インタビュー
「北斗の拳 LEGENDS ReVIVE」インタビュー。テストプレイの反響や開発がスタートした経緯,究極の“原作追体験”のこだわりなどを岩本Pに聞く
今回4Gamerでは,「北斗リバイブ」のプロデューサーを務める岩本耕平氏にインタビューを行い,先日実施されたテストプレイの反響から同作の開発経緯,究極の“原作追体験”へのこだわりや,リリース時期などについて話を聞くことができた。本稿ではそれらをまとめてお届けする。
新作スマホアプリ「北斗の拳 LEGENDS ReVIVE」の先行プレイレポートをお届け。原作が美麗グラフィックスで忠実に再現された“伝承リバイブRPG”
セガゲームスより配信予定の「北斗の拳 LEGENDS ReVIVE」は,漫画「北斗の拳」を題材とした新作スマートフォンアプリで,原作ストーリーを忠実に再現し,ハイクオリティの3Dモデルで描画されたキャラクターが激闘をくり広げる“伝承リバイブRPG”と謳われる作品だ。本稿では,そんな本作の先行プレイレポートをお届けする。
狙ったとおりの層が遊んでくれた
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,先日行われたテストプレイの手応えはいかがですか。
予想よりもかなり多くの方に遊んでいただくことができたので,手応えはあったかと思います。私たちがメインターゲットとして考えていた層と,実際にプレイしていた層が非常に近かったのがよかったですね。開発中に想定していたお客さんと実際のお客さんとに齟齬がないことを実感できました。
4Gamer:
メインターゲットとなるのは,やはり30代,40代の男性でしょうか。
岩本氏:
そうですね。テストプレイでは80%以上がその層でした。
4Gamer:
アンケートも取られていましたよね。
岩本氏:
アンケートに「どんな部分に期待してテストプレイに参加されましたか」「期待に対して今回のゲームはいかがでしたか」という質問を設けていたのですが,やはりもっとも期待されていたのは,私たちが掲げている“原作の究極の追体験”でした。そのフレーズを見て「ナンボのもんや!」と挑戦的に来た人が多かったようで,そこに対して「すごいじゃん……」というご感想をいただくことができたのは,とても嬉しかったですね。
4Gamer:
要望や改善点などはどうでしょうか。
岩本氏:
要望というよりも「あのキャラは出ますか」という質問に近いものが多かったですね。今回のテストプレイでは遊べるエリアが限られており,実装予定のキャラすべてが登場していたわけではないので,そういった質問が多かったのだと思います。
4Gamer:
つまり,再現度に不満はないから,それをどこまで広げてくれるのか,という点に興味を持った人が多かったということですね。とはいえ,リリースに向けて改善する予定の部分があるとは思いますが。
岩本氏:
今回,キャラクターのモデルを丁寧に作り,ムービーもたくさん入れているので,データ量が非常に大きくなっている点ですね。最初のプレイ体験後のダウンロードが長くなってしまっているのですが,具体的な技術面での手立ても考えてあるので,うまく修正できると思います。
4Gamer:
ダウンロード時間が短くなるのは単純にうれしいですね。
岩本氏:
あとは,クオリティを保ちつつ,より多くの端末にどれだけ対応させられるかという部分ですね。テストプレイではひとまずクオリティを優先する形にしたのですが,一部の方から「絵は綺麗だけど声がずれる」という声も上がっていたので,リリースまでに調整していくつもりです。
4Gamer:
実は結構古い端末を使い続けているなんて人も多いですからね。
岩本氏:
そうなんですよ。今回のテストプレイでもiPhone 6sを現役で使っている人もいたので,なるべくそのあたりまでフォローできればと思っています。もちろんクオリティも追求したいので,「推奨スペック」と「動作保証スペック」という形で情報を出し,クオリティを求めつつ,たくさんの端末に対応できるようにします。
4Gamer:
テストプレイとリリース時で異なる点はあるのでしょうか。
岩本氏:
キャラクターとコンテンツ部分ですね。リリース時にはプレイアブルキャラクターを約30人登場させる予定なのですが,テストプレイ時にはその半分にあたる15人だけが登場しました。また,本作のコンテンツはプレイヤーレベルによってアンロックされるのですが,テストプレイではレベル上限を設けていたので,遊べるコンテンツも制限されていました。
4Gamer:
テストプレイの時点でもかなり登場していましたが,そこからさらに倍以上が……。ちなみに,テストプレイで反響が多かったキャラクターは誰でしょうか。
岩本氏:
リンに対する驚きが多かったですね。「バットはわかるけど,リンがイスで戦うの!?」「このキャラクターもプレイアブルなのか!?」みたいな(笑)。あとはスペードに対する反応も多かったです。スペードは過去の作品などでも動いている姿で登場していなかったので,ファンからは「動くスペードを見られる時代が来たか……」という言葉があがってましたね。
4Gamer:
ダイヤも含め,いわゆるキング一味のハート以外が新規に登場したというのがもう驚きでした。
岩本氏:
ハート以外の3人については,ファンから「セガはよくここまでやったな」みたいな声もあがっていました(笑)。今後出るキャラクターについては,ラオウやトキが登場したり,ネタバレ回避のためにあまり具体的なことは言えないですが,奥義が北斗百裂拳ではないケンシロウが出てきたりしますよ。
4Gamer:
同じキャラクターがいろいろなバージョンで登場するのは嬉しいですね。リリース後の追加要素はどのように展開していくのでしょうか。
岩本氏:
ストーリーについては,みなさんがご存じの「北斗の拳」を,リリースから1年ほどかけてすべて出していく予定です。キャラクターに関しては,1か月に2キャラのペースで新規を出していきたいと考えています。
北斗七星はインタフェースとして最適だった
4Gamer:
「北斗リバイブ」を制作することになったきっかけを教えてください。
岩本氏:
ご存じかもしれませんが,セガサミーと「北斗の拳」というIPはすごく長いお付き合いがあって,関係性もかなり深いんです。
そういった関係値があり,昨年は「北斗の拳」第1話の掲載から35周年というアニバーサリーイヤーということで,ノース・スターズ・ピクチャーズさんが掲載35周年記念のイベントなどを企画されていたところに,周年記念として“北斗の拳のスマホゲームを作りたい”と,お話をさせていただいたのが始まりですね。
4Gamer:
昨年で35周年ということは,企画の立ち上がりはもう少し前ということでしょうか。
企画の話をさせていただいたのは2年ほど前ですね。35周年に向けてどんな記念作品が作れるか,「北斗の拳」という冠が付いているコンテンツがたくさん出ているなかで,どうやって差別化をはかっていくかということをお話しさせていただいていました。
4Gamer:
確かに差別化は必要ですね。
岩本氏:
そこから社内で話し合って,“これまでにない「北斗の拳」”というキーワードから,“北斗神拳の歴史が途絶えた時代”と指針が固まっていったんです。一子相伝が途絶えた時代,という響きがよかったのか,原先生にも気に入っていただき,そこから膨らましていくことになりました。
4Gamer:
方向性が決まり,そこから制作が始まったんですね。
岩本氏:
本格的な制作に進むには社内の審査を通す必要がありました。プロトタイプを作ってプロジェクトの承認がおりたのが今から約1年ほど前ですね。1年間という短期間ではありますが,かなりスムーズに開発を進められたかなと思います。
