシップ(世界ラリー選手権)の完全公式ライセンスを獲得している「WRC」シリーズの最新作。前作「WRC7」は2017年に発売されているが,2018年はゲームエンジンや方向性の見直しなどでリリースが見送られたため,実に2年ぶりの新作となる。
本作では,WRC 2019年シーズンの公式データが採用されており,トップカテゴリのWRCと,下位カテゴリのWRC 2,ジュニアWRCが収録されている。2019年に参戦したシトロエン,フォード,ヒュンダイ,フォルクスワーゲン,トヨタなどのマニュファクチャラーチームや,セバスチャン・オジェ選手,テーム・スニネン選手,クリス・ミーク選手,勝田貴元選手などのドライバーやコ・ドライバーのほか,シトロエン・C3 WRC,フォード・フィエスタWRC,トヨタ・ヤリスWRCなどのラリーカーが,すべて実名で登場する。
なお,ボーナスカーとして,ランチア・ストラトス,ランチア・フルヴィア HF,フォルクスワーゲン・ポロ R WRC,プロトン・アイリス R5といった,往年の名車や1世代前のラリーカーも収録されている。
本作には,アスファルト路面の曲がりくねった峠道を走り抜けるモンテカルロ,ハイスピードで雪景色の中を駆け抜けるスウェーデン,有名なビッグジャンプスポットのあるポルトガル,天候の変化による路面変化に苦戦するウェールズ,そして森林火災の影響で開催中止になってしまった最終戦オーストラリアなど,WRC 2019年シーズンの舞台となった14か国,100以上のコースが用意されている。
コースは,スタートからゴールまでを走破する「スペシャルステージ」と,スペシャルステージがつながった構成のロングコース「エピックステージ」,そして特設コースで2台のラリーカーが同時走行してタイムを競う「スーパースペシャルステージ」があり,逆走コースを含めて各国7〜8コースずつ用意されている。
スペシャルステージは5分前後,エピックステージは10分前後で走破できるコースがほとんどだが,コ・ドライバーのナビゲーションだけを頼りにコースを攻めるせいか,5分前後のコースでもかなり長く感じられる。
時間帯は夜明け,昼,夕方,夜があり,天候は,晴天,曇天,雨,積雪のほか,嵐や吹雪(雪嵐)が再現されている。また,同じステージ内でも雨が降り出したり,雨が上がり晴れてくるなど天候や路面状況が刻々と変化するようになったため,状況に応じた走りが求められる。
夜間はライトポッドがあっても見えにくい。これで天候が雨や嵐になると,さらに視界が悪化して,怖くてアクセルを踏み込めない |
スタート時は晴天でも,徐々に曇ってきて雨が降り出すこともある。雨が強くなると道路上には水たまりができてくる |
メインのゲームモードが「キャリアモード」だ。このモードでは,メーカーとドライバー契約をして,世界ラリー選手権を戦いながら,チームも運営していくことになる。
ドライバーとしては,ラリーカーをできるだけ壊さずに上位でラリーを終えて,賞金を稼ぐことが仕事だが,それ以外にも,メーカーからの要望にも応えなければならない。シーズンを通して,シーズン目標や短期チーム目標,中期目標といった課題があり,「次のラリーで修理中にペナルティを受けない」「休息イベントを6週間以内に2回取る」などのさまざまな課題を達成できないと「メーカーの評判」に影響が出る。メーカーの評判が下がると,チームから脱落する可能性が高くなるため,そういった課題クリアも意識しながらラリーを戦っていく。
チーム運営では,次のラリーに向けた「イベントスケジュール」もプレイヤーが管理することになる。トレーニングやラリー参戦のほか,クルーを休ませる「休息」,指定チームで自分の評価を上げられる「メーカートライアウト」,破損したラリーカーで過酷な気象状況下でゴールを目指す「過酷条件」などを設定して進めていく。
また,ラリーを戦ううえで欠かせない「チームクルー」の雇用も行う。チームクルーは,修理速度を上げる「メカニック」,獲得経験値や報酬が増える「エンジニア」,開催されるイベントなどを探してくれる「エージェント」,気象情報から最適なタイヤ選択をしてくれる「ウェザークルー」,チームクルーの疲労を軽減する「理学療法士」,さまざまな経費を削減する「財務担当」があり,候補者の中からクルーメンバーに入れる者を選択する。
それぞれに能力値が異なるが,能力が高いほど給与(コスト)も上がる。また,彼らも休みなく働き続ければ疲れが溜まって力を発揮できず,不満が増えればチームを去ってしまう。そのため,クルーのモチベーションにも常に注意を払い,ほかのクルーと入れ替えて休ませることも必要になる。
