レビュー
Radeon RX 6000の新顔は,従来モデルやGeForce RTX 30とどれくらいの性能差があるのか
ASUS DUAL-RX6750XT-O12G
ASUS DUAL-RX6650XT-O8G
型番から想像が付くとおり,RX 6750 XTは,「Radeon RX 6700 XT」(以下,RX 6700 XT)の,RX 6650 XTは「Radeon RX 6600 XT」(以下,RX 6600 XT)の,それぞれ上位モデルにあたるGPUだ。AMDは,これらのGPUを「2022年現在に合わせてリファインしたモデルである」と述べている。
今回,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「DUAL-RX6750XT-O12G」と「DUAL-RX6650XT-O8G」をテストする機会を得たので,両GPUのポテンシャルに迫ってみたい。
はたして,従来のRX 6700 XTやRX 6600 XTから,何が変わり,性能はどの程度向上しているのだろうか。
一言で言えば公式クロックアップモデル。当然ながら消費電力も上昇
RX 6750 XTは,RX 6700 XTの上位モデルにあたるRDNA 2アーキテクチャベースのGPUだ。GPUコアには,RX 6700 XTと同じ開発コードネーム「Navi 22」を採用しており,7nmプロセスルールで製造され,ダイサイズは335mm2,トランジスタ数は約172億個だ。
Navi 22では,シェーダプロセッサ16基を束ねて,AMDが「Stream Processor」(以下,SP)と呼ぶ実行ユニットを構成したうえで,SPを4基集めて,キャッシュメモリやレジスタファイル,スケジューラやテクスチャユニットなどと組み合わせた演算ユニット「Compute Unit」(以下,CU)を構成する。
このCUを2つセットにした「Dual Compute Unit」をさらに10基束ねて,L1キャッシュやラスタライザ,それにレンダーバックエンドなどを組み合わせたものを,AMDは「Shader Engine」と呼ぶ。RX 6750 XTでは,Shader Engineを2基搭載しているため,シェーダプロセッサの総数は16×4×40で2560基となるわけだが,実はこれ,RX 6700 XTから何も変わっていない。
さらに言えば,リアルタイムレイトレーシング処理を担う「Ray Accelerator」(以下,RA)を40基持ち,RDNA 2アーキテクチャの最大の特徴とも言える新しいキャッシュシステムである「Infinity Cache」を96MB用意する点もRX 6700 XTとまったく同じだ。
では,RX 6750 XTとRX 6700 XTで何が違うのかと言えば,動作クロックが違う。RX 6750 XTのゲームクロックは2495MHzで,ブースト最大クロックは2600MHzである。これはRX 6700 XT比でそれぞれ71MHz,19MHzずつ引き上げられた格好だ。
さらに,メモリクロックにも手が加えられている。グラフィックスメモリとして,容量12GBのGDDR6メモリを採用し,メモリインタフェースが192bitである点は,RX 6700 XTと変わらない。ただ,RX 6750 XTではメモリクロックが,RX 6700 XTの16GHz相当から18GHz相当まで上がっている。それによって,メモリバス帯域幅も384GB/sから432GB/sへと,約1.125倍向上したのだ。さらに,AMDの説明では,Infinity Cacheを含めたRX 6750 XTのメモリバス帯域幅は,1326GB/sにも達するとのことだ。
ただ,動作クロックが上昇した半面,RX 6750 XTは,AMDが示すカード全体の典型的な消費電力「Board Power」が250Wと,RX 6700 XTから20W増えてしまった。つまり,動作クロックを引き上げた代わりに,消費電力も増えてしまったという,至極当然な仕様というわけだ。
RX 6650 XTは,GPUコアにRX 6600 XTと同じ「Navi 23」を採用し,7nmプロセスルールで製造され,237mm2のダイサイズに,約111億個のトランジスタを搭載する。CU数が32基である点や,シェーダプロセッサ総数が2048基である点も,RX 6600 XTから変わっておらず,32基のRAを備える点も同じだ。
やはり,RX 6750 XTのRX 6600 XTとの相違点は,動作クロックにある。RX 6650 XTのゲームクロックは2410MHz,ブースト最大クロックは2635MHzと,RX 6600 XTからそれぞれ51MHz,46MHz引き上げられた。
なお,RX 6650 XTでは,グラフィックスメモリとして容量8GBのGDDR6を搭載するが,その動作クロックも向上しており,17.5GHz相当となった。そのため,メモリインタフェースはRX 6600 XTの128bitから変わっていないものの,メモリバス帯域幅は280GB/sと,RX 6600 XTから1割弱ほど向上した計算となる。
