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[CEDEC+KYUSHU]フロムゲーの硬派な背景やキャラは,どのように作られているのか。グラフィックス制作における実例の数々が紹介された
フロム・ソフトウェアは「DARK SOULS」シリーズをはじめ,「Bloodborne」や「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」,そして最新作となる「ELDEN RING」(PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)などを手掛けている。これらのタイトルに共通するリアルさ,硬派さは,多くのプレイヤーにとって強く印象に残っているだろう。
そういったイメージづくりに大きく貢献しているのが,ゲーム内の「背景」や「キャラクター」のグラフィックスである。
今回の講演では,フロム・ソフトウェアで背景やキャラクターを制作するスタッフから,実際の作業の流れや,作業時にこだわっている部分などが,タイトルの事例を交えつつ紹介された。フロムゲー好きの読者は,ぜひ一読してほしい。
背景の制作時に大事にしていること
【1】一目で世界観が把握できるビジュアル
講演の前半部では,背景グラフィックスを担当するスタッフにより,その作業の流れや特にこだわっている箇所などが語られた。
まず,背景のグラフィックスが担う最も大きな役割は,その場所にどういった意味があるのかをプレイヤーに伝えることである。たとえテキスト等で説明を行わずとも,プレイヤーが一目見るなり,ゲームの世界観や物語性なども感じ取ってもらえるのが理想だ。
そういった背景を実現するためには,「コンセプトの設定」「コンセプトを伝えるためのアセットの選定」「リアリティの演出」の3つを常に心掛けているという。講演ではスクリーンショットを交えて紹介されたので,キャプションと合わせて見ていこう。
・コンセプトの設定
・コンセプトを伝えるために必要なアセット選定
・リアリティの演出
【2】ストレス要素を排除したレベルデザイン
適切な背景グラフィックスは,プレイヤーに対して移動ルートを促すなど,道しるべにもなる。それによってゲームプレイの快適さに結びつくほか,ゲームデザイナーが想定するプレイを自然な形で誘導できる。つまり優れた背景グラフィックスは,レベルデザインにおいても貢献しているのだ。
プレイヤーが自分自身の意思でゲーム内を探索し,ゴールへと向かっているつもりでも,実際には巧みなレベルデザインによって意図的に誘導されていることがあるという。探索の先にある発見や喜びを楽しんでもらうために,プレイヤーに気付かれないように誘導を行うのが,背景デザイナーの腕の見せどころというわけだ。
・行動範囲を明示化する
・ライティングを用いた誘導
・進行方向の視界を確保する
【3】変化やメリハリがあるグラフィックス
単に綺麗なだけのグラフィックスだと,現実離れした印象や,CG感,ポリゴン感などを与えてしまう。シルエットやライティングなどを意識することで,より現実味のあるグラフィックスを実現し,プレイヤーの没入感も高められるそうだ。
・シルエット崩し
・リピート感の緩和
・ライティング
【4】印象的に構築したビューポイント
ここまではセオリーとして大事にしている部分だが,そのほかにも数々のノウハウやテクニックがあるとのことで,その一例も紹介された。
実際の開発時は,予算や工数などに制限があるため,総ての背景を徹底的に作り込むことは難しいという。そういったなかでも,できる範囲内でプレイヤーの印象に残るビジュアル体験を届けるべく,開発チームは日夜努力しているとのことだ。
・抑圧から解放のギャップ
・作り込まれたボス部屋
・単調に見せないステージ構成
キャラクターの制作時に大事にしていること
【1】ラフモデル:シルエットでキャラクターの特徴を出す
講演の後半部では,キャラクターのグラフィックスを担当するスタッフが,実際の作業における「ラフモデル」「詳細モデル」「リトポロジー」「テクスチャ」の流れに沿って,各工程における工夫などを説明した。
最初に行うラフモデルの制作時は,キャラクターの詳細まで作り込む必要はない。それよりも,デザイン画に描かれているキャラクターのコンセプトやシルエットが,ラフモデルに正しく反映されていることを心掛けているという。また,布の動きについてもラフモデルの段階で検証しつつ調整を施しているとのこと。そうすることでゲーム内でより自然な動きが表現できるそうだ。
・プレイヤーの視点で確認
・布の動きを検証
・完成形までの計画を立てる
【2】詳細モデル:目で感じられる“硬さ”を表現
詳細モデルでは,ラフモデルに細かいディテールなどを入れて,一歩進んだリアルな造形を行う。デザイン画の設定や意図を汲み取るだけでなく,そのキャラクターが登場する際のバックグラウンドストーリーや,ゲームの世界観なども踏まえたうえで補完していくそうだ。
この作業で特に意識しているのは,物の“硬さ”を表現することだ。そして,モデリングの造形で硬さを表現するには,物体を正確に見るデッサン力が必要となる。実物の形状を頭の中で理解できていると,効率よく詳細モデルを制作できることが多いそうだ。
・硬さの表現
・物の形状を分析して理解する
・凹凸感を入れるときの工夫
【3】リトポロジー:視線が行きやすい部分の優先度を上げる
実際のゲーム内では,メモリやポリゴン数などに制限があるため,詳細モデルをそのまま描画できるとは限らない。そのため,詳細モデルの形状をできるだけ維持しつつ,ゲーム内で描画する際のローモデルに落とし込む,リトポロジーの工程が必要となる。
リトポロジーにおいて大事なのは,プレイヤーの視線が行きやすい部分の優先度を上げつつ,全体としてのバランスを保つこと。以下で説明しているようなセオリーはいくつかあるものの,なかなかに難しい作業だそうだ。
・密度の分配
・動きと立体さを意識してポリゴン化
・シェーダーと組み合わせ
【4】テクスチャ:情報量を増やして印象的にする
キャラクターの仕上げの段階で,いよいよテクスチャを制作する。このテクスチャを制作するときは,デザイン画で表現された特徴を再確認し,プレイヤーの視線を引くことを心掛けているそうだ。そして,プレイヤーの視線が向かった先の情報量を上げることで,より印象的な見た目のキャラクターに仕上がるとのこと。
具体的には,キャラの動きを意識して,自然な汚れや劣化などを入れるのが効果的である。ただし,これらを無闇に盛りこむと見た目がわざとらしくなるため,全体のバランスを見ながら慎重に調整しているとのことだ。
・プレイヤーの視線を引くための工夫
・動きによるリアルな表現
・明度の強弱を入れて情報量を増やす
これらの背景やキャラクターの制作時に共通して大切にしているのは,ハイエンドゲームならではの特別な世界観を作り上げ,それをプレイヤーに体験してもらうための表現手法を模索することである。実際のゲーム開発には苦労も多いが,期待しているファンの印象に残るようなグラフィックスを作り上げることには,大きな手応えを得ているそうだ。
現在,フロム・ソフトウェアが開発中の最新作「ELDEN RING」においても,本講演で紹介された内容を踏まえたうえで,背景やキャラクターなどを制作しているという。個人的にも,今後はフロムゲーを遊ぶとき,時折足を止めて風景やキャラクターをまじまじと見たくなる講演であった。
「CEDEC KYUSHU 2021 ONLINE」公式サイト
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(c)BANDAI NAMCO Entertainment Inc. / (c)2021 FromSoftware, Inc.
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