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    印刷2022/03/02 02:00

    インタビュー

    「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

     Xbox Game Studiosはフライトシム「Microsoft Flight Simulator」(以下,Flight Simulator)のXbox Cloud Gamingへの対応を開始した。これによりXbox Game Pass Ultimateの利用者は,Xbox Oneやモバイルデバイス(iOS,Andorid)でもプレイ可能になる。

    画像集#002のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

     Flight Simulatorシリーズは,同社を巨大IT企業に押し上げた「MS-DOS」と同時期に誕生した看板タイトルである。航空機の操縦を本格的に体験できるというマニア向けのシミュレーションソフトであり,一時期はニッチなジャンルになっていたが,2020年にフランスのAsobo Studioと共同で開発された最新作が登場した。
     Microsoftの地図サービスであるBing Maps,OpenStreetMap向けの衛星写真や航空写真から生成した4ペタバイトものフォトグラメトリーデータをAzure AIで処理し,地球全体を3Dモデル化。地形データや環境,200万以上の都市や街,3万7000の空港,15億の建造物,そして2兆本の樹木などをゲーム世界に再現し,さらに天候や温度,風向きといった気象データとリアルタイムに連動させることで,飛行時のよりリアルな風景や物理効果をも実現している。

    画像集#003のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

     これまでもFlight Simulatorでは,大量のデータ処理の一部をMicrosoftのクラウドコンピューティングシステム,Microsoft Azureで演算して同期させていたものの,今回のトピックである“完全クラウド化”はグラフィックスのレンダリングそのものをクラウドサーバーで行う。いわゆる「クラウドゲーム」のことである。
     サーバー側の環境で処理されたデータが圧縮されて,それがフレームごとにストリーミングされるため,プレイヤー側には画像処理を行うGPUや,ソフトのダウンロードとインストールのためのストレージが必要ではない。ディスプレイとコントロールデバイスさえあれば,ハイエンドなゲームも楽しめる。

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     Microsoftが提供しているサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」。その最上位プランに含まれるクラウドゲームサービス,「Xbox Cloud Gaming」に焦点を当てて,その実用性について紹介してみたい。

    [2022/02/18 12:00]

     今回の発表について,Xbox Game StudiosのFlight Simulator部門を統括するエグゼクティブプロデューサー,ヨーグ・ニューマン(Jorg Neumann)氏は「ファンにとって,ちょっとしたサプライズ」と語った。2020年のPC版,2021年のXbox Series X/S版に続く,クラウド版の登場はXboxというエコシステムにおける“第3のプラットフォームサポート”となる。
     現在,Xbox Cloud Gamingはベータ版という位置づけではあるものの,高性能なマシンパワーを求めることで知られるFlight SimulatorをXbox Oneやモバイルデバイスでも気軽にプレイできるようになるわけだ。

     さて,ニューマン氏へのインタビューは4Gamerにおいて,もはやお馴染みといったところだろう。今回は完全クラウド化の背景や意図について聞いてみたので,ぜひご一読を。

    「Microsoft Flight Simulator」公式サイト



    ヨーグ・ニューマン氏にインタビュー

    屋外でもFlight Simulatorで羽ばたこう!


    4Gamer:
     本日はよろしくお願いします。Flight SimulatorをXbox Oneに対応させるプランは以前から発表されていましたが,クラウドゲームに対応することになった経緯を聞かせてください。

    Xbox Game Studios,Flight Simulator部門を統括するエグゼクティブプロデューサーのヨーグ・ニューマン氏
    画像集#007のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように
    ヨーグ・ニューマン(以下,ニューマン氏)氏:
     ええ。Xbox Oneの対応は社の方針として公表していたものですが,当時からストリーミングになるだろうと思っていました。ご存じのとおり,PC版はローンチ時からリアルタイムの気象情報や15億棟にも及ぶ建築物など,ビッグデータの処理にクラウドを活用しています。Xbox Series X版でさえレンダリングは難しいと思われていて,グラフィックス面でかなり劣ると考えていた人は少なくなかったですからね。
     PC,Xbox Series X/Sに続く,第3のプラットフォームへの正式対応として,グラフィックスやシミュレーションの面で妥協のない品質にするため,クラウドゲームに移行することにしたのです。

    4Gamer:
     モバイルデバイスでもプレイできるというのは,Flight Simulatorシリーズにとっても大きな進化と言えます。

    ニューマン氏:
     本当ですね。25年前,私が駆け出しの頃には,PC向けにリリースされたゲームをセガサターンやPlayStationへ移植する作業を行っていましたが,いつもアニメーションのフレームを落とすことばかり考えていました。そのたびにオリジナル本来の面白さが削られるような気になって,心を痛めていました。
     Xbox Series Xと同等の演算能力を持つクラウド版であれば,ゲーム性やグラフィックスにまったく妥協することなく,最適化に苦心することもなく,低性能のデバイスにもストリーミングによってゲームを楽しんでいただけます。