また,RX 6650 XTでもRX 6600 XTと同じく容量32MBのInfinity Cacheを搭載しており,AMDによると,トータルのメモリバス帯域幅は468.9GB/sにもなるとのことだ。
RX 6750 XTとRX 6650 XTの主なスペックを,RX 6700 XTとRX 6600 XT,それに競合製品となる「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070),「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3060 Ti),「GeForce RTX 3060」(以下,RTX 3060)と合わせて表1,2にまとめておこう。
クロックアップモデルだけに,GPUクーラーはどちらも大きめ
それでは,今回評価に用いるグラフィックスカードを詳細に見ていこう。
まずは,DUAL-RX6750XT-O12Gから。本製品は,ASUSのラインナップの中でも,上位モデルの冷却システムを活かしつつ,比較的安価な位置に据えられたDUALシリーズに属するカードだ。
カード長は実測で約293mm(※突起部除く)で,RX 6700 XTリファレンスカードが同268mmだったのに比べると,約25mmほど長い。また,マザーボードに装着すると,GPUクーラーがブラケットから垂直方向に32mmほどはみ出ていることもあり,全体を手に取ってみると大きめな印象を受ける。
なお,重量は実測で約1155gと,大きさに応じた重さと言っていいだろう。
また,GPUコアの温度が低い状態では,ファンの回転を停止する「0dBテクノロジー」も備える。なお,この0dBテクノロジーは,ASUSの設定アプリケーションである「GPU TweakII」(Version 2.3.9.0)から有効,無効を切り替え可能で,温度を下げるために常時ファンが回転する設定も可能だ。
なお,DUAL-RX6750XT-O12Gの動作クロック設定は,ゲームクロックが2512MHz,ブースト最大クロックが2618MHzと,リファンレスからそれぞれ17MHz,18MHz引き上げたクロックアップモデルとなっている。メモリクロックは18GHz相当で,こちらはリファレンスと違いはない。
さらに,先述したGPU TweakIIを用いることで,「OC mode」「Gaming mode」「Silent mode」という3つの動作モードが利用可能だ。工場出荷時はGaming modeとなっているが,OC modeに切り替えると,ブースト最大動作クロックが先述よりも20MHz引き上げられ,消費電力の枠ともいえるPower Targetも110%に上昇する。一方,Silent modeに変えると,ブースト最大クロックがGaming modeから20Hz低下して,Power Targetも90%に抑えられる。
カードを横から覗き込むと,6mm径のヒートパイプを5本用いているのが確認できた。また,電源部やメモリチップもヒートシンクが密接しており,しっかりと冷却が行われる構造のようだ。
続いて,RX 6650 XTを搭載するDUAL-RX6650XT-O8Gも見てみよう。
DUAL-RX6650XT-O8Gは,カード長が実測で約243mmと,DUAL-RX6750XT-O12Gよりも短い。マザーボードに装着すると,垂直方向にブラケットから約27mmほどはみ出すが,DUAL-RX6750XT-O12Gに比べれば,全体に一回り小さいサイズとなっている。
なお,重量は実測で約770gと,DUAL-RX6750XT-O12Gよりかなり軽めだ。
カードを横から覗き込むと,6mm径のヒートパイプを3本用いているのが分かる。また,こちらも電源部やメモリチップにはヒートシンクがしっかりと接しており,冷却面の抜かりはなさそうだ。
動作クロック設定は,ゲームクロックが2447MHz,ブースト最大クロックが2669MHzとなっており,それぞれ37MHz,34MHz引き上げられたクロックアップモデルである。また,DUAL-RX6750XT-O12Gと同様に,GPU TweakIIで3つの動作モードを切り替え可能で,工場出荷時設定がGaming modeである点も変わらない。さらに言うと,OC modeとSilent modeで変化する内容も,DUAL-RX6750XT-O12Gと同じだった。
一方,VBIOSの切り替え機能は持たない。
こちらも映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a出力×3,HDMI 2.1 Type-A出力×1という構成である。
ミドルレンジでの立ち位置を明確にする
それではテスト環境の構築に話を移そう。
今回,比較対象には表1,2で掲載したRX 6700 XTとRX 6600 XT,それにRTX 3070,RTX 3060 Ti,RTX 3060を用意した。つまり,RX 6750 XTとRX 6650 XTが,それぞれRX 6700 XTとRX 6600 XTから性能をどの程度伸ばしたのかを確かめ,ミドルレンジにおける立ち位置を明確にしようというわけだ。