4Gamer:
今回のバトルは,北斗七星が順番に光っていき,七つ目の星が光るタイミングでタップするという,シンプルながらも「北斗の拳」らしいシステムとなっていますが,こちらはどのように誕生したのでしょうか。
岩本氏:
最初のころはリズムゲームのように,サークルが小さくなっていって消えるタイミングでタップしたり,横に動くバーが端にいったタイミングでタップしたりと,いろいろなパターンを作っていたんですよ。そうしたときにちょっとした遊び心で北斗七星バージョンを作ってみたらそれがハマっちゃって。
4Gamer:
最初から北斗七星だったわけではないんですね。
岩本氏:
開発を進めるなかで,サラリーマンや学生などのメインターゲット層をお呼びして,プロトタイプを遊んでもらうグループインタビュー調査を行いまして,今回のゲームにどれくらいのニーズがあるのかを調査したんです。
4Gamer:
やってみてどうでしたか。
最初は一般的なインタフェースを使っていたのですが,それをうまく操作できない人が多くて世間とのギャップに驚かされました。「タイミングを合わせてタップするゲームです」と説明書きを用意していたのですが,そこを読まない人も多く,「これでは直感的に操作を理解できない」という反省があったんです。
その後,どうしようかと悩んでいたとき“北斗七星のバージョン”の提案があり,「これでしょ!」と,すぐに決まりました。7つの星があって,7つ目が光ったらタップする,これは説明も必要ないだろう,と。
4Gamer:
作品のモチーフにもなっていますし,これは一発で理解できますね。
岩本氏:
流動的なものだと慣性が読みにくく,どこが正解なのか感覚的にわかりづらいところがありますが,7つという個数であればすごく把握しやすいんですよ。本当に「北斗リバイブ」に関してはドンピシャのインタフェースだと思いました。
「北斗の拳」への新しい入り口にも
4Gamer:
バトル部分のこだわりを強く感じますが,ほかにもこだわった部分があれば教えてください。
岩本氏:
どこまで原作の追体験を提供できるか,というバランス部分ですね。本作では,原作の追体験を掲げていますが,極端な話,原作コミックのセリフを一字一句すべて載せることはできません。だからといって,印象的なシーンだけをかいつまんでムービーにしてお見せしても,正直よく分からないとなるじゃないですか。このあたりのバランスはすごく考えた部分です。
4Gamer:
“究極の追体験”という言葉を掲げているだけに,中途半端なものは提供できませんよね。
岩本氏:
先ほどお話ししたグループインタビュー調査のときは一部のムービーしか入っておらず,「北斗の拳」に詳しくない人から,「知っている人はドキドキするかもしれないけど,この人たちがなぜ戦っているかが分からなくて,気持ちが置いてけぼりでした」というお言葉をいただいたんです。
興味を持ってもらったのにうまく伝わらないのでは,“究極の追体験”を実現できていないですし,その作りでは本当にコアな人しか遊ばなくなってしまうため,ストーリーの見せ方をあらためて考え直しました。
4Gamer:
コミックモーションはそのときからあったのでしょうか。
岩本氏:
コミックモーションはまさしくこの後に入ったものですね。すべてのシーンをムービーにするとコストがかかりすぎてしまうので,みんなの記憶に残っているところはムービーで作りつつ,「なぜケンシロウは怒っているのか」「なぜその相手と戦うのか」といった部分を伝える方法として,コミックモーションを導入することにしました。物語ひとつひとつの筋を作ってクエストの前後にそれを入れていけば,初めて見る人も「なるほど!」と思えますし,知っている人も懐かしく思えますよね。
4Gamer:
確かに,最近読み直したものでもない限り,うろ覚えな部分も多いですからね。
岩本氏:
今回のテストプレイでも,「第1話を思い出した」という声が多くありましたし,あまりウケないかと思っていた女性層が「そこまで興味があったわけではないんですが,実際に遊んでみたら,すごくいい物語に引き込まれました」という感想をいただいたんですよ。これはすごく嬉しかったですね。知らない人にもちゃんと原作の物語が伝えられたんだなと。
4Gamer:
本作が「北斗の拳」の新しい入り口にもなりうるということですね。
岩本氏:
そうなんですよ。グループインタビュー調査のときには物語の伝え方が大きな課題だったので,コアではない人にもしっかりと物語を伝えられて本当によかったと思います。
4Gamer:
テストプレイではシンとの戦いまでが描かれましたが,リリース後はどこまで物語を体験できるのでしょうか。
岩本氏:
いわゆる“拳王編”と言われている,ラオウやレイとの死闘がありますよね。拳王編がゲーム内では第11章,第12章,第13章の全3章に分けられているのですが,リリースの段階では第11章までを遊べる状態にする予定です。そこから,キャラクターと同じように2か月に1回くらいのペースで新しい章を出していこうかなと思っています。
4Gamer:
ストーリー部分のこだわりはヒシヒシと伝わりました。ゲーム部分で苦労した点などはありますか。
岩本氏:
今回のように6対6でバトルをするとなると,戦況が分かりやすいのは一人称よりも三人称視点で,キャラクターの個性を見せるという点ではSDキャラのほうが見やすいんですよ。髪の毛は強調されますし,身に着けている鎧などもデフォルメできますし。とはいえ,「『北斗の拳』のゲーム画面としてSDキャラが求められているのか」「リアルな頭身にこだわるべきではないのか」など,ベース部分を考える段階でかなり苦労しましたね。
4Gamer:
「北斗の拳」らしさ,という意味ではやはり8頭身のままを求めてしまいますね。
岩本氏:
そうですね,みんなが期待する「北斗の拳」はケンシロウたちが想像している姿で画面に出ることだと考え,あの頭身のキャラクターを出すことにしました。
ただ,この頭身だと顔が見えにくくなってしまって,引きで写すと本当に「これは誰だ?」みたいな状況になってしまって……(笑)。カメラアングルやキャラクター配置を試行錯誤することで,良い形に落とし込めたので良かったのですが,ここもかなり苦労した部分ですね。
とはいえ,私としてもまだまだ改善の余地はあると思っているので,そこは今後もブラッシュアップしていきたいと思っています。
4Gamer:
いかに「北斗の拳」らしく見せるか,そこにこだわっていることがすごく伝わります。そこまでこだわっていくとボツになった案もあると思うのですが。
岩本氏:
実は,テストプレイのフィードバックでとても好評だったハイクオリティムービーは10本程度に収める予定で,素材が不足しているところにはキャラ同士の会話劇を入れようとしていました。ですが,ムービーと比べたときにどうしても見劣りしてしまって,「これではプレイヤーを満足させられない」と思い,ボツにしましたね。
4Gamer:
あのクオリティのムービーを見た後だと,さすがに見劣りしてしまいますよね。
岩本氏:
ムービーでファンの気持ちを掴めるという手応えが私たちにもありましたし,コストをかけてでもムービーを作りたいという話を社長にしたところ,許可をいただいてムービーを増やしていきました。そこは当初から大きく変わった部分ですね。トータルでプレイヤーの満足度を優先するという点では正しい判断ができたかな,と思っています。
いまの時代に原作の描写をどこまで出せるのか
4Gamer:
ここからは原作の究極の追体験について聞いていきたいのですが,グループインタビュー調査の反応によってコミックモーションが入ったのは大きいですよね。
岩本氏:
そうですね。コミックモーションの追加だけでなく,あの声がなかったらこんなにたくさんシナリオの説明を入れていなかったかもしれません。コミックモーションを導入したことで,物語が伝わりやすくなりましたし,感情移入もしやすくなった。そこは会話劇との違いですね。
4Gamer:
開発陣は「北斗の拳」が大好きな人が多いとうかがっているのですが,コミックモーションを使うシーンはチーム内で意見が分かれませんでしたか。
岩本氏:
私はプロデューサーという立場だったので,そこは開発現場に任せている部分ではありましたが,「北斗の拳」が大好きな人間ばかりだったので,削る削らないというところではやり合っていましたね(笑)。ただ,どこを採用するかしないかというよりも,ご存じのとおり原作の描写って,いまデジタルに載せるとリスキーな部分はあるんですよね,実際。
4Gamer:
確かに,時代も大きく違いますからね。
岩本氏:
全体を管理する側としては,いろいろな審査を通していかなければならないので,泣く泣くコミックモーションにできなかった部分などもあります。たとえば,悪党によって小さな女の子が非道な扱いをされているなど残酷な描写は使用を避けました。
4Gamer:
間違いなく審査は通らないですね……。
岩本氏:
そういった描写にピンポイントで注目が集まるのは嫌なんですが,物語上絶対に必要なシーンもあるんです。たとえば,第1話でスペードの目に矢が刺さるシーンは分かりやすいですね。入れるかどうかの判断がかなり難しいところではあるんですが,もともと両目があったスペードというキャラクターがなぜ眼帯を付けるのか,どうしてミスミのじいさんを執拗に追いかけているのか,その後なぜケンシロウの怒りが頂点に達し「てめぇらに今日を生きる資格はねぇ!」というセリフが出てくるのかなど,先にそのシーンがないと理由がまったく分からないんですよね。開発側もそこはすごい熱を持って話してくれたので,これは入れることになりました。
展開を伝えるためには,どうしても欠かせないシーンですからね。
岩本氏:
さすがに,そのあとのスペードとミスミのじいさんのやりとりがあったシーンは黒塗りにしたのですが,原作表現の部分はいろいろと考えた部分ですね。プレイヤーが期待している部分でもありますから,原作どおりに提供したいという想いが大前提としてあるなかで,私たちがどこまでチャレンジできるのか,というのはすごく苦労しました。
4Gamer:
ファンとしてはどこまで描写されているのか,という部分も注目ですね。
岩本氏:
多分,ファンの方もゲーム内で描かれない部分に気づいたら,「さすがに……」みたいな感じで納得していただけるかな,と思います。
4Gamer:
コミックモーション中にも入る千葉 繁さんのナレーションですが,チュートリアルにも入っていてビックリしました。数で言うとどれくらい収録されているのでしょうか。
岩本氏:
「レベルアップ!」などのいわゆるシステムボイスの部分で20ほど,コミックモーションのところで50ほどの文言を収録しているので,全体としては70種類ほどありますね。
4Gamer:
ゲームをプレイするだけで千葉さんの成分を堪能できそうですね。
岩本氏:
もうすごいですよ(笑)。私も2回ほど千葉さんのボイス収録に立ち会わせていただいたのですが,基本的に一発OKなんですよ。長いセンテンスになると音響監督さんが分割するかどうか確認するんですけど,千葉さんが「試しに通して一発やってみましょう」と言って,その一発でOKが出るんです。
4Gamer:
それはすごい……。収録現場で直に聞く千葉さんボイスは迫力もすごかったのでは?
岩本氏:
本当にすごかったです。仕事で立ち会っているのに,収録中はやっぱりニヤニヤしちゃいました(笑)。
原先生のリアリティに対するこだわり
4Gamer:
今回のメインビジュアルは原先生の描き下ろしということですが,こちらはどのようなテーマで依頼を出されたのでしょうか?