    画像集#004のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

    4Gamer:
     クラウドゲーム対応の作業は,どのように進められたのでしょうか。

    ニューマン氏:
     作業というほどでもなかったです。Xboxにはクラウド対応の専用APIがあるのですが,それを実行するためのプログラマーが1人,そしてユーザーインタフェースのチェックと,必要に応じて改良を行うUIチームが数日間チェックしたというくらいです。コードを書き換えたりする必要はありませんでした。

    4Gamer:
     クラウドゲーム対応はストレージ面を見ても大きなアドバンテージになりますね。

    ニューマン氏:
     Flight Simulatorはベースだけで100GB近くありますが,第1弾「Japan」をはじめとするWorld Updateを導入すれば,2か月おきに約8~10GBが増えていくわけです。これはプレイヤーの皆さんにとって,大きな負担になります。
     その点,クラウドゲームはストレージ容量の少ないXbox Oneやモバイルデバイスでも気にすることなく,15~30秒程度でゲームを開始することができるのです。古いスマートフォンやGPUを搭載していないビジネス用ノートPCであっても,グラフィックスやゲームプレイの面で妥協する必要がない。現在のゲーム業界が体験しつつあるパラダイムシフトと言えるでしょう。

    画像集#005のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

    4Gamer:
     とはいえ,クラウドゲームにもそれなりの制約はありますよね。

    ニューマン氏:
     Flight Simulatorのクラウド版の解像度は1080pに固定しているのですが,これは安定性を重視したものと言えます。PC版やXbox Series X版のプレイヤーが楽しんでいる4K解像度ではないです。また,フレームレートに関して言えば,このジャンルのゲームは60fpsに引き上げる必要がありません。
     ネットワークについては,Netflixのようなサービスを楽しめる通信環境であれば,問題なくFlight Simulatorを楽しめるはずです。実際,テスト版を持ち出してプレイしてみたのですが,妻が買い物をしている間に(比較的Wi-Fiへの接続が多い)ショッピングモールでも問題なく楽しめましたよ。

    4Gamer:
     今後,Steam Deckのようなデバイスにもクラウドサービスの門戸を広げていく可能性はありますか。

    ニューマン氏:
     良い質問ですが,今お話ができるのはMicrosoftのXboxプラットフォームに対する考え方ですね。それは,デバイスや地域によってゲームプレイやコミュニケーションを阻害しないオープンなものにしていくことです。Xbox Oneしか持っていない娘と一緒にゲームをプレイしたり,熱心なゲーマーではない妻もモバイルデバイスでマルチプレイゲームを楽しんだりしています。持っているデバイスが違うからと言って,こうした“サークル”が壊れてしまうのは惜しいことだと考えています。

    画像集#006のサムネイル/「Microsoft Flight Simulator」がクラウドゲームサービスに対応。Xbox Oneやモバイルデバイスでも遊べるように

    4Gamer:
     従来のフライトシムと言えば,自宅でゆっくりと腰を据えてプレイするというスタイルが多かったと思いますが,クラウドゲーム対応はその在り方を変えますね。

    ニューマン氏:
     クラウド版であれば,PCやXbox Series Xのユーザーにも「ちょっと試してみようかな」と思っていただけるでしょうね。また,近年は携帯型ゲーム機でありながら,外部ディスプレイに接続してプレイできるデバイスが登場していますが,ゲーム市場における1つの未来を示していると言えます。どこにでもゲームを持ち運べるだけでなく,クラウド化によってデバイスそのものに頼る必要もなくなるわけですから。
     個人的な希望としては,ゲーム機や高性能PCを持っていない航空会社や製造会社の人は多いかもしれませんが,私のスマートフォンを使ってゲームを見せたり,コードを送って遊んでもらったりすることで,さらに協力してもらえるのではないかと期待しています。

    4Gamer:
     なるほど。どこでもプレイできるということは,国立公園でハイキングをしているときに,スマホを取り出してFlight Simulatorをプレイすれば,現在地を上空から眺めることができますね(笑)。

    ニューマン氏:
     そのとおり。実際にドローンを飛ばす代わりにね(笑)。

    4Gamer:
     それでは最後の質問です。Xbox Cloud Gamingに対応することの最大のメリットは何だと思いますか。

    ニューマン氏:
     やはり,持ち運びができるようになることですね。Flight Simulatorの新しい楽しみ方が見つかるかもしれません。また,ゲームのインストールにも躊躇してしまう人が存在しますが,アクセスするだけで気軽にプレイできるクラウドゲームは,さらに多くの人にプレイしてもらえるモチベーションになると思います。

    4Gamer:
     本日はありがとうございました。

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