なお,今回使用したカードのほとんどが,メーカーレベルで動作クロックを引き上げたクロックアップモデルとなっている。そのため,テストではMSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.4)を使い,ブースト最大クロックならびにブーストクロックをリファレンスにまで下げて利用している。
グラフィックスドライバには,Radeon勢は「22.10.01.02-220426a-378
なお,本稿執筆時におけるAMD Softwareの最新バージョンは「AMD Software
一方のGeForce勢は,「GeForce 512.59 Driver」で,こちらはテスト時点における最新バージョンだ。それ以外のテスト環境は表3のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
---|---|
マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | ASUSTeK Computer DUAL-RX6750XT-O12G |
Radeon RX 6700 XTリファレンスカード | |
ASUSTeK Computer DUAL-RX6650XT-O8G |
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MSI Radeon RX 6600 XT GAMING X 8GB |
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GeForce RTX 3070 Founders Edition |
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GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition |
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ZOTAC Technology ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC 12GB 192BIT GDDR6 |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19044.1645) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.13 |
グラフィックスドライバ | Radeon:22.10.01.02 |
GeForce: |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション25.0に準拠したものだ。RX 6750 XTとRX 6650 XTは,ともにハードウェアによるレイトレーシングに対応しているため,「3DMark」(Version 2.22.7358)におけるレイトレーシングテストの「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」を追加している。
なおAMDは,RX 6750 XTについては1440p,RX 6650 XTについてはフルHD解像度でのゲームプレイを想定している。そのため,解像度は2560×1440ドットと1920×1080ドット,それに3840×2160ドットを加えた3種類を選択した。
RX 6750 XTはRTX 3070を超える場面も
RX 6650 XTはRTX 3060 TiとRTX 3060の間
それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
RX 6700 XTと比べたRX 6750 XTの伸びは,2〜3%程度といったところ。注目すべきポイントは,対RTX 3070で,RX 6700 XTは下回る場面も多々あるのに対して,RX 6750 XTはすべてのテストで安定して上回る性能を発揮していることだ。RX 6750 XTとRTX 3070とのスコア差は,最大で3%ほどあり,これは評価できるポイントだろう。
一方,RX 6650 XTは,RX 6600 XTから約2%ほどスコアが向上しているものの,RTX 3060 Tiとの差は詰まっていない。RTX 3060との差は安定して23〜28%程度あるが,もう少し競合製品との差を縮めてほしかったところだ。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
ここではCPU性能の影響がなくなるため,GPU性能の差が顕著になるわけだが,RX 6700 XTと比べたRX 6750 XTの伸びも2〜5%程度まで広がった。RTX 3070との差も2〜5%程度に拡大しており,RX 6750 XTの持つポテンシャルの高さが窺える。