ほかには,キャリアを進めていくと獲得できる「研究ポイント」を使って「研究開発」が可能で,チーム(16項目),クルー(20項目),性能(18項目),信頼性(18項目)を強化できる。どれもラリーカーの性能や信頼性,クルーの能力などを高めるものばかりなので,重要だと思うものから研究していくのがいいだろう。
キャリア以外のゲームモードは,スケジュールやクルーの管理などはせずにラリーだけを楽しめる「シーズン」,ステージやラリーカー,天候などを自由に選択して走れる「クイックゲーム」がある。
ほかには,街のように作られたエリアの中を自由に走って,車のセットアップ調整などを行える「テストエリア」,クローズドコースを使って路面状況やシケイン,ジャンプなどさまざまな練習走行ができる「トレーニング」が用意されている。
マルチプレイモードでは,最大8人でラリーを戦える「オンライン」,決められた期間内で規定のラリーカーでタイムを競う「ウィークリーチャレンジ」や,オンラインのeスポーツ大会「ESPORTSチャレンジ」のほか,オフラインで1台のテレビを使って家族や友達などと「画面分割」での対戦も楽しめる。
ラリーカーの挙動は,前作はアーケード向けよりに感じられたが,本作ではシミュレーション向けの味付けになっている印象だ。路面状況や荷重移動により挙動が変化するため,常に集中して挑まないとスピンやコースアウトにつながる。また,ドリフトは前作よりもしやすくなっており,カウンターステア(逆ハン)やアクセルコントロールでコーナーを立ち上がるといった走りができるので,ラリーカーを操る楽しさや,ラリーの醍醐味を味わえる。
ラリーカーのセッティングは,サスペンション,デフ,ブレーキ,トランスミッション,エアロダイナミクスが調整でき,手軽に調整したい人向けの「クラシック」と,上級者向けの「詳細」が用意されている。
クラシックでは,サスペンションはサスペンションの固さ,ブレーキはブレーキバイアスなど最低限の項目を0〜10(11段階)で調整できる。いっぽうの詳細では,サスペンションならば,スプリング,ショックアブソーバー(縮み側,伸び側),最低地上高,キャンバー,アンチロールバーをフロントとリアごとに調整可能になっている。しかも1000〜1万の範囲を500刻みなどで細かく調整できるので,とことんセッティングに拘る人も楽しめるだろう。
ラリーカーを操る楽しさや難しさだけでなく,チーム運営の苦悩も体験できるようになった本作。ライバルカーの速さや,破損ダメージの調整といったアシスト機能により,ラリーゲーム初心者から上級者まで幅広く楽しめる作りになっているので,ラリーファンはもちろんのこと,これまでラリーゲームで遊んだことがない人も,ぜひプレイしてみてほしい。
「WRC8 FIA ワールドラリーチャンピオンシップ」公式サイト
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WRC8 FIA ワールドラリーチャンピオンシップ
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(C)2019 A videogame published by Bigben Interactive S.A. and developed by Kylotonn Racing Games. Licensed to and published in Japan by Oizumi Amuzio Inc. An official product of the FIA World Rally Championship, under the license of the WRC Promoter GmbH and the Fédération Internationale de l'Automobile. The manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game are trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners."WRC" and the WRC logo are registered trademarks of the Fédération Internationale de l'Automobile. All rights reserved.