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[GDC 2019]Microsoftのクラウドゲームサービス「xCloud」は,仮想ゲームパッドがゲームに応じて柔軟に変化する
本稿では,北米時間2019年3月21日に行われたMicrosoftによるセッション「Project
Xbox One用のゲームをそのままクラウドゲームに提供できる
そもそもxCloudとは,Microsoftが2018年10月に発表したクラウドゲームサービスである。Xbox One向けのゲームタイトルを,そのままPCやゲーム機,スマートフォンなどに配信してプレイできるというのが売りで,2019年内に一般向けテストが始まる予定だ。
実のところ,GoogleによるStadiaの発表があったので,対抗のためにMicrosoftも,今回のセッションで,正式サービス開始時期は難しいにしてもテスト開始スケジュールくらいは発表するのではないかと筆者は期待していたのだが,そんなことはなかったのが残念である。
GoogleのStadiaと違うのは,xCloudでは提供すべきゲームがすでにXbox One用として存在するという点だ。もちろん,ゲームパブリシャやデベロッパの許可を得る必要はあるだろうが,まったく新しいゲームプラットフォームを用意して,そこに参入してもらうのに比べれば,ゲームを提供する側にとってのハードルは低いだろう。
それを支える技術としてMicrosoftは,Xbox One用のプログラムに手を加えることなくxCloudにゲームを提供できる「Console Native」を特徴の1つに挙げている。
いくら独自のデータセンターとネットワークを使うとはいえ,もとのゲームに存在しなかった通信遅延が必ず生じるクラウドゲームサービスに,まったく手を加えることなくプログラムを提供できるのかは正直疑問だ。しかし,同社が改変不要をアピールポイントに挙げているのは確かである。
ゲームに合わせてデベロッパが仮想ゲームパッドをカスタマイズできる
さらにMicrosoftがxCloudの大きな特徴として挙げているのが,スマートフォンやタブレットといったタッチ操作デバイスを対象とした仮想ゲームパッド機能「Touch Adaptation」だ。
ゲームパッド,あるいはキーボードとマウスなどで操作することが前提のゲームを,スマートフォンで操作するには,画面上にゲームパッドのボタンやスティック操作を割り当てる仮想ゲームパッド機能が欠かせない。
まず以下の画像は,基本となる仮想ゲームパッドのレイアウトだ。Xbox Wireless Controllerのボタンやスティック配置をおおむね踏襲したものと思っていい。
続けてRiffe氏は,具体的なゲームを挙げて仮想ゲームパッドの例を説明した。次に示すのは,「Dead Cells」の画面にカスタマイズした仮想ゲームパッドのレイアウトを重ねたものだ。ゲームの映像で少し見づらいが,左右アナログスティックが表示されていない一方で,画面左下にはD-Padがあり,画面右下に[LT/RT]トリガーをまとめているのが分かるだろう。
2つめのサンプルは「Cuphead」用のカスタムレイアウトだが,[A/B/X/Y]ボタンの代わりに,キャラクターの操作をイメージしたアイコン「Semantic Icons」を設置しているのが大きな違いだ。また,ショットを撃つボタンはトグルスイッチになっていて,オン状態なら自動で連射するといったカスタマイズも行える。
最後のサンプルは,レースゲーム「Forza Horizon 4」用のカスタムレイアウトだが,ステアリング操作を行う左アナログスティックは,左右にだけ動くスライダーとなり,右下のボタン類はタコメーター風の表示になっているのが見てとれる。ここまでカスタマイズに凝れるのは,デベロッパ側でレイアウトやデザインをカスタマイズできるxCloudならではの要素と言えるだろう。
さらに,Touch Adaptation Kitを使えばゲームごとにカスタムレイアウトを作れるだけでなく,ゲームのシーンに応じてレイアウト自体を完全に変えることも可能だ。
Forza Horizon 4の場合,ドライブ中とマップ画面,メニュー画面のそれぞれで,レイアウトを変えられるという。メニュー画面は操作したい項目を直接タッチすればいいそうで,画面に最適化した操作に変えることで,デバイスに合わせて最適な操作体系を選択できるのである。
ここまで仮想ゲームパッド機能にこだわったクラウドゲームサービスというのは,ほかにないだろう。
そのほかにも,ゲームストリーミングのテストで,任意の遅延時間を設定して実環境に近いテストを行う機能や,マルチプレイ対応ゲームでマッチングを行う場合に,遅延時間が同程度のユーザーを集めてマッチングすることで,遅延の差による有利不利を減らすといった機能も備えていると,Riffe氏は紹介していた。
xCloudは,ゲームプラットフォームの運営経験の長いMicrosoftならでは知見が活きた機能を備えていると言えるのではないだろうか。
Xbox Oneユーザーが非常に少ない日本では,xCloudでXbox Oneのゲームを遊べるといっても,興味を惹かれない人が多いかもしれない。しかし,ゲーム機本体がなくてもゲームをプレイできるxCloudは,むしろXbox Oneユーザーの少ない日本市場でこそニーズのあるサービスのように思う。「あのゲームをちょっとプレイしてみたいけど,そのためにXbox Oneを買うほどのお金は出せない」という人でもxCloudなら利用できるのだ。
国内におけるゲーム事業が不振ということもあり,日本マイクロソフトの関心も低そうに思えるxCloud。だが,そういう環境でこそクラウドゲームサービスには意味があるという考え方もできるのだということを,同社には理解してほしいと願ってやまない。
Microsoftの「Xbox Wire」公式Webサイト(英語)
Xbox日本語公式Webサイト
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