RX 6650 XTとRX 6600 XTとの差は1〜2%程度に留まっており,RTX 3060 Tiとの開きも6〜13%程度あるままだ。
グラフ3は,Fire Strikeからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものである。CPUが共通なので,スコアはおおむね37000台で揃っている。
グラフ4はCPUとGPUの両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果だ。
ここではRX 6750 XTが,RX 6700 XTからスコアを1〜4%程度伸ばした一方で,RTX 3070とは勝ったり負けたりの勝負を演じている。ただ,1920×1080ドットでは,RTX 3070に約10%引き離されており,従来,Combined testでは妙なスコアを出す傾向が見られたRadeon勢だが,それはRX 6750 XTでも同じようだ。
RX 6650 XTのRX 6600 XTからの伸びは1〜5%程度といったところで,RTX 3060 TiとRTX 3060の間に収まっている。
DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見ていこう。グラフ5は総合スコアをまとめたものだ。
ここでは,Fire Strikeと打って変わって,RX 6750 XTがRTX 3070の後塵を拝す形となった。RX 6750 XTは,RX 6700 XTから約4%のスコアの伸びを見せているものの,Time Spy“無印”でRTX 3070と肩を並べるのがやっと。Time Spy Extremeでは,約5%ほど離されてしまっている。GeForceシリーズは,Time Spyでスコアを伸ばす傾向があるのだが,RX 6750 XTでも,それを超える性能は出ていないわけだ。
一方,RX 6650 XTは,RX 6600 XTから2〜3%程度スコアを伸ばしているが,RTX 3060 TiとRTX 3060の間という位置は変わらない。
続くグラフ6は,Time SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。
まずはGPUテストからだが,RX 6750 XTがRX 6600 XTから約5%ほどスコアを伸ばしている点は,Fire Strikeと似た傾向だ。ただ,Time Spy ExtremeでRTX 3070に届かないのは総合スコアと同じだが,Time Spy“無印”では,RTX 3070に約8%ほど差を付けた点は評価に値する。
RX 6650 XTはRX 6600 XTから約3%ほどスコアを伸ばしているが,大勢に影響はない。
一方のCPUテストは,CPUが同一なためスコアもほぼ並んでいる。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。
RX 6750 XTは,RX 6700 XTからスコアを約4%弱伸ばし,レイトレーシング性能も向上している点は評価できる。とはいえ,RXT 3070には約33%も引き離され,RTX 3060 Tiにも届いていない。これまでのRadeon RX 6000シリーズと同様に,RX 6750 XTのレイトレーシング性能にはあまり期待しないほうがいいだろう。
それはRX 6650 XTも同様で,RX 6600 XTからスコアは約3%弱伸びているものの,RTX 3060にすら太刀打ちできていない。
その傾向は,DirectX Raytracing Feature testの結果(グラフ9)で,より顕著となっている。
RX 6750 XTは,RX 6700 XTから若干向上してはいるものの,RTX 3070の半分にも達しておらず,RTX 3060にも大差を付けられてしまっている。RX 6650 XTも結果は芳しくなく,やはりレイトレーシング性能に関しては,これまでと同様に期待薄だ。
さて,それでは実際のゲームではどうなるだろうか。グラフ10〜12は「Far Cry 6」の結果となる。
RX 6700 XTと比べたRX 6750 XTの伸びは,平均フレームレートで2〜3%程度あるものの,実フレームレートでは1〜2fps程度しかないため,性能差を体感するのは難しいだろう。とはいえ,RTX 3070を安定して上回っている点は立派の一言。
その一方でRX 6650 XTは,1920×1080ドットの平均フレームレートでRX 6600 XTからスコアが約3%向上しているが,それ以外ではまったく変わらない結果となった。とくに,RTX 3060にも届いていない点は残念だ。
続いて,「バイオハザード ヴィレッジ」の結果がグラフ13〜15となる。
RX 6750 XTとRX 6700 XTの差は,平均フレームレートで約1%に達するのがやっとで,1パーセンタイルフレームレートに至っては,差が1%にも届いていない。RTX 3070にも平均で6〜9%程度,1パーセンタイルで5〜10%程度も離されており,RX 6750 XTにとっては不得手な結果に終わっている。