岩本氏:
「最終的にこういう構図で使いたい」「時代設定」あたりをお伝えしました。とくに,どの時代のケンシロウやラオウなのかを気にされていて,「二回目に戦ったときの2人」という話になって描いていただいたという感じです。
4Gamer:
メインビジュアルを見る限り,戦っている2人とはまた違う雰囲気が出ていますよね。
岩本氏:
「北斗リバイブ」は,北斗神拳一子相伝の歴史が途絶えた時代に,新たなる伝承者が星の声に導かれて北斗を取り戻す,というテーマにしているんですが,メインビジュアルにいる白いフードのキャラクターが新たなる北斗の伝承者であり,プレイヤー自身なんですよ。
4Gamer:
こちらはケンシロウとラオウに挟まれる形の配置になっていますね。
岩本氏:
一子相伝が途絶えているということは,ケンシロウもラオウもいない時代にこのキャラクターがいるんですが,その新しい伝承者が記憶を取り戻して北斗を伝承していくという姿を,左右から見守る存在として描いてほしい,とお願いしました。そのため,闘気をむき出しにするのではなく,遠い未来を見て凛としているんです。
4Gamer:
キャラクターイラストについては原先生監修ということでしたが,先生からの修正はどれくらいあったのでしょうか。
岩本氏:
正直,監修は厳しかったですね。ただ,理不尽なことは一切なく,先生のポリシーを理解できれば「なるほど!」と思えるんです。個人的には,「キャラクターがこの世界に生きている」ということを原先生が想像して描いていらっしゃる,と私は受け止めています。
生きているキャラクターを描いていると。
岩本氏:
たとえば,キャラクターたちが身に着けている装飾品がありますよね。先生は,何のためにその装飾品があるのか,それぞれどんな素材で作られているのか,といった部分まで考えられていて,衣服の機能性を考えるとそんな装飾はあり得ない,といったことをすごく厳しく見られていました。
4Gamer:
現実的に考えたらおかしい,ということにならないように。
岩本氏:
たとえばケンシロウの肩あてひとつ見てみても,描き方によっては腕が上がらなくなってしまうんですよ。肩の上に乗っているだけなら腕は上がりますが,胸元とベルトでつなげたら腕を上げられなくなるじゃないですか。実際に入った監修の内容とは異なりますが,そういった部分のご指摘はいただきましたね。
あとはポージングについても,「この姿勢だと重心が後ろになるから上半身を前に倒さないと立てない」など,リアリティのこだわりが本当にすごかったです。
4Gamer:
リアリティを追及するからこそ,あの存在感が生まれるわけですね。
岩本氏:
もちろんみなさんが想像するような顔の骨格などに関する監修もありますが,リアリティについては細部まで厳しく見ていただきました。服のシワで言えば,股間部分のシワは真っすぐ横一直線にはならず,ある程度放射線状に広がっていることや,縦横のシワのラインの細部にもこだわっていることなど,「絵のなかに不自然な部分があってはいけない」という意識をとても感じましたね。
「北斗の拳」ファンは周りにも勧めてほしい
4Gamer:
気になるリリース時期についても聞かせてください。年内リリースとのことですが。
岩本氏:
年内といっても年末ではなく,寒くなる前には出せるんじゃないかなと思います。開発はすごく順調に進んでいますし,開発当初から提供したいと考えているものは変わっていません。
4Gamer:
プログラム面などでの問題もなく,という感じですか。
岩本氏:
今回のテストプレイでは,一部の端末で止まってしまうことはありましたが,基本的には安定した状態で出せていますし,プログラム面でいわゆる進行停止バグのようなものもなかったので,あとはリリースまでにサービスの品質を上げていく感じですね。
4Gamer:
事前登録もスタートしていますし。
いま公式サイトで出しているように,登録数によって南斗水鳥拳のレイがもらえたり,豪華賞品がアンロックされたりするので,ぜひチェックしてほしいです。
公式Twitterはもちろん,Facebookでも公式ページをオープンしていて,そちらに“いいね”を入れていただいても,事前登録扱いになるので,合わせてチェックしてみてください。
4Gamer:
事前登録と同時にPVも公開されましたが,主題歌である“愛をとりもどせ!”をTHE ALFEEさんが歌われていますよね。こちらはどういった経緯があったのでしょうか。
岩本氏:
そうなんです。「北斗の拳」の35周年を記念した企画のなかで,コンピレーションアルバムが制作されたんですが,そこでTHE ALFEEのみなさんが“愛をとりもどせ!”を歌ったのがきっかけですね。
同じ35周年記念プロジェクトということもあって,こちらのメインテーマとして使わせてもらえました。PVもすごく盛り上がる内容になっているので,ぜひ見てほしいです。
4Gamer:
気の早い話かもしれませんが,「蒼天の拳」など関連作品がどうなるのかも気になるところです。
岩本氏:
「蒼天の拳」など,原先生に縁のあるIPについては,原作を出しきった後ではなく,コラボのような形で提供していったほうがプレイヤーにも喜んでいただけるかなと思っています。キャラクターについても,ストーリーを追いながらコラボして出していければなと。
4Gamer:
ほかのIPについては,外伝的な形で見られるかもしれないと。
岩本氏:
そうですね。そこはまだ具体的なお話ができているわけではないので,あくまで私たちの希望になりますが。以前に台湾でもメディアのインタビューを受けたのですが,「蒼天の拳」は出るのかという話が出てきて,海外ファンの熱量も感じましたね。
4Gamer:
あちらではとくに気になりますよね。
岩本氏:
中国拳法の流れという部分がありますからね。開発者たちも含めて,「北斗の拳」が好きな人は,そのルーツが描かれている「蒼天の拳」も好きなので,どうにかやりたいなと考えています。
4Gamer:
最後に,メインターゲットである「北斗の拳」ファンと,「北斗の拳」の名前は知っているけどあまり詳しくはない,という人に向けたアピールをお願いします。
岩本氏:
「北斗の拳」ファンの方には,物語が思い出せることをお伝えしたいですね。時間がなくてなかなかコミックやアニメを見返せない人はこのゲームでまた北斗の物語を見てほしいです。それくらいのクオリティがあることは自信をもってお伝えできます。「北斗の拳」を本当に好きな開発陣が作っているので,間違いなく楽しめるはずです。
再び「北斗の拳」の世界を堪能するのにはもってこいなゲームになっていると。
岩本氏:
あとは,「北斗の拳」の魅力をぜひ広めてほしいですね。本やアニメはなかなか薦めるのが難しいかもしれませんが,スマホアプリであればとても薦めやすいと思います。
また,グループインタビュー調査の際に「北斗の拳」にすごく詳しい学生さんがいたんですよ。話を聞いたら,父親の本棚に「北斗の拳」があって,子どもの頃からずっと読んでいてファンになったんだとか。
4Gamer:
世代を超えて伝わっていったわけですね。
岩本氏:
そうですね。まずはファンの方々から厳しい目で見ていただいて,みなさまのお眼鏡にかなえばぜひ,周りの人や息子さんなどに勧めてみてください(笑)。
4Gamer:
メインターゲット層の年齢を考えると,中高生ぐらいの子どもがいる人も多いかもしれないですからね。「北斗の拳」を何となくは知っている層へはいかがでしょうか。
岩本氏:
いまはいわゆるオンデマンドの世の中ですけど,「北斗リバイブ」はそのなかでいちばん手軽に「北斗の拳」を知ることができると自負しています。また,ゲーム内容では自分が北斗の記憶を集める主人公になっており,物語も自分を中心に進んでいくので,感情移入もしやすいと思います。
ゲームシステムもカジュアルで誰でも遊べる内容になっているので,アクションが苦手な人でも手軽に遊んでほしいですね。今は詳しく知らなくても,「北斗リバイブ」を遊んだら,きっと詳しくなれると思いますよ!
4Gamer:
「コミックスを読んだ」くらいまでいけますか。
岩本氏:
本当にそれぐらいの理解は得られると思うので,父親との接点を探すのにも役立つと思います(笑)。「北斗の拳」とコラボした焼酎なんかも出ているので,お酒を酌み交わす接点に「北斗リバイブ」を! 新社会人であれば,上司とのコミュニケーションにも使えるかもしれませんよ!?(笑)
4Gamer:
これを機に「北斗の拳」に触れる人が増えるのを楽しみにしています。本日はありがとうございました。
―――2019年6月27日収録
「北斗の拳 LEGENDS ReVIVE」公式サイト
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(C)武論尊・原哲夫/NSP 1983 版権許諾証GC-218 (C)SEGA
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