RX 6650 XTは,平均,1パーセンタイルともにRX 6600 XTから約2%ほど伸ばしており,RTX 3060 TiとRTX 3060の間に収まっている。
打って変わって,RX 6750 XTが好調な結果を残したのが,グラフ16〜18の「Call of Duty: Warzone」(※グラフ内ではCoD Warzoneと表記)だ。
RX 6750 XTとRX 6700 XTの差は,最大で約2%ほどに留まるが,RTX 3070に対して平均フレームレートで6〜14%程度も上回っている点は評価できよう。とくに,1920×1080ドットの1パーセンタイルフレームレートで,RTX 3070に約25%の差を付けており,RX 6750 XTで体感も大きく向上している。
その傾向は,RX 6650 XTも同じで,RX 6600 XTから平均フレームレートで1〜3%程度しか向上していないが,1920×1080ドットでRTX 3060 Tiを上回っている点は注目に値する。
続いて,Fortniteの結果がグラフ19〜21だ。
ここでのRX 6750 XTは,RX 6700 XTから平均フレームレートで1%も伸びておらず,あまり変わらない結果となってしまった。RTX 3070に対しても,平均で9〜18%程度,最小で8〜15%程度の差を付けられており,とくに解像度が高くなるにつれて差が広がる傾向が見られた。
一方,RX 6650 XTはRX 6600 XTと比べて,平均フレームレートは2〜4%程度向上しているものの,RTX 3060 Tiとの差を埋めるにまで至っておらず,逆にRTX 3060に詰められる形になってしまっている。
グラフ22〜24は「Borderlands 3」の結果だ。
RX 6750 XTとRX 6700 XTの差は,平均フレームレートで約1%前後,実フレームレートでも1fpsにも届いておらず,あまり変わり映えしない結果となった。RTX 3070にも,平均フレームレートで6〜18%程度もの差を付けられ,RX 6750 XTはとくに高解像度での弱さが露呈した形だ。
RX 6650 XTのRX 6600 XTと比べた伸びは,平均フレームレートで1%前後といったところで,RTX 3060を上回ったものの,RTX 3060 Tiとは勝負になっていない。
グラフ25は「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
RX 6750 XTは,RX 6700 XTから1〜3%程度スコアを伸ばしているが,1920×1080ドットで差が縮まっているのは,CPU性能がボトルネックとなっているためだろう。ただ,同ベンチマークは,GeForceシリーズへの最適化が進んでおり,Radeonシリーズは不利な戦いを強いられている。それはRX 6750 XTも同じで,RTX 3070に4〜16%程度もの差を付けられている。とはいえ,スクウェア・エニックスの指標では,スコア15000以上が最高評価とされており,RX 6750 XTは2560×1440ドットでそれを満たしている点は特筆できよう。
一方,RX 6650 XTは,RX 6600 XTからスコアを2〜3%伸ばしており,2560×1440ドットでも,指標の15000にあと一歩まで迫っている点は評価できる。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ26〜28となる。
平均フレームレートは,おおむね総合スコアを踏襲した形となっているが,最小フレームレートは,あまり差が見られない傾向となった。これは,最小フレームレートはCPU性能の影響を受けやすいためだろう。
次のグラフ29〜31には,「Project CARS 3」の結果をまとめている。
やはりRX 6750 XTは,RX 6700 XTから平均フレームレートが1fpsも向上しておらず,動作クロックを引き上げたメリットはあまり感じられない。しかも,平均フレームレートでは,RTX 3070に届いていないうえ,RTX 3060 Tiにも肩を並べるのがやっとで,RX 6750 XTの結果はあまり奮わない。
それは,RX 6650 XTも同様で,RTX 3060といい勝負を演じるのがやっとといったところだ。
RTX 6750 XTの消費電力は210W強,RTX 6650 XTは170W程度
何度も述べているように,RX 6750 XTとRX 6650 XTは,動作クロックを引き上げた半面,消費電力も増大してしまっている。では,どの程度増えているのだろうか。
今回は,NVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお今回は,3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高い傾向にあるGraphics test 2実行中の結果を示している。
その結果をグラフ32に示そう。
グラフを見ると,RX 6750 XTとRX 6700 XTに違いは見えないものの,RTX 3070よりは若干低い電力で推移してるように見受けられる。試しに230Wを超える場面を数えてみると,RX 6750 XTは12回なのに対して,RX 6700 XTは42回,RTX 3070にいたっては173回と,RX 6750 XTは消費電力の上振れが抑えられている印象だ。
一方のRX 6650 XTは,RX 6600 XTとほとんど同じか若干高いあたりで,RTX 3060と同程度といったところ。こちらも180Wを超える場面を数えると,RX 6650 XTは88回もあるのに対して,RX 6600 XTは0回と顕著な差が見られた。
グラフ32の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ33となる。
ここでは,RX 6670 XTの消費電力は213Wと,RX 6700 XTとあまり変わらない結果となった。メーカーなども異なるため,この差がGPUだけに拠るものとは言えないが,消費電力が大幅に上昇するわけではないのは確かなようだ。とくに,RX 6750 XTが,RTX 3070を下回っている点は好印象だ。
RX 6650 XTは,RX 6600 XTから10Wほど上昇しており,RTX 3060とほぼ同程度だ。
次に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力のみを計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ34だ。
ここでは,ピークを結果として採用するため,どうしても差が広がる傾向が出てしまう。しかし,それでもRX 6670 XTとRX 6700 XTとの差は3〜15W程度に収まっており,消費電力の増大はさほど大きくないと言っていい。とくに,すべてにおいて,RTX 3070より消費電力が低い点は評価できよう。
一方,RX 6650 XTとRX 6600 XTとの差は10〜23W程度と,消費電力の増え方は若干大きめだ。ただ,こちらもRTX 3060を下回る場面が多い点は見逃せない。
最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,それぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果が,グラフ35となる。
RX 6750 XTとRX 6650 XTともに,高負荷時は70℃に達しておらず,ともに採用されたGPUクーラーの冷却性能は良好のようだ。なお,アイドル時に温度が高めなのはファンの回転が停止するためだ。
ちなみに,DUAL-RX6750XT-O12GとDUAL-RX6650XT-O8Gの動作音について,筆者の主観であることを断ったうえで触れると,どちらも静かな印象を受けた。比較的回転数を抑えることで,動作音を抑えようとしており,少なくともケースに入れてしまえば,聞こえないレベルだ。
RX 6750 XTが549ドル,RX 6650 XTが399ドル
既存モデルとの性能差が微妙
以上のテスト結果から明らかなとおり,RX 6750 XTはRX 6700 XTから性能は確かに向上しているものの,その伸びは決して大きくない。RX 6700 XTを採用したクロックアップモデルが数多く登場している中,動作クロックを引き上げただけとも言っていいRX 6750 XTの立ち位置は微妙と言わざるをえない。
とはいえ,RTX 3070と肩を並べるかそれ以上の性能を発揮する場面もあり,そのあたりは評価できよう。また,消費電力があまり大きく増えていない点も好印象だ。
価格に目を移すと,北米市場におけるAMDの想定売価が,RX 6750 XTが549ドル,RX 6650 XTが399ドル(※いずれも税別)と,前者はRX 6700 XTから20ドル,後者はRX 6600 XTから20ドル高い位置付けとなる。日本市場ではAMDが想定するよりはるかに高い価格になぜかなってしまうが,RX 6700 XTが実売で8万円〜10万円で販売されていることを考えると,10万円を超えるRX 6750 XTに,価格面での旨味はあまりない。一方のRX 6600 XTの価格は実売で6万円〜7万円なので,RX 6650 XTが7万円前後と考えると,これまた微妙と言わざるをえない。
新しい選択肢が増えることは大歓迎だが,モデルナンバーを引き上げるのであれば,もう少し従来モデルからのプラスアルファが欲しいところ。RX 6x00と6x50で,あまり性能差がないモデルが,似た価格帯に並ぶのが得策とは思えない。AMDの話では,RX 6750 XTとRX 6650 XTのリリース後も,RX 6700 XTとRX 6600 XTの販売を続けるとのことだが,RX 6750 XTとRX 6650 XTの1本に絞ってしまってよかったのではなかろうか。
やはり従来モデルからの性能の伸びが乏しい,これがRX 6750 XTとRX 6650 XTの特徴であり,ウィークポイントだ。
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